2008年11月の音楽

Index

  1. 4:13 Dream / The Cure
  2. カンテ・ディアスポラ / ソウル・フラワー・ユニオン
  3. Intimacy / Bloc Party

4:13 Dream

The Cure / 2008 / CD

4:13 Dream

 ザ・キュアーの4年ぶり、通算13枚目となるスタジオ・レコーディング・アルバム。
 先行シングル4枚がどれもキュアーらしさ全快ながら、出来としては平均的に思えたので、不覚にもこのアルバムにはそれほど大きな期待を寄せていなかったのだけれど、いやこれがいい。めちゃくちゃいい。シングル同様、やはり一曲一曲は平均的で突出した楽曲はないものの、それがアルバム単位にまとまったときのインパクトが絶大。これぞまさに僕の大好きなキュアーだ~、と叫びたくなるくらい、会心の仕上がりになっている。
 僕はキュアーの音楽を聴くと、胸の真ん中が熱くなる。いい曲だと思って感動するとか、踊らずにはいられなくなるとかいうだけではなく、実際に胸の中になんらかの熱を持った物体が生まれたような、せつない感動をおぼえる。音楽を聴いて興奮することは数あれど、そんなふうな感動を与えてくれるバンドは、ほかにない。僕がキュアーを──ロバート・スミスという人を──特別視するのは、この熱のせいだ。
 今度のアルバムにも、そんな胸の奥を熱くさせてくれる音楽がいっぱい詰まっている。というか、今回の作品では前の2枚よりも、その発熱の温度が高いように思う。そして音がみずみずしく、若々しい。もう素晴らしいったらありゃしない。ロックが好きでよかったと、心の底から思わせてくれる最高の作品。
(Nov 28, 2008)

カンテ・ディアスポラ

ソウル・フラワー・ユニオン / 2008 / CD

カンテ・ディアスポラ

 ソウル・フラワー・ユニオン、3年ぶりのニュー・アルバムは、全15曲で70分を優に超える力作となった。
 今回の作品で印象的なのは、コーラスワークが充実していて、アンサンブルがじつにしっかりしていること。ホーンやバイオリンの音がバンドの音に自然に溶け込んでいて、非常に安定感のあるアルバムに仕上がっている。いい歌をいい演奏で聴かせるんだというバンドの姿勢が音として表れた結果なのだろうと思う。
 ソウル・フラワーはいまも昔も、戦争に苦しむ世界を見据えつつ、関西人ならではのユーモアを交えながら、陽気なロックンロールを鳴らしつづける。以前とくらべると音楽的にはずいぶんマイルドになったけれど、基本的な姿勢はおそらく変わっていない。とびきり真面目なくせに、いっこうにしかつめらしくならない──なれない?──ところにも共感せずにはいられない。ソウル・フラワーはいまだ、もっとも信頼すべき日本のロック・バンドのひとつだと思っている。
 今作のマイ・フェイバリット・ナンバーは2曲目の 『愛の総動員』 。なかなかすごいタイトルのとてもポジティブなナンバー。いまさらながら、シングルの 『海へゆく』 もとてもいい曲だと思った。これらの曲を生で聴くためにも、ひさしぶりにライブ・ハウスに足を運ぼう。
(Nov 30, 2008)

Intimacy

Bloc Party / 2008 / CD

Intimacy

 ここ数年でデビューしたUKバンドのうちで、僕がもっとも気に入っている──でもって一般的にも、おそらくもっとも成功している──バンドのひとつ、ブロック・パーティのサード・アルバム。
 一聴したとたんにわかる前の2枚との違いは、やたらと音がラウドになっていること。もともとリズム隊がダイナミックなバンドだったけれど、今回の作品ではそれが「すわ、ケミカル・ブラザーズか」と思わせるくらいに、よりビッグ・ビート寄りのダイナミックさになっている。こりゃライブでみたらとても盛りあがりそうだ。
 楽曲も、歌詞の詳細まではわからないものの、タイトルだけみると 『アレス』 『マーキュリー』 『トロイの木馬』 『タロス』 などなど、ギリシャ神話からの引用が多いのが特徴。どうにも音にしろ曲にしろ、思いがけない形で、やたらと大仰になっている。
 それでもこれはこれでいい。細かいところはわからないけれど、音のダイナミズムが増した分、単純に盛りあがれる。キュアーの新譜を入手するまでは、この暮れの僕のフェイバリットはこのアルバムじゃないかってくらい、くり返し聴いていた。このバンドもぜひまたもう一度、ライブを観たいと思う。
(Nov 30, 2008)