2008年10月の音楽

Index

  1. 新しい季節へキミと / エレファントカシマシ
  2. 座禅エクスタシー [DVD] / 椎名林檎

新しい季節へキミと

エレファントカシマシ / 2008 / CD+DVD

新しい季節へキミと(初回盤)(DVD付)

 前作につづいて亀田誠治をプロデューサーに迎えてのエレカシの最新シングル。
 亀田師匠がエレカシを手がけると、不思議と音がきらびやかな方向へ向かうようで、今回もイントロのキラキラとしたギターとストリングスが印象的な、ハードさよりも軽快さや華やかさがめだつ楽曲となっている。僕としては亀田師匠には、ときおり椎名林檎でやってみせるように、もっとグランジ系のアプローチでもって、とんがったエレカシを演出してみせてくれやしないかと期待しているので、こういう方向の仕事ばかりがつづくのは、やや残念なところだ。
 まあ、宮本の伸びやかなボーカルは今回も気持ちがいいし、楽曲自体も疾走感があってなかなかだとは思う。けれど、やみくもにポジティブな歌詞は 『桜の花~』 同様、あいかわらず付け焼刃な印象を否めなくて、僕はほとんど共感できない。僕個人はこういうエレカシには、どうしても入れ込めないのだった。だから盛りあがりはいまひとつ。
 まあ、ただその分、バランスをとったかのように、カップリングの 『It's my life』 では、昔ながらの武骨な宮本節が炸裂しているし、ボーナスDVDでは今年の野音のステージが45分間も見られるのが、ファンとしては嬉しいところ。DVDの選曲が、この夏の各種イベントを思い出させるセットリストになっているのも一興だった。
(Oct 25, 2008)

座禅エクスタシー

椎名林檎 / 2008 / DVD

座禅エクスタシー [DVD]

 椎名林檎のデビュー十周年記念リリース第二弾は、八年前にインターネット限定で公開された伝説のライブ映像のDVD版。これほど待望の二文字がふさわしい作品はまたとない。
 このライブ、僕は公開当時にインターネットで観ている。とはいっても、ときはナローバンド時代。ちっちゃなウィンドウを立ち上げて、AMラジオにも及ばない音の悪さを我慢しながら、途切れ途切れ聴いたライブだったので、内容なんてほとんど覚えていなかった。
 それを今回、こうしてDVDで観てみて、あらためて、こんなマニアックな選曲でやったのかと、そのレアさ加減に感心してしまった。だって 『ここでキスして。』 も 『本能』 も 『ギブス』 もぬきで、シングルのカップリング曲やら 『少女ロボット』 やらの、アルバム未収録曲多数。本編のラストが 『ストイシズム』 って、そりゃいったい……。いまさら未発表曲まで収録されているし、いやぁ、これはおもしろすぎる。
 日本情緒あふれるお座敷演芸場を舞台に、鶯色の着物をしどけなく着こなした林檎さんが、ショートカットを乱しながらリッケンバッカーをかき鳴らす艶姿は、日本ロック史上に残る名場面のひとつだと思う。 『下克上エクスタシー』 『Electric Mole』 と並び、椎名林檎の第一期ライブ三部作として、わが家の家宝となること確定の一品。
(Oct 25, 2008)