2006年3月のサッカー

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  1. 03/05 ○ 広島3-4鹿島 (J1第1節)
  2. 03/11 ● 鹿島0-3横浜M (J1第2節)
  3. 03/25 ○ 千葉0-1鹿島 (J1第5節)
  4. 03/30 ○ 日本1-0エクアドル

サンフレッチェ広島3-4鹿島アントラーズ

J1・第1節/2006年3月5日(日)/広島ビッグアーチ/BS1

 鹿島ファンにとってはなにかと話題が豊富な06年シーズンの開幕戦。
 まずは6年続いたトニーニョ・セレーゾ体制が終わり、新しい監督を迎えてのファースト・ゲームであること。新監督パウロ・アウトゥオリは、昨年サンパウロFCを率いて世界クラブ選手権を征したほどの大物だ。当然、世間的な注目も高い。
 ただ、なんでそれほどの人がアントラーズで指揮をとる気になったのか、今ひとつピンとこないものがある。今の鹿島がそんなに高額の契約金を用意するとは思えない。戦力的にはJリーグでトップクラスの鹿島だけれど、世界標準と照らし合わせれば、やはり見劣りは否めないだろうし……。世界一を勝ち取ったほどの監督が、一体何をモチベーションとしてJ1で戦ってゆくのか。そう考えると、期待の半面、若干の不安も感じさせるアウトゥオリ新監督だったりする(名前もやっと覚えた)。
 二つ目の大きな話題は、柳沢の3年ぶりのJリーグ復帰。イタリアで成長した部分があるのは認めるし、ワールドカップへ向けて出場機会を確保するために出場機会を得たいというのもわかるけれど、正直なところ、そんな理由で戻ってくるのならば、最初から海外なんか行かないでくれりゃいいのに……。海外クラブからのオファーを押しのけて、浦和に無理やり連れ戻された小野とは違って、ちょっと格好が悪い。
 でもまあ、この日の柳沢はハットトリックの大活躍で、最高の復帰を果たして見てくれたのだから、あまり悪く言うのはやめよう。以前よりも積極的にシュートを打つようになった姿勢も好印象だし。
 もとより鈴木隆行がセルビア・モンテネグロへ、中島が仙台へ移籍してしまって、FWの駒不足の印象が否めなかった時だ。しかもエースのアレックス・ミネイロは開幕前に故障して、この試合はベンチ・スタート。こうした状況での柳沢の復帰はとても心強い。せっかくだから今年はずっとこの調子を維持して得点王をとって、日本中をあっと言わせてもらいたいものだと思う。
 三つ目の話題は、高卒ルーキー内田篤人の開幕スタメン・デビュー。名良橋の故障というチーム事情があったわけだけれど、それでも先制点につながるPKを取得したことで、その才能を大きくアピールした。アウトゥオリの評価も上々のようだ。3失点もしたのには、やはり彼の経験不足が影響した部分が少なくないのかなという気もするけれど、果敢にドリブル突破を仕掛ける姿勢は見ていて気持ちよかった。ここのところ名良橋が怪我続きの上に、彼にはそろそろ年齢的な問題もあるから、内田篤の登場は大いに歓迎だ。
 怪我と言えば、名良橋とアレックス・ミネイロのみならず、フェルナンドまでも故障明けだそうで、この試合はベンチ・スタートだった(それにしても開幕戦にこんなに怪我人がいるなんて、一体オフの間にどんな練習をしていたんだろう)。そう言えば曽ヶ端も故障中だ。よってこの日のスタメンは、小澤、内田篤、岩政、大岩、新井場、小笠原、増田、深井、本山、柳沢という構成で、全員日本人。それでもブラジル人二人を要する相手に勝ててしまうあたりが、日本サッカーのレベル向上を証明していると思った。
 フェルナンドの代わりにアウトゥオリがボランチに起用したのは増田誓志だった。彼は攻撃的なプレーが持ち味だと思っていたので、このボランチ起用にはちょっとびっくりだ。でも意外とボランチでもいけていたように思う。少なくても個人的には、去年トニーニョ・セレーゾが取った、小笠原をボランチに下げる布陣よりは好印象を受けた。あ、でも3失点には彼のボランチ起用も影響しているのかな。まだまだその辺の機微がわかるほどにはサッカーを見る眼が成熟していないのが残念なところだ。
 対するサンフレッチェは、FWにウェズレイを、ボランチに戸田を補強して新シーズンを迎えた。昨季の日本人得点王・佐藤寿人とウェズレイのツートップはなかなか手強い。この開幕戦で早くも二人にきちんと3点を奪われた。堅守を誇った去年とは違い、ディフェンスが割と{もろ}かったけれど、小野監督もその辺は今後修正してくるだろう。 そうなれば今年は最後まで優勝争いに絡んできそうだ。次の対戦時は要注意。
 なにはともあれ4得点は上出来だったけれど、3失点はちょっと取られ過ぎ。取られ方も悪かったし、今シーズンはディフェンスには課題がたくさんありそうな感じがするのが不安材料か。
 この日のベスト・ゴールは本山-小笠原-柳沢とパスをつないで決めた3点目。決勝点となった柳沢のバイシクル・シュートにも驚かされたけれど、それよりもやはり、チームの軸である三人が見事な連係を見せたその前のゴールの方に魅せられた。なにもそんなにパスを回さずに、前の二人のどちらかが決めてくれりゃいいじゃん、というゴールではあったけれど。
 とにかく06年のシーズンは、様々な話題を振りまきながら、ジーコのハットトリックで開幕した93年を思い出すような、上々のスタートを切った。結末も同じようなハッピーエンドでありますように……。って、いや、あの年はチャンピオンシップで負けたんだ。しかしながらその時の対戦相手、ヴェルディも今やJ2……。時の流れは{はかな}い。
(Mar 09, 2006)

鹿島アントラーズ0-3横浜F・マリノス

J1・第2節/2006年3月11日(土)/カシマスタジアム/BS1

 開幕二戦目で早くも黒星がついた。しかもホームで0-3なんてスコアで負けたのは、いつ以来だろう。メンバー的にも、フェルナンドがいなかった──ベンチにさえ入っていなかった──ことを除けばほぼベスト・メンバーだったのに……。ちょっとばかりショックだ。
 試合は前半だけ見れば互角だったと思う。両チームとも相手の長所を消しあうような内容で、あまり見ていて楽しいゲームじゃなかった。そんな中、セットプレーからのワンチャンスをものにして横浜が先制する。
 奥のCKをヘディングで決めたのは、どんぐりカットのマグロン。最初に見たときから変なヘアスタイルだなあと注目していたのだけれど、注目すべきはヘアスタイルよりもプレー自体だったようで……。この日は後半に入ってからもFKで貴重な追加点をあげる活躍ぶりだった。
 アントラーズの布陣は前の試合とほぼ同じ。アレックス・ミネイロと柳沢のツートップ、本山がトップ下で、深井がベンチと言う形。後半18分に本山と増田をさげて、深井と野沢を投入、小笠原をボランチに下げる。ここまではまあ去年と同じで定石だ。
 トニーニョ・セレーゾとアウトゥオリとの違いがはっきりと表れたのが、このあとの選手交代。2点目を奪われた直後に、アウトゥオリは青木をさげて、FW田代を投入してきた。スタメンのボランチを二人とも下げるという、非常に攻撃的な采配(なのかな?)。いずれにせよボランチの使い方にこだわったトニーニョ・セレーゾの時には考えられない起用方法だ。ちょっとばかり驚かされた。
 ただ結果としてはこれがあだとなる。この選手交代の直後に、手薄になった守備陣用の隙をつくような形で、横浜に致命的な3点目を奪われてしまった。新井場が途中出場の田中隼磨に左サイドを突破されて、すってんころりん。フリーとなった田中のグラウンダーのクロスを、逆サイドから攻めあがっていたドゥトラが豪快に決めて3点目。
 これで勝負ありだった。その後もアントラーズは攻撃の糸口さえつかめないまま、痛い初黒星を喫した。まあ、アウトゥオリが就任してまだ日も浅いし、こういう負けは仕方ないのかもしれない。
 横浜は大分から移籍してきたFW吉田孝行が中盤で起用されていたのが目新しかった。それと3バックが中沢、栗原、松田の三人で、那須がベンチだったこと。ほかにも田中隼磨、河合、平野、坂田、大島、清水という選手たちがサブに甘んじていて、さらに山瀬や中西もいるのを考えると、やっぱりこのチームはあなどれないなと思う。この試合でも、たいしていいという感じはしなかったし、得点ほどには内容には差がなかったとは思うけれど、それでもスコア的には完敗だった。まいってしまう。
(Mar 13, 2006)

ジェフ千葉0-1鹿島アントラーズ

J1・第5節/2006年3月25日(土)/フクダ電子アリーナ/BS1

 ひさしぶりに酒を飲みながら見てしまったので、いまひとつ内容がつかみきれなかった一戦。アントラーズは青木が故障で、ボランチに36歳の本田がひさしぶりのスタメン出場した以外、開幕2戦目と同じメンバーだった。
 試合はがっぷり四つというところだったんじゃないだろうか。どちらも攻めあぐんでいる感じで、このままスコアレスで終わるかなと思われた。ところがそんな流れを、アレックス・ミネイロが打開してくれる。個人技でDFを振り切り、GKの股を抜く見事なゴールを決めたのだった。まだまだ本調子じゃないかなと思って見ていたのだけれど、さすがエース、頼りになる。おかげで貴重な勝ち点3を拾うことができた。
 もう一人のFW、柳沢は不運にも足を痛めて途中退場。なんと足の指の骨折で全治2ヶ月だそうだ。開幕戦で得点王を目指せとか思った僕が甘かった。得点王どころか、W杯出場にまで赤信号が灯ってしまった。本大会まであと3ヶ月を切ったこの時期にこの怪我は痛すぎる。
 なにはともあれ、チームとしてはここまで3勝1敗1分で5位とまずまずの戦績。開幕2試合で6失点と危ぶまれた守備も、その後の3試合ではわずか1失点と安定してきた。怪我人が多いのは気がかりだけれど、とりあえずこの調子が維持できれば、なんとか戦ってゆけそうだ。
(Mar 28, 2006)

日本1-0エクアドル

2006年3月30日(木)/大分ビッグアイ/TBS

 3バックか4バックか。ジーコにとってそんなことは本当にどうでもいいらしい。僕ら凡人にはわからない感覚で彼はチームを転がしている。
 試合の数日前まで、ジーコは4バックで戦うと明言していたと聞く。それがこの日3バックとなったのは、スタメンで考えていた遠藤が故障で戦線離脱したからなのだそうだ。当初の想定では、遠藤、福西のツーボランチに、小野と小笠原のダブル司令塔という布陣だったと思われる。
 それが遠藤のリタイアで3バックになってしまうというのは、つまりジーコの中での選手の優先順位が、システムよりも重要だということなのだろう。普通に考えると抜けた遠藤の位置に長谷部か阿部を入れてどうなるかを見ることになるのだけれど、ジーコはその二人よりも坪井を使うことを優先した。それはやはり坪井の方が早くからチームに属していたからなのだと思う。始めに選手ありきというのは、ジーコが常日頃から言っていることだ。まさにここでそれを証明したことになる。
 ここでひとつおもしろいなと思うのが、選ばれたのが坪井であること。3バックの時のレギュラーは、これまでは宮本と中沢と田中誠だった。それが今年の最初の試合で田中誠が途中交代を命じられて引っ込んでからは、彼の代わりに坪井が使われるようになっている。思えば田中誠がレギュラー・ポジションを得たのは、坪井が故障で長期戦線離脱して以来だ。つまり年齢はともかく優先順位的にはもともと坪井の方が上だったということになる。戻ってきた坪井が、レギュラー・ポジションをあたえるにふさわしいだけ復活しているかどうか。ジーコはまずそれを確認したいと思っているような気がする。
 この日の坪井のパフォーマンスをジーコがどう見たかはわからないけれど──僕は可もなく不可もなくという印象を受けた──、このところの起用法からすると坪井がDFのナンバー3の座に復帰したと見てもいいのだろう。反対にこの試合でチャンスをもらえなかった長谷部と阿部が最終選考に残る可能性は、残念ながら極めて低くなったと思われる。
 なんにしろ僕にはこの日のスタメンで、ジーコが一体どういうつもりでチームを作っているかがようやく見えた気がした。本当にこの人にとっては、フォーメーションなんかどうでもいいんだろう。要するに本戦までの試合はすべて、選手個々に経験値を積ませるための試合に過ぎない。だとするならば、フォーメーションにこだわって、本番で使えるか使えないかわからない選手を試すよりも、使う可能性が高い選手に、より多くの経験値を積ませたい。彼はそう考えているのだと思う。
 そう考えると、この試合で阿部や長谷部を使わなかった理由にも納得がゆく。中盤はもっとも人材が豊富なポジションだ。それでなくてもできる限り選手を固定して戦いたがるジーコのことだ。彼らが本戦で中田英寿や稲本を押しのけてプレーする可能性は限りなく低いだろう。だとするならば、坪井の方が、宮本や中沢のバックアップとして出場する可能性は高い。彼に経験を積ませた方がチームにとってはプラスとなる。使える選手がすべて揃っていないチームでフォーメーションにこだわったって仕方ない。ジーコはそう考えているに違いないと僕は今回の試合で確信した。
 ということでこの日のスタメンは、川口、坪井、宮本、中沢、加地、福西、小野、三都主、小笠原、久保、玉田という顔ぶれだった。
 玉田がひさしぶりに代表に復帰してスタメン出場。代表デビューの頃を思い出させる思い切りのいいドリブル突破を何度か見せて、生き残りにアピールしていた。彼に限らず、みんなとても積極的だったと思う。エクアドルが攻撃的な選手を欠いていて守備的だったものだから得点はあまり取れなかったけれど、3バックの試合としてはひさしぶりに満足のゆく内容だった。
 唯一の得点は途中出場の佐藤寿人のもの。この日は切れまくりだったアレックスのニアへのクロスに飛び込んで鋭くあわせた。この日はアレックスと福西が特に好印象だった。小野のプレーには自他ともに否定的な意見が多かった。僕にはそれほど悪いようには思えなかったのだけれど。
(Apr 02, 2006)