2019年2月の本
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星の王子さま
サン=テグジュペリ/浅岡夢二・訳/ゴマブックス/Kindle
僕はあまり読書とは縁のない家庭で育ったので、子供のころに童話や児童文学をたしなんだ時期がまったくない。
記憶にあるいちばん古い読書体験はシャーロック・ホームズや江戸川乱歩だし(最初から殺人事件)、そんな読書歴を持つ男が、それ以前にさかのぼって児童文学を読もうなんて思うはずもなく。大学時代に英米文学の基礎教養として『不思議の国のアリス』くらいは読んだけれど、結局、児童文学はそれが最初で最後くらいの勢い。
ということで、いまごろになって生まれて初めて読みました、『星の王子さま』。理由はいつものパターンで、Kindle版がディスカウントで安かったから(百円とかだった)。
でまぁ、傑作といわれるだけあって、それなりにおもしろかったけれども、やはり五十すぎの中年男では感じ入るにも限度があるなぁと。こういう作品でわざわざあらすじを書くのも興ざめだし、となると、これといって書くことがない。なぜこの電子書籍の挿絵はこんなに小さいんだろうと不思議に思うばかり。
とりあえず、イノセンスとナンセンスとアイロニーたっぷりで、最後にちょっぴりペーソスが加わっているところが人気の秘訣とみました。
──って。あぁ、なんて身もふたもない。
(Feb. 13, 2019)
タランチュラ
ボブ・ディラン/片岡義男・訳/KADOKAWA/Kindle
ボブ・ディランが六十年代に書いた小説――だかなんだかよくわからない本のKindle版。翻訳家は僕らが高校生のころに『スローなブギにしてくれ』などで一世を風靡した片岡義男氏。
いやしかし、これは僕にはまったくなにがなんだかわからなかった。片岡氏はあとがきで「ボブ・ディランの『タランチュラ』は、難解である、とよく言われているが、けっしてそのようなことはない」と書いているけれど、もはや難解だとかいう以前の問題な気がする。ほんと、なにが書いてあるか、さっぱりわからない。
言葉のひとつひとつがつながりを欠いたまま、自由きままにコラージュされている感じ。もしかしたら、ディランの歌詞に通じている人ならば、その言葉の断片を彼の音楽とリンクさせて豊かなイメージを喚起できたりするのかもしれないけれど、詩人ボブ・ディランの世界にきちんとコミットできていない僕にとっては、意味不明な言葉のつらなりでしかなかった。
通常の書籍だとわずか141ページの薄い本らしいから、読むのにそんなに時間はかからなかったけれど、それにしても、これだけ意味不明な本を、意味不明なまま、よくぞ最後まで読みきったもんだと。ちょっとだけ自分で自分に感心しました。
──いや、もしかしてすごいのは、こんな意味不明な本をちゃんと最後まで読ませるボブ・ディランなのか?
(Feb. 13, 2019)