2011年10月のサッカー

Index

  1. 10/02 ● 鹿島0-1柏 (J1・第28節)
  2. 10/07 ○ 日本1-0ベトナム (親善試合)
  3. 10/11 ○ 日本8-0タジキスタン (W杯・3次予選)
  4. 10/15 ○ 磐田1-2鹿島 (J1・第29節)
  5. 10/22 △ 鹿島1-1神戸 (J1・第30節)
  6. 10/29 ○ 浦和0-1鹿島 (ナビスコ杯・決勝)

鹿島アントラーズ0-1柏レイソル

J1・第28節/2011年10月2日(日)/カシマサッカースタジアム/スカパー!e2

 あぁ、J2から昇格してきた柏相手にシーズン2連敗って……。
 この日は田代、興梠のツートップ(あとは前節と一緒のはず)。でもせっかくスタメン復帰でチャンスをもらった興梠はまたもやノーゴール。前半の終りごろに相手に退場者が出たもんで、後半からは遠藤に替えて大迫を入れ、3トップで攻めるも、結局チーム全体がノーゴール。一時は好調だった田代もすっかり湿ってしまった感じだし、駄目だなぁ……。
 対するレイソルは、守備がやたらといい。全員守備が徹底していて、こちらの自由にはボールを回させてくれない。そこんところは前の2チームとは、ぜんぜん違う。いまだ首位争いをしているのは伊達じゃないなぁと思わされた。
 で、攻めてはこちらのミスからボールを奪うと、電光石火の素早さで、21歳のFW工藤が先制ゴールを上げてみせる。A代表に呼ばれたもうひとりのFW、田中順也が危ないのかと思ってたら、なんだ、こっちの子もずいぶんと切れ味するいじゃないか。まいった。
 後半は、とある家庭の事情でどたばたして、集中できなくなってしまったけれど、いやはや、まいりました。完璧に今シーズンのリーグ戦に引導を渡された感じ。レイソル、こういうしぶといサッカーを続けられれば、もしかしたらJ1昇格1年目での初優勝も夢ではないかも……。
 優れた組織を作り上げ、若手の育成でも成果を上げているネルシーニョはすごいかもしれない。いつぞや、この人を日本代表監督にどうかって話があった気がするけれど、もしも実現していたらどうだったんだろうと思ってしまった。
(Oct 02, 2011)

日本1-0ベトナム

2011年10月7日(金)/ホームズスタジアム神戸/テレビ朝日

 来週のW杯予選・タジキスタン戦に向けての調整のため、ザッケローニの希望で組み込まれたという親善試合。これがどうにもぱっとしない内容になってしまった。
 でも、僕にはそのことをどうこう言えない。そもそも、僕はこの試合があることを一週間前まで知らなかった。なおかつ、試合当日の朝、テレビ番組表を見るまで、すっかり忘れていた。さらにはそれさえもが記憶に残らず、その日の仕事からの帰り道、「金曜日だからゆっくり買い物でもして帰ろうかなぁ……」なんて思うていたらくだった(あ、やべえ、今夜は代表選だった、とか思った)。
 なので、テレビ放送ではセルジオさんと松木さんがさんざん駄目出しをしていたけれど、僕自身は今回の代表をあまり悪く言う気にならない。だって、こっちだってちゃんと観る姿勢になってなかったもんで。そもそも格下のタジキスタンをホームに迎える前の調整で、これまた格下のベトナムと戦うってのは、観るだけのこちらにしてもあまり気分が盛り上がらない。やっている選手たちにしたらなおさらだろう。
 リーグ戦もそろそろ佳境となって、なかには優勝争いや降格争いをしている人たちもいるわけで。そういう人たちにしてみれば、できれば今は代表よりもクラブでの試合に集中したいだろう。かれこれ半年、休みなく戦ってきた疲れだってたまっているだろうし。そういう意味で今回は、やる側にも観る側にも、モチベーションという点で難しい試合だったと思う。
 それに加えてなお、今回はザッケローニがお気に入りの3-4-3を試してきた。さらにはスタメンでは故障中の本田、内田がいないのに加え、新戦力を試すためといって、遠藤、川島、岡崎、吉田らのレギュラー組がベンチ。フォーメーションは違う、選手は違う、さらにはモチベーション的にも難しいでは、いいサッカーが見られなくても仕方ない。
 僕は今年はじめて、一年を通じてアントラーズのJ1での全試合を見てきて、しかもそれがずっと不調だったこともあって、サッカーの難しさを実感を持って感じてきた。なもんで、この日の代表の不出来なサッカーも、その延長線として、それなりに納得のゆくものがあった。
 そりゃたまにはこんな試合をすることもあるって。それにしたって勝っているのだし、あまり悪く言ったら、忙しいリーグ戦のあいまを縫って集まった選手たちがかわいそうだ。もしも悪者がいるとしたら、このタイミングで格下の相手とブッキングした日本サッカー協会だろう。
 ……とはいえ、放射能汚染が心配ないまの日本では、わざわざ来てくれる国を探すのも難しそうだし(現状では、僕自身はどこの国の人であっても招待したくない)。どうせ親善試合をするのならば、いっそちょっとくらい無理をして、ヨーロッパ遠征でもしてしまやぁよかったのに……とか、無責任な部外者は思う。
 まあ、そうはいっても、この日のベトナムは思いのほか、よかった。少なくても、親善試合とは思えないくらい真剣に戦ってくれているのが画面を通じて伝わってきた。攻撃面ではあまり怖くなかったし、イージーなミスも多かったけれど、こと守備面ではとてもしっかり守っていた。そういう意味では、単に日本が悪かっただけではなく、ベトナムもよかったのだとも思う。
 ということで、この日のスタメンは、GK西川、DF伊野波、今野、槙野、両サイドが駒野と長友、ダブル・ボランチが長谷部と細貝、3トップが藤本、李、香川という布陣。後半からは栗原、阿部、中村憲剛、原口元気をいっぺんに入れて、フォーメーションをいつもの4バックに戻してきた(OUTは伊野波、長友、長谷部、香川)。
 この日、残りひとりの交替は、足をつった槙野に替わって急きょピッチに立った吉田。本当はハーフナー・マイクが準備をしていたのだけれど、ちょうどそのタイミングで槙野が倒れてしまったため、タイミングを逸して、結局出番なしで終わってしまった。もう一枚カードは残っていたので、ハーフナーにはちょっとかわいそうだった(試合後に槙野がハーフナーに怒られたって話がおかしい)。
 得点は前半24分、長谷部が右サイドのスペースへと駆けあがった藤本へとパスを通し、藤本がそれをゴール前へと折り返して、最後は李がダイレクトで決めたもの。長谷部の鋭いスルーパスと、それを全力で駆けながらトラップして、ディフェンス・ラインの裏側へと抜け出てみせた藤本のプレーが見事だった。藤本もようやく代表で仕事らしい仕事をしてくれた。長谷部もこのところ、見るたびにいいなぁと思う。
 そのほかだと、ザッケローニ体制となってからはこれが初スタメンの細貝もよかったと思うし(まあ、遠藤の代役決定とまではいかないけれど)、途中出場ながらA代表デビューを果たした原口も持ち前の積極性を見せてくれた。憲剛もひさしぶりに代表に戻ってきたし、個々の選手に注目すれば、それなりに見どころもあったかなと。でもまあ、全体的には、あまり出来のよくない一戦だった。
 願わくば、次のタジキスタン戦はこんな試合でありませんように。
(Oct 08, 2011)

日本8-0タジキスタン

ワールドカップ・アジア3次予選/2011年10月11日(火)/長居スタジアム/テレビ朝日

 お~、ハーフナー・マイク代表初スタメン! そして中村憲剛がトップ下!
 この布陣を見た時点で、きょうは勝利を確信した。だって普段から盤石な遠藤、長谷部のダブル・ボランチの前に憲剛だよ? で、両サイドに香川と岡崎がいて、ワントップにハーフナー・マイクだよ? フォーメーションはおなじみの4-2-3-1だし、本田抜きのシステムとしては、おそらくこれが現在最強でしょ~。
 果たしてこの日の代表はやってくれた。マイク、岡崎、香川が2ゴールずつ、さらには駒野、憲剛のゴールで合計8点の荒稼ぎ。守っては、おそらくタジキスタンに1本のシュートも打たせていないし。まさに完勝。大爆勝。
 まぁ、日本がよかったという以前に、攻守にわたってタジキスタンが駄目すぎたというのもある。攻めないし、守れない。2次予選で一度は脱落しながら、シリアの失格により復活してきたという国だけあって、やはりレベルは低かった。先週戦ったベトナムのほうがよほど手ごわかった。いやはや、心配して損した。
 でもまあ、相手がどれだけ駄目でも、8得点は立派。それも前の4人だけで、それも流れの中から7得点だからなぁ。こんな日本代表を見た記憶、とんとない。
 ハーフナーの2点は両方とも駒野のクロスに得意の頭であわせたもの。1点目は先制点で、2点目は後半開始早々(その直後に李と交替)。いや~、あの高さは強力な武器だわ。インパクト大だった。こりゃ、もしかしたらFWの第一席を仕留めたかもしれない。
 香川の2得点もめでたい。まあ、得点の場面以外ではいまいちなプレーも多かったけれど、それでも憲剛からのスルーパスを右足アウトサイドのワンタッチでゴールへ流し込んで見せた1点目のシュートは、文句なしに素晴らしかった。クロスがそのままゴールに入ってしまったような2点目も、ホントかウソか、試合後のインタビューでは狙ったんだと言い切っていたし。今年はドイツでいまいち調子が上がらないそうだけれど、この2ゴールで前向きにプレーできるようになれたらいいと思う。
 そのほか、岡崎はこの日の2ゴールですでに代表歴代6位だそうだ(いずれ最多ゴールを更新しちゃいそう)。その一方で、駒野はこれが代表初ゴールだとか。(まじ?)
 唯一残念だったのは憲剛のゴールで、相手選手がペナルティ・エリア内で倒れているときだったので、ちょっと後味が悪かった。その時点ですでに5点も取っていたし、あそこはプレーを切るべきだったと思う。でもまあ、きょうの憲剛は文句なしの大活躍だったから、彼がゴールを決めてくれてよかったとも思う。なもんで、やや複雑。
 この日の試合でもうひとつ残念なことがあるとしたら、マイク→李、長谷部→細貝、岡崎→藤本と選手交替を重ねるたびに、徐々に勢いが失われていった感があったこと。李がゴールを決めるか、残り15分で出てきた藤本が得点に絡んでくれていたら、本当に完璧だったのだけれど……って、そんなの贅沢もいいところだ。
 ま、なんにしろ、これら8ゴールのほかにも、吉田や長友らのシュートがバーやポストに嫌われるシーンが何度かあったし、こんなに景気のいい日本代表の試合を観るのは、ほんとひさしぶりだった(いや、はじめてかも)。本田抜きでもこんな試合ができるなんて、いまの日本代表はマジで史上最強かもしれない。
(Oct 11, 2011)

ジュビロ磐田1-2鹿島アントラーズ

J1・第29節/2011年10月15日(土)/ヤマハスタジアム/スカパー!e2

 おぉ、柴崎がひさしぶりにリーグ戦でも先発出場。ひとつ前のナビスコカップ準決勝でもスタメンで、そのときにも「おぉっ」と思ったものだけれど──それどころか、柴崎の公式戦初ゴールで名古屋を破って見事決勝進出だっ!――、その試合では増田が日本代表に呼ばれて不在だったし、だからだろうと思っていた。
 でもこの試合は違う。増田は代表から戻ってきている。なおかつ出場機会がなかったので、疲労の心配もない。それでも柴崎先発ってんだから、これはもう実力を買われたってことなんでしょう。さすが超高校級ルーキー。
 あと、ナビスコ杯といえば、準々決勝のマリノス戦で岩政がけがをしてしまって全治一カ月とのことで、この試合では青木がCBを務めた。つまり本来はボランチの青木と中田浩二がCBでコンビを組んでいるという。まぁ、ふたりとも守備のプロフェッショナルなので、なんら問題はないけれど、それにしてもこのところ、CBは人材不足だよなぁ……。
 ま、なんにしろそんなわけで、この日のスタメンはGW曽ヶ端、DF新井場、青木、中田、アレックス、MF柴崎、小笠原、野沢、遠藤、そしてFWが大迫と田代のツートップという布陣だった。やはり柴崎と小笠原のダブル・ボランチというのがファンとしてはたらまらない。
 対するジュビロは、スタメンを見ても知っているのは、川口、駒野、那須、西、川口というベテランしかいないという状況だったので、こりゃ今回も楽勝だろうと思っていたのだけれど、いや、どうしてどうして。意外と手ごわい。シュート数は鹿島の7に対して、磐田が13。倍近く打たれている計算になる。順位も見れば、鹿島の2つ下なだけだし。山田とか山本とか小林とか、似た名前の選手が多くて、誰がどうよかったとかは、よくわからなかったけれど、それでもジュビロ、若手がちゃんと育っている感じで、意外といいかもしんない。
 試合はスコアレスで突入した後半にセットプレーから田代のヘディングが決まってこちらが先制(野沢のキックの精度はやっぱりすごい)。でも、そのあとちょっとした油断をつかれたカウンターからのワンプレーで、金園というFWに同点ゴールを決められてしまう。
 でも、あ、こりゃまずいかも……と思ったそのちょっとあと。柴崎がこれといったあてもなく放り込んだクロス──別に誰も詰めていってなかった──が、相手のなんだそりゃってオウン・ゴールを誘って、ふたたび鹿島が勝ち越し。結局それが決勝点となった。
 ほんと、あのオウン・ゴールは放っておけば川口がキャッチして終わりってボールだっただけに、それを無理にクリアしようとしてオウン・ゴールにしてしまったジュビロのDFにとっては痛恨だったろう。まあ、それにしたって柴崎がゴールに向かってボールを蹴り込んだからこそ生まれた得点なわけだし。とりあえずゴールに向かってシュートを打てばなにかが起きるという証拠のような得点だった。 柴崎、ラッキー・ボーイ。とりあえず2試合連続で得点に絡んでいるわけだし、これでもしかして次もスタメンかも。
(Oct 16, 2011)

鹿島アントラーズ1-1ヴィッセル神戸

J1・第30節/2011年10月22日(土)/カシマサッカースタジアム/スカパー!e2

 試合開始前に放送チャンネルはどこだと、CSに検索をかけるも録画放送しか見つからず。なんだぁ、きょうは生放送はなしか? そんなバカな……と思ったあとで、あぁ、そうかと。そういや今月からBSでもスカパーの放送が始まったんだっけ。
 はたして、BSスカパーというチャンネルにありました、アントラーズ戦の生放送。ということで、初めてBSスカパーで観たヴィッセル神戸との一戦。
 スタメンは前節と一緒。つまりオガサと柴崎、背番号40と20の新旧チームの中心選手によるダブル・ボランチだっ。……とはいっても、しかし試合自体は、いただけない内容だった。
 オリヴェイラさんも試合後の記者会見で「前半はうちとしては珍しいくらいに不出来だった」というようなことを言っていたようだけれど、ほんと、相手のプレッシャーの前に、思うようなサッカーができていなかった。ま、そういう意味では神戸がよかったとも思う。守備のバランスが非常によく、ポポ、吉田孝行、ボッティという前の3枚はけっこうな圧力を感じさせた。
 後半に入ると、状況はいくらか改善する。それも、オガサ→増田、田代→興梠、遠藤→フェリペ(おっ、ひさしぶり)と選手交替を繰り返すにつれて、徐々にリズムがよくなっていった気がした。興梠にしろ、増田にしろ、交替で出てきた選手たちにはそれぞれポジション争いでの危機感があるだろうし、そういう意味では彼らが出てきてからいいサッカーができるようになったのは、とりあえずプラス材料。
 先制点を許した場面では、カウンターから右サイドを駆け上がったポポがまったくノーマークだった。彼には前半から危ないシュートを打たれていたし、あそこまでフリーでボールを持たせちゃ、そりゃ駄目だって。
 対するこちらは大迫が似たようなチャンスからGK1対1のチャンスを逃している。そういう意味では、この日のドローは日本人とブラジル人ストライカーの決定力の差がもたらしたものだったという気もする。大迫、この日は積極的にシュートを打っていて好印象ではあったけれど、それでも、ああいうのは確実に決めて欲しい。
 同点ゴールは野沢のFKから、田代が茂木に倒されてPKをもらったもの(キッカーは野沢)。ボールまではやや距離があったけれど、とりあえず田代がボールに一番近い位置に飛び込んでいたので、倒された瞬間に、あ、こりゃPKだと思うような、珍しくもわかりやすいPKシーンだった。
 まあ、なんにしろその1点だけで、あとのチャンスは決め切れずでは勝てない。この日のドローで、ついに今季はACL出場権のかかった上位3位までに入れないことが確定。アントラーズのJ1は残り4節を残して終戦となってしまった。あぁ……。
 とりあえず気をとりなおそう。今週末はナビスコカップの決勝だっ。
(Oct 23, 2011)

浦和レッズ0-1鹿島アントラーズ(延長0-1)

ヤマザキナビスコカップ・決勝/2011年10月29日(土)/国立競技場/フジテレビ

 秋晴れの空の下、緑のピッチと真っ赤なスタンドの対比が目に鮮やかなヤマザキナビスコカップの決勝戦。
 いや~、それにしても疲れる試合だった。延長ふくむ120分間。なかなか点の取れない厳しい試合を制して、アントラーズが見事15個目のタイトルを獲得した。結局、今回のナビスコカップでアントラーズは、準々決勝以降のすべての試合で120分間戦っているとのこと。いやぁ、お疲れさまでした。
 この日の決勝に臨んだスターティング・メンバーは、曽ヶ端、新井場、青木、中田、アレックス、柴崎、小笠原、遠藤、野沢、大迫、興梠の11人。オリヴェイラさん、なんとタイトルのかかったこの試合に、このところスタメンからはずれていた興梠を起用してきた。
 まぁ、でもその気持ちもわかる気はする。なんだかんだいいつつ、3人のFWのなかでは、運動量はぴかいちだから。興梠がいるときの方が、攻撃のリズムもいい気がするし。現状では得点能力は田代が上かもしれないけれど、チーム全体としてのバランスは、興梠が入ったときの方がよくなる印象がある。
 とはいえ、今年はまったく結果の出せていない興梠だ。この大事な一戦で興梠スタメンというのは、ある種の賭けに出たかなと思った。
 で、その賭けに勝って、興梠のゴールでアントラーズが見事優勝!――というのが、試合前の僕の希望的観測だったのだけれど、その予想は結果としてはハズレ。興梠はこの試合でもノーゴールに終わってしまった。あぁ……。
 とはいっても、延長戦での決勝ゴールのアシストは彼なのだから、まあ、監督の期待には答えたといってもいい。最後の最後まで足が止まらないそのプレーぶりはあっぱれだった。あとはもうちょっと、自分で決めてやるんだという積極性があればなぁ……。今年の興梠に足りないのは、なにがなんでも自分が決めるんだという、つねに自らゴールを目指す姿勢だと思う。ゴール前でパスを選択しすぎ。まあ、せっかく決勝ゴールのアシストを決めてくれた選手にそういうことをいうのもなんだけれど。
 なんにしろタフな試合だった。前半は一進一退って感じで、試合が大きく動いたのは後半から。後半も早い時間帯に、山田直樹が2枚のイエローカードを立てつづけにもらって、退場してしまう。
 そこからは完全に鹿島押せ押せの展開。オリヴェイラさんも積極的に動き、まずは遠藤を田代に替えて3トップとすると、さらには相手の右サイドは怖くないと見たのか、左サイドバッグのアレックスに替えて、フェリペを同じポジションで起用するという大胆な采配に出る。この超攻撃的布陣のためもあり、こりゃいつ決勝ゴールが決まってもおかしくないという時間帯がつづいた。ところがそれが決まらない。
 そうこうするうちに、青木の右サイドでのなにげない競り合いに対して、いきなりイエローカードが出される。で、青木もそれが2枚目だったもんで、こちらも退場になってしまう。
 山田の退場も、やや厳しすぎる嫌いはあったけれど、青木のほうはまったく納得がゆかなかった。そりゃ左サイドの突破をはかった相手を体をはってとめようとはしたけれどさ。それほど相手のビッグ・チャンスというシーンではなかったわけだし、あれで退場ってのはないだろう。単に山田の退場とバランスを取ったとしか思えない。あまりの判定にオリヴェイラさんもあきれて苦笑していた。ああいう場面にしては珍しい。
 この日の主審の東城さんという人は、序盤からおやっと思うようなイエローカードを切っていたので、これはもしや危ないかもとは思っていたんだったが、まさか両方に退場者が出るとは思わなかった。あのジャッジには疑問おおあり。
 この日の青木はセンターバックとしてプレーしていたので(岩政故障中)、この退場劇でアントラーズのCBは中田浩二ひとりになってしまった。ベンチにはルーキーの昌子源{しょうじげん}という子が控えていたようだけれど、さすがにこの大舞台にルーキーの途中出場は荷が重い。結局、新井場をCBへ、柴崎を右サイドへシフトして急場をしのぐことになった。
 要するに、ここからの4バックは、柴崎、新井場、中田、フェリペという形。わぉ、プロパーなDFがひとりもいないじゃん! って、それでもしっかり守り切れてしまうところが、鹿島のすごいところかもしれない。柴崎もサイドバック、意外といけていた。120分間フル出場してなお涼しい顔をしているし、ほんとこの子は底が知れない。
 あと、スタメンの右サイドバックが西ではなく新井場だってのも、この展開になってみると大正解だった。西がスタメンだったら、さすがにCBは任せられなかっただろうし、となれば昌子くんの出番となって、その後の増田の出番はなかったかもしれない。ここんところでもオズワルド・オリヴェイラの采配はなにげにマジカルだった。さすがオズの魔法使い。
 ということで、両方とも10人ずつになって、試合はまた振り出しに戻った。とはいえ、基本的なパターンはそれ以降もそうは変わらず。基本こちらがボールをまわして組織で攻め立てる一方で、レッズがたまのカウンターから、原口やエスクデロの個人技でこちらのゴールを脅かすという図式。
 それでも双方なかなか点が入らないじりじりとした展開のまま、試合は延長に突入。で、アントラーズは延長とともにオガサを下げて、増田を入れてくる(レッズも啓太が交替)。ここまできて、ようやくチーム唯一の代表選手の登場だ。延長戦のおかげで増田に出番がまわってきたんだから、とりあえず90分で勝負がつかなくてよかったかもしれない、なんてちょっと思った。
 なにはともあれ、その延長前半に試合をようやく決めてくれたのは、途中出場の田代を加えた3トップだった。田代がハイボールを胸トラップで落とし、左サイドをフリーで攻め上がった興梠にスルーパス。興梠がこれをグラウンダーのクロスでファーサイドに流し込むと、その先に大迫が待ち構えていた。フリーの大迫はこのボールにあわせるだけ。3人のFWの見事な連係から生まれた決勝ゴールだった。いやぁ、勝ってよかった。
 レッズは十日ほど前にペトロヴィッチ監督が解任され、ユースの監督だっだとかいう堀孝史という人が指揮を取っていた(俺よりひとつ年下)。そのせいか、スタメンの顔ぶれがリーグ戦のときとか変っていて、鈴木啓太や山田暢久がスタメンに名を連ねていたのが嬉しかった。
 内容的にもリーグ戦より粘りづよいサッカーをしている気がした。攻めはやはり個の才能頼りの感が否めないけれど、それにしたって、エスクデロ、原口、梅崎、柏木ら、攻撃的なセンスのある有望な若手は本当に多いわけで(あまりに代表でなじみの選手が多いせいで、レッズのシュート・シーンに思わず「あ、惜しい」とか言っているやつ)。山田直樹がこの日の退場劇の悔しさをバネに一皮むけて、真の司令塔として機能し出すようだと、来年のレッズは怖いかもしれない。
 なにはともあれ、この日みたいなサッカーができていれば、レッズのJ1残留はなんの問題ないでしょう。なによりレッズには日本一のサポーターがついているわけだし。ほんと延長後半の大歓声はものすごかった。敵ながらあっぱれでした。
 いやぁ、それにしてもオリヴェイラ監督はこれでついに国内タイトルを完全制覇ですよ。就任以来のこの5年間でタイトルを取ってない年がないってんだから、冷静に考えるとものすごい(冷静に考えなくてもすごい)。
 こうなるとあとはもうアジア制覇を残すのみってことになるけれど、今年はもうリーグ戦での3位以内は無理になってしまったから、来年のACLに出るには天皇杯も取らなきゃならない。基本的に「目指せ全タイトル!」がモットーのクラブとはいえ、実際に2冠を達成しなきゃならないというのは、さすがにハードルが高いよなぁ……と思う。
 でもまあ、いまだにACLだけ獲ったことがないってのは、逆に天皇杯に向けて、ひいては来季に向けての大きなモチベーションになりそうな気もする。
 じつは原発事故のせいで、オリヴェイラさんとの契約も今年限りになるんじゃないかと心配していたりするんだけれど、天皇杯に勝ちさえすれば、また話も違うかなと。大迫も試合後のインタビューで、天皇杯も勝つつもりだから応援よろしくといっていたし、とりあえず期待して行方を見守ろう。
(Oct 29, 2011)