2010年11月の映画

Index

  1. マグノリア
  2. BROTHER
  3. パッセンジャーズ
  4. ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い
  5. 機動戦士Zガンダム ~星を継ぐ者~
  6. 機動戦士ZガンダムII ~恋人たち~
  7. 機動戦士ZガンダムIII ~星の鼓動は愛~

マグノリア

ポール・トーマス・アンダーソン監督/ジェレミー・ブラックマン、トム・クルーズ/1999年/アメリカ/レンタルDVD

マグノリア [DVD]

 群像劇というのは普通、なんらかの共通事項ですべての人が結びついているものだと思う。同じホテルに泊っているとか、同じ船に乗りあわせているとか、離ればなれの家族どうしだったりとか。少なくても、僕が知っている映画ではそう。
 ところがこの映画の場合、群像劇であるにもかかわらず、そうした「共通事項」が見えにくい。おそらく、エピソードのひとつである長寿クイズ番組──もしくはその関係者──に、全員がなんらかの形でかかわっているんだと思うけれど、そのテレビ番組が特別、物語の中心に据えられているわけではないので、構造的にそのことがわかりにくいのだった(そもそもタイトルだって意味不明だし)。
 ま、わからなくても映画を観るうえではとくに困らないから、気にしなくてもいいぞ、と。作り手としてはそういうつもりなのかもしれない。実際、それでも十分おもしろかったから、それはそれでいいんだろう。なんたって、3時間を超える長さがまるで気にならなかったし。それだけでもよくできた映画だと思う。
 それになんたって、この映画は出演者が豪華。トム・クルーズ、フィリップ・シーモア・ホフマン、ジュリアン・ムーア、ジョン・C・ライリー、ウィリアム・H・メイシーと、僕が知っているだけでも、これだけ芸達者で個性的な俳優たちが集結していて、なおかつ、それぞれが別々のエピソードに顔を出しているんだから、そりゃ見ごたえがあるのも当然(──といいつつ、ジュリアン・ムーアについては、この人、誰だったっけとか思ってしまったけれど)。
 なかでも僕は、ジョン・C・ライリーの演技が好きだった。彼の相手役のメローラ・ウォルターズという女の人もいい感じだったし(うつ病気味のジャンキーの役だけれど)、このふたりのエピソードはとてもよかった。
 とはいえ、こういう悲喜劇的エピソード満載の映画を観て、結局はそういうオプティミスティックな恋愛劇に惹かれてしまうあたりに、自分の甘っちょろさを感じないでもない。
(Nov 10, 2010)

BROTHER

北野武・監督/ビートたけし、真木蔵人、オマー・エップス/2000年/日本、アメリカ、イギリス/レンタルDVD

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 北野武がロサンジェルスを舞台にして撮った、異色のヤクザ映画。
 この映画、僕がこれまでに観た北野武の映画のなかで、もっともヤクザ映画度が高い。
 『ソナチネ』 とか、『HANABI』 とかもヤクザの話だったけれど、あれらは主人公がヤクザのなかのハグレ者、アウトローのなかのアウトローという設定だったため、ヤクザ映画でありながら、それほどヤクザ、ヤクザしていないイメージだった(……といいつつ、内容はすでによくおぼえていないけれど)。
 でもこの映画は違う。いや、たけしの演じる主人公の一匹狼的な性格設定は、ほとんど旧作と変わらないけれど、ここでの彼は、日本を追われてアメリカへ渡り、意外や、その土地でボスとしてのしあがる。おかげで、いやおうなく個よりも組織がクローズアップされる結果になっている。
 また、そんなメイン・ストーリーと並行して、彼を追いだした日本の暴力団の内部抗争もそれなりに時間を割いて描かれている(しかもこれがまた、指を詰めたり、腹を切ったりという、痛すぎるシーンの連発だったりする)。主人公不在のまま進んでゆくこちらのラインが、なおさらヤクザ映画度を高めているというのもある。
 なんにしろ、いままでの映画がヤクザにも人間性はあるんだって映画だったとするならば、この映画は「オイラたちの国のヤクザってのは、こんなです」って、世界に知らしめるような映画って気がした。でも、それでいて北野武らしい味はしっかりと出ているし、これはこれで悪くない。
 もとより虚無的な北野映画が、アメリカを舞台にしたことで、キタノ・ワールド・ミーツ・アメリカン・ニューシネマとでもいったイメージになっているのも、興味深かった。
(Nov 13, 2010)

パッセンジャーズ

ロドリゴ・ガルシア監督/アン・ハサウェイ、パトリック・ウィルソン/2008年/アメリカ/BS録画

パッセンジャーズ 特別版 [DVD]

 飛行機墜落事故で生き残った人々のカウンセリングを任された心理セラピストの前から、患者たちがひとり、またひとりと姿を消してゆくというサスペンス・スリラー。
 この映画、なんだか最初から妙に中途半端な印象があった。観ていて気分がもやもやするというか。なぜかわからないけれど、気分がすっきりしなかった。
 たとえば、アン・ハサウェイ演じる主人公は、患者──とは言わないんでしょうか、こういう場合は(でも適当な言葉が思いつかない)──のひとりであるパトリック・ウィルソン──『ウォッチメン』 でダニエルことナイトオウルを演じていた人とのこと。ああ、なるほど──と深い仲になるんだけれど、その展開がどうにも不自然な感じがしてしまった。
 確かにこの映画のパトリック・ウィルソンはハンサムだけれど( 『ウォッチメン』 とはかなり違う)、でも役どころ的には上っ面ばかりハンサムなだけで、それほど魅力的な男性に見えない(彼の演技がまずいんでしょうか)。僕は「どうしてこの男にそんなに簡単に身を任してしまうのさ」とか思いながら観ていた。
 そういや、『レイチェルの結婚』 でもそうだったけれど、アン・ハサウェイって、なんだかあまり魅力的でない、「やらないほうがよくない?」って思ってしまうような無駄なラブ・シーンが多い気がする。きれいなのに、もったいない。
 とにかく、全体的に話の流れが不自然な気がして仕方なかった。
 でも、クライマックスで事件の真相があきらかになってみて、そうしたそれまでの印象の悪さに納得。あぁ、これはそういう話なのかと。前半の不自然さにはちゃんとわけがあったとわかって、とりあえず気分はすっきりした(まあ、このところ、この手の話が多すぎる気がしないでもないけれど)。
 とはいえ、やはりこの映画に関しては、主人公ふたりのラブ・ロマンスをもうちょっと説得力を持って描けていれば、もっといい映画になっていた気がして仕方ない。惜しい。
(Nov 19, 2010)

ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い

トッド・フィリップス監督/ブラッドレイ・クーパー、エド・ヘルムズ、ザック・ガリフィアナキス/2009年/アメリカ/レンタルBD

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 「二日酔い」って言葉は、僕の人生と切っても切り離せないものなので(って、まったくいばれた話じゃないけれど)、「史上最悪の二日酔い」なるサブタイトルを打ったこのコメディ映画は、その時点で興味を引くに十分。どんなに最悪なんだか観てみたくて、珍しくリリースされたばかりの新作をレンタルしてしまった。しかもブルーレイで。
 考えてみたら、テレビを買い換えて以来、ブルーレイで映画を観るのって、これが初めてだった。記念すべき、自宅で観るハイビジョン映画の第一本目がこの映画って、なんだかすごく間違っている気がしなくも……。
 まあ、なにはともあれ、これは親友のバチェラー・パーティーのためラス・ヴェガスへ繰り出した主人公一行が記憶をなくすほどの大乱交を繰り広げたあげく、翌日目をさましてみたら、花婿が行方不明になっていて、おまけに部屋には見知らぬ赤ん坊やトラがいたりして、さあ大変……というどたばたコメディ。
 物語は主役の3人組がわずかな手がかりから、消えた花婿を探して、前の晩の自分たちの足跡をたどってゆく過程を描いてゆく。思いきりおバカな話なのかと思ったら、その3人のうち、ふたりがまともな人(教師と歯科医。もうひとりは職業不明)なので、素面に戻ってからの言動は比較的まともで、思ったよりも砕けていなかった。
 そもそも、記憶をなくした原因が酒じゃないんだから、あれを「史上最悪の」二日酔いと呼ぶのは、酒飲みとしては認められないぜって言いたい気もするけれど、まあ、それなりにおもしろかったから、よしとしよう。でも、いくら予想外の大ヒットをしたからって、わざわざ続編を作るほどの作品じゃない気が……。
 ちなみに紅一点のヘザー・クレアムって、名前には聴きおぼえがあるけれど、誰だっけ?と思ったら、『ツイン・ピークス』 のセカンド・シーズンに出ていたアニー役の彼女だった(もしくは 『オースティン・パワーズ:デラックス』 の主演の)。おぉ、なるほど。
 あと、意外なところでは、トラの飼い主役でマイク・タイソンが出てます。
(Nov 19, 2010)

機動戦士Zガンダム ~星を継ぐ者~

富野由悠季・総監督/声優・飛田展男、池田秀一/2005年/日本/BS録画

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 『機動戦士Zガンダム』 については、ガンダム・シリーズで唯一、テレビ版の初回放送をリアルタイムで観ていたこともあり、思い入れの深さではファースト・ガンダムに譲らないものがあるのだけれど(というか、逆にこの2作品以外のガンダムにはまったく関心が持てないでいる)、この劇場版に関しては、公開当時から関心はありつつも、どうも評判がいまいちぱっとしないので、いままで観る機会が作れずにいた。
 今回WOWOWで三部作が一挙に放送されたのを機に、ようやく観てみたところでは、前評判で想像していたよりも悪くなかった。少なくても僕は十分に楽しめた(まあ、悪評高いエンディングを観るまでは、だけれど)。――というか、思うのだけれど、おそらくこの劇場版は、僕くらいの距離感をもった遠巻きなオールド・ファンだけが楽しめる作品なのではないかと思う。
 なんたって、オリジナルはもう25年も前の作品だ。考えてみれば、僕が観たのだって、その初回放送と、のちのレンタルとで、あわせて2度だけ。レンタルで観たのもかれこれ十何年前の話だし、内容は見事にうろ覚え。それもエミリアとか、シロッコとか、ハマーン・カーンとか、出てきて初めて「あー、こんな人、いたいた」と思うていたらく(サラいたっては、こんな子いたっけ?とか思ってしまった。この映画版を観るかぎり、最重要キャラのひとりなのに)。
 そんなやつが曖昧な記憶を頼りに観ているわけだから、もうすべてが新鮮。えー、こんな展開だったっけと思うことだらけで、なおかつその中にシャアやアムロら、旧ガンダムの主要キャラがさまざまな形で絡んでくるのだから、これはもう、つまらないはずがない。
 でも、これがもし、僕がZ(ゼータ)の全エピソードをしっかり把握したうえで観ていたり、逆になにも知らないで観ていたらどうだったかと考えてみると、さすがにどうだろうと思ってしまう。
 そもそもこの劇場版三部作はどれも短い。テレビ版のエピソード数ではファースト・ガンダムよりもゼータのほうが多いにもかかわらず──前作の43話に対して、ゼータは50話──、劇場版では旧三部作がすべて2時間を優に超えていたのに対して、ゼータ三部作はどれも1時間半くらいしかない。三部作のトータル・タイムでいえば、1時間半は短い計算になってしまう。
 つまりそれだけ省略が多いってことで。僕が気づいた範囲でいえば、エミリアとカミーユの交友がまるきりはしょられていたし、テレビ版のボリュームを考えれば、これはちょっと削りすぎだと思う。エウーゴ、チターンズ、地球連邦、アクシズと、対立する組織がより複雑化していて、ただでさえわかりにくい話が、なおさらわかりにくくなってしまっている気がする。まるで戦争や人間関係のディテールについて知りたい人は、テレビ版を観てくれと云わんばかりだ。
 この映画版の売りだと思われる新しいセル画にしろ、新しく書きおろした部分と旧来の部分とでは、絵のタッチや演出の味つけがかなり違っているので、気になる人には気になってしまうんだろうし、テレビ版では主題歌(鮎川麻弥と森口博子)がどちらもよかっただけに、ここでかかるGacktのテーマ曲は、あまりにしっくりこない。要するに、ことテレビ版と比較した場合に、この劇場版はなにひとつメリットが見えてこないのだった。
 コアなファンの要求を満たすこともできず、知らない人には舌たらずで意味が通じない。結局は、僕のようにテレビ版をうろ覚えのオールド・ファンのみが、記憶を新たにして楽しめるのみ──残念ながら、そんな作品になってしまっている気がする(つづく)。
(Nov 27, 2010)

機動戦士ZガンダムII ~恋人たち~

富野由悠季・総監督/声優・飛田展男、池田秀一/2005年/日本/BS録画

ガンダム30thアニバーサリーコレクション 機動戦士ZガンダムII -恋人たち-<2010年07月23日までの期間限定生産> [DVD]

 この劇場版ゼータ三部作については、三本まとめて観たために、一本ずつの印象が曖昧なので、最初はひとつだけ書いて終わりにするつもりだったのだけれど、どうも一本目が思ったよりも長めになってしまったので、やはりちゃんと三本に分けて書くことにした。ということで、二作目の 『恋人たち』。
 これ、サブタイトルを聞いたときには、「なんだ『恋人たち』 って」と思ったものだけれど、いざ観てみて、とりあえず納得。主人公カミーユとフォウ・ムラサメだけではなく、アムロとベルトーチカ、さらにシャアとライラや、カツとサラも加えれば、見ようによってはカップルだらけ。キスシーンも多いし、あぁ、なるほどって感じだった……のは確かなんだけれど、でもやっぱりゼータで「恋人たち」はないと思う。
 今回ゼータを観て、強く感じたのは、この作品がエゴのぶつかりあいをテーマにした作品だということ。個人と個人、組織と組織のエゴがぶつかりあって、あちらこちらで不協和音を奏でている。こうしてダイジェストの映画版で見ても、物語はとっちらかって収集がつかない感じだし、人間関係も複雑にもつれていて、どうにも殺伐としている。
 でも、この作品が初めて世に出た当時の、二十歳そこそこだった僕には、そのまとまりのなさや殺伐としたところがまた魅力だった。ニュータイプの象徴する人類の新しい力が、ふさわしい受け皿を得られずに暴走して破滅してゆくさまを描いた悲劇として、ゼータはある部分では、ファースト・ガンダムより、より強烈に心に訴えるものがあった。
 なんにしろ、僕にとってのゼータは、その苦さゆえに思い入れのあるアニメなんだった。それなのに、その劇場版・第二部のサブタイトルが「恋人たち」ってのは、いったいなんなのかと。甘ったるすぎやしないかと。さらに第三部にいたっては、「星の鼓動は愛」とくる。恥ずかしくて、ひと前で口に出せない。
 僕がいままでこの劇場版を観る気になれずにいた理由のひとつは、どうもこのサブタイトルのせいな気がしてきた。
(Nov 27, 2010)

機動戦士ZガンダムIII ~星の鼓動は愛~

富野由悠季・総監督/声優・飛田展男、池田秀一/2006年/日本/BS録画

ガンダム30thアニバーサリーコレクション 機動戦士ZガンダムIII -星の鼓動は愛-<2010年07月23日までの期間限定生産> [DVD]

 劇場版 『機動戦士Zガンダム』 三部作の完結編。
 この三部作は、一作目がカミーユたちが地球に降り立ち、シャアとアムロが再会するところまで。第二作がチターンズとエウーゴの戦いに第三勢力としてアクシズが登場してくるところまで。そしてこの第三部にはそれから先が収録されている。
 前述したとおり、僕はこの作品のディテールについてはまったくといっていいほど覚えていなかったので、テレビ版と劇場版との違いは、作画のタッチの違いで見分けるしかなかったのだけれど、こと結末については、そんなものに頼る必要がなかった。あの救いのないエンディングが、なんだそりゃってハッピーエンドに変更されているのだから。
 まあ、観る前から変わったという話は知っていたのだけれど、でもいざ観てみて、その演出のひどさに驚いた。テレビ版の深刻さとの対比が激しすぎて、愕然としてしまった。
 ハッピーエンドに変更したこと自体は、作り手の意志として尊重したいと思う。思うのだけれど、それにしたって演出がひどい。ひどすぎる。なんであんな風にしちゃったんでしょう? もうちょっとやりようはなかったんだろうか。僕でさえ、こればかりは受け入れられないんだから、コアなファンには総すかんだろう。
 いろいろ問題のある劇場版ゼータ三部作だけれど、観終わってみて、ことこの劇場版に関しては、このエンディングの改悪がすべての元凶のような気がした。終わりよければすべてよしの逆。終わりが悪いせいで、すべてが悪く感じられてしまう──そんな作品だった。素材がいいだけに、もったいないにもほどがある。
 それにしても、去年ファースト・ガンダム三部作を観たときにも思ったのだけれど、なぜガンダムの製作スタッフは、劇場版を作るにあたって、全編を新しいセル画で描き直す労を惜しむんだろうか? 旧ガンダム三部作のころとはちがい、その後のガンダム・シリーズのステータスの高さからすれば、オリジナル版のシナリオをそのままに、すべて新しい絵で書き直したガンダムを作れば、大喜びして観にゆくアニメ・ファンはいくらでもいるだろうに(少なくても僕なら観にゆく)。このゼータの失敗だって、テレビ版の存在を引きずり、中途半端に新旧のセル画をミックスしているのが元凶だと思う。
 なんたって、テレビ版のセル画は、さすがにいまとなると出来がしょぼすぎる。最近の劇場版エヴァと見比べると、本当にそう思う。僕はもっときれいな絵でファースト・ガンダムやゼータが観たい。実写と違って、アニメのキャラはいくらでも描き直しがきくのだから、全編描き直したリメイク版を作ったってよさそうなものだ。僕がもしアニメーターだったら、絶対にリメイクしたいと思うと思うんだけれどなぁ……。
 ルーカスがスターウォーズを飽きることなくブラッシュアップしたり、エヴァの劇場版リメイクが大ヒットしたりしている昨今、ガンダムでなぜにそういう企画がないのか、本当に不思議でしょうがない。
(Nov 28, 2010)