2019年10月の本

Index

  1. 『死者のあやまち』 アガサ・クリスティー

死者のあやまち

アガサ・クリスティー/田村隆一・訳/クリスティー文庫/早川書房/Kindle

死者のあやまち (クリスティー文庫)

 よる年波に負けて、すっかり本が読めなくなってしまって、このままだと十月は一冊も本を読まずに終わってしまいそうだったので、ならばクリスティーがつづくにしても読まないよりもましだろうということで読んだ一冊。
 クリスティーが連発になったのは、そういう理由だったけれど、その作品が、意外や、ふたたびポアロものだった。そろそろクリスティーも残り作品が少なくなってきたので、ここへきてポアロものが二冊もつづくとは思わなかった。
 物語は、ミステリ作家のオリヴァー夫人からの一方的な呼び出しを受けて、彼女が滞在中の屋敷へと出向いたポアロが、その屋敷で発生した殺人&失踪事件に頭を悩ませるという話。
 被害者は三人いるけれど、そのうち殺人であることが明確なのはひとり(しかも少女)のみで、あとは「殺されたに違いない」と「殺されたかもしれない」なので、いまいちミステリとしては地味な印象(現実世界では派手でない時点で良心的)。でもそれゆえか、まったく犯人の見当がつかない。そこがこの作品の長所かもしれない。
 ただその半面で、個々のキャラクターの描写が淡白なので、そのうちのひとりが犯人だといわれても、意外性がないのが欠点。ここまで犯人がわからないのに、わかった瞬間のインパクトもない作品もクリスティーにしては珍しい気がした。
 でもまぁ、もしかしたらそれは僕の読書力の衰えによるところも大きいのかなという気がしなくもない。ほんとうに本が読めねぇ……。
(Oct. 31, 2019)