2006年4月の音楽

Index

  1. 3121 / Prince
  2. Whatever People Say I Am, That's What I'm Not / Arctic Monkeys
  3. Silent Alarm / Bloc Party
  4. The Libertines / The Libertines
  5. Our New Orleans: Benefit Album For Gulf Coast / V.A.
  6. Collaborations / Sinead O'Connor

3121

Prince / 2006 / CD

3121

 ここへ来てプリンスは第二の黄金期を迎えたらしく、このアルバムは『Batman』以来というビルボードの第一位を獲得したという。しかも初登場第一位とのことで、そんなのはプリンス自身にとっても初だとか。まさに絶好調。考えてみれば80年代に最先端だった彼の音楽スタイルは、いまやブリットニー・スピアーズあたりにまで影響を与え、チャートのメインストリームを席巻している。その本家の彼がいまなおこれくらい質の高い音楽を作れれば、売れるのもあたり前だ。こういう人がいい仕事をして、ちゃんと世間から認められてるシーンは健全なのだろう。いいことだと思う。
 これに負けずに世間的には好評だった印象がある前作『Musicology』は、僕個人としてはいまひとつだったのだけれど、今回のこのアルバムはとても好きだ。基本的なコンセプトは変わっていないと思うのに、どうしてこうも印象が違うのかと不思議なくらい。とにかく今度のやつは文句なしに気持ちいい。先行シングルの『Te Amo Corazon』が、僕としては苦手なタイプのマイナー調のしっとりとしたバラードだったのでちょっと心配していたのだけれど、そんな心配は余計だった。ここにある音楽は本当に豊かだ。プリンス健在。これをくりかえし聴きつつ、4年ぶりの来日公演の実現を楽しみに待ちたい。
(Apr 16, 2006)

Whatever People Say I Am, That's What I'm Not

Arctic Monkeys / 2006 / CD

Whatever People Say I Am Thats What I Am Not

 ことロックに関して、僕はきわめてオーソドックスな趣味をしていると自負している。大好きなバンドの大半は、ロック史上に名前を残しているビック・ネームばかりだ。ところがそれでいて、ときたまメイン・ストリームのバンドに乗りそこなうことがある。古くはザ・フー、レッド・ツェッペリン、セックス・ピストルズ……。最近でいえば、マニックス、レッチリ、グリーンデイあたりだろうか(こうして並べてみるとずいぶん多くの重要なバンドを聞き逃している)。ロック・リスナーとしてはマストなバンドかもしれないけれど、どうにも食指が働かなかったり、評価される理由はわかっても、個人的に好きになれなかったりする。
 今年のUKバンドでもっとも注目を集めるこのアークティック・モンキーズもそんなバンドのひとつになりそうだ。悪いとは思わないけれど、とてもオーソドックスなロックという印象で、特別に惹かれるところがない。嫁さんが一聴して言った、「最近は昔っぽいバンドが多い」という発言のとおり、特別どこが新しいとも思えない。どうしてそんなにも大きな注目を集めているのか、いまひとつわからない。リバティーンズやブロック・パーティーとはちがって、まったくインパクトを受けなかった。
 「人が俺のことをなんと言おうと、そんなものは俺じゃない」みたいな意味のアルバム・タイトル、そうした発言をかかげるアティチュード──それは確かにきわめてロック的だ──が支持を集めているのかな、という気がする。
(May 28, 2006)

Silent Alarm

Bloc Party / 2005 / CD

Silent Alarm

 こちらもUKの新人バンド、ブロック・パーティー。リリースからすでに1年以上が経過してしまったけれど、ずっと気になっていたバンドだった。1年遅れでようやく聴いてみると、これがアークティック・モンキーズとは反対に、むちゃくちゃ好きだった。しまった、さっさと聴いておくんだった。
 なんたってこのバンドには初期のキュアーを彷彿とさせるところがあるのがいい。デビュー当時のミニマリズム的なキュアーがスピードを殺さずに "Pornography" のビート感を目指したとでもいった印象。ボーカルはロバート・スミスっぽくもあるけれど、どちらかというとデーモン・アルバーン似。シャープなギターはもちろん、転げまわるようなドラムとベースがすごく格好いい。とにかくキーンと冷たい空気が漂うなかを全速力で駆け抜けてゆくような、緊張感と疾走感の混ざりあった音がたまらない。アルバム一枚通すと若干一本調子な感じもするけれど、それでもOK。ここ数年のニューカマーの中では一番好きだ。
(May 28, 2006)

The Libertines

The Libertines / 2004 / CD

The Libertines

 気がつけばリバティーンズのこのセカンド・アルバムももう二年前のクレジットだったりする。気にしながらも、聴けないでいるうちにバンドは解体、ボーカルのピート・ダハティは別のバンドを始めちゃっているし。どうにも機を逃しすぎている。こういう風にタイムリーを逃すのが年をとった証拠かもしれない。
 このアルバムも前作に引き続き、元クラッシュのミック・ジョーンズのプロデュース。最初の一音目から、おっと思わせる、なんともいえない色気のある音を聴かせている。どうしてこれをちゃんとリアルタイムで聴いていないかなと、反省させられた一品。機を逸したせいか、いまいち入れ込めなくて残念だ。
(May 28, 2006)

Our New Orleans: Benefit Album For Gulf Coast

V.A. / 2005 / CD

Our New Orleans: Benefit Album for Gulf Coast

 ハリケーン、カトリーナの被害救済のためのチャリティ・アルバム。以前に買った『Come Together Now』とはちがって、『われらのニューオーリンズ』というタイトルのとおり、こちらはニューオーリンズにゆかりのあるアーティストばかりが名を連ねている。アラン・トゥーサン、ドクター・ジョン、アーマ・トーマス、ダーティ・ダズン・ブラス・バンドなどのビッグネームに加えて、おもしろところではバーボン・ストリートの観光名物バンド、プリザベーション・ホール・ジャズ・バンドの演奏も収録されている。インナー・ジャケットの写真には水没した民家の写真や、ニューオーリンズ独特の葬列の写真が使われていたりする。ニューオーリンズが好きな人なら持っていてもいいと思う。
(May 28, 2006)

Collaborations

Sinead O'Connor / 2005 / CD

Collaborations

 シンニード・オコーナーが他のアーティストとコラボレートした楽曲を集めたコンピレーション。これほどたくさんのコラポレーションがあるとは知らなかった。それに共演しているアーティストの豪華なこと。U2、マッシヴ・アタック、エイジアン・ダブ・ファウンデーション、ザ・ザ、ピーター・ガブリエル、モービー、等々。どれだけ彼女がボーカリストとして高い評価を受けているのか、よくわかる。個人的にはザ・ザの "Kingdom of Rain" 以外は知らない曲ばっかりで、お得な一枚だった。
(May 28, 2006)