2024年3月の音楽
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- no public sounds / 君島大空
- 酸欠少女 / さユり
no public sounds
君島大空 / 2023
『関ジャム』で蔦谷好位置が2023年のベストワンに選んでいた曲『c r a z y』が収録された君島大空のセカンド・アルバム。
蔦谷くんとはいまいち趣味があわなくて、彼のお薦めした曲の大半はふうんって感じでスルーしがちなんだけれど、この人だけは引っかかった。隙間の多い音作りとギターの音色に、お、これはもしやいいのでは?――と思った。
で、後日サブスクで聴いて、おーと思った。
音が椎名林檎――というか、東京事変みたいだ。
セルフ・プロデュースで、大半は自作自演。でもっておそらく二十代でしょう?
それでいてこの完成度はすごくない?
まぁ、新しさは感じない――というか、逆に不思議と懐かしい感触があるけれど、その温故知新な感触も心地いい。
あと、その独特な声がすごい。中性的で。
一聴して、え、この人ってもしかして女の子?――って思ったくらい。
こんな歌を歌う人、僕はほかに知らない。
ギター・オリエンテッドな凝ったアレンジと、繊細で柔らかで優しくて脆い印象の性別不詳のボーカルが妙に癖になる。
ここ数年はずとまよ中心にダンサブルな音楽ばかり聴いていたので、こういうメローな音楽にどっぷり浸るのもひさしぶりだった。
(Mar. 29, 2024)
酸欠少女
さユり / 2022
祝・御結婚――。
ということで、いまさらだけれど二年前にリリースされた酸欠少女さユりのセカンド・アルバム。
2017年のデビュー当時は次世代アーティストのナンバーワンはこの人だろうと思っていたんだけれど、その後、彼女がカバーした『ルラ』をきっかけにヨルシカを知り、そこからの流れで我が音楽人生の最終兵器的存在・ずとまよと出逢ってしまったこともあり――なおかつ、最近の彼女の活動があまり活発ではなかったせいもあって――いつの間にかすっかり影が薄くなってしまったさユりさん。
なんたってこの五年のあいだに、彼女と前後してデビューしたヨルシカが四枚、ずとまよが三枚のアルバムをリリースしている。
それと比べてしまうと、さユりがその間に出したのがこのアルバム一枚というのは、さすがに失速感――というか伸び悩み感?――が否めない。
このアルバムにしても、五月雨式に配信リリースしてきた楽曲をまとめたもので、収録曲のうち新曲はたった二曲だけだったので、リリース時点はどうしたって新鮮味を描くきらいがあった。
でも、リリースからそろそろ二年近くがたったいま、あらためて聴いてみると、いやいや、どうして。これはこれで十分にいい。
『リコリス・リコイル』のエンディング・テーマ『花の塔』に、ヒロアカ第四期の『航海の唄』、アニメ版『ゴールデン・カムイ』の『レイメイ』など、大半の曲がなんらかのメディアのタイアップになっているだけあって、楽曲は粒揃いだし、ビート感はファーストに増して性急だ。それがさユりのあの個性的なボーカルで歌われるんだから、全編とても痛快。
気がつけば彼女ももう二十代後半。結婚もしたことだし、そろそろ「少女」を名乗るにも違和感を覚えるころだろう。
『酸欠少女』と自らの通り名をセルフ・タイトルに掲げたこのアルバムは、アーティスト活動の第一期の締めくくりにふさわしい充実した一枚だと思う。
(Mar. 30, 2024)