2008年8月のサッカー

Index

  1. 08/02 ● J-ALLSTARS1-3K-ALLSTARS (JOMOカップ)
  2. 08/07 ● U-23日本0-1U-23アメリカ (北京オリンピック)
  3. 08/10 ● U-23ナイジェリア2-1U-23日本 (北京オリンピック)
  4. 08/13 ● U-23オランダ1-0U-23日本 (北京オリンピック)
  5. 08/20 ● 日本1-3ウルグアイ
  6. 08/27 ○ 神戸1-2鹿島 (J1・第23節)

J-ALLSTARS1-3K-ALLSTARS

JOMO CUP 2008 ALLSTAR SOCCER/2008年8月2日(土)/国立競技場/テレビ朝日

 例年のJリーグのみのオールスター戦から、Jリーグ選抜と韓国のKリーグ選抜との対戦へとフォーマット変更された今年のJOMO杯オールスターサッカー。
 結果としてJリーグ選抜が負けたこともあって、とてもダウナーな雰囲気で終わってしまったけれど、それでもいままでにない形で韓国と対戦することができたのは、やはりいい刺激になった。試合後のJリーグの選手たちの──たかがエキシビジョン・マッチに負けただけとは思えない──悔しそうな表情が、この試合の意味をよく物語っている。カズとゴンが競演した去年のJOMO杯のように、ファン選出のオールスター戦ならではの楽しさを味わえないのが残念な部分もあるけれど、それでもライバル韓国との対戦の機会が増えることは、どんな形であれ、日本サッカーの発展にプラスになるだろうと思う。なので今回の企画変更については、現状はとりあえず肯定気分でいる。何年かしたら、また普通のオールスター戦が見たくなっちゃうような気もするけれど。
 今回のJリーグ選抜のスタメンは、GKが楢崎、DFが4バックで駒野、中澤、闘莉王、新井場、ダブルボランチが小笠原とキム・ナミル(金南一)、攻撃的MFにポジションに中村憲剛と山瀬を配し、2トップがヨンセンとチョン・テセ(鄭大世)という布陣。中盤にひとり、知らない顔の選手がいると思ったら、神戸のキム・ナミルだった。本来は韓国代表の選手がJリーグ選抜のメンバーとしてプレーするというのも、こういう企画ならではのサプライズだ(残念ながらあまり存在感はなかったけれど)。そうそう、監督はわれらがアントラーズのオリヴェイラさんだった。岩政も後半途中から出場した。
 試合は序盤、Jリーグ優勢だった。即席チームにしては小気味いいパス回しでゲームを支配し、積極的にシュートで終わる。ただ、いかんせんシュートの精度が低い。惜しかったのは憲剛が打ったミドルくらいじゃないだろうか(これはイ・ウンジェがナイス・セーブ)。みんな打つのはいいけれど、ちゃんと枠に飛ばせよなと、僕はひとりごちていた。ハイボールのクロスにチョン・テセとヨンセンがかぶるシーンも何度かあったし、そのへんはやはり急増チームだよなあという感じだった。
 そうこうするうちに、前半も残り10分を切った頃になって、Kリーグ選抜に先制ゴールを許してしまう。ブラジル人FWドゥドゥ──ちなみにFWは両軍とも外国人オンリーなのがさびしい──の直接FKを、一度は楢崎が弾いて止めたものの、ポストにあたって跳ね返ったそのこぼれ球を、チェ・ソングッにきれいに決められた。これはあそこに詰めていたチェ・ソングッの勝ち(なんで名前の最後に小さい「ッ」がつくのか不思議)。あそこをフォローできなかったといって守備陣を責めるのは、エキシビジョン・マッチではちょっと気の毒だ。
 なんにしろ、この先制点を許したことで、それまでにあったお祭り気分はすっかり消し飛んで、まずいなこれは、というムードが漂い始めた気がする。
 致命的だったのは、後半早々に山瀬が獲得したPKを止められたことと、その後、反対に中澤が相手のユニフォームをひっぱってPKをとられて、こちらはきちんと決められたこと。現時点でのA代表の得点王がPKに失敗して、守備の要がおそまつなファールでPKをとられているようでは、勝てるはずがない。さらにはPKを決められてまもなく、カウンターから3点目を献上してしまう。暑い中の試合だったし、さすがに疲れが出たのか、この場面ではボランチが守備に戻りきれていなかったから、失点も当然だった。
 Jリーグ選抜唯一の得点は、小笠原のCKからのグラウンダーのボールを、闘莉王がどかんと決めたもの。これはなかなか鮮やかな得点だった。闘莉王はその後もあわやという見事なボレーシュートを打ったりして、終盤は攻撃参加しまくりだった。ただ、レッズでもそうだけれど、こういう困ったときの闘莉王頼りという近頃の傾向は、どうかと思う。いかに攻撃力があろうとも、いざというときにDFに頼らなくてはならないようなサッカーをしていたんでは仕方ない。
 その点では、後半途中から出場した金崎夢生{むう}のプレーには救われた気がする。A代表候補の合宿にも招集されて、なにかと話題の大分の19歳MF。彼のプレーを観るのは初めてだったけれど、これが非常に好印象だった。なんでオリンピックに呼ばれていないんだか、不思議だ。まあ、同じようなタイプの攻撃的MF、梅崎や水野も落選しているし、この手のタイプは反町さんのお気に召さないのかもしれない。なぜだかはよくわからないけれども。
 というようなことで、金崎が今後に期待は持たせてくれたものの──あと小笠原や新井場もけっこうよかったとは思うものの──、今年のJOMO杯はお祭り気分からはほど遠い、苦い味を残して終わることになった。なんでも来年は韓国で開催されることがすでに決まっているらしいので、一年後にはぜひとも雪辱をお願いしたい。
(Aug 03, 2008)

U-23日本0-1U-23アメリカ

北京オリンピック・グループB/2008年8月7日(木)/中国・天津/NHK総合

 いよいよ待望のオリンピック本番!──なのに結果は、ああ、やっぱりって感じだった。
 この試合で反町監督が選んだ先発メンバーは、GK西川、DF内田篤人、森重、水本、長友、MF本田拓也、梶山、本田圭佑、香川、谷口、そしてFWは森本ひとりという構成だった。よりによって森本のワントップって……。彼はアルゼンチン戦ではいいところがひとつもなかったじゃないか。それをもっとも大事なこの初戦で先発起用するってのは、いったい反町氏はどういう基準で選手を選んでいるんだろう。ほんと、この人の采配は僕にはさっぱりわからない。
 だいたいにして、このチームはどうやって点を取ろうとしているのかが見えない。前半20分に、ショートコーナーからトリッキーな連携プレーで相手ゴールを脅かしたシーンは素晴らしかった。ああいうプレーはきっと、練習のたまものなのだろう。でも結局、惜しかったのはそういうセットプレーからだけって感じで、流れのなかからの攻撃の形は作れずじまい。唯一、素晴らしかったのは内田篤人で、彼からのクロスが決定機につながるシーンがいくつかありはしたけれど、それも前半だけ。後半に入ってその篤人が鳴りをひそめてしまってからは、もうひとつも打つ手がない感じだった。
 そもそも前半の惜しいチャンスをふたつ、フリーで外したのが森重ってのが困りものだ。いや、彼個人を責めるつもりはまったくない。なんたってチームに加わったのは今年からなわけだし、それを考えればよくやっていたと思う。だから彼のミスがどうしたという以前に、そうした絶好機にFWやMFが絡んでいないことに問題を感じる。森本はやはりこの試合でもいいところがなかったし、本田圭佑も香川も、決定的な仕事はほとんどできずじまいだった。谷口はフィニッシュに近いところで仕事をしていた印象だったけれど、それだって結果は出ていないわけで。攻撃的なポジションにいる選手たちがゴール前で仕事ができず、まったくミドルシュートも打てないようじゃ、ゴールなんて決められるわけがない。
 結局、日本は前半のいくつかのチャンスを決められないまま、後半早々、ゴール正面にぽっかりあいたスペースでアメリカの7番、ホールデンという選手にシュートを打たれて先制を許すと、あとはなすすべがなかった。梶山→李、森本→豊田、香川→岡崎と交代のカードを切ってFWばかりを投入するも、ほとんど効果なしで、まるで得点の気配が感じられない。なんで梅崎や水野みたいな、もっと攻撃力のある選手がベンチにいないんだと、僕のいらいらは募るばかりだった。でもって結局、そのままアメリカにのらくらと逃げ切られてゲームセット。日本は二大会連続で黒星スタートということになってしまった。
 僕はこのチームが決勝トーナメントへ進出できる可能性は五分五分だと見ていた。個々の能力は決して低くないので、組み合わせがうまく機能すれば、それなりのサッカーはできるはずだし、あとはツキに恵まれれば、2勝できないものでもないだろうよと。
 でもこの試合では、そのツキがなかった。いや、もしかしたらあったのかもしれないけれど、それは反町さんが伊野波と青山直晃を外してまで抜擢した森重が、ふたつの決定機を逃したことで逃げていってしまった。もしくは平山を見限って呼んだ森本が不発に終わったことで逃げていってしまった。やっぱり駄目だって、そんな運任せの、行き当たりばったりのサッカーをしているようじゃ……。森重がシュートを外したシーンを見て、僕はこのチームに本当に呼ぶべきだったのは、闘莉王だったんじゃないかと思ってしまった。
 次の試合はサマーソニックと重なっているので、生では観られない。僕が知らないうちに、北京での日本代表の戦いがさっさと終わってしまいませんように──。とりあえずいまはそう祈るしかない。
(Aug 07, 2008)

U-23ナイジェリア2-1U-23日本

北京オリンピック・グループB/2008年8月10日(日)/中国・天津/テレビ朝日(録画)

 ふざけるなと──サマーソニックから帰ってきてすぐに録画で試合を観て、その結果にがっくりとした僕は、試合後の反町さんのインタビューをネットで読んで、本気で腹が立った。
 「悔いがない」って、なんなんだ、それは。そういう発言は実力で日本代表の座を勝ち取った個人競技の選手の発言だろう。一生懸命がんばって代表の座を勝ち取り、それでも本番で力およばず敗れた選手がそういうのはわかる。でもサッカーの五輪代表監督というポジションは、そうではない。かつてトルシエがやっていたことでもわかるように、監督自身は決して日本代表ではない。代表選手を選んで最善のプレーをさせることを使命として選ばれたポジションなわけだ。それが結果を出せないどころか、最悪の結果で終わっておいて、悔いがないって……。それはあまりにふざけすぎている。悪いけれど、僕はそんな発言が許されると思ってしまう反町康治という人の知性を疑いたくなった。
 僕は初めのうち、彼には好意的だった。年が近いので(僕よりも3学年上)、自分と同世代のサッカー監督として、ぜひともがんばってもらいたいと思っていた。でも、およそ2年間にわたって五輪代表のサッカーを観てきて、たまるのは不満ばかりだった。そしてこの日の試合で負けておきながら、その発言だ。いやはや、もうすっかり愛想が尽きた。悪いけれど、彼にはこの先、二度と日本代表に関係してほしくない。オシムの薫陶がなんの役にも立っていないようなのが、返す返すも残念でならない。
 反町氏はこの試合で、フォーメーションは前の試合と同様4-2-3-1のまま、3人の選手を替えてきた。右サイドに長友にかえて安田を起用、ボランチの梶山を細貝にかえて、ワントップは李という形。前の試合では篤人が非常によかったので、逆サイドでほとんど攻撃参加できずに終わった長友を、より攻撃力のある安田と入れ替えることで、両サイドからのサイド攻撃に活路を見出そうとしたのだと思う。で、長友よりは守備面で劣る印象の安田を起用するにあたり、かわりに中盤の守備力を高めるべく、梶山を細貝と入れ替え、出来の悪かった森本はお役御免と。だいたいのところはそんなところじゃないかと思う。まあ、形としては理解できる。
 でもどれだけいじってみたところで、所詮{しょせん}は準備不足。アメリカよりも確実に手ごわいナイジェリアを相手に通用するはずもない。安田を入れた効果はそこそこで、逆にアメリカ戦では有効だった内田篤人のサイド攻撃はなぜか影をひそめ、しかも梶山をはずしたことで、中盤の底でボールをさばく選手がいなくなってしまった。攻撃は本田圭佑と香川の個人技頼りで、ワントップの李はほとんどボールに触れない。谷口はあいかわらず、ボールにいま一歩およばない。こんなんで勝てたらその方が不思議だ。観ていて、こりゃあ、よくて勝ち点1じゃないかという気がした。
 でもナイジェリアの攻撃力はそんな計算を許してくれなかった。前半こそスコアレスで折り返したものの、後半開始から10分もせずに、実にすばらしい連係から先制ゴールを奪われてしまう。4人ほどの選手がダイレクト・パスをつないで、最後は9番の選手が決めたもので、これぞまさに日本代表が目指しているゴールじゃないかってくらい、見事な連係だった。カウンターからの2点目もしかり。どちらも敵ながらほれぼれしてしまうくらい、きれいな形だった。
 ビハインドを負った日本は、1点取られた時点で李を豊田に、香川を岡崎にかえ、さらに2点目を取られたあとで細貝を梶山にかえて反撃に出る。かろうじて一矢を報いたのは、後半のこり10分というあたり。相手GKのミスキックが谷口にわたってカウンターの形となり、そこから豊田へのラストパスが通って、大会初ゴールとあいなった。ともに反町さんが抜擢した選手たちの活躍でのこのゴールで、反町氏はかろうじて面目を保った気がする。もしもこのゴールがなかったらば、反町采配にはまったく救いがないところだった。
 ちなみにナイジェリアの先制点のシュートの場面では、10番の選手があずかったボールを、うしろから入ってきた9番の選手が決めている。リプレイでこのシーンを見せられて、そうだよなあと思った。やっぱ、エース・ナンバーをつけている選手がちゃんと仕事をするチームは強いって。
 {ひるがえ}って考えてみるに、日本はどうか。9番をつけているのは豊田。10番は梶山。11番は岡崎。この日はみんなベンチ・スタートだ。そんなチームが勝てるものだろうか。いや、それ以前に、そんなチームがおもしろいわけがない。
 別に背番号なんてどうでもいいだろうという意見もあるだろう。でも僕は違うと思う。それらの背番号にはそれなりの重さがある。知らないチームを見るときに、その辺の番号をつけている選手がいれば、僕らは自然とその人たちがチームの中心だと思う。日本が世界のサッカーの基準からはマイナーであるからこそ、そういう部分のスタンダードは大切じゃないだろうか。少なくても、どこぞのテレビ局がやっているようなつまらない肩書きをつけるよりは、そういう背番号にふさわしい選手にふさわしい番号を与えるほうが、よほどいいアピールになると思う。ただでさえ日本人の名前は欧米人には発音しにくいのだから、記号としてわかりやすい背番号はなおさら重要だという認識を持つべきだ。というわけで、背番号ひとつとっても、反町ジャパンは駄目だったと僕は思うのだった。
 もうひとつ言っておきたい。反町さんは谷口をトップ下で起用したり、内田篤人にコーナーキックを蹴らせたりしているけれど(これにはびっくりだった)、僕はそれもおかしいと思う。もしも谷口が本当にトップ下にふさわしい選手ならば、フロンターレでもそのポジションでプレーしているはずだ。篤人のキックがチーム一ならば、彼だってアントラーズでCKを蹴っているだろう。でも彼らは自分のチームでは、それらのプレーをしていない。谷口はボランチだし、篤人がCKを蹴ったなんで話は聞いたことがない。それは彼らにそういう才能がないからではなく、単にチームにおいてはナンバーワンではないからだろう。それなのに反町さんは彼らにそういうプレーをさせている。クラブ・レベルでナンバーワンでない選手が、代表レベルでは一番なんてことがあるとは思えない。彼のやっていることは非常にナンセンスだと思う。その上、ある意味それは「クラブの監督にはわかっていないかもしれないけれど、谷口にはトップ下のほうがあっているんだ」と言っているようなもので、非常に不遜な態度にさえ思える。
 さらにいえば最終選考のときに、メンバー選考の基準でもっとも重視したのはマインド、心だ、というようなことを言っていたけれど、あれなんかもひどい話だと思う。要するに選ばれなかった選手は、選ばれた選手に比べて精神性がなっていないという意味になる。それはがんばって予選を戦ってきたにもかかわらず、選考から漏れた選手たちに対して、あまりに失礼じゃないだろうか。僕がもしも落選した選手の立場だったらば、絶対に反町さんに対していい印象は持てない。今後もサッカー界で生きてゆく以上、それは反町さん自身にとって、決して得なことにはならないだろう。そんな計算もできないようでは、戦略家としても失格な気がする。
 選手選考やOA枠の使用に関してみせた優柔不断さや、こうした不用意な発言についてつらつらと考えてみるに、僕にはこのチームで誰よりも人間ができていないのは、反町監督自身のように思えてならないのだった。そんな指揮官を擁することになったのが、今回のオリンピック代表の一番の不運だったんじゃないかとさえ思う。
 だっていまの日本サッカーは、決してオリンピックでアメリカ、ナイジェリアに2連敗するようなレベルじゃないだろう。この試合を観ていても、僕にはナイジェリアが絶対に勝てないというほど強い相手だとは思えなかった。きちんと準備をして、ちゃんとしたサッカーをすれば、日本のサッカーは世界で通用するようになると僕は堅く信じている。
 オシムさんだってそう思ったからこそ、老体に鞭打って代表監督の職を引き受けてくれたのだろう。世界に追いつく可能性はある。あとはきちんと導いてくれる人がいてくれれば……。けれどそんな期待を実現してくれるかに見えたオシム氏は病魔に倒れ、途中降板を余儀なくされてしまった。そしていまの日本は再び、ワールド・スタンダードを知らない人の舵取りによって旅を続けている。オシム氏の薫陶を受けたはずの五輪代表監督は、オシム氏から習ったことなんてなにひとつないようなチームを作って、あえなく玉砕を遂げた。いったい、この国のサッカーの未来はいずこへ向かうのだろう──。
 暗中模索という言葉の意味を実感するような、やるせない真夏の一夜だった。
(Aug 11, 2008)

U-23オランダ1-0U-23日本

北京オリンピック・グループB/2008年8月13日(水)/中国・天津/テレビ朝日

 いやー、日本代表を応援するようになって十年以上になるけれど、A代表、五輪代表を問わず、日本代表が公式大会で勝ち点1もとれずに終わるのを見せられたのは、98年のW杯フランス大会以降では、初めてだ。ある意味じゃ十年ぶりの快挙──いや、愚挙。いやはや、駄目なんじゃないかとは思っていたけれど、ここまで駄目だとは思わなかった。なにがメキシコ以来のメダルを狙うだ。大言壮語にもほどがある。
 北京オリンピックでの最後の試合となったこの試合の先発メンバーは、GK西川、DF長友、水本、吉田、森重、MF細貝、梶山、本田圭佑、谷口、FW岡崎、豊田という顔ぶれだった。本田拓也が累積警告で出場停止なのに加え、われらがウッチーがわき腹痛(涙)、安田も負傷したとのことで、貴重な得点源である両サイド・アタッカーが、ふたりとも欠場を余儀なくされてしまった。仕方なく森重をサイドバックで起用するという緊急フォーメーションを取らざるを得なくなったあたり、やはりこの代表はついていない。
 でも、ついている、ついていないという話ならば、両サイドバックが使えなくなったことは不運かもしれないけれど、それ以前に、この局面になって、これまでスタメンで起用してきた香川を下げ、かわりに岡崎を使ってくる反町采配こそが、そういう悪運を招いているように僕には思える。
 岡崎がスタメンと聞いて、僕はフォーメーションをツートップに変更してきたのかと思ったけれど、彼は下がり目でプレーしていて、結局フォーメーションはワントップのままだった。どうせこれまでどおりワントップで戦うならば、ロンドン・オリンピック出場の可能性のある香川にこそ、より多くの経験を積ませるべきだろうに。それを岡崎先発ってのは、要するに、せっかく代表に選んだんだからスタメンで使ってあげたいという、温情采配としか思えない。まあ、すでに敗退が決まっているのだから、それも悪くないけれど──どうせならば、GKの山本にも出場機会をあげればよかったのに──、でも、もしも反町さんに本気で勝ち点をとって帰るつもりがあるならば、これまでの試合で積み重ねてきた経験値を無にするような、そんな選手交替はしないと僕は思う。それはこの期に及んでの豊田のワントップにしろ、しかり。3試合すべてでFWが異なるようなチームがまともに戦えるとは僕には思えない。
 でも、じゃあ岡崎や豊田が駄目だったかというと、そんなことはない。彼らは運動量も多く、プレー自体には必死さが感じられて、それなりに好感は持てた。なんだか僕はずっと彼らのことを悪く書いているような気がするけれど、それは別に彼らのことが嫌いだからではなくて、単に彼らの起用法に納得がゆかないからだ。問題は中途半端な使い方をする反町さんにある。
 極端な話、僕は3試合すべて豊田がスタメンでもよかったと思っている。少なくてもこの大会でまともにシュートを打てたFWは彼だけなのだから。なんだったら豊田と岡崎のツートップでもよかった。とにかくしっかりと形を固定して、3試合を戦って欲しかった。日替わりスタメンで誰がチームの中心なのかとか、どういう形で得点を狙っているんだとかが、まったく見えないで終わってしまったのがなにより残念だ。
 それにしてもオランダも駄目だった。ここまで2引き分けという不甲斐ない成績も納得。万が一この試合に勝てなければ予選敗退が決まるという土壇場に追い込まれたチームとは思えないほど、サッカーの内容は悪かった。これくらいのオランダならば、勝てないまでも、負けることはないんじゃないかと思ったのだけれど、それを本田が不用意に与えたPKで負けてしまうなんて、もったいないにもほどがある。本田も思いきりユニフォームを引っぱってたくせに、レフェリーにけちをつけてどうする。みっとみない。
 振り返ってみればこの大会、暑さのせいか、それともピッチが荒れていたせいか(なにやってんだ中国というひどさだった)、アメリカの出来も悪かったし、ナイジェリア戦だって失点の場面だけが悔やまれるってくらいの展開だった。で、今日のオランダも出来は最悪。これくらい不出来な相手ばかりと戦って、でもって勝ち点0ってそりゃあ、いったい……。
 あまりにも情けなくて、もうなにもいいたくない。とりあえずこの五輪代表を観るのも今日で最後だ。4年後には頼むから、ちゃんとしたサッカーをみせて欲しいと思う。バイバイ、反町さん。
(Aug 13, 2008)

日本1-3ウルグアイ

2008年8月20日(水)/札幌ドーム/フジテレビ

 オリンピック代表が不本意きわまりない成績を残して大会を去ってからまだ一週間だというのに、気分転換のひまもなく、間近に迫ったW杯最終予選に向けたA代表の親善試合があった。対戦相手は南米の古豪、ウルグアイ。
 いやぁ、それにしてもこの国が驚くほど強い。レコバ抜きだというのに、日本なんてまるで相手にしてもらえない。マジかよってくらい強かった。いや、というよりもおそらく、普段の相手とは、やる気がちがっていたのだと思う。いままでに親善試合で日本へやってきて、こんなに真剣に勝ちにきた国なんて、とんと記憶にない。そのせいか、こてんぱんにやられたにもかかわらず、意外と気分は悪くなかった。やはり本気で戦ってくれる相手にならば、こんな風に負けても納得がゆくってことなんだろう。それにこれはなんたって親善試合だし。五輪本番で不出来な敵国相手に三連敗を喫するのとはわけがちがう。この負けはちゃんと、今後のA代表にとって血となり、肉となるはずだ──と、そう信じたい。
 さて、この試合の個人的な一番の関心は、なんといってもアントラーズの青木剛の代表デビューだった。ユースの頃から応援してきた彼が、遅ればせながら、ついにA代表デビューを果たしたというのは、なんとも感慨深かった。
 ただしこの青木くん、肝心の出来はいまひとつ。持ち味の運動量の多さや守備はともかく、パスがやたらと自信なさげで、精彩を欠いていたように見えた。残念ながら前半だけで交替させられてしまったし、ただでさえ代表のボランチは激戦区なので、この日の出来では代表定着は難しそうな気がする。うーむ。岩政といい、どうにもこのところのアントラーズの選手は代表と相性がよくなくて困りものだ。
 この試合では、青木のほかにもエスパルスのセンターバック、高木和道が代表初キャップ。そしてなによりの話題は、小野伸二のひさしぶりの代表復帰だった。
 ただ、この二人も出来はいまひとつ。高木は188センチという身長はとても魅力的だったけれど、いくら相手が強いからといって、初代表の試合で3失点を許すようでは、信用しろっていうのは無理だ。中央でペアを組む中澤の目立ちようが、逆に高木の至らなさの証明のように見えてしまった。
 伸二は伸二で、全体的にタッチ数が少なさ過ぎる印象。ライバルとなる俊輔と比べてしまうと、守備での貢献も少ないし、これといった存在感は見せられなかったと思う。ドイツ帰りということで言うならば、どちらかというと長谷部のほうがよかった気がした。なんでもこの二人はこの週末、ドイツに戻るとすぐに直接対決があるらしい。いやはや、それはお疲れさま。
 なにはともあれ、この試合のスターティング・メンバーは楢崎、駒野、中澤、高木、阿部、青木、長谷部、中村憲剛、小野、玉田、田中達也の11人。後半には途中出場で、長友、大黒、寿人、山瀬の4人がピッチに立った。そういえば達也や大黒もひさしぶりの代表だった。彼らに寿人を含めたちびっこFW陣のイメージは、決して悪くなったと僕は思う。少なくても必死さは伝わってきたから。
 そうそう、阿部は当初、左サイドバックでの起用だったけれど、基本的にサイドバックにプロパーではない選手を起用するのに反対の僕としては、それはどうかと思った。選択肢が限られるクラブチームならば仕方ないけれど、メンバー構成がよりどりみどりの代表で、それはなしにして欲しい。実際、阿部は前半はほとんど攻撃参加できないままで、それが青木にとってはパスの出しどころが減る要因になり、プレーの幅を狭める結果になってしまった気がした。青木が引っ込んだ後半、日本に勢いが出てきたのは、長友が左サイドに入って、阿部がボランチへ移ったことで、両サイドがちゃんと使えるようになったからじゃないかと思う。そういう意味では、青木にはちょっと気の毒だった。でもまあ、失点はすべて青木が引っ込んでからだし、そういう意味では、実は貢献度が高かったのかもしれない。
 日本の得点は後半3分に憲剛のクロスが相手のオウン・ゴールを誘ったもの。これで先制したのはいいけれど、反対にこの得点で相手の闘志に油を注いでしまったのか、それから10分もせずに同点ゴールを許し、終盤にはカウンターから逆転され、必死に追いすがろうとしたロスタイムにも駄目押しの3点目を入れられる始末。まったくの完敗だった。
 まあ、仕方ない。この試合では1対1で負けまくりだったし、実力には確実に差があった。この負けをカンフル剤として、2週間後のバーレーン戦ではいい結果につなげて欲しい。なにはともあれ、あと2週間とちょっとすると、早くもW杯最終予選がスタート。ほんと、日本代表とそのサポーターには気の休まるひまもない。
(Aug 21, 2008)

ヴィッセル神戸1-2鹿島アントラーズ

J1・第23節/2008年8月27日(水)/ホームズ・スタジアム/BS1

 8月に入ってからは、日韓オールスター、五輪代表、A代表と、観る試合、観る試合、負けっぱなしで、7月最後の五輪代表のアルゼンチン戦から数えると、じつに6連敗中。10年以上サッカーを観てきて、こんなのはおそらく初めてだ。アントラーズ戦のテレビ放送がなかったというのも一因ではあるんだけれど、ではそのアントラーズはどうかというと、7月なかばからはオセロ・ゲームのように白星と黒星が並ぶという──つまり連勝がなく、ただし連敗もないのが救いという──、ぱっとしない成績を残している。そんなわが最愛のクラブが、この夏の僕のサッカー観戦連敗記録をストップしてくれるのか、それともこのまま8月はオール黒星のまま終わるのか──そんな意味でも注目していた、およそ一ヶ月ぶりのJ1観戦。
 この試合のスタメンは、曽ヶ端、内田篤人、岩政、中田浩二、新井場、青木、小笠原、本山、マルシーニョ、興梠、マルキーニョスという顔ぶれだった。オリンピックでわき腹を痛めて、それ以来ずっと欠場していた篤人が、この試合から戦線復帰したのが一番の話題だったけれど、僕としては中田浩二とマルシーニョのスタメン起用のほうが要注目だった。
 調べてみたところ、シーズン途中で加入したこの二人、どちらもこのひと月ばかりは、使われたり、使われなかったりを繰り返している。そんな風に彼らをどう使うべきか、オリヴェイラさんが決めかねているのが、このところのぱっとしない成績の原因のような気がする。
 中田浩二をベンチに置いておくのはもったいないけれど、センターバックで使うならば、この2、3年ずっとペアを組んできた岩政と大岩のコンビのほうが安定感はある。かといってボランチで起用しようにも、いまとなるとそのポジションには青木がいる。攻守の要として日本代表に呼ばれるほどの活躍をみせている彼を、いまさらベンチには下げられない。もちろん、小笠原だってはずせない。ではどうすべきか、という答えをオリヴェイラ監督はいまだ出せていないのだと思う。
 それはマルシーニョもしかり。この日の試合で観たかぎりでは、たまに「おっ」と思わせるような球さばきを見せることもあったし、決して悪い選手じゃなさそうだけれど、かといってスピードはまるでないし、ひとりで決定的な仕事のできるタイプの選手にも見えない。少なくても現時点ではダニーロや野沢のほうが上だろう。
 それでもこの二人を、このままベンチを温めさせておくのは惜しい──ということでオリヴェイラ監督は、なんとか彼らをチームにフィットさせようと、このところ懸命にやりくりしているだと思う。去年の終盤から今年の初めにかけては、頑固すぎるくらいにスタメンを固定していた同氏が、ここのところは毎試合メンバーをいじっているのがその証拠だろう。まあ、残念ながらまだよい結果は出ていないようだけれども、それでもきちんと首位争いには絡んでいるから、結果オーライ。いま苦労している分は、きっと今後の終盤戦に生きてくると信じたい。
 それにしてもこの試合、前半は判定に泣かされた。小笠原がゴール前の絶好のチャンスに、うしろから体当たりを受けて倒されたにもかかわらず、PKにならなかったり(あれがファールじゃないなんて信じられない。得点機を妨害したということで、レッドカードが出てもおかしくないと思った)、大久保に先制ゴールを許したシーンでは、どう見たってオフサイドだろうよというプレーが流されたり。
 おまけに腹が立つのは、それらの判定に対して、解説の木村和司とアナウンサーがまるでコメントしないこと。ゴールシーンのリプレイなんて、あまりにオフサイドっぽかったからだろう、オフサイドかどうか判断しにくいように、わざとクローズショットばかり流していた。なんでああいう風に、臭いものにには蓋って態度をとるのかなぁ。
 レフェリーだって人間なんだから、まちがえることだってある。でも、まちがいをまちがいと認めずにごまかしているようじゃ、いつまでたっても世の中よくならない。視聴者の目だって肥えてこない。そもそも誤審を誤審として認めようとしない姿勢というのは、シュートミスを恐れてシュートを打たない選手の姿勢に通じるものがあると僕は思う。ミスしてもいいんだから、もっと積極的にプレーしよう──そういうメッセージをきちんと送ってゆかないと、日本のサッカーは世界に通用するようにならないんじゃないだろうか。メディアもそういうことをもっとよく考えて、きちんと云うべきことは云えるようであって欲しいと思う。
 ともかく、そんなわけで前半は、調整的な意味の強いスタメン構成のせいで、チーム自体がいまひとつ乗りきれない印象だったのに加え、それらの誤審もどきに泣かされて、1点のビハインドを負って終わった。もう最悪のハーフタイムだった。
 これはもしかして本当に8月はオール黒星で終わりかも……。そんな僕の不安を解消してくれたのは、後半途中から登場したダニーロだった。
 彼がピッチに立ってから、わずか5分足らずのあいだに、アントラーズは見事な逆転劇を演じて見せる。なんでも今期、逆転勝利はこれが初めてなのだそうだ。いやあ、いいもの見せてもらった。ありがとう、ダニーロ、やはり今年の鍵を握っているのは君らしい。
 同点ゴールの場面、ゴールラインぎりぎりで相手DFのタックルをかわしたダニーロは、倒れた相手の上をひょいとをまたいでボールをキープして、絶妙のクロスをマルキーニョスにあわせてみせた(ちなみにマルキはこれが今季15得点目で、いまだ得点王)。あいかわらずプレーのリズムはのっそりとしていて、まるでスローモーションを見ているようだけれども、それでいてこういう決定的な仕事をしてみせるあたりが、去年とはちがっている。あのスローな動きですごいプレーをされると、それはそれでなんとも云えないインパクトがある。彼のプレーを観ていて、その独特のリズムに笑ってしまうことが何度もあった。
 決勝点はそのわずか1分後に、右サイドからの青木のクロスを興梠が頭で決めたもの。GKが弾いて少しコースが変わったボールを、側頭部にあててゴールに放り込んだ。かっこよくはなかったものの、コースの変化に瞬時に反応したところがナイスだった。興梠は前半にフリーのチャンスでボレーを打ち損じたり、見事なヘディングをブロックされたりと、運に恵まれなかった感があったけれど、それでも全体的にいいプレーをしていたと思う。これでスタメン出場も6試合連続だとのことで、あっぱれだ。それにしても田代はどうしちゃったんだか(この試合ではベンチ入りもしていなかった)。
 なんにしろ、勝ち越したあとでのらりくらりと逃げきるのは鹿島のお家芸──ということで、アントラーズが無事に僕の連続黒星記録を6でストップしてくれた一戦だった。
 現時点でのアントラーズの順位は2位。レッズがヴェルディ相手に引き分けたので、入れ替わりで首位に立ったのは、なんと名古屋だ。正直なところ、名古屋がこの時期になってまだ首位争いに絡んでいるとは思っていなかった。ピクシー、あなどれない。
(Aug 27, 2008)