2007年6月のサッカー
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- 06/01 ○ 日本2-0モンテネグロ (キリンカップ)
- 06/05 △ 日本0-0コロンビア (キリンカップ)
- 06/06 ○ U-22日本3-1マレーシア (五輪二次予選)
- 06/20 ○ 柏0-1鹿島 (J1・第16節)
日本2-0モンテネグロ
キリンカップ/2007年6月1日(金)/静岡エコバスタジアム/日本テレビ
毎年恒例のキリンカップの初戦にして、今年2試合目のA代表の試合。
例年だとキリンカップまでにはもう1、2試合あるものだけれど、今年は7月にアジアカップがあって、リーグ戦が中断になることに配慮したのか、ここまでやたらと代表の試合が少ない。来週のコロンビア戦を含めて半年で3試合というのは、ファンとしてはさびしい限りだ。
でも、さびしいのは僕個人だけじゃなくて、この試合では観客の入りもさびしかった。スタジアムはガラガラ。なんでも2万8千人台という観客数は、2002年以降では最低らしい。その数字に限らず、サッカー人気が陰っているのは確かなようで、最近はテレビ・ニュースなんかを見ていても、短い番組だと、Jリーグの映像どころか、結果さえ報道されずに終わってしまう。野球、相撲、ゴルフときて、次はサッカーだろうと思って待っていると、それでスポーツコーナーはおしまい、みたいな。そりゃないぜと思う。
テレビCMでは年がら年中ロナウジーニョを見かけるし、4年に1度のワールドカップでは不必要なまでに盛りあがるのだから、サッカー自体はすでにある程度の市民権を得ているんだろう。なのに母国のプロ・リーグや代表に対する関心はいまひとつという状況は、あまり健全じゃない気がする。
まあ、なにはともあれ、個人的には待ちわびていた、ひさしぶりの代表Aマッチ。
スタメンGKはオシムさんが監督になってからは今回が初招集となる楢崎。DFは駒野、中澤、坪井、阿部の4バックということだけれど、阿部についてはまったく攻め上がっていなかったし、後半は相手のフォーメーションにあわせてセンターバックをつとめていた時間帯もあったので、実質的には、今回もやはり左寄りの変則3バックという印象だった。MFは中村憲剛、鈴木啓太、遠藤、山岸の4枚で、FWが高原、矢野の2トップという布陣。途中出場は佐藤寿人、水野、今野、巻、橋本、藤本の6人。橋本はこれが代表初キャップだった(でも出場はわずか1分)。
今回は海外から俊輔、高原、稲本、中田浩二の四人が招集されたのが話題の中心なのだけれど、あけてみればこの日の試合に出場したのは高原のみで、俊輔は足を痛めているとかでベンチにも入らなかった。あとの二人は出番なし。
試合は、こと前半に関しては理想的な内容だったと思う。このところの常で、守備に関してはほとんど破綻がなかったし、攻撃も少ないチャンスを見事にものにしていた。
1点目はショートコーナーからの遠藤のアシストを中澤がヘッドで決めたもの。モンテネグロの監督には自分たちのミスだと言われていたけれど、まあそうかもしれない。DFはファーサイドのボールをケアできていなかったし、GKが上手かったら止められていた気もする。それでも長身の相手DFを高さで上回った中澤にはやはり拍手を送りたい。ディフェンダーで代表10ゴール目はあっぱれだ。
2点目に関しては文句なしの素晴らしさだった。左サイドの中村憲剛が、右サイドのスペースへ上がってきた駒野へ大きなサイドチェンジのパスを通し、そこから駒野がスピードのあるクロスを放り込んで、そのボールに反応した高原が、鋭い動き出しで相手DFの前に飛び込み、頭であわせたもの。憲剛のパス、駒野のクロス、高原のヘディング、どれも最高だった。
なかでも高原。コンビを組んだ矢野も悪くなかったのだけれど、その矢野が試合後のインタビューで、「Jリーグとは上手さも強さもぜんぜん違った」と語っているように、彼はチャンスに絡みつつも、あと一歩のところでボールに追いつけなかったり、相手DFにブロックされたりしてばかりだった。それとくらべると、あの得点シーンでの高原の反応の良さは、さすがだった。だてにブンデスリーガで二桁得点をあげちゃいない。
でも、前半の内容をとおして見ると、そんな高原より、そのゴールのお膳立てをした二人のほうがよかったと僕は思う。中盤の底で的確にボールを捌き続けた中村憲剛、そして右サイドから多様なクロスを配給し続けていた駒野。いや、前半のこの二人は本当によかった。二人ともいまのところレギュラーが保証されたわけではない立場だけれど──憲剛は俊輔ら海外組、駒野は加地やアレックスが戻ってくれば、どうなるかわからない──、この日の前半のようなプレーがコンスタントにできるようになれば、日本代表にとって欠かせない戦力になるだろう。
ただ残念ながら、彼らを含めた日本代表がよかったのは、その前半の45分間だけだった。2点のリードに安心したのか、はたまた前半だけで疲れてしまったのか、後半はばったりと足が止まって、低調なサッカーに終始した。選手交代もほとんど効果がなかったように思う。そういう意味では、スタメンはともかく、選手交代に関しては、オシムさんの起用方法にはそれなりの不満がある。橋本と藤本なんて、わずか1分程度しかピッチに立っていない。なんのための交替なのか、よくわからなかった。
まあ、後半はよくなかったといっても、それはほとんどチャンスメイクができていなかったということで、ディフェンスの面では危なげない戦い方ができていた。そういう意味では、決して非難されるような内容の試合ではなかったかなとも思う。
やはり守備的MFを多用することによるディフェンス力の安定というのが、いまのチームの強みだ。高めの位置で相手のチャンスをつぶせるので、ジーコの時とは違い、ゴール前であたふたする場面が少ない。最終ラインも中澤の復帰で厚みが増したし、ディフェンス面ではかなり安心して見ていられる。これであとは後半になっても息切れせずにチャンスメイクできるスタミナと集中力をつければ、かなりいい線までいけそうな気がする。
モンテネグロはセルビアと分離してからこれがまだ2試合目だそうで、おまけに主力の一部が参加していなかったとのことで、残念ながら、あまり怖い相手じゃなかった。
(Jun 02, 2007)
日本0-0コロンビア
キリンカップ/2007年6月5日(火)/埼玉スタジアム2002/テレビ朝日
海外組の四人が全員スタメンで出場するというので注目されたこの試合。個人的に一番注目していたのは、稲本の代わりに誰をはずすかだった。
ここニ試合連続ゴール中の高原の起用は当然だし、ちょうど坪井が故障で離脱したばかりだから、スイスでDFとしてプレーしている中田浩二が4バックの一角に入るのも自然な流れだ。俊輔は、前の試合で山岸が入っていた位置にそのまま収まる。けれど稲本の起用方法はむずかしい。
なんたってボランチは代表一の激戦区だ。彼を使うとなると、モンテネグロ戦のスタメンだった三人、遠藤、中村憲剛、鈴木啓太のうちから、誰か一人がはずれることになる。しかし誰をはずすべきかと問われると、僕にはなんともいえない。
いま現在、中盤での存在感ではJリーグぴかいちの遠藤。中盤のボール捌きでは抜群のセンスを見せる中村憲剛。そしてオシム監督の信頼が厚く、ここまで唯一オシム・ジャパンの全試合に出場している鈴木啓太。いったい、このうちの誰をはずせというんだろう。僕が監督だったらば、誰ひとりはずせない。
この難問にオシムさんがどんな回答を出すのか、僕は興味津々でスタメンの発表を待っていた。そして発表されたスターティング・イレブンの顔ぶれを見てびっくり。だって、海外組の四人はもとより、注目の三人の名前がそろって並んでいる。これはどういうマジックだと思ったら、なんのことはない、オシムさんの選択は、高原のワントップだった。
いやー、さすが老練なオシム氏。才能ある中盤の選手がたくさんいるんだから、アジアカップ前の実験的な意味合いを含め、いっそ前を一枚削って、その分、中盤を増やしてしまえという、その潔い発想がとてもいい。願わくばジーコもこういう風であって欲しかった。
ということで、この日のスタメンは、GK川口、DF駒野、中澤、阿部、中田浩二、MFが中村憲剛、鈴木啓太、中村俊輔、稲本、遠藤、そしてFWが高原ひとりという形。フォーメーションは4-5-1または4-2-3-1で、坪井の抜けたセンターバックには阿部が入り、中田浩二は左サイドバックだった。ボランチは憲剛と啓太の二人で、驚いたことに稲本がトップ下だ。いずれにせよ、海外組が入ろうが、入るまいが、あいもかわらずボランチだらけのオシム・ジャパンだった。
この試合については、前のモンテネグロ戦とは反対に、前半がよくなかった。それも原因は、海外組のせいに思えた。俊輔はイージーなプレゼント・パスであわやというピンチを招くし、稲本は不慣れなポジションのせいか、運動量が少なく、どこにいるんだかわからないし、中田浩二は横パスばかりでチャレンジ精神を感じさせないし。新しく入った選手の出来がこの程度では、チームにリズムが出てこないのも当然だ。
弱い国が相手ならば、それでもなんとかなったのかもしれない。けれど、コロンビアはFIFAランキング26位という、それなりの強国だけあって、やはり手強かった。とにかく前半のあいだは、中盤での競りあいに負けっぱなしという印象。こんなにボールを持たせてもらえない日本代表を見たのは、ひさしぶりだった。
後半、このままではまずいということで、オシムはさっさと稲本と浩二に見切りをつけ、キックオフと当時に羽生と今野を投入する。これが当たった。運動量豊富な羽生の登場で、日本の中盤はようやく活気づいた。今野も浩二にはなかった積極的なディフェンスで、左サイドに安定感をもたらしていたと思う。
まあ、なか一日のコロンビアに疲れが出たという面もあったのかもしれないけれど、理由はどうあれ、後半はがぜん、日本優勢な展開となり、何度かは相手ゴールを脅かす場面を見せてくれた。特に高原が左サイドで相手ボールを奪い取り、羽生、俊輔、遠藤とつないで、最後に右サイドのスペースに上がってきた中村憲剛がシュートを打った場面。枠を捉えられなかったのは残念だったけれど、それでもそこまでの流れが、ほれぼれするほどの素晴らしさだった。
高原はこのところの好印象を裏切らない出来で、コロンビアの激しいファールにもめげず、気合いの入ったプレーを連発していた。序盤はおいおいというミスをしていた俊輔も、途中からは徐々にチームにフィットし始めたようで、最終的にはそれなりに存在感を見せた。この二人を含め、得点こそなかったものの、後半の日本代表の戦いぶりにはとても満足している。ちなみにそのほかの途中出場選手は、藤本、巻、播戸の三人だった。
いや、それにしても相手が強いと、サッカーはスコアレス・ドローでもおもしろい。コロンビアはパスワークがしぶとくて、あたりの激しい、ここ最近では最高の対戦相手だった。こんな相手から1点でもとれていれば、本当に最高の試合だったのに……。
まあ、それでも3年ぶりにキリンカップのタイトルを取ったのだから、贅沢を言っちゃいけない。結果オーライ。それに、なんたって今年はここまで3試合やって、まだ無失点なんだから。これくらいディフェンスが安定していれば、アジアカップではそうとう期待できるんじゃないかという気がする。ひと月後の大会が楽しみになってきた。
(Jun 05, 2007)
U-22日本3-1U-22マレーシア
オリンピック・アジア地区二次予選/2007年6月6日(水)/国立競技場/BS1
オリンピック二次予選の最終戦であるこの試合、反町監督は、すでに予選突破が決まっていたことと、累積警告への配慮で、これまでの主力を温存。新たな戦力の発掘をテーマにテストを行った。嬉しいことに、アントラーズからは増田と並んで、
でもって、さらにさびしいことに、二人ともスタメンには選ばれなかった。この日のスタメンは、GK山本(清水)、3バックが細貝(浦和)、一柳(東京V)、田中裕介(横浜M)、MFが長友佑都(明治大学)、小椋(水戸)、上田康太(磐田)、枝村(清水)、
いやはや、知っている選手がわずか4人しかいない。しかもJ2が3人に、大学生が2人も入っている。それでいてなお、アントラーズの二人に出番がないってのは、さびしいもいいところだ。それでなくても前日にA代表の好試合を観たばかりだし、ここまで知らない選手ばかりだと、そうそう盛りあがれるはずもない。ということで、残念ながら観ているこちらは集中力がいまひとつという試合になってしまった。
この試合では、噂の大学生ふたりが、なかなかすごかった。なんたって前半の2得点はこのふたりだ。
1点目は上田の(ワンバウンドの?)斜めのクロスに、明大の長友がDFと競り合いながら勢いよく走りこみ、頭であわせたもの。彼は駒野に似たタイプの選手で、右サイドからなかなかいいクロスをあげていた。後半の3点目のPKも彼が倒されてもらったものだった(決めたのは萬代)。
2点目は早大の鈴木の、実に見事なミドル。この選手も中盤でそれなりの存在感を示していた。
それにしてもこのふたりや法政大の本田拓也のような優れた選手が、プロにもならずに大学に通っているという状況はなんなんだろう。この世代はJリーグでスタメンを取れない選手が多いので──アントラーズの二人なんてまさしくそうだ──、それだったらば、レベルは低くても、大学リーグでコンスタントに実戦をこなしているほうが上達するということなんだろうか。それはそれで困ったものだという気がする。Jリーガー、特にJ1の選手たちには、もっとプロスポーツ選手としてのプライドを見せて欲しい。
ちなみにこの試合では、われらが興梠が後半23分から、増田がその10分ほどあとから出場機会をもらっていた(もうひとりの交替は杉山という、清水のボランチの選手)。でもまあ、二人とも出来はぼちぼちという感じだった。
興梠は出てきて最初の2、3分は、最終ラインの裏へ抜け出す鋭い動き出しで、おっと思わせたものの、その後はあまり目立てなくなり、終了間際にはGKと一対一になるチャンスを得たにもかかわらず、中途半端なループシュートを狙って失敗、せっかくのチャンスを逃したのが痛かった。
ということで、アントラーズ・サポーターとしては不完全燃焼気味だったけれど、五輪代表は見事、全勝でアジア地区二次予選を突破したので、まあよしとする。最終予選は8月22日から3ヶ月間にわたって、4チームのホーム&アウェイで行われるとのこと。
(Jun 06, 2007)
柏レイソル0-1鹿島アントラーズ
J1・第16節/2007年6月20日/日立柏サッカー場/BS1
ゴールデンウィークに味スタで生観戦して以来、7節ぶりとなるアントラーズ戦。
あれから一ヵ月半ちょっとのあいだに、状況は大きく変わった。あの頃はまだ黒星が先行していた鹿島だけれど、なんとあの試合以降は負け知らず。気がつけば、第16節終了時点で3位というところまで順位をあげてきている。開幕当時の低迷が嘘みたいだ。
復調の理由のひとつは、はっきりしていると思う。オリヴェイラ監督が野沢の復帰にあわせて、ダニーロのスタメン起用を見限ったことだ。
最初の10試合はずっとスタメンで出場していたダニーロだけれど、第11節以降はわずか1試合しかスタメンに名前を連ねていない。ちょうど第10節が終わったあとのナビスコ杯で、いつまでたっても調子の上がらない彼をはずして名古屋戦に臨み、4-1と快勝したのがターニング・ポイントになった。その布陣を次のリーグ戦でも試してみたところ、結果が出たということで、それ以降、オリヴェイラ監督はダニーロにベンチを温めさせている。その後もダニーロは途中出場ながら、毎試合出場機会をもらっているので、すっかり見限られてしまったというわけではないようだけれど、でもこの日の試合を観る限り、やはり出来はいまいちで、この先、彼がスタメンに戻ってくる可能性は低そうに見える。
オズワルド・オリヴェイラという監督さんは、すごくオーソドックスな采配をふるう人だという印象がある。かなり論理的というか、正統的というか。同じブラジル人としては、ダニーロを使いたいだろうに、一定期間様子を見て結果が出せないとなれば、ベンチに下げるのを厭わない。でもって、勝っている時にはメンバーをいじるなというセオリーどおりの采配で、いったん勝ち始めてからは、出場停止や故障をのぞけば、ほとんど選手を固定したままだ。開幕当時はスタメンで起用していたファボンが戻ってきても、岩政、大岩のコンビが十分に機能しているというので、現状はベンチに置いたまま、使わないで済ませている。ブラジル人をブラジル人だというだけで重用したりしない姿勢に好感が持てる。
では、セオリーにがちがちで、保守的な人かというと、そうでもなさそうだ。この日の采配を見ると、スコアレス・ドローで終わりそうな雰囲気が濃厚なラストの5分で、キャプテンマークをつけたサイドバックの新井場を下げ、佐々木竜太を投入して、1点を取りにいったりする。ドローじゃいけない、最後まで諦めずに戦って勝つんだという姿勢を示す、攻撃的でリスキーな選手交替だった。
この試合では相手に退場者がいて、こちらが数的に有利な状況だった。優勝を狙うチームならば、こういう試合を取りこぼしてはいけない。だから、最後にディフェンシブな選手を削り、攻撃的な采配をふるうのは、ある意味では正攻法なのかもしれない。なんにしろ、そうやって点を取りにゆこうとすることで、オリヴェイラ監督は、われわれは優勝を狙って戦っているんだという意思表示をしてみせた。そういうところにも僕は好印象を受けた。この人は、なかなかニュートラルな感覚を持った、いい監督なんじゃないかと思う。
ということで、また前ふりが長くなってしまったけれど、以下、一人少ない相手をなかなか崩せないまま、ロスタイムで劇的なゴールをあげて勝ったレイソル戦。
スタメンはGK曽ヶ端、DF内田、岩政、大岩、新井場、中盤は青木、増田、野沢、本山のダイアモンド型(それとも増田もボランチ?)、2トップがマルキーニョスと田代という布陣。
今シーズン、チームの中心といっていい活躍を見せていた中後が、前々節で肉離れを起こして全治3~4週間ということで、チームを離れている。これはピンチかと思ったら、代わりにいいタイミングで、故障中だったマルキーニョスと新井場が戻ってきた。そういう意味では、ここへきて運も向いてきている気がする。
相手のレイソルは、とても上手いと評判のフランサや、五輪代表の李忠成、菅沼実など、攻撃的な選手の噂ばかり聞くので、攻撃力が売りのチームかと思っていたら、なんと守備力もかなり高いらしく、ここまで失点14というのはリーグ最小だった。おかげさまで、李が出場停止、フランサが前半で退場と、攻撃的な面ではあきらかに戦力がダウンしていたにもかかわらず、アントラーズは苦戦を強いられることになった。
アントラーズ自体の調子はあきらかに上がっている。中盤で足を引っぱっていたダニーロが抜け、故障から復帰した野沢がすっかり試合勘を取り戻したことがあって、パスワークのリズムはかなりよくなった。ワンボランチの青木も、右サイドからのドリブル突破でフランサの退場を誘ったりして、中後には負けないぞという、いいプレーを見せてくれていたし、マルキーニョスも、かつて相手チームにいて、こちらを冷や冷やさせた時のような、ゴール前での危険さを取り戻していた。
まあ、その分、この日は本山、田代がいまいちで、いまだ鼻骨骨折の癒えない内田も、そのフェイスガードのせいか、得意の右サイドの攻め上がりが陰をひそめていたので、全体としては攻撃のパターンがやや乏しい印象だった。そのあたりが、リーグ一失点の少ないレイソルのディフェンスを崩しきれなかった要因だろう。途中出場した興梠、ダニーロもチームに活気を呼び込むことができなかった。
そんな調子で、これはもうスコアレス・ドローやむなしという感じだっただけに、ロスタイムでの決勝ゴールには感動した。
お膳立てをしたのは87分という、残り時間もわずかになってからピッチに立った、19歳の佐々木竜太だった。僕にとってはリアルタイムでは初めて見る選手だけれど、いくつかのボールタッチを見て、おっ、なんだかこの選手、上手そうだと思う。ボールさばきに切れがあり、前を向こうという意識が伝わってきて、好印象だった。ニュースで見た甲府戦でのプロ初ゴールも、ゴール前での嗅覚の鋭さを感じさせる、とてもいいシュートだったし、また楽しみな選手が出てきたなあと思った。
そうしたらこの子がやってくれた。ロスタイムもこれで最後かというワンプレーで、カウンターから右サイドをドリブルで攻め上がり、グラウンダーの素晴らしいクロスを放り込む。そこにマルキーニョスが、ロスタイムとは思えない鋭さで切れ込み、ダイレクトであわせてみせてくれた。まさかという時間帯に生まれた、文句なしのビューティフル・ゴール! その一連のプレーのあいだにロスタイムは所定の4分を過ぎていたので、結局このゴールがラストプレーとなって、試合終了。劇的な勝利でアントラーズが貴重な勝ち点3を手にした。
感動のあまり集まったチームメートの輪のなかでマルキーニョスがもみくちゃにされたり、そのあとで彼が佐々木を抱きしめて、このルーキーの貢献をたたえたりしていたシーンからは、最近のチームのムードのよさが伝わってきた。ファンとしては嬉しい限りだ。
さいわい、あと2試合でアジア杯による中断期間に入る。再開後には中後も戻ってくるだろう。柳沢の復帰も近いようだし、佐々木や興梠も活躍しているし、もしや今年は意外と選手層が厚いんじゃないだろうか。小笠原や中田浩二が復帰するかもしれないという噂もあるけれど、もしも本当に彼らが戻ってきたら、オリヴェイラ監督はポジションのやりくりで、そうとう頭を悩ませることになりそうだ。いや、後半戦が楽しみになってきた。
(Jun 24, 2007)