2005年12月の映画

Index

  1. 私は告白する
  2. ハウルの動く城
  3. 間違えられた男
  4. 大脱走
  5. さらば青春の光
  6. ロード・オブ・ザ・リング
  7. ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔

私は告白する

アルフレッド・ヒッチコック監督/モンゴメリー・クリフト、アン・バクスター/1953年/アメリカ/DVD

私は告白する 特別版 [DVD]

 教会の雑用をやっている男から殺人を告白されてしまったハンサムな神父さん。彼は守秘義務に縛られて犯人を知っていることを警察に打ち明けられない。そうこうするうちに被害者が彼のもとの恋人を強請{ゆす}っていた事実が判明して、なおかつその女性と犯行時刻に密会していたことがばれ、容疑者として捕まってしまう。
 キリスト教の懺悔というものに馴染みのない僕なんかにすると、どうしてそういう展開になっちゃうのかとか、わかり難い部分がある。加えて主人公の神父さんがハンサム過ぎて、とても聖職者に見えないというのも欠点じゃないだろうか。テーマ的にはおもしろいし、個人的には悪い作品じゃないと思うけれど、かといってあまり成功した作品とも言えなさそうだ。
(Dec 13, 2005)

ハウルの動く城

宮崎駿監督/2004年/日本/DVD

ハウルの動く城 特別収録版 [DVD]

 劇場公開からもう一年になるだろうか。ようやく『ハウルの動く城』のDVDがリリースされた。
 僕は“城”のジャケットに惹かれて特別収録盤を購入してしまったけれど、でもこれって高価な分だけの価値があるとはあまり思えない。ボーナス映像の貧弱さに加え、英語が5.1サラウンドじゃないのが一番不満な点だ。こと英語に関しては通常盤より劣るってのはどういうことだ。ボーナス映像に英語吹替え監督のインタビューなんか収録しておいて、その内容をサラウンドで楽しめない特別盤っていったい……。今までの作品がいまだにサラウンドでリマスターされていないことに対する不満も大きいし、DVD化におけるジブリの仕事ぶりにはどうにも納得がいかない。声優の起用法も変だし、全体的に音響に関するセンスが鈍すぎる気がする。
 映画としての『ハウル』は僕にとっては可もなく、不可もなくという感じだった。なんだか、どこにも引っかからずに、するりと通り抜けてしまった、みたいな。『トトロ』なんかもそうだったけれど、宮崎さんの映画の場合、僕はそういうのが多い気がする。『カリオストロ』や『ラピュタ』を除くと、大抵の作品が「あれーっ、こんなものなの?」と思ってばかりだった。でも繰り返して観ているうちに、いつの間にか気に入っちゃっているというような。きっとこの映画も何度か観るうちに、すっかり馴染んでしまうんだろう。
 声優では倍賞千恵子の起用には、ちょっとばかり違和感があった。『男はつらいよ』を見るかぎり、倍賞さんは若い頃から特別声の感じが変わったということもない人なので、一人で少女と老女の両方を演じてもらうにはうってつけの配役かもしれない。実際に老女の声はとても見事だと思うし。ただそう思いつつも正直なところ、やはりソフィが若いシーンはもう少し可愛い声の女性が吹き替えしてくれた方が、観ていて楽しかっただろうなと思ってしまった。
 反対に木村拓也はキムタクという超人気タレントであることをまったく感じさせない不思議な声優ぶりで、意外と好印象だった。どんな様子でアフレコしていたのか、ファンではない僕でさえ見てみたいと思うのに、そういう映像が全然収録されていないところも、この特別盤のつまらないところだ。
 その他の声優さんではやはり今回も三輪明宏が荒地の魔女役で見事なアフレコぶりを見せている。その荒地の魔女と言えば、英語吹替え版の声優はなんとローレン・バコールだ。ハンフリー・ボガートの奥さんが日本製アニメの声優をつとめてくれるなんて、往年の映画ファンにとっては夢のような話なんじゃないだろうか。
(Dec 13, 2005)

間違えられた男

アルフレッド・ヒッチコック監督/ヘンリー・フォンダ、ヴェラ・マイルズ/1956年/アメリカ/DVD

間違えられた男 特別版 [DVD]

 強盗犯人に間違えられて、無実の罪を着せられた男の悲哀を描くヒッチコック作品。実話に基づいた話とのことで、そのせいか随分と地味な印象だ。
 地味な印象は主演のヘンリー・フォンダの演技によるところも大きい。演技うんぬんの以前にシナリオの問題かもしれないけれど、無実の罪を着せられたこの人が、ほとんどなんの抵抗もせずに、その不条理な状況に耐え忍んでいる姿は、感動的というよりは、焦れったさの方を強く感じるほどだった。ちょっとくらい戦えよと言いたくなる。
 いずれにせよ、実際にこんなことが本当に起こって、自分の奥さんがストレスのあまり正気を失ってしまうようなことがあったらたまったもんじゃない。そういう意味ではヒッチコックが映画化したいと思ったのもよくわかる話だった。
(Dec 13, 2005)

大脱走

ジョン・スタージェス監督/スティーヴ・マックィーン/1963年/BS録画

大脱走 [DVD]

 五大スター共演と言われても、知っているのはスティーヴ・マックィーンとチャールズ・ブロンソンだけ。捕虜収容所の話だからみんな似たような格好だし、誰がスターなんだか全然わからないというていたらくだ。でもって色気はゼロ。つまらないとまでは言わないけれど、戦争映画が苦手の僕にはややとっつきにくい、硬派な一大娯楽映画だった。
 しかし『戦場にかける橋』を見た時にも思ったことだけれど、どうして戦争映画というのはこういう苦みのある結末であってもお構いなく、ああいう能天気なテーマ曲をどーんと流して終わるものなのだろう。戦争にまつわる暗い想像を打ち消すため? どうにも不思議だ。
 キャスティングの上では、脱走の首謀者を演じたリチャード・アッテンポローという人が、年をとってからジュラシック・パークを建設する老人を演じることになるというのが一番興味深かった。
(Dec 13, 2005)

さらば青春の光

フランク・ロッダム監督/フィル・ダニエルズ/1979年/イギリス/DVD

さらば青春の光 [DVD]

 ピート・タウンセンドの総指揮で、フーの『四重人格』を映像化した青春音楽映画(らしい)。
 モッズというと細身のスーツが定番だと思っていたら、どうも『踊る大捜査線』で青島刑事が着ているような、米軍放出のオリーブ・グリーンのアーミー・コートも定番らしい。でも何十人という若者がみんなが揃ってああいうコートを着て群れ{つど}っている風景は、なんだかあまりロックらしくない気がした。
 無目的なUKロック青年の青春を描いたという点で『トレインスポッティング』を思い出させる映画だったけれど、出来はあちらの方が断然上だと思う。ガールフレンドがやたらと尻軽だという展開は、『8 Mile』や『パープル・レイン』にも通じる。『あの頃ペニーレインと』もそれに近いものがあるし、ロック映画の多くがもてない男の子を描いているというのはちょっぴり意外であり、それでいてわかる気もする、興味深い傾向だと思う。
 あ、あとこの作品はスティングの映画デビュー作だそうだ。モッズのカリスマにして、職業はホテルのポーターという役回り。ポーターの制服の似合わないことったら……。
(Dec 19, 2005)

ロード・オブ・ザ・リング

ピーター・ジャクソン監督/イライジャ・ウッド、ヴィゴ・モーテンセン、イアン・マッケラン/2001年/アメリカ、ニュージーランド/DVD

ロード・オブ・ザ・リング ― コレクターズ・エディション [DVD]

 トールキンの『指輪物語』は長年、読みたいと思いつつ読めずにいた小説のひとつだった。なぜ読めなかったかって、その文庫本のふざけた分冊ぶりゆえだ。『旅の仲間』の上一、ニ、下一、ニという四分冊は一体、なにごとだと。この文庫の過剰なまでの分冊ぶりは、基本的に分冊嫌いの僕には、とてもじゃないけれど許せない。
 ではハードカバーを買おうかと思うと、それだって手の届く範囲のものは上下巻の分冊だし、理想的な三巻本は一冊が八千円と高価だし。結局どれひとつ欲しいと思えないまま、どうかもっとマシな形の翻訳が出てくれないかと長いこと待ちわびているうちに月日が過ぎていった。そうして2001年にこの映画が登場する。
 本と映画と両方あれば、まずは本が優先という僕にとって、読みたいと思っている作品を本で読む前に映画で見てしまうというのはもってのほかだ。映画を先に観て、小説を読む楽しみを半減させるわけにはいかない。ということで映画にはとても関心があったのだけれど、観るわけにはいかなかった。なまじ評判が良い作品だけに、観られないのはかなり口惜しかった。
 そんな状況を打破すべく、僕が重い腰をあげて The Lord of the Rings の原書を読み始めたのは、映画三部作の完結編の公開が間近に控えていた去年の正月のことだ。それから十ヶ月かけて──かなりディテールはいい加減だったけれど──、僕はどうにかこの長大な小説を英語で読み終えた。こうしてようやくその映画版を見られる状態になったわけなのだけれど。
 それから現在までの約一年以上、観る機会が得られなかったのは、この映画のDVDが他の作品よりも高価だったこと──今となると二枚組とはいえ、定価で五千円近いDVDは許せない──と、折からの我が家のDVDフィーバーで、他に観るべきものがあふれかえっていた状況ゆえだった。それがここへ来て廉価盤のDVDがリリースされたことで、ようやく僕は4年越しの念願かなって、この映画を観ることができた。おかげでもう内容がうんぬんという以前に、観られたこと自体が嬉しいという、なんだか変な思い入れのある映画になってしまっているという、これは僕にとってそういう作品。
 原作と比較してしまうと、この映画はやはり駆け足になってしまっている印象がある。いきなり指輪の来歴を紹介するオープニングはやや情感不足な感じがするし──原作ののどかなオープニングの方がやはりこの壮大な物語の始まり方としてはふさわしい──、メリーとピピンがなりゆきで旅に同行することになるって話の持って行き方も、彼らの性格の良さが曖昧になってしまって、残念な気がした。
 なによりトム・ボンバディルという魅力的なキャラクターの登場シーンを削ってしまったのが、返す返すも残念だ。脚本家の一人は、トムを出さないと決めたことで、息子から一週間も口を聞いてもらえなかったと嘆いていたけれど、それもありなん。僕も彼の登場シーンを楽しみにしていたので、ないとわかってかなりがっかりした。
 まあそんな風にところどころに不満はあるけれど、それを割り引いても十分おつりがくるくらい、この映画はよくできている。ホビット、エルフ、ドワーフ、人間、オークと言った、身長も姿形も異なる様々な人種が入り乱れる世界を、よくもここまで忠実に表現したものだと思う。とにかく若干の脚色と省略こそあるものの、この映画は驚くほど原作に忠実だ。製作者側の作品に対する敬意と愛情が感じられて、とても好感が持てた。
(Dec 25, 2005)

ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔

ピーター・ジャクソン監督/イライジャ・ウッド、ヴィゴ・モーテンセン、イアン・マッケラン/2002年/アメリカ、ニュージーランド/DVD

ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔 コレクターズ・エディション [DVD]

 小説同様、この第二部ではフロドとサム、メリーとピピン、そしてアラゴルン、レゴラス、ギムリの三組が別れ別れになったあとの物語が描かれる。
 クライマックスはヘルムズ・ディープでの戦闘、そしてエントによるアイゼンガルド襲撃だ。前者はそれだけで戦争映画一本分のボリュームがありそうな迫力だし、後者については、小説ではメリーとピピンによる回顧談として触れられるだけのアイゼンガルドの襲撃シーンを、見事な映像で再現してくれたことに拍手喝采を送りたい。なんたってエントが見られるだけでも嬉しいのに、そのエントたちが大暴れしてくれちゃっているんだから最高だ。火矢を放たれて火がついてしまったエントが、洪水の水でそれを消すシーンもユーモラスでいい。やっぱりエントがやられるところは見たくない。
 二作目ともあって、旅の仲間たちのキャラクターがよりはっきりとしてきているのも印象的だった。特にギムリがコミック・リリーフとして、思わぬ存在感を示している(そんな扱いに本人はきっと不満だろうけれど)。あとゴラムが単なる悪者ではなく、指輪に影響されて性格が歪んだ二重人格者として、好意的に描かれている点も興味深かった。
(Dec 25, 2005)