2004年9月の映画

Index

  1. ミスティック・リバー
  2. 七年目の浮気
  3. 失われた週末
  4. オーシャンと十一人の仲間
  5. エイリアン2
  6. スミス都へ行く
  7. 第十七捕虜収容所

ミスティック・リバー

クリント・イーストウッド監督/ショーン・ペン、ティム・ロビンズ、ケビン・ベーコン/2003年/DVD

ミスティック・リバー [DVD]

 少年時代に仲間同士だったジミー(ショーン・ペン)、デイヴ(ティム・ロビンズ)、ショーン(ケビン・ベーコン)の三人。デイヴが性犯罪者に誘拐されて以来、関係が疎遠になっていた彼らが二十五年の歳月を経て、ひとつの殺人事件を巡って再び結びつけられる。一人は刑事として、一人は容疑者として、そしてあとの一人は被害者の父として。
 デニス・ルヘインの原作をクリント・イーストウッドが映画化した作品。主演俳優三人の印象は僕が抱いていたイメージとは随分と違うのだけれど、それでも物語自体はとても原作に忠実で、実に見事に映像化されていると思う。こういう映画を撮ってもらえれば原作者は大満足だろう。とても感心した。
 この映画に先立って 『許されざる者』 を見直して思ったのだけれど、監督としてのクリント・イーストウッドって、僕はけっこう好きかもしれない。機会があったらば他の作品も積極的に見てみたいと思う。とりあえず次は 『バード』 かなと。
(Sep 09, 2004)

七年目の浮気

ビリー・ワイルダー監督/マリリン・モンロー、トム・イーウェル/1955年/DVD

七年目の浮気(特別編) [DVD]

 妻子を避暑地に送り出し、仕事のために家に残った中年男(トム・イーウェル)が、アパートのひとつ上の階に、グラマーなブロンド美女(マリリン・モンロー)が寝泊りしていると知って、浮気心をかきたてられる。相手もまんざらじゃなさそうで……。
 性欲と罪悪感の板ばさみになって悩む宇中年男の姿をコミカルに描くラブ・コメディ。モンローの白いドレスのスカートがふわりとまくりあがるシーンがとても有名な作品。
 もとは舞台劇で、その中ではイーウェル演じるところのリチャード・シャーマンはちゃんと女の子と関係を持っちゃっているのだそうだ。ところが当時の映倫に引っかかってしまうために映画では不倫関係を描けず、仕方なく二人の間はなにもなかったという演出になっているのだとか。今からすると嘘みたいな話でちょっとびっくりだ。そう考えると 『お熱いのがお好き』 はこの4年後の作品だけれど、キス・シーンがかなり濃厚なので、もしかしたら当時はとてもショッキングだったのかもしれない、などと思った。
 なんにしろこれはとても馬鹿馬鹿しい映画で、その馬鹿馬鹿しさゆえに、なかなかインパクトを受けた。
 実はこの映画、初見ではなく、二十代のはじめに新宿の小さな映画館でリバイバル上映されたものを観ているのだけれど、その時のことはまったく覚えていない。まるで今回初めて観るも同様だったってことは、その時にはほとんど感銘を受けなかったんだろう。十数年を得て再び観てそれなりにインパクトを受けたのは、その間に僕が変わったということなのだと思う。そう考えるとちょっと感慨深い。まあ今や僕も主人公とほぼ同い年だからなあ。それも当然かも。
 ちなみに 『めぞん一刻』 の五代君の妄想癖はこの映画のパターンそのまんまだ。あだち充が 『みゆき』 の中で 『アパートの鍵貸します』 に触れていたりするし、ビリー・ワイルダーのコメディのスタイルは日本のマンガ界にも意外な影響を及ぼしているのかもしれない。いや、単に僕が知らないだけで、この手のコメディって、ワイルダーの名をあげるまでもなく、いくらでもあるのかもしれないけれど。
(Sep 09, 2004)

失われた週末

ビリー・ワイルダー監督/レイ・ミランド/1945年/DVD

失われた週末 [DVD]

 ドン・バーナム(レイ・ミランド)はアルコール依存症で身を持ち崩した貧乏作家。思うように書けないストレスから酒に救いを求めた彼は、恋人ヘレン(ジェーン・ワイマン)や兄のニック(フィリップ・テリー)の心配をよそに酒に溺れ続け、やがて金に困って、商売道具のタイプライターや、ヘレンのコートまで質に入れるほど落ちぶれてゆく……。
 酒で人生を誤った男の救いようのない姿をこれでもか描き出したビリー・ワイルダーの傑作。これはいい。たいして期待もせずに観た作品だったのだけれど、身につまされる内容のせいか、思いのほかおもしろかった。
 とにかくドンの徹底した救いようのなさが切実だ。しょうのなさも徹底して描けば芸術になるということなのだろう。とても感心した。
(Sep 09, 2004)

オーシャンと十一人の仲間

ルイス・マイルストン監督/フランク・シナトラ/1960年/BS録画

オーシャンと11人の仲間 特別版 [DVD]

 大晦日の晩にラスベガスのカジノ五店を一挙に襲撃する! 空軍あがりのダニー・オーシャン(フランク・シナトラ)とその仲間たち(ディーン・マーチン、サミー・デイヴィス・ジュニア等)による鮮やかな強盗計画の顛末を描くクライム・ムービー。
 2001年にジョージ・クルーニー主演でリメイクされた 『オーシャンズ11』 のオリジナル版。ラストの思いがけない脱力感がとてもいい。のちのタランティーノの作品に通じるものを感じた。けっこう好きだ。リメイク版もぜひ見よう。
(Sep 09, 2004)

エイリアン2

ジェイムズ・キャメロン監督/シガニー・ウィーバー/1986年/BS録画

エイリアン2 完全版 (2枚組 プレミアム) [DVD]

  『エイリアン』 でリプリー(シガニー・ウィーバー)が最後に乗った脱出艇は、50年以上の漂流ののちに救助された。しかし無事に地球に帰還した彼女を待っていたのは、貴重な宇宙船を失った経営者たちの非難ばかりだった。肩身の狭い日々を過ごす彼女に、再びあの惑星へ行ってくれないかとの依頼が舞い込む。いまや植民地となったその星との連絡が途絶えたという。エイリアンとの遭遇をトラウマとして抱えたリプリーは、自らの悪夢を払拭するため、アーミーとともに再び宇宙へと旅立つ。無人となったその星のコロニーで彼女が遭遇することになったのは、群をなすエイリアンどもだった。
 最初に観た時にはけっこう感心したこの作品だったけれど、二度目の今度はそれほどでもなかった。アクション映画としてそれなりにおもしろかったものの、いかんせん御都合主義が激し過ぎる。特にニュートがさらわれて以降のシナリオはすべてがイージー。 『エイリアン』 アルティメット・エディションのボーナス・ディスクがあまりに充実していたので、やはりこの続編もDVDを買おうかと迷っていたのだけれど、これは繰り返し観るほどの作品ではなさそうだ。とかいいつつ、いずれはまた考えが変わりかねないけれど……。
(Sep 18, 2004)

スミス都へ行く

フランク・キャプラ監督/ジェームズ・スチュアート、ジーン・アーサー/1939年/DVD

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 アメリカ某州の上院議員が急死。州を牛耳る実業家テイラー(エドワード・アーノルド)らは、利権の絡んだダム建設法案を通すため、人畜無害な若き愛国者ジェフ・スミス(ジェームズ・スチュアート)を後釜に立てる。
 テイラーと癒着したジョセフ・ペイン議員(クロード・レインズ)に雇われ、スミスの秘書を務めることになったのがジーン・アーサー演じるクラリッサ・サンダース。初めのうち、あまりに代議士らしからぬスミスにあきれていた彼女だけれど、そのうち彼のストレートな理想主義に好意を抱くようになってゆく。理想に燃えるスミスは自らの使命を果たそうと、サンダースの協力を得て、少年キャンプ地設立のための法案を提出する。
 ところがそれが自分たちの利害にかかわると知ったテイラーはスミスの懐柔を図り、これを突っぱねられると一転、スミスの汚職をでっち上げて、彼を議会から追放しようとするのだった。巨大な闇の権力に翻弄されて汚名を着せられたスミスはどうやってこの事態に立ち向かってゆくのか……。
 スミスの若いがゆえの暴挙を暖かく見守る上院の議長さん(ハリー・ケリー)の人の良さがなんとも微笑ましい。やはり人の上に立つ人物はあんな風に公正で度量が広くないといけない。そんな人物を堂々と登場させてしまうのもまたひとつの理想主義なのだろうけれど、理想を語れないような映画ならば観ない方がいいとも思う。前に観た二作と比べると若干魅せられ度は落ちる。それでもやっぱり僕はフランク・キャプラが好きだ。
(Sep 20, 2004)

第十七捕虜収容所

ビリー・ワイルダー監督/ウィリアム・ホールデン/1953年/DVD

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 舞台は第二次大戦下のドイツ軍によるアメリカ人捕虜収容所。仲間うちでの秘密が所長らに筒抜けになっていることから、スパイがいるに違いないという疑いが広がり、仲間のうちで最も要領のいい収容所生活を送っているシフトン(ウィリアム・ホールデン)がその疑いの矢面に立たされる。真のスパイは? そして濡れ衣を着せられたシフトンの報復やいかに。
 ハリー(ハーヴェイ・レンベック)とコンビを組むアニマル役で作品のコミカルな面を一手に引き受けているロバート・ストラウスという人がけっこう好きだ。この人は 『七年目の浮気』 でもとぼけたアパートの管理人役を演じていて、そっちの方は別になんとも思わなかった、というか鬱陶しい人だなという感じだったのだけれど。
 いやしかし、ビリー・ワイルダーは外さない。地味そうな映画だからあまり期待していなかったのだけれど、これもやはり、とてもおもしろかった。
(Sep 20, 2004)