2004年7月のサッカー

Index

  1. 07/03   J-EAST3-3J-WEST (オールスター)
  2. 07/09 ○ 日本3-1スロバキア (キリン杯)
  3. 07/13 ○ 日本1-0セルビア・モンテネグロ (キリン杯)
  4. 07/14 ● U-23日本0-1U-23チュニジア
  5. 07/20 ○ オマーン0-1日本 (アジア杯)
  6. 07/21 △ U-23韓国0-0U-23日本
  7. 07/24 ○ タイ1-4日本 (アジア杯)
  8. 07/25 ● U-23日本0-1U-23オーストラリア
  9. 07/28 △ イラン0-0日本 (アジア杯)
  10. 07/30 ○ U-23日本4-0ベネズエラA代表
  11. 07/31 △ ヨルダン1-1(PK:3-4)日本 (アジア杯・準々決勝)

J-EAST3-3J-WEST

JOMOオールスターサッカー/2004年7月3日(土)/新潟スタジアム/テレビ朝日

 五輪直前ということで五輪代表ばかりが注目を浴びていたオールスター戦だった。MVPはそのうちの一人。見事な先制点を叩き込み、続けて二点目の田中達也のゴールにつながるミドル・シュートを放つなど、前半の活躍が著しかった石川直宏。ただそんな彼も後半はほとんど目立っていなかったから、そんな彼がMVPというのはちょっとさびしい気がしないでもない。
 前半はその石川が絡んだ2得点で東軍が圧倒的に優勢だった。即席チームにしてはパスワークも軽快で、とてもいい出来だったと思う。対する西軍は前半はまるでいいところなし。カズとゴンのベテランに加えて大久保をトップ下に置いた話題性たっぷりのトライアングルもほとんど機能していなかった。
 その西軍が後半になると息を吹き返す。2トップを揃って変えたことよりも、フォーメーションを4バックから3バックに変更したのが効を奏したみたいだった。やはり日本人には3バックの方が向いているのだろうかと複雑な気分になった。
 後半5分には高松がPKをもらう。これはどこがPKだってひどい判定だった。あの吉田というレフェリーは本当にひどいと思う(ま、おかげで試合の方は盛り上がったけれど)。後半出場のウェズレイがこのPKを決めて一点差と迫ると、その十分後に同じくウェズレイのミドル・シュートのこぼれ球を途中出場の清水のDF鶴見(だれ?)がフリーで決めて同点。さらには残り十分でまたもやウェズレイが逆転のゴール。この大会で過去5回指揮を務めて一度も勝っていないという西野さんに初勝利をプレゼントかと思わせた。
 ところがそうはいかない。86分にこれまた途中出場の三浦淳宏が見事なFKを決めて同点として、結局試合はそのままドローに終わってしまった。本当に西野さんは勝ち運がないらしい。
 アントラーズ・ファンとしてはジュビロの佐藤洋平がファン投票で西軍のGKに選ばれていたのが感慨深かった(あまりいい仕事をしている感じはなかったけれど)。対する曽ヶ端はJリーグ推薦で出場したものの、ファン投票で選出されたGK野沢(と監督の反町さん)がスタジアムのある新潟の所属選手だったため、ご祝儀的に後半の25分過ぎまで出場を続けたため、わずか20分足らずしか出れなかった。ちょっとばかり、反町さん、そりゃないぜと思った。
 その他、アントラーズからは小笠原と大岩が出場。オガサはともかく、大岩のJリーグ推薦はちょっと不思議。あ、そういえば秋田も出ていた。こちらはちゃんとファン投票で選ばれて。あっぱれだった。
(Jul 10, 2004)

日本3-1スロバキア

キリンカップ/2004年7月9日(金)/広島ビッグアーチ/日本テレビ

 久保、中田、稲本、楢崎という主要メンバーが故障でごっそりと不在。加えて五輪にオーバーエイジ枠での招集が予定されている小野(と高原)も不在。チャンスをもらったサブのメンバーの奮起に期待がかかる一戦だったけれど、内容的にはいまいちぱっとしない試合に終わってしまった。まあ暑かったから仕方ない部分もあるんだろうけれど。
 とにかく2トップの玉田と鈴木隆行の連係がまだまだ。鈴木は持ち前の運動量でボールに絡むものの、ミスが多くてイライラさせる(本人が試合後に反省していたのが救い)。一方の玉田は隆行とのバランスを考えすぎてか、やたらとボール・タッチが少ない。相手の力量(でかいのが取り得)を考えると不満感が否めなかった。
 加えて両サイドのアレックスと加地はあまり攻撃参加できず、遠藤と福西のダブル・ボランチはどこにいるんだかよくわからないし、俊輔はたまのスルーパスやセットプレーではっとさせる場面はあるものの、消えている時間が長い。俊輔のCKから福西のヘッドで先制こそしたものの、なんとももの足りなさの残る前半だった。まあ、先制点の場面は蹴った俊輔も決めた福西もさすがというプレーだったけれど。
 後半、相手の高さに負けてCKから同点に追いつかれる。ところがそのわずか1分後、早いリスタートから俊輔のスルーパスが隆行に通り、すぐさま突き放す。相手GKの動きをかわして落ち着いて決めたこの隆行のゴールは、それまでのミス連発を帳消しにするくらい、堂々としたものだった。いつもああいうプレーを見せてもらいたいものだと思う。
 なんにしろ同点にされたあとすぐに突き放すあたり、なんだか強い国って感じがしてきて結構嬉しい。さらに残り15分でピッチに立った柳沢が、これまた相手GKの隙を見逃さずにボールを奪い取り、無人のゴールへと流し込んで3点目。勝利を決定づけた。代表のスタメンを奪われた鹿島出身の二人がそれぞれに結果を残したことは喜ばしい。ま、現状では二人とも久保や玉田からレギュラーを奪うには到らない感があるけれど。
 ディフェンスに関してはたまーに不用意なプレーでピンチを招く悪癖はあいかわらずなものの、全体的に危なげのない試合運びができていると思う。特に中澤が代表に定着したのが大きい。3バックでいく限りはある程度安心して見ていられるようになってきた。あとは、いつジーコが4バックに戻す気を起こすか、それだけが心配だ。
 あ、もうひとつ。この試合の後半早々、坪井が相手からファールを受けた際に左太腿裏側に肉離れを起こして途中退場してしまった。全治4~6週間だそうで、アジアカップは絶望。気の毒なことをした。
 でもまあこのポジションは代わりに田中誠もいるし、代役としてひさしぶりに松田も招集されるそうだし、チームとしては心配はいらないだろう。なによりも松田の代表復帰がめでたい。これを機に宮本や坪井からスタメンを奪うような活躍を見せて欲しい。
(Jul 10, 2004)

日本1-0セルビア・モンテネグロ

キリンカップ/2004年7月13日(火)/横浜国際競技場/日本テレビ

 故障した坪井の代わりに田中誠が先発した以外はスロバキア戦と同じ布陣で臨んだ旧ユーゴスラビアことセルビア・モンテネグロ戦。唯一の得点の基点となったのは福西のスルーパスだった。そのボールに鈴木がワンタッチ、コースが変わって相手DFが反応しそこなう。その隙を突くように猛スピードでディフェンスラインの裏へと駆け上がってきたのが遠藤だった。GKとの一対一も落ち着いてかわして楽々ゴール。この目が覚めるようなプレーには本当にびっくりした。日本はこの一点を守り切ってジーコ監督になってから初のタイトルをものにした。
 ただ30度を超える中の試合だったというのに、交替枠を柳沢の一枚しか使わなかったジーコの采配は支持できない。どうしてあの人はああも腰が重いのだろう。最近ちょっとは動くようになってきたと思っていたのに、この試合ではまたもとに戻ってしまった。暑さのあまり、後半はすっかりだれ気味だったのだから、そんな時こそ本山あたりを入れて、かき回して欲しかったのに。勝っていたのでチームのバランスを崩したくなかったってことなんだろう。なんだかな。困ったものだ。
 この試合で好印象だったのが鈴木隆行と川口。隆行はあいかわらず精力的に動き回ってはファールをもらいまくっていた。あれは相手DFは嫌だろう。得点こそなかったものの、十分及第点の活躍を見せてくれたと思う。
 川口もこのところでは最高のプレーぶりだった。セルビア・モンテネグロのシュートはほとんどが真正面のミドルって感じだったけれど、どれもがっしりとキャッチして危なげがなかった。この日みたいなプレーがコンスタントにできるようになれば、楢崎から正ゴールキーパーの座を奪い返すことのできる日がくるかもしれない。
 試合終了後にアレックスが号泣していた。前日お祖母さんが亡くなったという訃報が届いて、精神的に厳しい試合だったらしい。ご冥福をお祈りします。
(Jul 14, 2004)

U-23日本0-1U-23チュニジア

2004年7月14日(水)/豊田スタジアム/TBS

 五輪代表のメンバー発表を二日後に控えた、最終選考の当確線上にいる選手たちにとってはとても重要な一戦。けれどチャンスらしいチャンスを作り出すことができず、オーバーエイジで招集が確実されている曽ヶ端の、普段は見たこともないようなイージーなミスから失点を喫して黒星に終わってしまった。
 スタメンは曽ヶ端、菊地、闘莉王、茂庭(彼が左サイドってのが意外だった)、鈴木啓太、前田(謎のボランチ起用)、駒野、森崎弟、松井、高松、坂田。後半始めから山本監督は川島、阿部、石川、平山を投入し、フォーメーションを4-4-2に変更するという不思議な采配をとる。駒野を右サイドに回し、阿部と茂庭が真ん中、左が菊地という形。さらに途中で田中達也と山瀬を送り出して交替枠はすべて使い切った。基本的にボーダーライン上にいる選手たちにラスト・チャンスを与えるという趣旨の試合だったから、それも当然。今野、徳永、大久保といったあたりの主力は使わずじまいだった。
 個人的に一番の好印象を受けたのは坂田。スピードがあって、足技も華麗で、ボールを受けるのも上手い。彼にはファースト・ステージの最終戦でもかなりいい印象を受けている。この先もっともっと伸びたら、フル代表でも貴重な戦力になるだろうと思う。個人的にはオリンピックに連れて行きたいと思う選手の一人なのだけれど、ただこのチームだと田中達也や大久保とかぶってしまう感はある。平山と高松の争いは多分平山で決まりだろう。高原のOAも決まりみたいだし、FWはこの四人で決まりかなという気もする。
 曽ヶ端は今日のミスが祟って今さら招集見送りなんてことにならないだろうな。そんな心配をしたくなるほど、ひどいミスだった。
(Jul 14, 2004)

オマーン0-1日本

アジアカップ/2004年7月20日(火)/重慶/BS1

 ここまでいいところのない試合を見せられたのもひさしぶりだ。アジアカップ予選リーグの緒戦の対戦相手は、困ったことにワールドカップ一次予選での最大のライバル、オマーン。なんなんだ、この巡りあわせは? 今年はずっとこの国に悩まされることになるんだろうか。まいってしまう。
 とにかくもう最初から最後まで攻められまくりって印象だった。どっちがディフェンシング・チャンピオンだかわかったもんじゃない。日本は暑さのせいか、はたまた全員そろっての体調不良か、中盤のプレスがまったく効いていない。対するオマーンは元気一杯。パス回しのリズムのよさは日本の比じゃない。俊輔が試合後のインタビューで言っていたけれど、まさしく自分たちがやりたいサッカーをものの見事に相手にやられてしまった感じだった。ただ、それでも勝てちゃうんだからサッカーはわからない。
 決勝点となった俊輔のゴールが決まったのは前半34分。セットプレーから相手DFがクリアミスしたボールを俊輔が拾い、ペナルティエリアへと切れ込んでDFをかわし、妙な体勢から左アウトサイドで技ありのシュートを放ってみせた。お見事。でも彼の活躍したのはこの場面のみ。あとはどこにいたんだかよくわからなかった。
 とにかくこの日の日本の中盤はメロメロ。みんないったいなにをしていたんだろう。本当に走れないほど暑かったんだろうか。アジアでここまで中盤での勝負に負けまくった日本代表を見たのは初めてだと思う。DFも最後の方はいくつか危ないシュートを打たれてしまっていたし。相手のシュートの精度が低かったのにはホントに救われた。あと、前回に引き続き川口が頼れる男ぶりを発揮してくれて助かった。彼と楢崎のスタメン争いの行方がおもしろくなってきた。
 まあ、なんにしろ勝ててよかった。どうせならば、これが日本の実力だとオマーンが誤解してくれて、次に対戦するワールドカップ予選で油断してくれると助かる。こっちは久保、中田、小野稲本を欠いて戦ってんだぜ。それを忘れるなよ。いや、忘れてもらった方がいいのか。ああ、なんだかなあ。彼らがいなくてもおれたちはこんなに強いんだぞ、というところを見せて欲しかったのに、全然逆の結果に終わってしまった。いやあ、手強かった。もしかしてこの大会の決勝でもう一回対戦する羽目にならないだろうな? とか言う前に日本はちゃんとイランに勝てるんだろうな。予選敗退なんてことになったら目も当てられない。
 いずれにせよ今日のスタメン(セルビア・モンテネグロ戦と一緒)の日本代表ではトップフォームとは言えないことはあきらかになった。今の俊輔にはまだまだ中田の代役は務まらない。ひさしぶりにヒデの不在を痛いと思った一戦だった。それなのに最後まで俊輔を使いつづけるジーコにも困ったものだと思う。彼は俊輔と心中するつもりなんだろうか。こんな時こそ小笠原を使って欲しいのに……。
 そうそう、この大会にジーコはFWを玉田と鈴木隆行の二人しか連れてきていない。久保、高原は故障中だし、メッシーナへの移籍が決まった柳沢は新しいチームに慣れるためにチームの合宿を優先したいという本人の意見が尊重された。結果、残ったのはこの日のスタメンの二人のみ。あとは本山と西で補うつもりらしい。実際に今日の選手交替はこの二人のみ。しかも残り20分とかいう時間帯で。暑いんだからもっと早く動いて欲しい。
 なんにしろFWを追加登録しなかったってのは、ジーコが当面はこれらのメンバーのみを代表だと見なしているってことなんだろう。あとは五輪代表の大久保(それに田中達也や平山ももしかしたら?)を待っていると見た。右サイドの加地の代役は石川なんだろうし。いずれにせよジーコのチーム作りの本当の形が見えるのはオリンピックが終わってからになるんだろう。それまで持てばいいけれど……。今日みたいな試合を今後も続けちゃうと、この大会が終わる前に解任って話がぶり返しそうだ。
(Jul 20, 2004)

U-23韓国0-0U-23日本

2004年7月21日(水)/ソウル/日本テレビ

 オリンピック代表が決まって初となる親善試合(鈴木啓太の落選が残念……)。この時期に韓国とアウェーで戦えるってのはとても意義深い。両者とも負けられないという意識が強いから、単なる親善試合とは思えない真剣勝負になった。ま、でも結果はドロー。三十度近い気温にやられてか、後半はほとんど両者とも攻め手を欠いた試合だった。それでも昨日のアジアカップのA代表とは違い、こちらのチームでは暑い中でもちゃんと中盤のプレスが効いていた。見習って欲しい。
 気がかりなのは、終盤に今野が負傷退場したこと。たいしたことがないといいけれど。あと、いくら韓国が手強いとは言え、これといった攻撃の形が作れていなかった点も気にかかる。決定的なチャンスは大久保がサイドに開いてクロスをあげた場面のみ。両サイドの攻め上がりや中盤からの崩しといった形はまったく見られなかった。後半から途中出場した石川、松井も持ち前の攻撃力を見せられず仕舞い。残念だった。
 そういえば曽ヶ端があいかわらず安定感を欠いているのも気がかりだ。なんだかこう書いていると、心配事ばかりのような気がしてくる。
(Jul 21, 2004)

タイ1-4日本

アジアカップ/2004年7月24日(日)/重慶/BS1

 この試合で日本は無難にグループ・リーグ突破を決めた。直前のイラン-オマーン戦が引き分けだったため、勝ち点6をあげた日本の2位以内が確定した。
 しっかしそのイラン戦でのオマーンの強かったこと。日本戦が始まるまでの間、夕食を取ったりしながら敵情視察とばかりに観戦していたのだけれど、前半を2-0で折り返した時には、こりゃまずいことになったと思った。そのまま勝ってしまうと、最終戦で万が一日本が負けた場合に3チームが勝ち点6で並ぶという厳しい結果になりかねなかったからだ。最終的にはイランの高さとしぶとさにやられて追いつかれ、一安心ではあったものの(そう思ってしまうのもちょっと情けない)、試合内容ではオマーンがイランを圧倒していた。あの強さはホンモノなんじゃないだろうか。驚いたことにオマーンはこの大会の予選で韓国を3-1で破っているのだそうだ。ますます10月13日のW杯予選での対戦がおっかなくなってきた。まだ三ヶ月も先の話だけれど、その日のことを思うと今から緊張してしまう。まいったな。
 さてそれはそうと、このタイ戦。勝ちこそしたけれど、前半の戦いぶりはあまり誉められたものではなかった。またもやほとんどプレスの効かない、前の試合と同じような、だらしのない内容だった。おまけに相手のFWの個人技でDF三人が振り切られて、豪快な先制点まで許す始末。あまりの不甲斐なさに腹が立った。
 それでも今の日本代表はなぜか負けない。俊輔のFKで同点に追いついて、前半をイーブンに戻して終了した。この俊輔の得点は、壁に立った選手がちゃんとジャンプしなかったおかげで決まったようなものなので、ある意味ラッキーだったと思う。それともあれは、俊輔のキックが素晴らしくて、敵がちゃんと防げなかったと見るべきなんだろうか。そんなことはないと思うけれど、サッカーには意外性がつきものなので、僕には読みきれないプレーの裏があったりするのかもしれない。
 後半の頭からジーコは珍しく選手を入れ替えてくる。田中誠を下げて4バックとし、小笠原を投入。同時にプレイ中に腰を痛めたという玉田を下げて、本山を入れる。鈴木隆行のワントップに、俊輔と本山のトップ下2枚、小笠原は流動的にという指示だったらしい。これがちゃんとはまる。前半とは見違えるようにボール・ポゼッション率が高くなり、試合をきちんと支配できるようになった。その結果がセットプレーからの3点(中澤が足と頭で2点、福西の頭)につながったのだろう。セットプレーからしか得点ができなかったことを杞憂する意見もあるけれど、僕はあれだけボールがきちんと回せていれば問題がないと思った。
 それよりも僕としては今までジーコがあまり買っていなかった4バックの方が、現行の3バックよりも機能してしまったことの方が問題のような気がする。ここしばらくの3バックは正直なところ、全然よくないと思っていた。いわゆる黄金の中盤が俊輔しか残っていないチーム状態により仕方なく採用されたこのシステムだけれど、両サイドのアレックス、加地があまり攻撃参加しない(できない?)上に、トップ下の俊輔がほとんどボールをキープできない状態では、単に最終ラインの負担が増えるばかりだろう。だから攻め上がれない両ウィングはディフェンスに専念させてしまい、中盤の枚数を増やして俊輔の負担を減らすという用兵は的確だったと思う。というか、4バック好きのジーコが今の今までこの形をとらなかったことの方が不思議にさえ思える。
 ただ4バックだとどうしてもまだディフェンスに関しては不安を覚えてしまう。相手がタイだったから問題ないけれど、これがオマーンや次のイランで通用するかという不安がある。その不安を払拭する意味でも、次の試合は最初から4バックで臨んでもらいたいと思っている。あと、できればサブのメンバーももっと使って欲しい。決勝までゆくつもりならば、あと4試合は戦わなくちゃならないことになる。休ませることができる時には主力を休ませるのも監督の仕事のうちだろう。このタイ戦では3枚目のカードを切り、福西に代えて中田浩二(!)をピッチに投入したのは残り時間がほとんどなくなってからだった。代えるならば3点目をとって2点差とセーフティ・リードにしたあとすぐでしょう、ジーコ先生。本当に選手起用に関してはもっと気を使って欲しいと思う。
(Jul 26, 2004)

U-23日本0-1U-23オーストラリア

2004年7月25日(日)/長居スタジアム/テレビ朝日

 今野、松井が負傷で出場できないという事態に、山本監督は菊地をボランチ、森崎浩司をトップ下で起用するという布陣を引いてきた。森崎のトップ下もそうだけれど、菊地のボランチってのには特にびっくりした。でも調べてみたら、彼は本職がMFらしい。DFとしての登録の方が彼にしてみれば不本意なのかもしれない。なにはともあれ、この二人が(もしかしたら本来のポジションだからなのか)とてもいい動きを見せていた。そういえば森崎の代わりに左サイドに入ったのは駒野。彼もよかったし、なるほど、登録選手が十八人と限られているなか、こういう風に本来期待しているポジション以外でもきちんとした仕事のできるタレントを揃えたのかと納得。山本さんがボランチ専門の鈴木啓太を落選させた理由がよくわかった試合だった。
 それにしてもこのチームは点が取れない。得点力不足が響き、気がついてみれば、今年に入ってからは2勝2敗6分。2点以上とったのは勝った2試合だけで、ここ3試合は連続無得点。こんなことで大丈夫なのかと不安になる。山本さんはトルシエのチーム運営を踏襲して、選手をこまめに入れ替えることでチーム内での競争意識を高める方法をとっている。結果、オリンピック本番まで三週間を切ったこの時点でも当日のスタメンが見えて来ない。これではコンビネーションも高まりようがない。同じ選手を延々と使い続けて顰蹙{ひんしゅく}を買いながらも、今年に入って10勝1敗1分という好成績を残しているジーコとは対照的だと思う。
 どちらかというと僕はジーコのやり方の方に共感を覚える。トルシエのチームを見ていた時にも書いたことだけれど、力が足りないグループを鍛えてゆくには、少数精鋭により多くの実践を踏ませて経験値を高めていくのが一番の早道だと思うから。ジーコのやり方は極端すぎて、あれはあれで問題があるけれど。でも山本さんやトルシエのやり方では、伸びしろがあるのだけれど、自力ではそれを十分に延ばすことのできない選手(俊輔がそうだと僕は思う)が本当の力を発揮できないで終わってしまう気がする。そういう選手を伸ばすには、根気強く機会を与え、経験を積ませてゆくしかないんじゃないだろうか。今のジーコは俊輔にそうした機会を与えているのだと思っている。だから出来が悪くても最後までフル出場させているんだろう(かなり好意的な見方なのかもしれないけれど)。
 僕は山本さんがトルシエ流を踏まえるがゆえに、松井大輔を不動の司令塔として、大久保を絶対的なエースとして扱わなかったのが今の得点力不足の大きな理由のひとつなのではないかと思えて仕方ないのだった。
 それはそうとこの日のオーストラリアはなかなか強かった。どうもオーストラリアというとW杯に出場できない弱い国というイメージが強いのだけれど、どっこいこの世代はU17の世界大会で準優勝しているのだそうだ。先日のチュニジアも馬鹿にできなかったし、オマーンの成長も侮れない。欧州選手権ではギリシャが優勝したし、世界サッカーの勢力地図は日々更新されているのだなあと思う。あ、でも南米選手権の優勝はブラジルで、決勝の対戦相手はアルゼンチン。あの大陸はまた話が違うのかもしれない。
(Jul 26, 2004)

イラン0-0日本

アジアカップ/2004年7月28日(水)/重慶/BS1

 結局ジーコは予選リーグの三試合をずっと同じスタメンで通した。フォーメーションも当然3バック。交替カードは鈴木→本山の一枚のみ。でもって結果はスタメンのディフェンダー三人を欠くというイランを相手にスコアレス・ドローだ。なってない。
 この試合に関しては今までの二試合と比べると随分とプレッシングが効くようにはなっていた。両サイドのアレックスと加地の攻撃参加も増えた。玉田も前の二試合より動きが良かった。それでも結局スコアレスで引き分け。日本は既に決勝トーナメント進出が決まっていたんだから、負けたっていいと開き直って、少しくらい冒険心を見せて欲しかった。対するイランは負けちゃまずいけれど、引き分けならばOKということで、あまり無理はしてこない。そんなチームを相手にこちらはフル・メンバーで引き分けだ。気分としては負けに近いものがある。
 なんたってスコアレスなのに、最後の10分は最終ラインでボールを回してばかりでまともに戦っていなかったのが腹立たしかった。このチームは最後まで諦めずに勝ちにゆくんじゃなかったのか、ジーコ。
 確かにこのグループで一位になるのと二位に終わるのでは決勝までの難易度が違ってくる。もしも二位になっていれば準々決勝の対戦相手は韓国、準決勝の対戦相手はホスト国の中国の可能性が高い。一方、一位抜けの場合の対戦相手は準決勝がヨルダン、準決勝がウズベキスタンとバーレーンのいずれか。どちらが難易度が高いかはおのずからあきらかだ。
 それでもさ、それを避けたいからってスコアレスの試合で残り時間十分近くをディフェンスラインでボールを回して済ませちゃうなんて、あまりにも不甲斐ない。この試合で初めてサッカーを見た人がサッカーを好きになることはまずないだろう。そんなつまらない試合を見せられて残念でたまらない。過酷な暑さの中、勝つ必要もない試合で最後まで走れって言うのは選手に酷かもしれない。けれど、それでもファンとしては最後の最後までゴールを狙う姿勢を見せて欲しかったと思わずにはいられなかった。
 こんな試合を見せられてまでグループ・リーグ一位を確保したのだから、この先はきちんと決勝まで進んでもらわないと割にあわない。準々決勝の対戦相手ヨルダンは韓国と同じグループを無失点で乗り切ったそうだ。そんな守りの堅いチームからいかに点を取って見せるのか。見せてもらおうじゃないか。
 あ、そうそう、この試合が引き分けに終わったことにより、イランがグループ2位を確保、オマーンのグループ・リーグ敗退が決まった。この試合にもしも日本が3-0とかで勝っていたら、オマーンが逆転で2位となるところではあった。決勝トーナメントで韓国や中国と戦うことになれば、やつらの経験値はますます高まったことだろう。そういう意味では、この試合、イランの単独2位を決める意味で日本にとって引き分けは最良の結果だった言える。これこそ大人の試合運びってことなのだろう。ケチをつけずにいられない僕はまだまだ子供だ。
(Jul 28, 2004)

U-23日本4-0ベネズエラA代表

2004年7月30日(金)/国立競技場/テレビ朝日

 オリンピック本番直前、国内最後の親善試合は途中出場の二人を含めたFW4人全員がゴールを決めて終わるという願ってもない結果になった。相手のベネズエラはA代表といいながら若手中心で力不足だったようだけれど、それにしたってこんな風にすっきりとした勝ち試合を見るのはひさしぶりだったから気分がいい。大久保、平山、高松、田中達也、それぞれが持ち味を見せてくれた。どれもすばらしいゴールばかりだった。松井も最初の三点すべてに絡む活躍(まあ、俊輔と一緒で、それらの場面以外は消えている時間が長いのが欠点だといえば欠点だけれど)。ディフェンスも問題はないし、いいところばかりが出た試合で、爽快この上なかった。
 スタメンは曽ヶ端、茂庭、闘莉王、那須、徳永、今野、阿部、森崎、松井、大久保、平山。曽ヶ端は前の試合で起用されなかったので、もしかしたらこのところの不安定なプレーが祟って山本さんに見限られたかと心配していたのだけれど、この試合ではちゃんとスタメンに名を連ねていてまず一安心。相手の攻撃力が足りず、ほとんど仕事らしい仕事をする機会がなかったので、信頼感を高めることはできなかったのが残念なくらいだ。
(Jul 31, 2004)

ヨルダン1-1(PK:3-4)日本

アジアカップ準々決勝/2004年7月31日(土)/重慶/BS1

 ジーコは{かたく}なにスタメンを固定し続ける。この試合もグループ・リーグの三試合と同じメンバーだった。おそらく誰かが怪我でもしない限り、残りの二試合も同じスタメンで臨むんだろう。でもそれでいいのか、見ているこちらとしてはとても疑問だ。みんなやたらとへばって見えるから。
 準々決勝の対戦相手ヨルダンは、なんとW杯第一次予選をイランと同じグループで戦いながら、ここまで失点0で首位に立っているのだそうだ。決して侮れる相手ではないという噂は聞いていたけれど、実際に対戦してみると、球際に強い上に攻守の切り替えが早く、なんとも手強い相手だった。
 とはいってもこの日の日本代表も出来はよくなかった。というかこの大会に入ってからは、なんとか勝ちあがってきてはいるものの、サッカーの内容自体は全然よくない。今のメンバーで戦うようになってから、納得のいく試合を見せてもらったことは一度もない気がする。確かに負傷者が多くてベスト・メンバーが組めないのは気の毒だと思うけれど、それにしたって日本にはほかにももっとタレントがいるだろう。それを見つけ出して、最善のチームを作るのが代表監督の役目なはずだ。ジーコは日本という一国の戦力をきちんと使い切っているようには見えない。そういう点では代表監督として及第点を与えられないと思っている。
 ただしジーコが監督になって以来、日本にある種の勝ち癖がついているのもまた事実だと思う。去年のアウェイでの韓国戦やW杯予選でのオマーン戦でのロスタイムでの決勝ゴール。最近のスロバキア戦やタイ戦での失点直後の同点ゴール。そしてこの日のPK戦での奇跡的な勝利。そうした勝負強さ、しぶとさといったものは今までの日本代表にはなかったものだ。それらが選手たちの精神的な成長の結果であり、それはジーコの放任主義がもたらしたものなのかもしれない……。そんな気もしているので、一概にジーコを非難するのも躊躇{ためら}われる。もとよりジーコという人は僕にサッカーのおもしろさを教えてくれた恩人ともいうべき人だ。できれば非難したくないという気持ちはある。結果、僕は今の日本代表に対してどういう態度をとっていいのか、わからないでいる。勿論、応援する気持ちは衰えないものの、本当に今のままのジーコ路線でこの先を進んでいっていいのかというと肯定し切れない。うーん、なんとも悩ましいこの頃のA代表だった。
 とにかくこの日の試合は散々だった。大会通じての中盤での競り合いの弱さはあいかわらず。というか、前のイラン戦で若干上向きに思えたものが、この試合では疲労の蓄積からか、またもとに戻ってしまったような印象があった。ポゼッションを高めて試合を優位に運ぶことを本望とするはずの日本が、逆に相手にボールを回されてしまっているんだから話にならない。ボールに絡む積極性を欠く俊輔一人が司令塔のポジションにいる今のフォーメーションでは、こうした状況は改善できないのではないかと思う。
 いや、この大会の俊輔のキックの精度の高さには敬意を表する。セットプレーは今の日本の大きな武器だ。けれどその反面、彼の動きの少なさがチームの攻撃から勢いを殺いでいる感も否めない。カウンターからの攻撃で彼にボールが渡った時に、そこでスピードが落ちて攻撃の芽が摘まれてしまう、なんてシーンが何度もある。そういう人が司令塔のポジションにいるからなのか、チーム全体としての攻守の切り替えが遅すぎる印象を受ける。ロング・パス一本でシュート・チャンスを作る形以外には、カウンターで得点できそうな雰囲気がない。守ってばかりという印象のチームがカウンターで勝負できなければ苦戦は必死だ。
 現状では中盤が俊輔一人では試合を支配できないのはあきらかだ。だから僕は4バックにしてもう一人小笠原か藤田を起用するべきだと思っているのだけれど、ジーコは現在の3バックの安定感を買っているのか(特に中澤のパフォーマンスは出色)、いっこうに4バックに戻す素振りを見せない。多分、この大会は残りの二試合も同じスタメンで同じような戦い方をして苦戦を強いられることになるんだろう。困ったものだと思う。
 左サイドを崩されて思わぬ先制点を献上したこの試合は、その直後に俊輔のFKからGKがファンブルしたボールを鈴木が押し込んで同点とする。その後は延長戦の30分も含めて得点が動かないままドローで終わった。
 そして怒濤のPK戦が始まる。
 これがなんと俊輔、アレックスの二人が続けて足を滑らせてPKを失敗するという最悪の入り方になってしまったのだった。あまりのことに足場の悪さを抗議した宮本の発言を受けて、レフェリーはヨルダンの二人目が蹴る前に急遽ゴールを反対サイドに変更する。当然自分がもう一度蹴れるものだと思ってボールをセットしようとしたアレックスの行為は却下される(そりゃそうだろう)。ヨルダンの二人目(左利き)は無難にPKを決めて2-0。ああ、日本のアジアカップ連覇はこの時点で風前の灯の感があった。
 ところがここから奇跡の逆転劇が待っていた。「奇跡」という言葉を使うのは好きじゃないんだけれど、この日のPK戦での勝利には本当にこの言葉を使いたくなるような感動があった。
 三人目の福西は落ち着いて決める(えらいっ!)。ヨルダンの選手も決めて3-1。ここから先は一本でも外せば日本の負けが自動的に決まるという場面でキッカーに立ったのは鈴木隆行。外しそうで恐かったけれど(失礼)、無事に決めてくれて3-2。次のヨルダンの選手が決めれば日本の負け。ここで川口がふんばる。見事な読みで左に飛んで、弾いたボールがバーにあたってゴールならず。よっし!
 日本の五人目、中田浩二。真正面に蹴ったボールはGKにあたるも(こわい!)ゴール。3-3。ようやく日本のタイ。でも次が決まれば日本の負け。ここでヨルダンのPKが外れる。よっしゃーっ、3-3でイーヴンだっ!
 サドンデスの延長に突入して一人目は中澤。ところが彼が止められてしまう。あーっ。それでもこの大会での中澤の攻守に渡る活躍を見ていると、彼が止められて負けるんならそれは仕方ないと思う。既に見ているこちらは諦めムード。
 ところがっ。次のヨルダンの選手のキックも川口が4本目のリプレイとでもいうような形で止めてくれてしまうのだった。カワグチ~っ! なんていいやつ。
 7人目の宮本が難なく決めて、このPK戦で初めて日本はヨルダンからアドバンテージをとった。そしてヨルダンの七人目のシュートがポストをたたく……。
 日本代表、準決勝進出決定。いやあ、しびれた。最後のシュートがポストをたたいた時には思わずソファから躍りあがってしまった。120分間じれったいゲームを見せられた後にこんな感動が待っていようとは……。サッカーはおもしろいとあらためて思った。
(Aug 01, 2004)