2021年2月のサッカー

Index

  1. 02/20   川崎3-2G大阪 (ゼロックス杯)
  2. 02/27 ● 鹿島1-3清水 (J1・第1節)

川崎フロンターレ3-3ガンバ大阪

FUJI XEROX SUPER CUP/2021年2月20日(土)/埼玉スタジアム2002/日本テレビ

 およそ一ヵ月半ぶりのサッカー!――は、Jリーグ開幕一週間前のお約束、J1チャンピオンと天皇杯王者の対戦、ゼロックス杯。なんでも富士ゼロックスが社名変更するそうで、ゼロックス杯という名前は今年限りなのだそうだ。
 ということで、節目となる今回の対戦。川崎がJ1と天皇杯の二冠を達成しているので、もうひとつの出場権を得たのはJ1の2位だったガンバ大阪。つまり元日の天皇杯・決勝と同じ組み合わせで、いっちゃ悪いけれど、いささかおもしろみを欠いた。
 まぁ、元日のときと比べると、ガンバは健闘したと思う。あのときに比べればまだ、ボールを長く持てている印象だった。あの試合では欠場していた井手口が戻ってきたのは大きかったんだろう。まぁ、その分、今回は宇佐美がいなかったけど。ここぞでベスト・メンバーで戦えないあたりはついてない。
 川崎はほぼ去年のままの戦力ながら、ボランチの守田が移籍した影響がどれくらいか、いまだ未知数。とはいえ、セレッソから獲得したシミッチが違和感なくプレーしていたし、得点機の演出力はあいかわらず見事だったので、やはり今年もリーグ最強なのは変わりがなさそう。去年ブレイクした三笘はこの日も前半だけで2得点の活躍をみせて、さらなる躍進まちがいなしって感じだった。
 前半で2点のビハインドを負ったガンバだったけれど、後半に入ると矢島のゴールとパトリックのPKで同点に追いついた。前半だけですでに勝負ありって感じだったのに、そこから同点になったのには驚いた。やっぱサッカーはわかんない。
 ガンバは同点になったあと、先発のパトリックに加え、新加入したレアンドロ・ペレイラとチアゴ・アウベスを投入、前線にブラジル人を三枚並べる迫力満点の布陣で反撃に出て、こりゃもしかしたら……と思わせたのだけれど、でも勢いがあったのは最初のうちだけ。その後は尻つぼみとなり、後半ロスタイムの最後の最後に、途中出場の小林悠に劇的な決勝ゴールを決められて、またもや川崎に屈することになった。
 いやぁ、しかし去年は終盤の過密日程でサッカーを観まくりだったから、サッカーがなかったこの一ヵ月半は少なからず寂しかった。よそさまの試合であっても、こうやって再びJリーグの試合が観られてしみじみ嬉しい。
(Feb. 23, 2021)

鹿島アントラーズ1-3清水エスパルス

J1・第1節/2021年2月27日(土)/カシマサッカースタジアム/DAZN

 さぁ、Jリーグが始まった!――というお祭り気分に水を差す惨敗スタート……。って、去年も同じようなことを書いている。よもや2年つづけて開幕戦で3失点もするとは思わなかったよ……。
 とはいっても、去年の対戦相手は上位争いの一角を担う広島だったし、ザーゴ就任後初のリーグ戦で、しかも相手のホームだったから言い訳もできたけれど、今年はホームでの開幕戦だし、相手は去年降格争いをしていた清水だ。
 いったい清水に負けるのっていつ以来だよ?──と思って記録を調べたら、僕が観た試合限定でいえば、じつに6年ぶりだった。でもって、その6年前の試合も開幕戦で、まったく同じスコアで負けていた。あらら。
 結局その年はそのまま調子があがらず、監督に復帰して3年目のトニーニョ・セレーゾがシーズンなかばで解任に追い込まれている。今年のザーゴがその轍を踏まないよう心からお祈り申し上げる。
 ということで、不本意な結果に終わった今年の開幕戦で、鹿島のスタメンを飾ったのはGK沖、4バックが小泉、犬飼、町田、永戸、MFが三竿と永木のダブル・ボランチに、ファン・アラーノ、土居、そしてFWが上田綺世とエヴェラウドのツートップという布陣だった。
 要するにまったく去年のまんま。ブラジル帰国中に新型コロナウィルスに感染して合流が遅れたレオ・シルバがベンチ外だったり、鳴り物入りで獲得した新ブラジル人のピトゥカとカイオが入国制限のためいまだ来日できていなかったりして、変化を加えたくても加えられないという不運はあったけれど、でもこの顔ぶれならば連携も問題なしだし、今年はスタートでつまづくことはないだろうと思っていたのに……。
 誤算があったとするならば、相手のチーム編成に大変革が加わっていたこと。
 清水はセレッソで好成績を残したにもかかわらず契約を打ち切られてしまったロティーナを監督に迎えて、選手も大きく入れ替えてきた。GKは権田だし、DFには五輪代表の原輝樹やセレッソにいた片山がいるし、前線は三枚全員がカタカナ名の外国人──かと思ったら、そのうちひとりはディサロ{あきら}シルヴァーノというスキンヘッドのイタリア系ハーフの日本人だった。初めて聞く名前だけれど、プレーでも存在感があって、ちょっとびっくり。
 清水は立田やエウシーニョがいなかったこともあり、去年も観た覚えがあるのは、10番のとカルリーニョス・ジュニオと小柄なDFのヴァウドのふたりだけだった。まぁ、中村とか中山とか鈴木とか平凡な名前の選手が多いから、過去に観ているのに覚えてないだけって可能性もなきにしもあらずだけど。
 いずれにせよ、清水はほぼ別のチームに変貌を遂げていた。守備的なチーム作りでは定評のあるロティーナのもとで戦うエスパルスは、そう簡単に崩せる相手ではなくなっていた。とはいえ、だからといって、去年は降格争いをしていたチームがそう急激に強くなるわけもない。試合を終始リードしていたのは、やはり鹿島だった。
 でもこの日の鹿島は決めきれない。エヴェラウドは7本ものシュートを放つも、枠に嫌われたり、権田のファインセーブに止められたり。土居のシュートがバーとポストに弾かれたシーンも二度あった。
 あぁ、このままスコアレス・ドローに終わってしまうのかと、もやもやした気分で観ていた僕の心を(いっときだけ)癒してくれた先制ゴールが生まれたのは後半が30分のこと。永戸の左CKからエヴェラウドのヘディング、そのシュートが(またもや)バーに弾かれたところに、途中出場の荒木がフリーで待ち構えていた。荒木がこの浮き球を豪快なボレーで決めて鹿島が先制~。
 そこまでの試合展開を観ていれば、これで勝ったと思うのも無理がない。まさかそのすぐあとに、たてつづけの3失点で逆転を食らおうとは……。
 鹿島が先制したわずか2分後の同点弾はチアゴ・サンタナという9番の選手(なんかすごく知っている顔な気がする新ブラジル人)。左サイドからのクロスをワンタッチでその人につながれ(永戸がチェックにゆくも止め切れず)、最後はマークについた町田が股間を抜かれて万事休す。
 2点目はこれまた左からのカルリーニョス・ジュニオのクロスを、ディサロと交替で途中出場していた後藤優介という人に豪快なダイビング・ヘッドで決められた。
 後藤って誰よ?と思って調べたら、二年前までは大分にいたらしい。あー、またもや片野坂チルドレンかよ。なんでこう、大分出身の選手と相性悪いんだろう。謎だ。
 まぁ、この失点の直前にザーゴは永木をさげて白崎を入れているので、それで守備のバランスが崩れていた可能性もある。開幕戦だから是が非でも勝ち点3を──と攻撃的な采配をふるったザーゴの賭けがはずれたってことだろう。
 自慢するわけじゃないけれど、3点目は予想通りだった。この感じだともう1点とられてもおかしくないなと思っていたら案の定……。左CKからニアに飛び込んだ原の技ありゴールかと思ったら、そうではなく(原は触っておらず)。原の動きにつられた綺世にあたってコースが変わった痛恨のオウン・ゴールだった。
 この失点の直前にもザーゴは選手を入れ替えている。残り5分を切った時間帯に、小泉、永戸、土居に替えて、広瀬、遠藤、松村を一気に投入。両SBを替えてまで、捨て身で勝ち点を拾いにいって、玉砕した形というか……。でもまぁ、それだったらもっと早く動いたほうがよかったと思うけれどね。
 ――ということで、せっかく先制したのにすぐに同点に追いつかれ、そのあと二度の選手交替の直後につづけて失点を許すという、試合巧者にはあるまじき展開で黒星を喫した開幕戦だった。順位は下から4番目。今年は4チームが降格するので、つまり、またもや降格圏内からのスタートとなってしまった。やれやれ。
 でもまぁ、結果的に負けはしたけれど、試合内容では決して劣っていなかったのが救いっちゃあ救い。シュートだって相手の3倍近く打っているし。少なくても攻撃力では相手を上回っていた。この日は運がなくて1点しか奪えなかったけれど、まだまだ点が取れる感触はある。
 今年の戦力で気になるのはFW登録の選手がなんと三人しかいない点。この日はそのうちのひとりの染野がベンチ外だったので、FWの控えはゼロだった。
 エヴェラウドと綺世のツートップはどこに出しても恥ずかしくないと思うけれど、一年間怪我せず無事に乗り切れるという保証がない。もしもどちらかが(もしくは両方が)怪我をした場合のバックアップが染野ひとりというのは、どうにも心許ない。そういう意味では伊藤翔が移籍してしまったのは痛かったなぁと思う。あと、山本脩斗と名古が抜けたのも個人的には残念。
 逆にクォン・スンテが残留したのには驚いた。沖の台頭で今年も出場機会はほとんどないだろうに。引退した曽ケ端のあとを引き継いで、GK陣の精神的支柱として、チームを裏から支える心づもりなんだろうか。だとしたら、見上げたチーム愛の持ち主だ(なのにこの日はベンチ入りさえしていなかったのは……)。
 まぁ、いずれにせよ、チーム自体には優勝を狙えるポテンシャルがあると思うので、あとはそれをどれだけ結果に結びつけてゆけるかだ。この日みたいな試合をしていたら、川崎に食らいついてゆくのはとうてい無理だろう。
 ――というか、この試合を含めて第一節を何試合か観た感じでは、川崎の連覇を止めれそうなチームはひとつもない気が……。
 前途多難な新シーズンの幕開け。
(Feb. 28, 2021)