2005年8月のサッカー

Index

  1. 08/03 △ 中国2-2日本 (東アジア選手権)
  2. 08/07 ○ 韓国0-1日本 (東アジア選手権)
  3. 08/17 ○ 日本2-1イラン (W杯・最終予選)
  4. 08/24 ○ 鹿島7-2新潟 (J1第20節)

中国2-2日本

東アジア選手権/2005年8月3日(水)/韓国・大田(テジョン)/テレビ朝日

 楢崎、坪井、茶野、茂庭、駒野、阿部、今野、村井、本山、田中達也、巻。あとがない東アジア選手権第二戦においてジーコが選んだのは、全員、前の試合で控えだった選手たちだった。
 スタメン総入れ替え。思い切りがいいにもほどがある。そう言いながら、そのメンバーでの試合にわくわくしている自分もいた。仕事が滞っていることもあり、このところ内容も低調なので、本当ならばこの試合は録画でもいいかと思っていたりしたのだけれど、総入れ替えという話を聞いて、こりゃリアルタイムで見ないとと思い直したくらいだ。変わり映えしないことをトレードマークのようにしてるジーコの日本代表にあっての、ここまで劇的な変化があることは、やはり新鮮きわまりなく、捨て難い魅力だった。
 選ばれた選手たちもそんなチームにおけるチャンスの少なさを知っているがゆえに、序盤からガンガンと飛ばして、ものすごく爽快な攻撃を見せてくれた。おー、なんておもしろいサッカー。これはもしかしてこのメンバーでレギュラー奪取かという勢いがあった。だにしかし。
 その勢いが続いたのは最初の三十分だけだった。結局その間に猛攻を見せながらも得点を奪えなかった日本は、その後は疲労からか、ばったりと足がとまり、逆に2点を奪われて前半を終えるというていたらくとなった。
 後半は阿部の芸術的なFKのこぼれ球を茂庭がダイビングヘッドで押し込み、田中達也が爽快きわまりない同点ゴールを叩き込んで、同点までおいあげてみせてくれはした。ただ結局、前半途中からの動きの悪さは後半もあいかわらずで、チャンスは作れど得点には到らず。ドローのまま試合終了、優勝は極めて厳しい状態となった。
 ジーコは失点はミスが原因だと一刀両断していたけれど、それは弁解だろう。平均身長が180センチを超えるという中国相手に、急造のDFで対戦したのだから、ある程度の失点のリスクは覚悟しないといけない。実際、空中戦はほとんど競り負け続けだった。相手のFKやCKの場面は危なっかしくて見ていられなかった。
 最初の失点の場面は、マークについた本山が守備の拙さからきれいなクロスをあげられてしまい、それにあわせた選手に3バックの誰一人対応できないという形。坪井が後からついていったたけれど、マークがずれ過ぎていた。2点目はFKから。本当に中国の高さにはまるで対応できていなかったから、これはもう仕方のない失点だと思った。
 でもDFを入れ替えていなければ、これらの失点は防げただろう。少なくても今年これまでに2失点を喫した相手はイラクとメキシコだけだ。若手中心にチームを再編成中の今の中国がそれらの相手に匹敵する強敵だとはとてもじゃないけれど思えない。よってこの日のドローはジーコの采配ミスだったと僕は思う。勝ちにこだわると言いながら、どうしてスタメン総入れ替えなんていうドラスティックな作戦に出るかな。本当にジーコという人はわからない。
 ジーコの采配うんぬんはおいて強い不満を感じるのは、やたらと横パス、バックパスが多いことだ。これは今回のメンバーだけの話ではない。ジーコが監督になってからはずっとそれを一番の不満に感じている気がする。ボール・ポゼッションを重視するあまり、安全第一の消極的なボール回しが多過ぎる。優勝を狙うならば絶対勝たなくてはならない試合で、同点においついたあとのあのちんたらとしたボール回しはなんなんだ。ストレスがたまることおびただしい。
 なんでバックパスが増えるかと言えば、相手が引いてきてパスの出しどころがないというのもあるだろうけれど、それよりも一対一に対する自信がないからなんじゃないだろうか。相手がチェックに来た時に自信を持って相手をかわす、というような場面があまり見られない。なんだか恐がって味方にパスをして逃げている感がありありだ。そんなプレーばかり見せられていれば嫌になって当然だろう。
 中田が一対一に負けないようにならないと世界とは戦えないという発言を繰り返して、チーム全体がそれを強く意識したのがコンフェデだったはずだ。この大会の日本代表はもう既にそのことを忘れてしまっている気がする。
 アジアの国を相手に逃げの横パスばかりを連発して無為に時間を失ってばかりの日本代表なんて見たくない。こういう試合を見せられると、やはり日本代表にはまだまだヒデが必要不可欠だなと思わされてしまう。
(Aug 04, 2005)

韓国0-1日本

東アジア選手権/2005年8月7日(日)/韓国・大邱(テグ)/テレビ朝日

 田中達也、今野、村井、駒野、巻。今大会で初めて代表に選ばれた彼ら──駒野と巻は故障で代表を辞退した三浦淳と久保の代役──に加え、ひさしぶりに声のかかった阿部と茂庭。オリンピック代表の中心選手たちがようやくA代表にあがってきた。そんな彼らのプレーを見たいと思うのは誰も一緒だろう。けれど今までのジーコは徹底したスタメン固定方針を貫き、ほとんどサブのメンバーにはチャンスを与えなかった。だから今回も呼ばれはしたものの、一体何人に出番があるんだろうと、これまた誰もが思っていたと思う。ところが。前の試合で一挙にスタメン全部を入れ替えたジーコは、優勝の可能性が消えたという理由により、この試合も中国戦と同じサブ組をスタメンに起用してきた。残念ながら練習中に腰を痛めてしまった田中達也の代わりは玉田だった。そしてそして、GKにはこの大会、唯一出番のなかった土肥を起用。ジーコ、なんてらしくない粋な計らい。でもってチームはその土肥の大健闘に救われ、韓国を相手にアウェイの白星をあげてしまうんだからお見事だ。上出来過ぎ。あいかわらずジーコの不思議な強運は続いている。
 それにしてもとにかく凌いで凌いで、という試合だった。前の試合で序盤に張り切り過ぎて息切れしたのを反省してスロースタートを切ったのかと思っていたら、そういうわけではなく、単に攻め手を欠いていたようだ。結局韓国の圧力の前に、最後までほとんど耐えるばかりで90分を終えた感があった。両サイドの攻め上がりはほとんどなかったし(駒野なんて得点につながった一本だけじゃないだろうか)、巻の高さも生かせなかった。結局決勝点は途中出場した小笠原のCKを、同じく途中出場の中澤(痛んだ坪井と交替)が足で決めたもの。勝利を手繰り寄せたのがレギュラー組の二人だったのは意味深な気がする。
 まあ内容は今ひとつだったけれど、なんにしろアウェイで韓国に勝ったんだ。文句を言ったらば罰があたる。韓国なんて自国開催の大会で最下位だ(2分1敗)。こうなるとさすがにボンフレール監督の解任は決まったようなものなんじゃないだろうか。それに比べてわれらがジーコの強運と来た日には……。
 ちなみに優勝は1勝2分の中国。日本戦での汚いプレーの連続にはやたらと腹が立ったので、あんなチームに優勝をかっさらわれたのは悔しい。次にあたる時にはこてんぱんに叩きのめしてやるぜ、と言いたい。
 結局、日本は2位で大会を終了した。気がつけば黒星を喫した北朝鮮より上にいる。なんで負けたかなあと、愚痴りたくなるのは仕方ないところだろう。
(Aug 09, 2005)

日本2-1イラン

W杯アジア最終予選/2005年8月17日(水)/日産スタジアム/テレビ朝日

 東アジア選手権でドラスティックなスタメンの入れ替えをしたあと、さて消化試合となったこの最終予選の最後の一戦をどんなメンツで戦って見せるのか。注目されたジーコの采配だったけれど、結論はいかにも簡単。北朝鮮戦で負けた旧スタメンをそのままピッチに送り出した。まあ、あたり前と言えばあたり前だ。これぞジーコの国内組オンリーの最強チームだったはずなのだから。
 彼らにしてもさすがに2試合続けて出場できなかったことに対する危機感は強かっただろう。このメンバーでの前の試合は負けているわけで、今回は貴重な汚名返上の機会だ。下手なプレーをするはずがない。特にそれを強く感じさせたのが2トップの二人。玉田と大黒の張りきりようは並じゃなかった。
 特に玉田だ。このところの彼はすっかりプレーがおとなしくなってしまった感があったけれど、この試合ではひさしぶりに代表デビューした頃の、積極的にドリブルをしかけてゴールを目指す果敢なプレースタイルを取り戻していた。やっぱそうでないといけない。今日のプレーならば代表として恥かしくない。このままガンガンいって欲しい。そうしないと、マジで代表の枠からはみ出してしまうだろう。
 先制点はその玉田がゴールラインギリギリから放ったグラウンダーのクロスに大黒が飛び込んでキャッチングしようとしたGKの邪魔をし、結果逆サイドに流れたそのボールをフリーの加地が楽々決めたもの。2トップのがんばり──あそこまで切れ込んでクロスを入れた玉田も、それに反応した大黒もえらかった──と、その攻撃にきちんと絡める位置まで攻め上がっていた加地、そしてプレーには絡まなかったけれど、その加地より一歩遅れでゴール前に詰めて来ていた小笠原、実に四人がゴール前に攻め上がっていた。実に見事なゴールシーンだった。
 2点目はアレックスのニアサイドへのCK(だったよな?)から大黒がヘッドで決めたもの。一度ゴール直前で止められたボールがGKにあたってゴールに入ったもので、それをDFがハンドで止めたため、最初ゴールが決まったようには見えなかった。だからいささか興奮度の低いゴールではあったけれど、それでも得点は得点。大黒にとってはひさしぶりのゴールだったし、そういう意味でも貴重な得点だった。その後、中澤がダエイにPKを与えて1点差に追い上げられただけになおさら貴重だった。
 ま、あのPKは倒れたダエイの技ありだろう。そもそもあんなペナルティエリアのど真ん中で、あれだけ経験のある選手──このPKが代表105ゴール目だそうだ──と一対一になった時点で負け。北朝鮮戦のクリアミスに続き、中澤には可哀想な失点になってしまった。しかし彼のこの試合での活躍を見ると、あれを攻める気にはなれない。誰がどう見たって、今の日本代表ナンバーワンDFは彼以外にいないのだから。
 いくつか、またやっているよ、みたいなイージーなミスもあったけれど、全体的には危なげのない試合だった。ディフェンスに対する意識が高く、安心して見ていられた。だいたいヨーロッパ・リーグ所属のマハダビキアやカリミのいないイランにホームで負けるわけがない。というか、お互いに海外組がいない以上、Jリーグの面子にかけて負けられないだろう。その辺のプライドは守ってくれた。暑い中の試合、ご苦労さまと言いたい。
 あ、あとおもしろいなと思ったのが、残り十分でのジーコの選手起用。あの人のことだから、この日も暑さを気にせずに最後までスタメン全員変更なしかと思っていたのだけれど、残り十分で遠藤を今野に、玉田を阿部に替えて来た。一点差を守りきるという意味では効果的な選手交替だ。それが五輪組のボランチ二人の投入という形で行われたのが興味深かった。やっぱりそれだけ彼らの能力をジーコが高く買っているということなのだろう。いやはや、ボランチのポジション争いはとても熾烈{しれつ}だ。現状では本命である小野&福西のコンビにこの先、割って入る選手が出てくるかどうか。興味は尽きない。
(Aug 17, 2005)

鹿島アントラーズ7-2アルビレックス新潟

J1第20節/2005年8月24日(水)/カシマスタジアム/BS1

 前節の広島戦は移籍問題のこじれから小笠原が異例の依願欠場。さらに悲惨なことにセンターバック二人が退場を食らい、後半ロスタイムに勝ち越しゴールを許しての敗北と、どうやら散々な内容だったらしい。
 チームがそんな状態で望む中三日でのこの試合。そりゃ小笠原もさすがに二試合続けてスタンド観戦という気にはなれないだろう。フル出場でめざましい活躍を見せてくれた。彼だけの力ではないにしろ、実に7ゴールをあげての大勝。個人的にはアントラーズが一試合で7点もとるのを見たのは初めてじゃないかと思う。大味な試合ではあったけれど、ご贔屓のチームならば、いやはや、こういうのもたまには悪くない。かつて天皇杯決勝でフリューゲルズに6-2で大敗を喫したことを思い出したりもしたけれど……。
 そうそう、大岩と岩政を欠くことで心配されたディフェンスライン──おまけに今月の初めには金古が神戸に期限付き移籍ときたもんだ──だったけれど、あけてみれば羽田、そして名良橋が怪我から復帰。これには助けられた。内田をセンターバックで起用するという采配には若干苦しいものがあったけれど──彼の責任ではないにしろ、2失点はどちらもあまりにイージー過ぎた──、それでもまあ、勝てば官軍。よしとしよう。なんでもこれまで新潟との対戦成績は2分1敗と勝ちがなかったそうだから、今日の勝利でこれまでの負債を一気に解消した感があるし。
 個人的には、柏から期限付きで移籍してきたリカルジーニョがどんな風に機能するのか、もう少し彼のプレーを見てみたかったのだけれど、出場時間がわずか5分というのはやや残念だった。まあその分、かつてない大量ゴールと復帰した名良橋の溌剌としたプレーが見られたのを喜びたい。
 ちなみに今日のゴールは、小笠原のシュートが味方にあたって跳ね上がったところを、本山がスライディング・ボレーで泥臭く決めたのが1点目。無観客試合で話題となったW杯最終予選の北朝鮮戦での柳沢のゴールとそっくりだった。
 2点目は小笠原のFKから羽田。するするとゴール前へと抜け出しての、実に見事なヘディングだった。感心した。しかし羽田も故障続きで苦労したせいか、すっかり老けちゃって……。
 3点目は小笠原のFKから直接。これも今さら小笠原のFKについては何もいう必要がないってくらいの綺麗なゴール。GK反応するも止めきれず。
 後半に入っての4点目は、新井場の今季初ゴール。積極的にミドル・シュートを打ったところ、それが相手DFの足にあたって若干コースが変わり、ゴール右隅の絶妙なところに飛び込んだって感じだった。ここではGK一歩も動けず。
 5点目はアレックス・ミネイロの芸術的なトラップからのダイナミックなシュート。次がまたもや小笠原。そして最後が野沢の一発。これらはどれもカウンターからのチャンスが、ことごとく決まっちゃった感じだった。決定力不足の日本代表ばかり見て来たあとだから、こんなこともあるのかとちょっとばかり不思議な気分になるくらいの決定力だった。
 なんにしろ今日の試合は中盤のセカンド・ボールはことごとく拾っていたし、攻撃のパターンも多彩だったし、順当過ぎるくらいの勝利だった。正直なところ、先制を許したときにはこんな結果になるなんて想像だにしなかったけれども。
(Aug 24, 2005)