2021年1月の本
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- 『心は孤独な狩人』 カーソン・マッカラーズ
心は孤独な狩人
カーソン・マッカラーズ/村上春樹・訳/新潮社
はからずも新年最初の一冊は村上春樹氏の本というのがここ数年の習慣になっている。あくまで読み始めるのがというだけで、読み終わるのはたいてい同時進行で読み始めたべつの本だったりするけれど、今年はちゃんとこの本を読み終えました(まぁ、どれだけ読書量が減っているかという証拠のような気がしないでもない)。
ということで、2021年の最初の一冊はこれ。『結婚式のメンバー』につづく村上春樹の翻訳によるカーソン・マッカラーズの処女長編小説。
でもこれ、言われなかったら二十台前半の女性が書いたデビュー作だとはとても思えない。『結婚式のメンバー』は少女目線のとても初々しい作品だったのに対して、こちらはとても熟成した印象の作品だったから。おまけに上下二段組で四百ページ弱とボリュームもたっぷりなもんだから、僕は解説を読むまで、ある程度作家歴を踏んでから書いた代表作だと思っていた。デビュー作でこんな作品を書いた作家って珍しいんじゃないだろうか。もうびっくり。
この作品でマッカラーズが描くのは小さな南部の街を舞台にした群像劇。ひとりの(同性愛者の?)聾唖の男性を中心として、そんな彼に夢中な少女、彼女にひそかに思いを寄せるカフェの中年店主、その店の常連の社会主義者に、生真面目な黒人の老医師。そんな老若男女の織り成す人間模様をスパイラルに、まるで何十年も生きてきた人のような筆致で丁寧に描き出してゆく。それはもう見事に。
真の文才がある人にとっては、年齢なんて関係ないって証拠のような作品だと思う。
(Jan. 25, 2021)