2007年5月のサッカー
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- 05/03 ○ F東京1-2鹿島 (J1・第9節)
FC東京1-2鹿島アントラーズ
J1・第9節/2007年5月3日(木)/味の素スタジアム
サッカー好きの義理の妹夫婦が三鷹に住んでいる。
三鷹といえばFC東京の本拠地、味の素スタジアムのある調布のすぐとなり。駅前のあちらこちらでFC東京のペナントがなびいている。かつては埼玉県民としてレッズを応援していた義妹の旦那も──実は僕と彼とは大学時代の同級生だったりする──、ここへ引っ越してきて以来、当然のごとくFC東京を応援するようになった。好きなチームのホーム・スタジアムまで自転車で行けてしまう距離に住んでいるというのは、ちょっと羨ましい。
今回はゴールデンウィーク中にその味スタで、FC東京とアントラーズとの対戦があるという。いい機会だから一緒に観に行こうということになった。
携帯電話が新しくなったので記念撮影 |
ということで今年2試合目のスタジアム観戦。
この日、味スタでは「ゲゲゲの鬼太郎デー」というイベントが開催されていて、試合に先立ってアストロビジョンに目玉おやじが登場して、FC東京にエールをおくったり、鬼太郎とねずみ男の着ぐるみが入場行進したりしていた。まあ、喜ぶ人もいるのかもしれないけれど、雰囲気的に妖怪はあまり勝利には貢献しそうにない。
そのほか、スタジアム内では鬼太郎せんべいや目玉おやじキャンディが売られていたり、どこぞには鬼太郎やねずみ男のフィギュアが飾られたりしていたらしいのだけれど、不思議なもので僕自身はそういったものをぜんぜん見かけなかった。注意力散漫。
イベントといえば、味スタでは、試合前に『ユール・ネバー・ウォーク・アローン』という歌(通称ユルネバ)をサポーター全員で合唱するのが恒例になっているのだそうで、どちらかというと、個人的にはそちらのほうがおもしろかった。
スタメン発表に続いてカラオケが流れ始め、スコアボードに英語の歌詞が表示される。サポーターがそれにあわせて合唱を始めるのだけれど、そこはシャイな日本人のこと、始めのうちはあまり元気がない。これじゃあ応援になんないんじゃないかと思って聞いていると、そのうちに緊張もほぐれてか、だんだん声が大きくなり、最後のほうは立派な大合唱になった。ちょっぴり気恥ずかしくも、なかなか感動的。正直なところ、鳴り物入りまくりの鹿島サポーターの応援よりは、よほど好感が持てた。
以上、スタジアム観戦にまつわる雑談でした。本題はここから。
この日のアントラーズのスタメンは、曽ヶ端、内田、岩政、青木、新井場(キャプテン)、中後、野沢、本山、ダニーロ、田代、マルキーニョスという構成。骨折した柳沢に代わり、怪我から復帰したばかりの田代が入っただけで、あとは清水戦と同じだった。0-1で負けたひとつ前の浦和戦では興梠がスタメンだったらしいのだけれど、現状ではやはり田代のほうが実力は上だろうから、田代がスタメンで使えるコンディションならば、この形は当然だと思う。
ただ、その田代もやはり故障明けだけあって出来はまだまだのようで、去年の終盤に見せた切れのあるプレーはできていなかった。その点はこの日はボランチ気味のポジションで引き気味にプレーしていた野沢も一緒。ダニーロの存在感のなさはあいかわらずだし、攻撃的な選手がこんな調子では、苦戦するのも仕方ない。彼らの調子が上がってくるまでは、この日の試合のように、苦しみながらもなんとか
しかしながら、調子が悪いのは相手のFC東京も同様だった。いや、もしかしたら鹿島よりもよほど重傷かもしれない。新加入の外国人DFは故障で使えず、茂庭も故障明けでベンチスタートだから、仕方なく今野をセンターバックとして起用するという状況。しかも注目のオリンピック代表選手たちが、そろいもそろって調子を落としているらしい。
この日の楽しみのひとつは、伊野波、梶山、平山といった五輪代表のプレーを生で見ることだったのだけれど、あけてみてびっくり。そのうち誰ひとりスタメンに名前がない。スタメンどころか、ベンチ入りしているのは梶山だけで、伊野波も平山もベンチにさえ入っていない。出場停止でも食らっているのかと思ったら、そういうわけではないという。おいおい、五輪代表の攻守の要ともいうべき選手たちが、そろってベンチ外って……。アントラーズの増田もいまだサブだし、本当に今回のオリンピックは大丈夫なんだろうかと、あらためて不安になってしまった。
目玉おやじがFC東京にエール |
でもまあ、そうは言っても途中出場でこの日の試合を決めたのは、そんな五輪組のひとり、増田誓志だった。うん、増田は悪くないんじゃないだろうか。途中出場ながら運動量が多く、積極的にあちらこちらでボールに絡んでいて好印象だった。ダニーロがこの日もまったく存在感がなく、早めに交替を決めたオリヴェイラによくぞ代えてくれたと言いたくなるような冴えないプレーぶりだったから、増田の積極性はなおさら頼もしく思えた。
いきなり決勝点をあげた増田の話題で、話が前後してしまったけれど、この日の先制点はFC東京だった。ルーカスが右サイドからあげたどんピシャのクロスにワンチョペが楽々あわせたもの。
ただ、FC東京はこのワンチョペもいまひとつさえない。前線でさかんにボールに絡んでこそいるものの、足元にボールが収まらないし、シュートも迫力不足。W杯ではディフェンス・ラインの裏へ抜け出すタイミングのよさが印象的だったけれど、FC東京には、そういうプレーを生かせる俊輔や本山のような優れたパサーはいないと思うし──梶山がそうなのかもしれないけれど、スタメンで出てないし──、現状ではその才能をまるで生かせていない気がする。失望感ではダニーロといい勝負だと思った。
まあともかく、そのワンチョペに先制ゴールを決められた時にはかなりがっくりきたものだった。この日はFC東京のサポーターと一緒にホーム側のスタンドで観ていたため、まわりが歓喜の渦で沸き立っていて、なおさらやる瀬なかった。
でも、そのわずか2分後には、中後がセットプレーからの混戦から、低い弾道のミドルを見事に決めて同点に追いつく。効き足ではない左足だったらしいけれど(ちゃんと見ていないやつ)、それにしては見事なシュートだった。
増田の決勝ゴールは残り時間が10分を切ってから。お膳立てをしたのはマルキーニョスだった。彼は清水やヴェルディでプレーしていた時より決定力こそなくなってしまった感じがするものの、それでも持ち前の積極性はあいかわらずだから、とりあえず印象は悪くない。清水戦でもアシストを決めていたし、ゴールこそ少ないけれど、ダニーロと違って貢献度は低くないと思う。
ということで、鹿島アントラーズが中後、増田という若い二人のゴールで、わが街東京のホーム・チームをどうにかこうにか蹴散らした一戦だった。
それにしても、両チームともパフォーマンスはいまひとつだったとはいえ、よく晴れた春の午後に、暖かな陽射しを浴びながら、ビール片手に観るサッカーは格別だった。村上春樹流に言えば、これこそ小確幸というやつだろう。チームも逆転勝ちを収めたことだし、カート・ヴォネガットの言葉を借りるならば、「これが幸せでなくてなんだろう」ということになる。ほんと、そんなひとことがうってつけの、気持ちのいい午後だった。
(May 04, 2007)