2013年1月の本
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- 『リトル・シスター』 レイモンド・チャンドラー
リトル・シスター
レイモンド・チャンドラー/村上春樹・訳/早川書房
旧訳の『かわいい女』を読んだときにも書いたけれど、これは個人的にチャンドラーの全作品中、もっとも新訳が必要じゃないかと思っていた作品だから、それが村上春樹氏の翻訳で、しかもわが意を得たりの『リトル・シスター』というタイトルで読めるようになったのは、単純にめでたいと思う。
今回この新訳版で再読してみて意外だったのは、思いのほか読みでがあったこと。旧訳のときはもっとさらっと読めた気がしたのに、今回はけっこう時間がかかってしまった。まぁ、チャンドラー作品はどれも清水訳よりも村上訳のほうが言葉数が多くて、噛みごたえがある印象なので、単にこれも例外ではなかったってだけかもしれない。
あと、本作で用いられている比喩の多くが、僕にはとても村上春樹っぽく感じられた。いままでの二作品と比べて特別にそう思ったのは、単にこれまでそこに思い至らなかった僕の注意不足が原因で、実際には大差ないのかもしれないけれど、少なくても僕はこれを読んで初めて、村上春樹がチャンドラーに影響を受けているというのが、よくわかった気がした。
作品として好きなところは、美女三人──まぁ、オーファメイも美女とするならば──とマーロウの関係性。三者三様、それぞれに微妙な距離感がいい。『プレイバック』は例外として、ヒロインと一定の距離を保ち、越えようと思えば簡単に越えられそうな一線を決して越えないでいるストイックさが、マーロウの魅力の一端ではないかと思ったりする。
(Jan 23, 2013)