2008年3月のサッカー

Index

  1. 03/01 ▲ 鹿島2-2広島(PK3-4) (ゼロックス杯)
  2. 03/08   名古屋1-1京都 (J1・第1節)
  3. 03/16 ○ 東京V0-2鹿島 (J1・第2節)
  4. 03/26 ● バーレーン1-0日本 (W杯・3次予選)
  5. 03/27 △ U-23日本1-1アンゴラ(A代表)
  6. 03/30 ○ 鹿島2-1横浜M (J1・第3節)

鹿島アントラーズ2-2サンフレッチェ広島(PK3-4)

ゼロックススーパーカップ/2008年3月1日(土)/国立競技場

 さあ、新シーズンの幕開けだっ──という高揚感に水を差されるような結果になってしまった今年のゼロックス杯。
 今シーズンのアントラーズは長年親しんできたワインレッド一色のユニフォームに別れを告げ、ワインレッドとダークブルーが太めのボーダーになった新しいユニフォームを採用した。Jリーグでは赤といえばまずはレッズというイメージが強くなってしまったので、チームとして差別化をはかりたいという意図があったんだと思う。初めてその決定を知ったときにはちょっぴりさびしく思ったものだけれど、いざ試合でその真新しいユニフォームをみてみると、意外と違和感がなかった。これはこれで悪くないかもしれない。
 というわけでユニフォームは新しくなったものの、チーム自体はほとんど去年と変化がない。というか、この日のスタメンをみるかぎり、まったく変わっていない。曽ヶ端、内田、岩政、大岩、新井場、青木、小笠原、本山、野沢、田代、マルキーニョスという顔ぶれは、天皇杯決勝のまんまだ。戦力的に変わったのは、ファボンが抜けて、伊野波が加わったことくらいだけれど、その伊野波はベンチだし、鈴木修人ほか新人たちはベンチ入りさえしていないしで、結果ユニフォームが変わったこと以外には、ほぼ去年のまま。これくらい変化がないシーズンというのも珍しい気がする。
 対する広島は、J2降格により駒野が磐田へ移籍したものの、そのほかは特に大きな戦力ダウンはないようだった。去就が注目された柏木も残留を決め、今年は背番号10を背負うことになったそうだけれど、なんでもキャンプ中に怪我をしたらしく、この試合は欠場していた。
 そんなわけで一年でJ1に帰ってくる確立はかなり高そうな広島だけれど、この試合も天皇杯同様、キーマン柏木を欠いている。駒野がいなくなって攻撃力も下がっているだろうし、これなら負けることはないだろう──そう思っていたところが、いやはや、やられた。2点のリードを追いつかれたあげくに、まさかのPK負け。しかもCBがふたりともレッドカードをもらってしまって、開幕戦は出場停止というおまけつき。なんとも幸先の悪いシーズンの始まりになってしまった。
 いや、岩政の退場はある意味、自業自得だから仕方ない。ありふれたファールによる一枚目のイエローカードはともかく、GKの持っているボールを横から奪おうとして与えられた二枚目のカードはあまりに余計だった。あれがイエローカードに値するファールかどうか、サッカーのルールに詳しくない僕には判断ができないけれど、少なくてもすでに一枚イエローをもらっている選手が──しかもチームの守備の要たる選手が──やるべきプレーじゃない。いくらタイトルがかかっているとはいえ、これは実質的にはシーズン開幕前のエキシビジョン・マッチだ。そこまでして点を取りにゆく必要はないだろう。この試合は開幕前の調整のための試合だくらいに割り切って、どっしりかまえていて欲しかった。
 とにかくそんな風に岩政が二枚目のイエローをもらって退場してしまったのが、開始からわずか12分。アントラーズはいきなり数的不利な状況での戦いを余儀なくされることになった。
 でもまあ、相手は今シーズンはJ2の広島だ。これくらいのアドバンテージがあったほうが、いい意味での緊張感があって、調整にはもってこいかも──そんなふうに思う余裕が初めのうちはあった。だから前半の残り時間が少なくなってから、広島のリ・ハンジェ(李漢宰)がこれまた二枚目のイエローカードをもらって退場してしまったのは、ある意味では余計だとさえ思った。
 なんにせよ、前半はおたがいに退場者ひとりずつを出して、スコアレスのまま終了。でもって数的にイーヴンな状態に戻ってのぞんだ後半は、圧倒的に鹿島のペースとなった。開始から10分もしないうちに、本山と野沢がそれぞれ見事なミドルを決めて、あっという間に2-0と広島を突き放す。やっぱり今年もこの中盤の構成力は強力だ、こりゃ今日は楽勝だと思った。この時点では勝利を疑いもしなかった。
 なんだか雲行きがあやしくなってきたのは、残り30分強という時間帯になって、広島が久保竜彦を投入してきてから。
 去年、故障のために満足にプレーができず、横浜FCから戦力外通告を受けた久保は、今年になって古巣のサンフレッチェに復帰した。復帰したというよりは、どこも獲得しようとしなかったために、拾ってもらったという感じだった。僕は久保が大好きで、歴代の日本代表のFWの中ではカズの次にすごいと思っているので、彼がそんな扱いを受けてしまうのはとても残念だった。どうせならばFWが駒不足気味の鹿島で獲って欲しかったさえ思う。
 なんにしろ、この試合の楽しみのひとつは、そんな久保の元気な姿を見ることだった。とはいっても、そんな久保の投入をきっかけに、試合の流れが広島へ傾いていってしまうなんて展開は、当然のごとく、想像も期待もしていなかった。
 けちのつき始めは、後半30分に久保に与えられたPK。こまったことにこの場面では、テレビ放送を観ていてもなにがPKなのか、さっぱりわからなかった。試合後のニュース番組で見ても、やはりなにがファールなんだかわからない。
 日本の悪いところは、こういうシーンできちんとリプレイを見せてくれないことだと思う。レフェリーだって人の子だ。ときにはまちがいもする。それは仕方ない。でもそれは、まちがえたことをまちがえたと指摘しちゃいけないということとは違う。まちがいかそうじゃないかを確認した上で、それを踏まえて先に進まないと進歩なんてない。なんだかはっきりしない判定があったのならば、何度でもリプレイをみせて欲しい。こちらの納得がゆくまでみせて欲しい。そうしないで、PKだとレフェリーが言ったんだから、素直に従えって言われたって納得できない。そんな姿勢は、それ自体がまちがっていると僕は思う。
 とにかくこのPKには非常に疑問が残った。岩政の退場は致し方ないと思ったけれど、このPKは素直に受け入れられなかった。そうしたら、そのPKのわずか5分後に、今度は佐藤寿人にヘディングを決められて同点に追いつかれてしまう。寿人、なにもこんな試合でそんなヘディングを決めてくれなくたってさ……。
 これで結局、試合はPK戦へ──。でもってそのPK戦で、アントラーズはダニーロ(途中出場)、本山のふたりが外してしまう(今年もダニーロは不安要素だ……)。この時点で万事休すかと思った。
 ところが、そのあとの広島のPKを、曽ヶ端が2本を続けて止めてみせる。うぉー、すごい曽ヶ端。さすが守護神と、鹿島サポーターならば誰だって盛りあがる。ところがこの日の主審は、その2本とも、相手が蹴る前に曽ヶ端が一歩前に出たからという理由で、蹴りなおしを命じるのだった。そんなのあり?
 PKといえば、この日は試合中の久保のPKも一度成功したあとで、蹴りなおさせられていた。ひとつの試合でPKを三本も取り消されたゴールキーパーなんて、そうそういないだろう。新人で経験が浅いというんならばともかく、曽ヶ端は日本代表の経験もある十年選手だ。いまさらそんなミスを連発するとは思えない。彼にしてみれば、どれも普通のPKだったのに、それがこの日のレフェリーたちの標準にはあわなかったということなのだと思う。
 とにかくこの日の主審の家本という人は、試合の空気がまるで読めていなかった。いまどき流行{はやり}の言葉でいうならばKYってやつ。最初の久保のPKのやりなおしだって、そんなところで笛を吹かなくたって、誰も文句は言わないだろう。岩政の退場にしても{しか}り。あやしいプレーではあったけれど、僕はあれを流せないセンスの人に、仮にもタイトルマッチの笛を吹いて欲しくない。
 決着がついたあと、あまりに憤懣やるかたない判定の連続に怒り心頭に達した鹿島サポーターがピッチに乱入して、スタジアムは一時、騒然たる雰囲気になった。いいことだとは思わないけれど、乱入したくなった気持ちはよくわかる。おまけに、PKの判定に抗議したアントラーズの選手三人にイエローカードが出されて、大岩までが退場扱いになってしまった(彼は主審とは口をきいていないと言っている)。つまり次週の開幕戦、アントラーズはレギュラーのCBをふたりとも欠いたままでのぞまなくてはいけないことになる。ああ、なんてこったい。踏んだり蹴ったりとはこのことだ。
 まあ、ポジティブに考えるならば、岩政と大岩が出られなくなったことで、伊野波の開幕戦でのスタメン・デビューが確定的になったのだから、ある意味では興味深い展開だともいえる。伊野波がこのチャンスを生かして、チーム内でみずからの存在感を示すことができるのか、大いに注目したいと思う。
 なにはともあれ、2008年のJ1開幕まであと一週間──。この負けで余計な厄がおちたと思いたい。
(Mar 03, 2008)

名古屋グランパス1-1京都サンガFC

J1・第1節/2008年3月8日(土)/豊田スタジアム/BS1

 せっかくの新シーズンの開幕戦だというのに、前年度王者アントラーズの試合はテレビ放送がなかった。残念もいいところだけれど、でもまあ、相手が札幌じゃ話題性も乏しいし、仕方ないかなと思う。そもそも僕自身、開幕戦でのカシマスタジアム初観戦を検討しつつも、「札幌じゃなあ」と思って見送った口なので、なおさら文句がいえない。ということで、地上波とBSで観られる三試合のうちから、この名古屋グランパスと京都サンガの試合を選んで、08年シーズンの開幕を祝うことになった。
 本来ならば優勝候補の筆頭、レッズとマリノスという好カードがあるんだから、そっちを観るべきかなとは思ったのだけれど──もう一試合、FC東京と神戸の試合は、大久保が故障でいないし、ちょっと地味な印象だったので、応援している義理の妹のダンナには悪いけれど、遠慮申しあげた──、ドラガン・ストイコビッチ監督の率いる名古屋が、柳沢の移籍先である京都と対戦するこのカードのほうが、僕としては、より興味があった。
 なんたってピクシーですよ、ピクシー。歴代の外国人Jリーガーの中でも、ジーコに次ぐ存在感を持っていた彼が、みずから望んで監督としてJリーグに帰ってきてくれた。いまだにそれだけJリーグに愛着を持ってくれているというのが、とても嬉しい。僕が初めてサッカーをスタジアムで観たのが、まだピクシーが現役だったころに国立で行われた、鹿島と名古屋との開幕戦だった。そう、彼は僕が生で観たことのある、数少ない外国人選手のうちのひとりなわけだ。監督としての手腕は未知数だけれど──現役のときのまんまの気性ならば、必ず今シーズン中に一度は退席処分をくらうにちがいない──、どんな采配をふるうのか、とても興味深い。
 この試合を観たかぎりでは、なかなか攻撃的でおもしろいサッカーを見せてくれそうだ。本田圭佑がオランダへ移籍してしまって、戦力ダウンが否めないのかなと思っていたけれど、MFの小川佳純や左サイドバックの竹内彬など、大きな背番号をつけた二十代前半の選手たちが躍動感のあるプレーを見せていて、意外と好印象だった。そのほか玉田とヨンセンのツートップに新加入のマギヌンが絡む攻撃力もあなどれない。中村直志がボランチに下がり、最終ラインにはピクシーがセルビアから連れてきたバヤリッツァがいる(この人は闘莉王なみに攻めあがっていたのが印象的だった)。さらには、この日は途中出場だったけれど、中盤には藤田が控えていて、ゴールを守るのはベテラン楢崎とくる。優勝を狙えるとまでは思わないものの、戦力はけっこう充実している。
 対する京都はJ2からの昇格組で、この日の内容を見る限り、再降格の可能性がかなり高そうな印象。新加入に佐藤勇人やシジクレイ、増嶋など、けっこうなじみのある選手がいたりはするものの、とりあえず守れるだけ守って、あとはFWパウリーニョの決定力頼りといった感じで、観ていてあまりおもしろくなかった。
 出場機会を求めて新天地へ旅立った柳沢だけれど、優れたパサーがそろっていた鹿島とはちがい、京都ではそうそういいパスも出てきそうにない。後半ロスタイムにフリーの絶好機でシュートをふかすなんて場面もあったし、移籍しても決定力のなさはあいかわらずだ。ああいうプレーをしていると、おそらく今期は苦い思いをすることになるんじゃないだろうか──なんてふうに、いらぬ心配をしたくなった。
 ということで、試合は一方的な名古屋ペース。両チームの実力には、かなりの開きがある気がした。
 ただし、それでもこの試合で先制したのは京都だった。パウリーニョがバヤリッツァに倒されてPKを獲得したもの。でもこれは、ゼロックス杯を思い出してしまうような、なんでだよってPKだった。名古屋アンラッキー。
 それでも、試合を支配していたのは名古屋だったから、同点に追いつくのは時間の問題に思えた。1-0のまま前半が終了したのが不思議なくらいの出来だった。
 京都の監督、加藤キュウさん──いやはや、おひさしぶりです──は、後半の始めから3トップの一角を削って、DFを入れてきた。あわよくばこのまま守ろうという姿勢がありあり。でもそういうことをするときに限って、リードは守れないものだ。名古屋の同点ゴールが決まったのは、後半早々だった。左サイドからの竹内のクロスを、ヨンセンが頭でゴールへ流し込んだのが、後半開始からわずか3分のこと(ヨンセンの高さは今年も脅威だ)。これでもう試合は名古屋のものだろうと思った。
 でもね、なかなかそうは問屋が卸さなかった。同点にされるや、再びDFを削ってFWを増やすキュウさんの猫の目采配が功を奏したのかどうかはわからないものの、後半は結局それ以上スコアが動かずに、ドローのまま試合終了。ストイコビッチ監督の初勝利はおあずけとなった。ピクシーはそれなりの手ごたえをつかんだみたいだし、京都も勝ち点1は拾ったので、双方にとってまあまあの開幕だったみたいだ。
 いや、それにしても今年のJ1は開幕早々、荒れ模様。レッズがマリノスに破れ、ガンバ、フロンターレが引き分けと、優勝候補がそろいもそろって苦戦を強いられている。今年は優勝を狙うと豪語しているらしい清水も、いきなり大分に煮え湯を飲まされた。
 そんな中、われらがアントラーズは新井場の2ゴールなどで4-0とコンサドーレを一蹴する好発進ぶり。まだ始まったばかりとはいえ、いきなりリーグ首位ですよ、首位。あまり早いうちから目立ってしまうと、よそのマークがきつくなりそうで、やばいかも。
(Mar 10, 2008)

東京ヴェルディ0-2鹿島アントラーズ

J1・第2節/2008年3月16日(日)/味の素スタジアム/日本テレビ(録画)

 2年がかりでJ1に復帰してきたヴェルディとのひさしぶりの対戦。ヴェルディがJ1に帰ってきてくれたおかげで、こうやって深夜の録画放送とはいえ、アントラーズの試合が見られるのだから、ちょっとは感謝しておかないといけない。
 それにしてもヴェルディのメンバーには、ちょっとばかり驚かされた。土肥、服部、福西らの元日本代表や、那須、土屋、廣山、飯尾一慶など、ほかのチームで見たことのある顔ばかりが並んでいる。かつて、カズやラモスや柱谷──今年の監督はこの人──がいたころは、あれほどまとまっていたチームが、いまやこんなふうに外様の選手ばかりで構成されているのをみると、なかなか複雑な気分になる。勝手なお世話ながら、サポーターはもう少しチームで育ってきた選手がいないと、応援していてさびしいんじゃないだろうか。その点、柳沢のあとを田代が継ぎ、秋田のあとを岩政が継いでいる鹿島は、やっぱりチームとしてきちんとしているなあと思う。あいかわらずのイレブンの姿を見つつ、なんだかしみじみと幸福を感じてしまった。
 ということで、この日のアントラーズのスタメンも去年から引き続きの定番11人。ただし、開幕戦はナビスコ杯で退場をくらった岩政と大岩がいなかったので、本来のアントラーズの形でリーグ戦を戦うのは、これが初めてだ。
 この日の試合は、ACLの初戦でタイにわたって9-1と大勝してきたあとなので、さすがに疲れがあるのか、序盤は動きが重い感じがした。でも、去年の終盤からのアントラーズは、悪いときにも悪いなりに我慢ができるというか、悪い時間をじっと耐えてしのいで、エンジンがかかってくるのを待ってから、ぐいっと流れを引き寄せることができるというか、とにかくそんな感じのしぶとさがある。簡単にいっちゃえば勝負強いってことなのだろうけれど、こういうサッカーができているからこそ、あの奇跡の逆転優勝につながったわけだ。いまの鹿島は敵からするとそうとう厄介な対戦相手にちがいない。
 ということで、この試合では昇格組のヴェルディを相手に60分以上スコアレスが続いたものの、それでも終わってみれば2-0と、スコアの上では快勝。他の優勝候補がスタートダッシュに失敗してもたつく中──浦和のオジェック解任にはびっくりだ──、きちんと勝ち点3を積みあげてみせた。うーん、去年とまるで反対だ。あまり順調すぎると、あとで悪いことがあるんじゃないかと疑いたくなる、このネガティヴな性格をなんとかしたい。
 得点は2本ともマルキーニョス。どちらもカウンターからの綺麗な得点だった。タイではハットトリックを決めたそうだし、今年は序盤から絶好調だ。去年、移籍してきたときには、三十を過ぎていることだし、あまり期待はできないんじゃないかと思ったものだったけれど、いやはや失礼しましたと誤りたくなるほど、申し分のない活躍ぶりを見せてくれている。
 調べてみたら、マルキーニョスは城彰二と同学年だった(早生まれで年は下)。城とか前園とかヒデとか、アトランタ五輪世代の選手が次々と引退してしまったので、攻撃的な選手は三十過ぎたらもう駄目なような気がしていたけれど、なんだよ、そんなことないじゃん。ウェズレイなんてそろそろ36歳だというのに、今年は大分で開幕から2試合連続ゴールを決めている。この週末には四十を過ぎたゴン中山だって、こけながらも15年連続ゴールを決めてみせてくれた。
 ヴェルディの17歳の新人、河野広貴はそりゃすごいと思う──先週のフロンターレ戦で、中村憲剛をフェイントで振り切ったシーンにはびっくりした。それでも僕はニュースでみたゴン中山のカッコわるいゴールのほうに、より感動した。やっぱり人間、年をとってからどれだけ勝負できるかが大事だと思う今日このごろだった。
(Mar 17, 2008)

バーレーン1-0日本

ワールドカップ・アジア3次予選/2008年3月26日(水)/マナマ(バーレーン)/テレビ朝日

 まったく、この黒星は自業自得だと思う。
 今回の3次予選でこのアウェイのバーレーン戦がもっともむずかしい試合になるのはあきらかだったから、できるかぎり手堅く、守備重視でいきたかった岡田さんの気持ちはわからないでもない。でもだからっていきなり、いままでに一度も試してこなかった3バックはないでしょうよ。もしもそのつもりがあるんならば、ひと月前の東アジア選手権でちゃんと試しておいてくれないと。
 この大事な試合に急造の3バックで臨んだってのは、わずか一ヶ月前のあの大会の時点では、この試合のことが頭になかったとしか思えない。岡田さん、1年以上も現場を離れていたせいで実戦感覚がなくなっているんじゃないだろうか。もう本当に嫌になってしまう。
 この試合のスタメンはGKが川口、3バックが中澤、阿部、今野、右サイドは駒野で、左が安田、啓太と憲剛のダブルボランチにトップ下が山瀬、そして大久保と巻のツートップという布陣だった。
 3バックを選択してしまった以上、内田篤人がスタメンを外れたのは残念ながら仕方ないと思う。けれど、なんと遠藤ヤットまでがベンチスタートだ。これにはびっくりした。
 だって、これまでの6試合、遠藤はどう見たってチームの中心だった。開幕以来ガンバが不調で、彼自身の出来もいまいちなのかもしれないけれど、それにしたってこれまでの貢献度とこの試合の大事さを考えれば、遠藤を外すなんて選択はないんじゃないだろうか。
 実際、前半の日本代表はFWと中盤のあいだがあいてしまっていて、まるでボールが収まらなかった。中村憲剛もパスの出しどころがない感じで、もどかしそうだった。パス回しにわずかでもリズムが出てきたのは、後半途中になって遠藤がピッチに立ってからだ。なぜ、スタメンから外したんだと、文句のひとつも言いたくなろうってものだ。
 そもそも守備的な試合だからといって、遠藤を外して、代わりに安田を使う理由がわからない。現時点でのチームのキーマンともいうべきヤット(もともとはボランチだから守備力も計算できる)よりも、経験値の低いDFの安田を中盤に入れたほうが守備力が高まると思ったのだとしたら、それはあまりにお粗末だ。
 しかもそれだけに飽き足らず、岡田さんは途中交替で遠藤を入れるにあたって、山瀬をベンチに下げた。おいおい、ここまで岡田ジャパンの6試合で4得点を稼いでいる選手をなぜ変える?
 序盤から激しいプレスをかけ続けて日本を苦しめていたバーレーンは、後半の早い時間帯から足がつる選手が出たりして、スタミナ切れがあきらかだった。それに対して、試合後に「今日は走ってなかった」という反省の声があちこちから上がったというのでもわかるように、日本の選手にはまだまだ余裕があった。終盤、前がかりになって攻めてしまえば、あちらは日本の攻撃に耐え切ることはできないだろうと僕は思った。
 なのに、岡田さんは遠藤を投入するに当たって、DFを削って4バックに戻す決断をせずに、チームの得点王である山瀬を下げた。指揮官自らが早々と、この試合は引き分けで十分だと思っていたとしか思えない。そんな監督の消極的な姿勢が、ヘロヘロな相手の状態とあいまって、チーム全体に油断を招いたんじゃないかと思う。
 日本の失点は、相手の選手交替の直後だった。バーレーンのDFがリスタートから日本の右サイド深くに蹴りこんできたボールに、別の選手が懸命に追いついて、ゴールライン近くからクロスをあげる。これを川口が(中澤と交錯しそうになりつつ)横っ飛びで止めにいって止めそこない、そのこぼれ球をバーレーンの9番にヘディングで決められてしまった。ただ当てただけというヘディングは、あわててボールへと向かった川口と中澤の頭上を越え、ふわりと日本のゴールマウスの中へ……。
 敵陣でのリスタートからわずか10秒程度しかかかっていなかったんじゃないかと思う。ピンチだと思う間もないほど、あっけない失点シーンだった。テレビ解説では、クロスをあげた選手のトラップが完璧にハンドだといって、松木安太郎が騒いでいた。
 このシーン、アシストを決めた選手のマークに走ったにもかかわらず、止めきれずにクロスを上げさせたのは阿部だった。ゴールを決めた選手についていたにもかかわらず、フリーでヘディングを打たせてしまったのは今野だった。中澤は川口と一緒に、ボールの動きに振り回されていた。守備重視で選択した急造3バックが破綻して、わずか二人の相手選手によるゴールを許してしまったんだから、なんともやりきれない。
 そもそも、阿部と今野という、本来はボランチの選手を起用した3バックというのが納得いかない。全員ボランチみたいな選手起用を好んだオシムさんのときは仕方ないと思っていたけれど、別に岡田さんが真似をしなくたっていいじゃないか。
 日本は失点のすこし前に、安田に代えて山岸を投入していた。失点の5分後には、阿部を下げて4バックに戻し、ひさしぶりに代表に復帰した玉田を入れて、最後の反撃に出た。ジーコが監督のときには、こういう流れから劇的な同点弾が生まれたものだったけれど、しかしながら、この日のゴールはあまりに遠かった。結局、試合はそのままゲームセット。日本はグループ首位をバーレーンに譲り渡し、2位に後退した。
 今回の試合に関しては、海外組で唯一招集しようとした稲本が直前に怪我をして辞退したとか、高原が現地で足を痛めたとかいう不運もあった。でも、この二人に関しては、実際に戦力としてプラスになったかわからない。高原はこのところずっと不調で計算できないし、稲本だって中盤が充実しているいまのチームにどういう形で貢献できるのか、未知数だ。俊輔の招集はあえて見送っているんだし、高原と稲本が使えなかったからといって、誤算というほどのダメージがあったとは思いにくい。
 とにかくこの試合に関しては、岡田さんが消極的に勝ち点1を取りにいって、取りこぼしたという印象しかない。バーレーンくらいの相手から勝ち点1を取るために、わざわざDFの枚数を増やしているようじゃ、世界とは到底、戦えないだろう。ああ、本当にため息しか出てこないような試合だった。
(Mar 27, 2008)

U-23日本1-1アンゴラ(A代表)

2008年3月27日(木)/国立競技場/日本テレビ

 前夜のA代表のバーレーン戦がろくでもない結果に終わってしまったので、翌日の夜に放送されたこの五輪代表の試合には、前夜のうっぷんを晴らすような、すかっとした内容を期待していたのだけれど……。
 いや、内容的にはそんなに悪くなかったと思う。相手はW杯出場経験のあるアフリカのチームで、しかもA代表だというし、とりあえず得点した上でのドローゲームならば上出来だと言いたいところではある。
 それなのにすっきりした気分になれないのは、このチームの攻撃面での基本形が、いつまでたってもちっとも見えてこないからだと思う。
 この日のスタメンは、GK西川、3バックが伊野波、青山直晃、森重(大分)、MF長友、青山敏弘、細貝、上田康太、梅崎、FW李忠成、豊田(山形)という顔ぶれだった。この期に及んで、森重とか豊田とかって、僕の知らない選手がいる。途中交替でも、香川(C大阪)、中山博貴(京都)、田中裕介(横浜M)って、それは誰って感じの選手が、次から次へと出てくる。
 まあ、本田圭佑と水野が海外へ移籍したり、水本、内田、安田をA代表にとられていたり、さらには梶山、柏木、家長、本田拓也など、これまでに主力としてプレーしていた選手の多くが故障で使えないという気の毒な状態ではあるけれど、それにしてもやはり、いまごろになっていまだに新しい選手を試しているというのは、僕にはどこかおかしいように思える。
 今回の試合では、平山が招集されなかったことで、オリンピックへ向けての熾烈{しれつ}なサバイバル競争だとかいって話題になっているけれど、あと4ヶ月ちょっとで本番のチームが、いまさらサバイバルもないだろう。Jリーグも始まって、全体練習にもそれほど時間がとれないわけだし、いまは一刻も早く選手を固定して、残り少ない時間で、きちんとコンビネーションを磨いてゆくべきだ。
 いまだに選手が固定できないでいるってのは、要するに反町さんが優柔不断で、誰を使うべきか、決めきれないでいるだけじゃないかと思えてしまう。いまさら新しい選手を呼ぶなんてのは、中途半端にオリンピックへの期待を持たせる分だけ、残酷な行いに思える。本大会には18人しか連れてゆけないというのに──しかもオーバーエイジ枠を使うかもしれないという話があるのに──、これ以上、失望することになる選手を増やしてどうするんだろう。かつては主力としてプレーしていたにもかかわらず、いまやまったく蚊帳の外という存在になってしまった増田誓志などの心境を想像したりすると、気の毒でならない。
 そもそも、前にも書いた気がするけれど、増田なんかは、J2に行けば、きっとスタメンのつとまる選手だろう。それがベンチを温めているのは、アントラーズという強豪に所属していて、チーム内のライバルがA代表レベルだからだ。それなのに、そういう選手をないがしろにして、J2でいい成績を残しているからといって、新しい選手を呼んでくる反町さんに──たとえこの試合でゴールを決めたのがJ2山形の豊田だったとしても──僕は同調できない。
 W杯と違って、オリンピックは年齢制限があるから、ほとんどの人が一度しか出られない大会だ。出たいと思っても、出られないで終わる選手はたくさんいる。だからこそ、選考にはA代表以上に慎重になっていいはずだと僕は思う。いや、そうであって欲しい思う。実力主義だとかいって、調子のよしあしで簡単に選手を入れ替えるようなビジネスライクなチーム作りがふさわしいとは思えないし、そんなチームは愛せない。
 まあ、そんなわけで反町さんのチーム運営方針が素直に肯定できない上に、馴染みのない選手がたくさんいるせいで、なかなか僕らの代表という気がしてこなくて、いまいち観ていても気分の盛りあがらない、いまのオリンピック代表だった。
 でもまあ、個々の選手に不満があるわけではないし、新しい選手たちも、いまさらわざわざ呼ばれるだけあって、上手いとは思う。この試合で特に印象的だったのは、明治大学に在学したままFC東京に入ったという長友。攻守にわたって、彼は非常によかった。日本代表の右サイドはこのところ激戦地だ。あと、プレー時間は短かったものの、ユース世代の19歳、香川のプレーには、そうとう楽しませてもらった。
(Mar 27, 2008)

鹿島アントラーズ2-1横浜F・マリノス

J1・第3節/2008年3月30日(日)/カシマスタジアム/BS1

 ともに開幕2連勝と順調なスタートを切った横浜F・マリノスとの対戦。
 今年のマリノスはかなり手ごわそうな印象がある。指揮をとるのは鹿島との二強時代に磐田を率いていた桑原さん。GKが榎本哲也で、3バックには中澤、栗原、田中裕介という代表レベルのベテランと若手が顔をそろえる(田中は数日前に五輪代表で見たばかり)。で、なんだか知らないけれど、松田がボランチにコンバートされて、中盤の底を支えている。右サイドは田中隼磨で、左サイドは、開幕戦でレッズに土をつける貴重な決勝ゴールを決めた2年目の小宮山。攻撃の核となるのはもちろん山瀬で、そこにロペス、ロニーの新外国人二人と、いつの間にかキャプテンマークを任されるほどの信頼を得ている大島が絡む。以上のイレブンに加えて、控えには坂田や清水、山瀬弟、乾貴士なんかがいるんだから、あなどれない。あまりに戦力が充実しているので、相手チームだというのに、思わず全員の名前を書き記してしまった。
 対するアントラーズのスタメンはいつもどおりの顔ぶれで、あきれるくらいに変化なし。まあ、去年からのリーグ戦では11連勝中なんだから、それも当然かもしれない。結局、この日も強敵マリノスをさらりと退けて、連勝記録を12に伸ばしてみせてくれたし、まったく文句のつけようがない。
 前半33分の先制ゴールはマルキーニョス。小笠原がドリブルで相手のマークを引きつけて、できたスペースにボールを置き去りにするような形でパスを渡すと、マルキ(チームメイトからはそう呼ばれているらしい)はこれに即座に反応して、豪快なシュートを放ってみせた。ボールはGK榎本に弾かれるものの、勢いで勝って、こぼれるようにゴールへと転がり込む。現在の好調さを象徴するような、見事な連係から生まれたファイン・ゴールだった。
 いまの鹿島は守備力抜群だから、この先制点でこの試合もいただきかと思ったのだけれど、そこはさすがマリノス、そう簡単には勝たせてくれない。後半、小宮山が思い切りよく打ったミドルが、雨で濡れたピッチでイレギュラー・バウンドしたらしく、曽ヶ端が彼らしからぬイージーさでニアを破られて、あっけなく同点に追いつかれてしまう。さらには山瀬のシュートがクロスバーをたたくなんて危ないシーンがあったり(もしかしたら同点ゴールよりそちらの方が先だったかもしれない)、マルキーニョスが栗原にたおされて得たPKを小笠原が外したり(すべって転んでクロスバー直撃)と、後半は鹿島にとっていやな展開が続いていた。
 そんな試合を決めてみせた決勝ゴールは、なんと途中出場のダニーロ。新井場のクロスを中澤が止めたこぼれ球がペナルティ・エリア内にいた彼の足元へと吸いつくように転がり込むと、これをGKのまた抜きシュートで、どーんと豪快に決めてみせた。体が大きいだけあって、この人のシュートは非常にパワフルだ。
 昨シーズンは通年でわずか1本に終わったダニーロのゴールが、リーグ戦3戦目にして出たってのは大きい。前のヴェルディ戦でも途中出場でマルキーニョスの2ゴールに絡んでみせたし、スピード感のないプレーぶりはあいかわらずだけれど、今年の彼にはもしかして期待してもいいのかもしれない。
 ということで、第3節を終えて、アントラーズは唯一の3連勝で堂々と首位キープ。のみならずマルキーニョスが4ゴールで現在得点王というおまけつき。いやはや、順調すぎて恐いくらいだ。いったいこの好調さがいつまで続くんだろう。
(Mar 31, 2008)