2006年6月の音楽

Index

  1. The Preacher's Son / Wyclef Jean
  2. The Prodigy Presents: The Dirtchamber Sessions, Vol.1 / V.A.
  3. 町を見下ろす丘 / エレファントカシマシ

The Preacher's Son

Wyclef Jean / 2003 / CD

Preachers Son

 フージーズもすっかり過去の一発屋的な存在になってしまい、ワイクリフ自身、ヒットチャートとも縁がなくなって、新譜が出てもあまり話題にならないみたいで。まあ僕自身のアンテナの鈍さも手伝って、この作品もリリースされてから半年以上、その存在を知らないでいた。おまけにタイミングを逃したせいで、すでに安くないし。絶対に聴かないといけないという人でもないので、保留を続けているうちに3年も過ぎてしまった。その間に別の作品がもう一枚リリースされていたりするし。もうそろそろこの人もフォローしなくていいのかなと思う今日この頃なのだけれども。
 いやでも、この作品が意外と悪くない。ポップ・センスはあいかわらずだし、ミッシー・エリオットやカルロス・サンタナなどゲストも豪華だし──コンピレーションかと見まがうばかりのゲストの多さはある意味どうかと思うけれど──、もう少し話題になってもいい作品に思える。これならばもうしばらくフォローし続けてもいいかなと思った。
(Jun 25, 2006)

The Prodigy Presents: The Dirtchamber Sessions, Vol.1

V.A. / 1999 / CD

Dirtchamber Sessions 1

 プロディジー絡みの作品ながら、なんだか正体が知れなくて、ずっと気になっていたアルバム。ようやく買って聴いてみたら、リアム・ハウレットによるDJミックス・アルバムだった。実に50組におよぶアーティストの楽曲を切り貼りして、8トラックにまとめたものだ。僕が知っている名前はケミカル・ブラザーズ、シャーラタンズ、ジェインズ・アディション、ハーヴィー・ハンコック、ビースティー・ボーイズ、セックス・ピストルズ、ファットボーイ・スリム、プライマル・スクリーム、パブリック・エナミー、JBズ、LLクールJ、などなど。その他、聞いたこともないような名前がずらりと並んでいる。じっくりと聞き込むようなタイプのアルバムではないけれど、これはこれでなかなかおもしろかった。
(Jun 25, 2006)

町を見下ろす丘

エレファントカシマシ / 2006 / CD

町を見下ろす丘

 『風』から2年ぶりとなるエレカシの新作。このアルバムでエレカシのスタジオ・レコーディング作品も実に16作目となる。あまり気にしていなかったけれども、それってすごい数だ。気がつけばいつの間にか、スライダーズはもとより、サザンや佐野元春さえも抜いてしまっている。まあ、売上が多くないので、きちんきちんと発表してゆかないと生活が成り行かないという理由があるのかもしれないけれど、理由はどうであれ、これだけの作品をコンスタントに生み出し続けてきた実績は評価されてしかるべきだと思う。
 さらに続ければ、エレカシがすごいのは、その間一度もメンバーチェンジをしていないことだ。ロックバンドがメンバーチェンジなしで十枚以上のアルバムをリリースしたなんて例は、国内海外を問わず、ちょっとほかには思いつかない。たとえその理由が解散できないくらいに他のメンバーが宮本に依存しているからだとしてもだ。エレカシというバンドは、もしかしたらロック史上に残るバンドなんではないかという気がしてきた。いや、少なくても僕にとってはこの十六年間、間違いなく日本ロック史上最強のロックバンドなのだけれども。
 2年ぶりとなるこの新作は、すでにライブで何度か聴いたことのある『すまねえ魂』や『人生の午後に』などを中心に11曲が収録されている。その2曲はアルバム『愛と夢』を思い出させる歌謡ロック調のナンバーで、ライブで初めて聴いた時からあまり印象が良くなかった。今回ひさしぶりに佐久間正英にプロデュースを依頼したのは、これらの曲のせいかとも思う。とにかくあまり印象のよろしからぬそれらの楽曲を、佐久間プロデュースでリリースするというのだから、ポニーキャニオン三部作が一番つまらないと思っている僕のようなリスナーに期待しろって言うのが無理な話だ。正直なところ、聴くまでは不安の方が大きかった。
 でもいざ聴かせてもらってみると、これが結構いい。やはり問題の2曲は好きになれないけれども──悪いと思いつつiPodで聴いている時にはつい飛ばしてしまう──、それ以外はなかなかいい曲が揃っていると思う。特に『地元のダンナ』(すげータイトルだ)『シグナル』、そして『流れ星のやうな人生』からの最後3曲はむちゃくちゃ好きだ。つまり収録曲のうち、約半数はとても気に入ってることになる。音作りにも、派手なところこそないけれど、きちんとした仕事をしている感じが伝わってくる。出来を疑っていて申し訳なく思える好作品だった。
(Jun 25, 2006)