2005年3月のサッカー
Index
- 03/05 ○ 浦和0-1鹿島 (J1第1節)
- 03/12 △ 鹿島2-2G大阪 (J1第2節)
- 03/25 ● イラン2-1日本 (W杯・最終予選)
- 03/30 ○ 日本1-0バーレーン (W杯・最終予選)
浦和レッズ0-1鹿島アントラーズ
J1第1節/2005年3月5日(土)/埼玉スタジアム/TBS
1シーズン制、18チームによるホーム&アウェイの総当り戦となった2005年のJ1の開幕戦。対戦相手は優勝候補の一角、レッズ。わくわくするというよりは、ハラハラしてしまう心境の方が強かった。結果から言ってしまえばアウェイでの白星発進ということで上出来なんだけれど、内容的には誉められたものではなかったと思う。この調子では今年もあまりいい成績は期待できそうにない。まあ三冠を達成した年もそんな感じだったから、始まったばかりであまり悲観的になっても仕方ないのかもしれないけれど……。いずれにせよ優勝候補を実力で蹴散らして勝利を勝ち取ったと言ったような満足感には程遠い内容の一戦だった。
悲観的になってしまう要因は随所にある。まずはフランスへ移籍した中田浩二の穴を埋める青木の出来。彼の場合、プレー自体が非難されるほど悪かったとは思わない。ただし前半でイエローを貰い、後半にもイエローが出てもおかしくないようなラフなプレーをしていた点が問題だ。最初のカードはレフェリー(吉田さん)の過剰反応だと思うけれど、二枚目は逆に温情で見逃してもらったと言っていいプレーだった。ボランチはカードをもらいやすいポジションだけに、彼のプレーがそうした面での安定感を欠いているのは気にかかった。
次が髪を金髪に染めた岩政──あ、ちなみにこの日のスタメンは曽ヶ端、内田、岩政、大岩、新井場、本山、フェルナンド、青木、小笠原、アレックス・ミネイロ、鈴木という布陣。話は逸れるけれど、昔からアントラーズにはどうしてああいう風に似合わないカラーリングをする選手が多いんだろう。チームの関係者に、流行におもねるだけの、ファッション・センスのない美容師がいるんじゃないだろうかと勘繰りたくなる。
なにはともあれそんな金髪の岩政くんも、青木と同じくプレーに安定感を欠いていた。なまじ強力なFWを揃えるレッズが相手だから、なおさら危なっかしさが目についた。去年はもっと良かった気がするんだけれど、いったいどうしたんだろうか。開幕戦で気負っていた部分があるにしても、なんとも危なっかしくて見ていられなかった。ペアを組む大岩が随分と頼もしく思えたくらいだ。今後の鹿島のディフェンス・ラインを背負ってゆくはずの男に、今さら秋田が恋しくなるようなプレーを見せてもらっては困る。
攻撃陣に目を向けると本山。彼はあまりに存在感がなさ過ぎた。なまじ小笠原が攻守に渡っていいプレーを見せてくれているだけに、本山の存在感のなさにはがっかりさせられた。やたらとあたりに弱いのも気にかかる。ころころと倒れてばかりいるから、後半はその辺の弱さをレフェリーに見切られて、倒れても笛を吹いてもらえなくなっていた。1対1で負けない強さをつけない限り、本山は世界とは戦えないと思う。あとみっともないから倒されるたびにカードをアピールするのはやめてもらいたい。
もう一人がっかりさせられたのが新外国人アレックス・ミネイロ。この人には「稲妻の子」というニックネームの片鱗さえ見せてもらえなかった。来日したばかりでコンディションがまだまだなのかもしれないけれど、それにしてもいいところがひとつもなかった印象だ。この試合を見た限りでは、とても得点力不足を解消する決め手となる選手とは思えない。ファビオ・ジュニオールの方がまだファースト・インプレッションは良かった。今後の思いがけない活躍を願ってやまない。
以上に加えて両サイドバックの攻撃参加がほとんどなかったこともマイナス要因だし、攻守に渡ってここまで問題が山積だと、どうして勝てたのか不思議になる。実際に後半の途中からは、退場で一人少ない相手に一方的に攻めまくられていた。一人分の人数差が丁度いいハンディだというみたいだった。正直なところ、あの退場がなかったらば逆転負けを喫していたかもしれないと思う。勝ったにもかかわらず、試合後の小笠原やトニーニョ・セレーゾの顔に笑顔がなかったのももっともという内容だった。
そんなマイナス・イメージばかりの試合ではあったけれど、とりあえず小笠原、曽ヶ端、そして鈴木隆行のプレーには満足できた。特に鈴木はゴールを決めたのみならず、相手のアルパイの退場を誘ったりもして──倒れたのは鈴木のシミュレーションっぽくも見えなくないけれど(なんたって倒れるの上手いから)、相手の顎に手をかけている時点でアルパイのカードは当然──チームの勝利に大いに貢献していた。彼の場合「ファールを貰うのが信条」みたいなイメージがあって良く思わない人もいるだろうけれど、そうしたダーティな部分を含めて、非常にチームへの貢献度の高いFWなのは認められてしかるべきだと思う。年とともにきちんと成長の跡を見せている点も評価できる。あれでも僕が最初に見た頃から比べると随分と上手くなっている。今年はより一層の成長を見せて、チームのためにがんばってもらいたいもんだ。
なにはともあれ去年二敗を喫したレッズを相手に、アウェイでの白星発進は上出来だ。そのレッズはほぼ去年と同じ戦力ながら、山瀬放出のつけが祟って、今年の優勝はないだろうというのが僕の予想。そうは言ってもやはり十分以上に手強い相手だった。特にエメルソンと永井(なんだかとても良かった)の2トップは強力。何度冷や冷やさせられたことかわからない。田中達也が故障明けで途中出場だったのと、エメルソンのコンディションが不十分だったのには、随分と助けられた感があった。しかしエメルソンの場合、それでもあれだけの出来なんだから嫌になる。彼のコンディションが整わないうちにあたったのはラッキーだったかもしれない。レッズが今日の雪辱を誓って望んでくるだろう次の対戦が今から不安だ。
(Mar 05, 2005)
鹿島アントラーズ2-2ガンバ大阪
J1第2節/2005年3月12日(土)/カシマスタジアム/BS1
開幕戦と同じメンバーで臨んだ第二戦。内容は前の試合よりも全然よかったのに、結果はドロー。ま、相手もかなり良かったし──特に攻撃陣の連係の面ではずいぶん差をつけられていると感じた──勝ち点1を取れたことを喜ぶべきだろう。トニーニョ・セレーゾの試合後のコメントじゃないけれど、曽ヶ端のナイス・セーブに助けられた。今年の彼はとても調子が良さそうだ。代表復帰が期待できるかもしれない。
先制点は本山のアーリー・クロスを新外国人アレックス・ミネイロが頭で決めたもの。とても打点の高いシュートだった。本人はあまりヘディングは得意ではないと言っているけれど、それであれならば、足はどんなにすごいんだということになる。この日のプレーを見る限り、本山との連係はとても良さそうだし、今年は隆行もかなりいい感じなので、このツートップには期待してもいいかもしれない。本山も持ち前のセンスを発揮して素晴らしいパスをいくつも通していたし──その代わりオガサが今ひとつという感じではあったけれど──全体的に攻撃陣の調子が上向きなのは喜ばしいことだ。
この日の試合の課題は後半にそのゴールで同点に追いついた直後にすぐ失点を喫したこと。あの集中力のなさはどうしたわけだ。ガンバの攻撃の切れ味が鋭かったのは認めるけれど──大黒とアラウージョの2トップは要注意──それにしても頂けなかった。再度同点に追いつくミドル・シュートを決めたフェルナンドに感謝だ。この日の彼にはゴールに対する積極性が見られて好印象だった。
それに比べて青木の消極的なこと。いや、この日はとても積極的に攻め上がってはいたし、その面では評価する。けれど、あがってなおかつ自分で決めてやるという姿勢が見られない。一度なんて本山からのラストパスだっただろうか、ゴール前に絶妙のタイミングで走り込み、あとはボールにあわせさえすればいいという場面で、スルーを選択して見事にチャンスをつぶしていた。なんであそこで自分で打とうと思わないんだろう。僕は不思議でならない。
これは彼だけの問題ではなく、日本人選手全般に見られる傾向ではある。なぜか多くの選手はシュートチャンスでシュートよりもパスを選択してしまう。あの辺の消極性(それは自分がヒーローになることに対する遠慮深さ?)は、ただサッカーに限ったことではなく、僕も含めた日本人が全体として克服していくべき課題だと思う。この頃はJリーグや日本代表の試合を見るたびに本当に強くそう思うのだった。
なにはともあれ、浦和戦よりは納得のゆく試合だった。ま、やはり今年リーグ優勝を狙えるチームだと思えないという点は変わらないけれど、それでもこうしたしぶとさがあれば、なんとか最後まで優勝争いの一角に食い込んで見せてくれるかもしれないという期待も抱かせてくれた。
対するガンバはやはり攻撃が魅力。この試合みたいに遠藤まで攻撃に絡んでくるようだとかなり厄介な相手だと思った。ま、開幕戦でJ2から昇格したばかりの大宮アルディージャに黒星を喫していたりするようじゃ、アントラーズ以上に優勝はなさそうだけれど。
(Mar 13, 2005)
イラン2-1日本
W杯アジア最終予選/2005年3月25日(金)/アザディ・スタジアム(テヘラン)
1年ぶりに中田英寿を呼び寄せ、フォーメーションを4-4-2に変更してのぞんだ、グループ・リーグ最大の難敵イランとのアウェイでの一戦。日本はこの試合に負けて、最終予選の二戦目で早くも勝ち点3をとりこぼすことになった。
スタメンは楢崎、加地、宮本、中澤、三浦淳、中田英、福西、小野、俊輔、高原、玉田。4バックの採用に関しては、中田英寿シフトだとか、イランの3トップ対策だとか(実際には2トップだったけれど)いろいろ言われていたけれど、僕は今の日本代表のメンバーを考えれば、4バックという選択は至極当然だと思っている。どちらかというと、あれだけ中盤の人材に恵まれているにもかかわらず、今まで3バックで戦っていたこと自体がおかしい。なぜ3バックを維持してきたかといえば、それはその形で勝ってきたからだろう。結果を残しているフォーメーションを変える必要はないという理由による。けれどそれはより一層の高みを目指そうとするチームにはふさわしくないんじゃないか。
そもそも確かに去年は3バックでアジアカップ優勝という成果こそあげた。けれどあれは本来主力として考えていた海外組がほとんど招集できない状況で編成されたチームだ。しかもツキに味方された部分がかなりあった。実際の試合内容を覚えている人ならば、3バックが安定していて言々、なんてとても言えないだろう。この一年の日本代表の3バックでの戦いは、あぶないところを間一髪でしのぎながら、数少ないカウンターとセットプレーのチャンスに賭けるという、はなはだ消極的なものだった。僕はそんなサッカーがどうにも好きになれない。だからこの試合でジーコが再び4バックに戻すという決断を下したと知った時には、不安とともに、ようやく我が意を得たという喜びもあったのだった。
けれど期待した4バックは不発に終わってしまう。原因はいきなりフォーメーションを代えたことによる連係不足などもあるんだろう。でも僕は何より問題だったのはチームの攻撃の核である俊輔が4バックを意識し過ぎたことにあるのだと思っている。試合後の彼は「やっぱり次の試合は3バックに戻した方が」みたいな発言をしているという。俊輔のこうした意識がこの試合での苦戦の一番の要因じゃないだろうか。
実際、この試合における俊輔は流れの中ではほとんど攻撃に絡んでこなかった。相手の右サイドの攻撃力を警戒して、守備を重視するのは構わない。けれど、その結果として持ち前の攻撃力が発揮できなくなってしまうんじゃ仕方ないだろう。この日の4バックの不出来は、ひとえに俊輔の攻撃参加の意識の希薄さにある。彼がディフェンシヴになり過ぎたことにより、4バックの旨みがまったくなくなって、3バックの時と同じていたらくになってしまった感があった(というかDFが一枚少ない分、より悪いかもしれない)。彼がもっと積極的に攻撃に絡んでゆく姿勢を見せて、高めでボールをキープできていたら、日本がこんな風に負けることはなかったんじゃないだろうか。そうすることでピンチは増えたかもしれないけれど、それ以上にゴールの期待も高まったはずだ。なにより攻撃的MFは得点においてチームに貢献すべきだ。彼は攻撃は最大の防御だという言葉を思い出した方がいい。
とはいっても敗戦を彼だけの責任にすることはできない。ヒデのプレーもいい時からするとやはりいま一歩だったし、高原、玉田の2トップはほとんど仕事らしい仕事ができていなかった。そもそもFWのシュートって前半の玉田の力ないやつ一本だけなんじゃないだろうか。一番ゴールに近い選手たちがそんな調子で点が取れるはずがない(ほとんど唯一といっていいチャンスを横から割って入ってものにしてしまった福西は、そういう意味ではさすがだった。なまじ稲本からポジションを奪っちゃいない)。ボランチの二人はいい感じだったけれど、その前が一律この調子では、勝てないのも当然かと思う。
加えてジーコの采配もあいかわらず意図不明だ。後半再び突き放されたあと、小野(不可解なイエローにより次戦は出場停止……)を下げて小笠原を投入、ヒデをボランチに下げる。結局オガサはほとんどチームに貢献できずに終わってしまい、なんのための交替だったかわからない。二人目の玉田から柳沢への交代も疑問。今までの発言からすれば、所属チームで試合に出場していない選手を使うのは禁じ手だろう。なのに御仁は最初から代表に招集していた大黒よりも先に、合宿からリタイアした藤田の代わりに緊急招集したヤナギを使う。その心は何? いや、柳沢はあいかわらず質の高い動き出しを見せてくれていた。福西のゴールを引き出した部分もあるし、彼のプレー自体には不満はない。でも彼を大黒よりも先に使うジーコの采配にはやはり不信感が否めない。あんな選手起用をしていて、選手たちの反感を集めない方が不思議だ。
2失点にはどちらも不運な部分があった。1点目は加地が倒された時点で笛が吹かれてもよかったと思うし、2点目で中澤にあたったボールがゴールラインを割らずにカリミの足元へ戻ってしまうなんて不運以外のなにものでもない。
それでもそうした不運を考慮してもなお、不満の多い試合だった。中でももっとも失望感が高かったのは、ゲームの残り十分の不甲斐ない戦いぶりだ。前の北朝鮮戦もロスタイムでようやく勝ち越しゴールをあげた試合で、それまではイライラさせられはしたものの、それでもあの時は絶対一点をとるんだという気迫が感じられた。ところがこの試合ではそうした気迫が伝わってこなかった。もうこりゃ負けたという感じで、少なくなった残り時間を無為に消化している感じがしてすごく嫌だった。あんな風にたった1点のビハインドをひっくり返せず、諦めムードの漂う代表を見たのはひさしぶりだった。そのことがなによりも気にかかる。10万人を超えるというアウェイの雰囲気が選手たちから戦い続ける気力を奪ったのか……。次の試合に向けての一番の不安材料は、戦術うんぬんの以前に、まず選手たちの戦う気持ちの持ちようじゃないかという気がしている。
(Mar 27, 2005)
日本1-0バーレーン
W杯アジア最終予選/2005年3月30日(水)/埼玉スタジアム/BS1
僕の期待に反して──そしてある程度は予想どおりに──日本代表はこの試合を3バックで戦った。イラン戦の敗戦を踏まえて、中田と宮本がジーコに3バックに戻したいと要望したのだそうだ。結局そうなっちゃうのかという感じだ。ホームだというのに、積極的に点を取りにゆくのではなく、攻撃の枚数を減らしてでも失点を防ごうとする安定志向。それが僕にはどうにも、ものたりない。
確かにこの試合のディフェンスは安定していた。出場停止明けの田中誠を加えたディフェンスラインはものの見事にバーレーンの攻撃を封じていたと思う。けれどその反面、やはり日本の攻撃にもホーム・アドバンテージを感じさせるだけの迫力はなかった。圧倒的にボールを支配して攻めてはいたけれど、得点の匂いはまったくといっていいほど感じられなかった。結果、勝利は相手の信じられないようなオウン・ゴールによる1点を守りきるという形で転がり込むことになった。勝ったことは大変喜ばしいけれど、それでいいのかと当然の如く思う。
一番の不満は2トップ。怪我から復帰した隆行にはいつものような運動量はなかったし、高原は前の試合と比べると随分とポストでがんばっていたけれど、いかんせん決定力不足が深刻だ。特に後半。アレックスがようやく攻め上がれるようになって、ビッグ・チャンスを連発していたにもかかわらず、それをことごとく逃しまくっていた。高原ってこんなに決定力がない選手だったっけと不思議になるくらいだった。彼ら二人には悪いけれど、やはり久保の復帰が待ち遠しい。
フォーメーションを3-5-2に替えたことで注目されたポジションが中田英寿はボランチの位置に入り、かなりいいプレーを見せてくれていた。彼があの位置にいることにより、中盤から前へのボールの展開が実にスムースになる。僕が最近の日本代表を見ていてもっとも気に入らない点のひとつが、ボランチからのバックパスが多過ぎることだった。ディフェンダーから受けたパスをそのまま出し手にリターンしちゃうというシーンばかり見せられると興醒めも甚だしい。その点、中田はきちんと前へとパスが出せる。その点だけでも彼がボランチに入ったことの効果は絶大だと思った。基本的にあまり歓迎していない3バックだったけれど、この試合では彼の貢献により、いつもよりは攻撃に幅があったように感じた。それだから2トップがもう少しどうにかなっていれば……。俊輔もセット・プレー以外だとまだまだの感はあったけれど。
とにかくいろいろ思ったことはあったのだけれど、既に試合から一週間が経過してしまっていて、記憶の鮮度が落ちまくっているから、どうにもあまり明るいことは書けそうにない。マイナス指向の言葉ばかり並べていてもなんなので、今回はこれくらいにしておく。
ちなみにこの試合で一番気の毒だったのは、イングランドから帰ってきたにもかかわらず、そして小野が出場停止だったにもかかわらず、出番をもらえなかった稲本だった。めげずにがんばってもらいたいもんだ。
なにはともあれ、向こう2ヶ月を憂鬱な思いを胸に暮さなくて済んでなによりだった。
(Apr 05, 2005)