2008年4月のサッカー
Index
- 04/02 ○ 新潟0-2鹿島 (J1・第4節)
- 04/05 ○ 鹿島4-1千葉 (J1・第5節)
- 04/09 ○ 鹿島1-0北京国安 (ACL・グループF)
- 04/13 ● 浦和2-0鹿島 (J1・第6節)
- 04/19 △ 鹿島0-0G大阪 (J1・第7節)
- 04/23 ● 北京国安1-0鹿島 (ACL・グループF)
アルビレックス新潟0-2鹿島アントラーズ
J1・第4節/2008年4月2日(水)/東北電力ビッグスワンスタジアム/BS1
開幕以来、ここまでかたや3連勝、かたや3連敗と、対照的な成績を残している両チームの対戦。結果はその差をそのまま反映して、鹿島は連勝を4に伸ばしてJ1唯一の全勝チームとして首位をキープ。新潟は反対に、唯一の全敗チームとして最下位に沈んだままに終わった。
調べてみたら、新潟の試合を観るのは、これがじつに3年ぶりだった。そういえば、僕が知っている新潟は、まだ反町さんが監督を務めていた。鈴木淳監督になって今年で3年目だそうだけれど、不思議とこれまで観る機会がなかった。
それだから新潟は知らない選手ばっかり。馴染みがあるのは日本代表の矢野貴章と、元アントラーズの内田潤だけ。そのほかには千代反田や田中亜土夢(途中出場)、マルシオ・リシャルデス(この日は欠場)など、珍しい名前に聞き覚えはあっても、それらの選手は顔さえ知らない。これだったらば、まだJ2から上がってきたばかりのヴェルディの方が知っている選手が多かった。こんなに知らないチームがまだJ1にあったことに、われながらちょっと驚いてしまった。
ということで、そんな知名度の低い選手ばっかりのうえに、現時点では最下位と低迷している新潟が相手だ。こちとら現在、絶好調だし、負ける気がしなかった。
実際、開始早々アントラーズはゲームを支配。前半14分には、ゴールラインぎりぎりから内田篤人があげたクロスに、ファーサイドで田代が頭であわせて、やすやすと先制する(田代はこれが今季初ゴール)。その後、相手にボールを持たれる時間帯もあったけれど、まあいまの鹿島ならばこの一点で安泰という気がした。
後半5分には小笠原が打ったミドルがポストを直撃、跳ね返ったボールが相手GKの背中にあたってゴールインしてしまうというラッキーな形で2点目が入る。これだけ調子がいいうえに、ツキまで味方についているようだと負けようがない。
予想外だったのは、後半も半分を過ぎたあたりで、本山がイエローカードを2枚、立て続けにもらって退場してしまったこと。本山は去年、34試合にフル出場している。つまりそれは、1年を通じてイエローカードを3枚以上もらっていないということでしょう? その本山がこんな余裕のある試合で、わずか5分足らずのあいだに2枚のカードをもらって退場してしまうなんて、だれが思うだろう。どちらも、それはどうなのってカードだったし、レフェリーの奥谷さんの判定には疑問が残った。
とにかくこの退場で数的不利になったことで、試合はがぜんスリリングになった。アントラーズは、ダニーロ、増田誓志、伊野波という選手を投入して逃げ切りに入る。それまでの楽勝ムードが抜けて試合が締まったし、守備的な展開になったことで、ひさしぶりに増田にも出番が回ってきたし、チームにとっては悪くない展開になった(と僕としては思う)。退場の判定には疑問が残ったけれど、その後の内容についてだけみれば、ナイス・ジャッジだったかもしれない。本山の身になってみれば、たまったもんじゃないだろうけれど。
まあ、そんなわけで終盤、数的不利になって、やや劣勢にまわることになったけれど、それでもそんな時間帯においても、ちゃんとアントラーズは攻めていたし(青木のミドルがクロスバーをたたいたりする惜しい場面もあった)、そのままスコアレスで逃げ切ったので、万事オッケー。いや、なかなか楽しい試合だった。
最後に。かつては鹿島でプレーしていた内田が、いまや新潟でキャプテンマークを任されるほどの存在となって、随所で素晴らしいプレーを見せていたのは、とても感慨深かった。
(Apr 03, 2008)
鹿島アントラーズ4-1ジェフ千葉
J1・第5節/2008年4月5日(土)/カシマスタジアム/BS-i
ちょっと前に新しいHDDレコーダーを買った。Blu-ray対応なんて高価なものではなく、市販されているなかでも一番安いやつで──それでもとりあえず地上波デジタル・BSデジタル・チューナー内蔵──、特にサッカーのために買ったわけではないのだけれど、いざ手に入れてみたらば、サッカーファンとして嬉しいことがふたつあった。
ひとつは観られる試合が増えたこと。いままで自分には関係ないと思って気にも留めていなかったBSデジタルで、地上波やアナログの衛星では放送のないカードが、なにげなく無料放送されていた。この日の鹿島-千葉戦がそれ。さらに翌週には、ACLのアントラーズ戦の生放送があるのも発見。いままで観られると思っていなかったそれらの試合を生放送で観られるんだから、思わぬ拾いものをした気分だった。
もうひとつよかったのが、デジタル放送の恩恵で画面がワイドになったこと。僕とワイドテレビとのつきあいはかれこれ12年以上になるし、映画は普段16:7で観るのがあたり前になっているから、最初はそのことについて、特にどうとも思っていなかったのだけれど、いざサッカー放送を観始めてみたところ、ことサッカーにとっては、画面がワイドになったことのインパクトが思いのほか大きなことに気がついた。
単純な話、ワイドだと画面に映るピッチがより広くなる。いままでの4:3の画面では映っていなかった選手がちゃんと映る。要するに視野が広くなって、スタジアムで生で観戦している感じに近くなる。痒いところに手が届く感じで、これが思いのほか、気持ちいい。いったんワイドで観てしまうと、従来の4:3ではもの足りなくなる。どうせあと3年もせずにアナログ放送は終了してしまうというし(まあ、本当にそんなに早く実現するのかわからないけれど)、サッカー・ファンはさっさとアナログには見切りをつけて、デジタル放送に切り替えたほうがいいんじゃないかと思ってしまった。
というようなわけで、新しいAV機器の恩恵によって観戦できたJ1第5節の千葉戦。
羽生、山岸、水本、水野ら、主力を大量に放出した今年の千葉は、前節の新潟に負けず劣らず、知らない選手ばっかりになってしまっていた。スタメンで僕が知っているのは、巻とボランチの下村、GKの立石くらい。中心選手のはずの工藤や、わざわざ新潟から呼び戻した坂本は、なぜかベンチを温めている。苔口(元C大阪)や馬場憂太(元FC東京)が途中出場で出てきたときには、おっ、一応はこんな補強をしていたんだと思いはしたものの、彼らのような若手だけで羽生らが抜けてできた穴がそう簡単に埋まるはずもない。現状のジェフはアントラーズの敵ではなかった。
こちらのスタメンは、前節レッドカードをもらって出場停止の本山のところにダニーロが入っただけで、あとはいつもどおりの11人。ダニーロはこれまで出場時間こそ少ないものの、全試合に出場しているし、いまのチーム状態ならば、ひとりくらい選手が入れ替わったところでぜんぜん問題がない。ということで、前後半ともに2得点ずつを叩き込み、アントラーズがジェフを一蹴してみせた。
この日の得点は、前半が田代とマルキーニョスで、後半が彼ら二人と交替でピッチに入った佐々木と興梠。4人のFWが1ゴールずつ決めての4点というのも、なんとなく珍しい。取るべき人たちが取ってくれるのは気持ちいい。
失点は後半のロスタイムの最後の最後に、青木が巻を倒してPKをとられたもの。3分と掲示されたロスタイムが過ぎたあとのプレーだったし、あの程度でPKはないだろうと思った。主審は柏原さん。この日の判定はそれほど悪くない感じだっただけに、最後のあれだけは勘弁して欲しかった。
ま、なんにしろアントラーズは開幕5連勝で首位を堅持。次節からは序盤の山場ともいうべきレッズ、ガンバとの連戦だ。序盤は出遅れた両チームも、気がつけばもうガンバ3位にレッズ4位と、ちゃんと順位を上げてきている。熱戦必至でいまから楽しみだ。
(Apr 06, 2008)
鹿島アントラーズ1-0北京国安
AFCチャンピオンズリーグ・グループF/2008年4月9日(水)/カシマスタジアム/BS朝日
この試合はいままでにない新鮮な経験だった。
アントラーズの試合というと、普段は対戦相手が同じJリーグのチームだから、対戦相手には日本代表でなじみの選手も多く、あまり敵という気がしない。負けても悔しいというよりは、相手が強かったから仕方がない、くらいの感じのときが多い。
ところがACLのこの試合は違う。相手はまるで知らない中国のチームだ。中国にはアジア杯や東アジア選手権でかなり悪い印象を持ってしまっている上に、こちとらJリーグのチャンピオンとくる。日本のクラブの代表として、ここは絶対に負けられない。負けたら悔しくて仕方ないだろう。こういうシチュエーションって、日本代表でならばともかく、アントラーズではこれまでに経験したことがなかった。
しかも相手の北京国安は、こういう舞台に出てくるだけあって、なかなか手強い。こちらは過密日程の影響がそろそろ出始めたのか、あまり出来がよくない。おかげでとてもタフな試合になってしまった。いやー、もう最初から最後まではらはらどきどき。日本代表ならばともかく、アントラーズの試合でこんな気分を味わうのなんてのは、あまり記憶にない。さすが国際大会の公式戦。ACL、思いのほか、おもしろいじゃないか。アジアのレベルであっても、やはり外国のチームとの対戦って大切だなあと、改めて思った。
この日の鹿島は野沢が足を痛めたとかで不在で、代わりにダニーロが先発だった(あとはいつもの顔ぶれ)。本山が出場停止だった前節のリーグ戦にせよ、この人が控えにいるというのは、それなりに心強い。とくにこの日のようにラフプレーの多いチームが相手だと──なんで中国のサッカーはいつまでもあんなに野蛮なんだろう?──、彼のようにガタイがよく、キープ力のある選手が味方にいるのは、とても頼もしかった。まあ、動きの鈍いダニーロのことだから、ディフェンス面で若干不安を覚えたものの、思いのほかきちんと守備もしていたし、なんたってこの試合の決勝点は彼のゴールなんだから、今日のところは文句なし。よくやってくれました。ダニーロさん、あなたがいてくれてよかった。
しかしこの試合、なんとか勝ちはしたものの、本当にチームとしての出来はいまいちだった。見事な連係をみせる場面もいくらかはあったけれど、どちらかというと得意のパス回しは少なめで、ロング・ボールを放り込むシーンの方が多かった印象がある。選手たちの出足も鈍く、ゴール前に詰められてハラハラするシーンも多々あった。前半で相手に退場者が出て数的有利になったにもかかわらず、1点しか取れずに終わってしまったし、せっかく勝ち越したあとで、岩政がPKを与えるなんてあぶないシーンもあったし……(曽ヶ端、よく止めた。えらい)。ホームでこれくらいの出来だと、2週間後のアウェイでの試合がちょっとばかし不安になる。
この大会、グループリーグの勝ち抜けは上位1チームだけで、複数チームが勝ち点で並んだ場合は、該当チームどうしの直接対決の結果によって順位が決まるんだそうだ。ここまでの成績を見るかぎり、このグループは鹿島と北京の2チームが実力的に突出していて、あとの2チーム──ベトナムとタイのクラブ──との対戦では、どちらも勝ち点を取りこぼすことはなさそうだから、つまりこのままでいけば、この両チームの直接対決2試合の合計スコアで勝ち抜けが決定する可能性が非常に高い。
そう考えると、やはり一人少なくなった相手からホームで1点しか奪えなかったのは痛かった。2週間後のアウェイの一戦で余裕を持って戦うためにも、願わくばここでもう1点でも上乗せしておきたかった。まあ、ここまで得失点差で北京を大きく引き離しているのを考えれば、次は1点差以内ならば負けても大丈夫なわけだけれど、なんだかこの試合では、ここまでの好調さに若干かげりが出始めているような気がしたので、ちょっとばかり不安になってしまう。
そういえば後半途中で、内田篤人が敵との接触プレーで腰を痛めて途中交替してしまった。歩くのもつらそうだったので心配していたら、やはり第三腰椎横突起骨折とやらで、全治2~3週間だとのこと。ここからレッズとガンバという強敵の連戦をはさんで、ふたたび北京とのアウェイでの大一番を迎えるってときに、ベスト・メンバーで戦えないというのは痛い……。ここはなんとかがんばって乗り切ってもらいたい。
(Apr 09, 2008)
浦和レッズ2-0鹿島アントラーズ
J1・第6節/2008年4月13日(日)/埼玉スタジアム2002
ときおり霧雨の舞い散るあいにくの天候のなか、レッズ vs アントラーズ戦を観に行ってきた。埼玉スタジアムへ足を運ぶのはこれが初めてで、スタジアム観戦も今季初。でもって、アントラーズに黒星がついたのも今季初という、初物ずくし……。うーん、残念。
この日のスタメンは、GK曽ヶ端、DF伊野波、岩政、大岩、新井場、MF青木、小笠原、本山、ダニーロ、FWマルキーニョス、田代の11人。北京戦で怪我をした内田篤人は当然欠場で、野沢も不在。レッズのような強敵が相手だけに、やはりこのふたりの不在が痛かった気がする。代役のダニーロと伊野波の才能には疑問はないし、この日も素晴らしい連係が何度も見られはしたけれど、それでも長いこと一緒にやってきている分、野沢たちがいる方がコンビネーションがより熟成している。せっかくスタジアムに足を運んだんだから、できることならばベスト・フォームのアントラーズが観たかった。
それにしても五輪代表で伊野波をサイドバックとして起用する反町さんにさんざんケチをつけていたというのに、まさかアントラーズでも伊野波のサイドバックを見ることになるなんて思ってもみなかった。決して出来が悪かったとは思わないものの、それでもやはり縦へと抜けてクロスを上げるというシーンはほとんど見られなかったので、その点は不満。まあ、プロパーなサイドバックではないんだから、仕方ないのかもしれないけれど。
対するレッズはGK都築、DF堤、堀之内、阿部、MF山田、啓太、細貝、平川、闘莉王、FW高原とエジミウソンというスタメン。このところボランチで起用されているという噂の闘莉王が、この日はなんとトップ下でプレーしていた。なんだそりゃって感じだ。やはり彼の持ち味は、思わぬときに後方から飛び出してきてこそでしょう。結局、彼のアシストから先制点を奪われているわけだから、結果からすれば成功なのかもしれないけれど、僕にはそれほど効果的な起用法とは思えなかった。得点の場面だって、オフサイドっぽかったし……ほんと、あれってオフサイドじゃありませんでしたか、岡田主審?
なんにしろレッズの攻撃は、高原とエジミウソンのツートップと闘莉王の三人だけで攻めている感じで、しかも個々の連係がとれているわけでもない上に、あとのサポートがなく、あまり恐さは感じられなかった。サッカーの内容に関してならば、アントラーズのほうが上だったと僕は思う。イージーなミスも多かった気はするけれど、少なくても水曜日の北京国安戦よりはいいサッカーをしていた。でも勝てない……得点が奪えない。なにが悪いんだか、あと一歩ゴールに届かない。やはりスタメンの顔ぶれが変わったことで、微妙に歯車が噛みあわなくなっているのかなという気がした。
レッズは高原を前半のみで引っ込め、後半あたまから永井を投入してきた。これが大正解。後半開始からわずか5分せずに先制ゴールを決めたのは永井だったし、ロスタイムにアントラーズのミスから、駄目押しの追加点を無人のゴールに放り込んだのも彼だった。
レッズ生え抜きの選手だけあって、スタジアムに足を運ぶと、永井のレプリカ・ユニフォームを着ている人がけっこう目に入る。僕の前に座った少年もそうだった。そんな永井をサブにおいやって、スタメンで出場している高原だ。今日みたいな出来がいつまでも続いていれば、さぞや逆風も強くなるだろう。そろそろ結果を出さないとまずいんじゃないかと、いらぬ心配をしてしまった。負けておいて相手FWの心配をしている場合じゃないんだけれど。
まあ、永井の2ゴールで負けはしたものの、サッカーの内容自体はあきらかにこちらの方が上だった。レッズはいまのようなサッカーをしているかぎり、それほど恐くない。ただし、現在のレッズはポンテや達也を欠いたコマ落ち状態なわけで、それでもこうやって悪いながらも結果を出しているというのは、ちょっとまずいかもしれない。去年のアントラーズがそうだったように、悪いときにどれだけ結果を残せるかで勝負は決まる。そういう意味では、なまじ調子がいまいちなくせに結果が出始めている今のレッズには注意が必要かもしれない。逆に昔から後半戦の追い上げを得意とするアントラーズが──去年にかぎらず、優勝した年はたいていセカンド・ステージを制していた──序盤から絶好調である点にも、そこはかとない不安をおぼえてしまうのだった。
なにはともあれ、開幕からの連勝が5で止まり、アントラーズは首位から陥落した。で、驚いたことに、代わりに首位に立ったのは、開幕戦で引き分けて以降、ここまで全勝の、ピクシー率いる名古屋グランパス。開幕戦を見て、今年は調子がよさそうだとは思ったけれど、これほどまでとは思わなかった。そういえばその試合で僕が降格候補だと思った京都も、思わぬ好調さで現在5位につけている。まだまだサッカーを見る目がなってねえなあと思わされる、今年のJ1の序盤戦でした。あぁ。
(Apr 13, 2008)
鹿島アントラーズ0-0ガンバ大阪
J1・第7節/2008年4月19日(土)/カシマスタジアム/BS1
ここ2試合、足の甲の痛みだとかで登録をはずれていた野沢がベンチ入り。よし、いいぞと思ったらば、今度は新井場がどこぞを負傷して欠場ときた。内田篤人も引きつづき欠場中だから、アントラーズはこの試合、レギュラーのサイドバックを両方とも欠いて臨むことになってしまった。ふたりの代役を務めるのは、右が前節同様、伊野波で左が石神──それでもまあ、両者ともなかなかいいプレーを見せてくれていたとは思う。
なにはともあれ、そういうわけで鹿島のスタメンは曽ヶ端、伊野波、岩政、大岩、石神、青木、小笠原、本山、ダニーロ、田代、マルキーニョスの11人だった。
対するガンバは藤ヶ谷、橋本、中澤聡太、山口、山口、安田、明神、遠藤、二川、ルーカス、バレー、山崎というスタメン。サイドバックが故障中というのは、ガンバも同じだったようで、あちらも加地がいない右サイドを橋本が埋めていた。水本や寺田といった売出し中の若手がベンチだったりするのには、戦力の充実ぶりを感じる一方で、強いチームならではの用兵のむずかしさも感じる。ジェフでは不動のレギュラーだった水本が出られないってのは、なかなかシビアだ。伊野波もCBとしては出番が回ってこない状況だし、五輪代表の最終ラインを任されている3人のうち、ふたりまでがレギュラーを確保できないという状況は、この夏の五輪本番に向けて、あまりあかるい話題ではないなと思う。
試合のほうは基本的にはアントラーズ優勢ながら、部分的にはガンバが攻勢をかける時間帯もあって、スコアレス・ドローという結果もまあ納得という内容だった。この日は本山の出来がいまいちだったし──ここぞというところでのパスミスが目立ち、ゴール前での積極性にも欠けた──、レギュラー3人を欠いているわけで、相手の力を考えれば、勝ち点1ならば仕方ないかなと思う。ここまでの成績はいまひつながら、さすがにガンバはあなどれなかった。
でもまあ、ここへきて3試合連続スタメンのデニーロが、随分といいプレーを見せてくれていたし、両サイドのふたりもそこそこ存在感があったし、内容は悪くなかったと思う。
野沢も途中出場ながらピッチに立った。ただ、病み上がりということもあって、それほど目立っていなかった。ダニーロがこの試合くらい出来がよいと、野沢が戻ったからといって、おいそれと両者を入れ替えて、ダニーロをベンチに戻すわけにはいかないだろう。オリヴェイラさんが今後、中盤をどういう形にしてゆくのか、注目したいところだ。
さらにもうひとつ注目すべきが、中田浩二の復帰。7月には戻ってくることが決まったようだ。現在、小笠原と青木のダブル・ボランチが完璧な仕事を見せているだけに、ここに浩二が戻ってきてどうなるんだか、さっぱりわからない。だいたい、浩二と伊野波じゃ、かなりタイプがかぶると思うんだけれど、その伊野波を本来のポジションでは使えず、中後ともどもベンチを温めさせている状態で、浩二が復帰するってのは……。いったい7月以降、どういう風なメンバーで戦ってゆくつもりなんだろう。オリヴェイラさんの本当の手腕の見せ所は、ここからかもしれない。
なんにしろ、次にアントラーズの試合の無料放送があるのは、7月のなかばになるようなので、開幕から続いたJリーグ漬けの生活も、どうやらこの試合を最後にいったん中休みということになりそうだ。あ、いやその前に北京とのアウェイの一戦が控えている。いい形でさっさとグループリーグ勝ち抜けを決めてしまって欲しい。
そうそう、ACLといえば、アントラーズとともに参戦しているガンバだけれど、この試合ではGKが大変なことに。藤ヶ谷が接触プレーで肩を脱臼して途中交替。代わりに出てきた
(Apr 20, 2008)
(※追記)次の試合、松代は無事出場して、ガンバは完封勝利を飾った。一方で負けたのは鹿島のほう。人の心配をしている場合じゃなかった。
北京国安1-0鹿島アントラーズ
AFCチャンピオンズリーグ・グループF/2008年4月23日(水)/北京/BS朝日(録画)
ここのところ怪我人続出で、ただでさえ頭の痛いところなのに、この期に及んでマルキーニョスまで怪我で、この遠征には不参加ときた。ACLでもっとも難しいこの試合に、エース不在でのぞまなくちゃいけないってのは、あまりに風向きが悪すぎる。なんたって相手は、前の試合では退場者が出て、ひとり少なかったにもかかわらず、1点しか奪えなかった北京だ。しかも、こちとらリーグ戦では2試合連続無得点中。これではあまりいい内容の試合にはなりそうにないなと思っていたら、不安的中。結局、この試合も無得点に終わり、引き分けにさえ持ち込めずに、黒星を喫することになってしまった。
この試合、エース不在の穴を埋めるべく、オリヴェイラ監督が選択したのは、興梠や佐々木ら、若手の抜擢ではなく、フォーメーションの変更だった。好調のダニーロを残したまま、野沢をスタメンに復帰させて中盤を厚くし、田代のワントップで、4-5-1──オリヴェイラさんの言うところでは4-2-3-1──の形をとった。左サイドには新井場が怪我をおして強行出場(右サイドは引き続き伊野波)。守備意識の高いレギュラー陣で中盤からしっかり守って、最低でも引き分けで終わろうという作戦だったのだろう。この布陣はいちおう理解できる。
でも結果から見れば、これが失敗だった。新井場は再び足の痛みを訴えて、前半だけで退いてしまい、みすみす交替カードを一枚無駄に使うことになってしまった。野沢もまだフル出場するだけのコンディションではないということで、後半早々と引っ込んでしまったし、おまけに本山まで足を痛めて途中交替を余儀なくされ、結局この日はまったく積極的な交替のカードを切ることができずに終わってしまった。こんなことになるならば、元気な興梠や石神を最初から起用しておいたほうがよかったんじゃないかと思えど、あとの祭り。
それにしても、この日の鹿島は出来が悪かった。得意の中盤からのプレスが上手く働かず、後手後手に回って、なかなか効果的な攻めの形が作れない。前半の惜しいチャンスは野沢のループなどの個人技頼りで、たまに田代がディフェンスラインの裏へ抜け出すと、ほんとかよという不条理なオフサイドをとられる始末。すごくアウェイな感じだった。
失点の場面は、岩政と大岩がオフサイドトラップをかけにいったにもかかわらず、伊野波が残ってしまって、オフサイドを取りそこなったもの(決めたのは、以前は広島にいたという長身のFWチアゴ)。岩政は伊野波をかばって、レギュラーである自分がラインをしっかり統率できなかったせいだと言っていたようだけれど、伊野波は五輪代表では3バックの一角を任されているわけだから、ああいう場面でみずから状況判断できないとしたら、それは困りものだ。パスがゆるくて、味方に届かず奪われてしまうなんて場面もいくつかあったし、この試合での伊野波のプレーには、あまり感心しなかった。
1点を追いかける後半、両チームとも疲れが見え始めて、中盤を省略したロングボールが目立つようになってからは、得点の雰囲気が──どちらのチームにとっても──濃厚になった。ところが困ったもので、そこからがまた、ストレスのたまる展開だった。
なんたって、田代は味方がフリーなのに、パスを出さずに、ボールをこねくり回したあげく、無理なシュートを打って、チャンスを逃したりする。興梠はペナルティエリアまでボールを持ち込んでおきながら、シュートを打てずに終わったりする。増田は途中出場のくせに、小笠原より運動量が少ない。敗戦の原因を作った伊野波もふくめ、アントラーズの未来を担う若手がみんなこんな調子では、たまったもんじゃない。最後のほうは午前0時過ぎだというのに──この日の試合は午後11時からの録画放送だった──、ひとりでぶうぶう、文句をたれてばかりいた。アントラーズのゲームを観て、こんなに不満をおぼえたのもひさしぶりだ。
唯一の救いは、1失点で終わったこと。試合自体は3点くらい取られていてもおかしくない内容だったので、最少失点で終わって、対戦成績を五分に保てたのは、なによりだった。これで残りの2試合をきちんと勝ちきれば──これまでの対戦成績を見れば、むずかしくはないはずだ──、最後は得失点差の勝負になる。得失点差では、こちらが北京を10も上回っている。つまり北京はこのあとの2試合の合計スコアで、12-0以上の成績を残さないとならないことになる。日本代表が大学生と試合をしたって、そんなスコアは残せない。よほどのことがないかぎり、逆転されることはないだろう。
いずれにせよ勝ち点で並ばれてしまった以上、残り2試合での取りこぼしは許されない。確実に勝利をものにしないと、決勝トーナメント進出はむずかしくなってしまう。主力を休ませて、省エネで乗り切るというわけにはいかないだろう。過密日程を考えると、リーグ戦にも影響する、非常に痛い黒星になってしまった。
それにしても、この前まであんなに強かったアントラーズが、わずかのあいだでここまで調子を落としてしまうんだから、サッカーというのは本当に微妙なものだ。
(Apr 24, 2008)