2016年4月の音楽
Index
- Chaosmosis / Primal Scream
- Sometimes I Sit And Think, And Sometimes I Just Sit / Courtney Barnett
Chaosmosis
Primal Scream / CD / 2016
プライマル・スクリーム、3年ぶりの新作。
先行トラックとしてスカイ・フェレイラがゲスト参加した『Where the Light Gets In』のミュージック・ビデオを観たときには、自分がこのアルバムをこれほど気に入るとは思ってもみなかった。曲やビデオの出来映えはともかく、その80年代風シンセ・サウンドにはかなり時代錯誤な感があったから。今回のアルバムがこういうシンセ主体の音作りになるのならば、たぶんそんなには聴かないなと思った。
ところがどっこい。音の方向性に関してはほぼ予想通りだったのだけれど、それ以外の部分でこのアルバムは僕の予想を大きく裏切っていた。
とにかく曲がいい。もう一曲もはずれなしってくらいに全曲がポップ。とくにスカイ・フェレイラやハイム姉妹らをゲストに迎えた楽曲群がどれもアッパーで最高にゴキゲンだ(ボビー・ギレスピーは『Screamadelica』の昔から不思議と女性の生かし方が上手い人だったりする)。全10曲でわずか37分というランニング・タイムの短さもあって、ついつい繰り返し聴きたくなる。
そういう意味ではこの作品、前作の『More Light』とは対照的だ。あのアルバムは音響的にはとても濃厚で好印象だったものの、1曲目が9分もの大作なのを筆頭に、ボーナス・ディスクを加えると2時間に近いボリュームについてゆけず、結局あまり聴かずに終わってしまった。
それに比べて、今回はサウンド的にはそれほど惹かれないものの、とてもポップでコンパクト。売出し中の若くてイケイケな女の子たちをはべらせてガンガンやっているところも、なんかちょっといかがわしい感じがあっていい。これぞロックン・ロール。
やはり音響的な面が影響してか、英米での評論家受けはいまいちよろしくないようだけれど、僕はこのアルバムのポップさにはどうにも否定しきれない魅力があると思う。最近ではもっともお気に入りの一枚。
それにしても、アニマル・コレクティヴやウィーザーの新譜もそうだけれど、思春期をアナログ盤とともに過ごした世代としては、やはりロック・アルバムは40分以内がベストに思える。
(Apr 10, 2016)
Sometimes I Sit And Think, And Sometimes I Just Sit
Courtney Barnett / 2015 / CD
去年世界デビューしたオーストラリア出身のシンガー・ソングライター、コートニー・バーネットのファースト・アルバム。
恥ずかしながら、僕は今のいままでこの子の実力を正しく理解できていなかった。
初めて彼女のことを知ったのは、まだこのデビュー・アルバムが出るより前のことだ。NMEで取り上げられている写真を見て、そのあまりにロック・アーティストらしからぬルックスにびっくりしたのが最初。
だっていないでしょう、こんな子?
ぼさぼさのブルーネットに、ノーメイクのあどけない丸顔。スタイルがいいでもないし、服装はいつでもTシャツにジーンズで男の子みたいだし。セックス・アピールという言葉とはとんと縁のなさそうな、
レコード会社のスタッフだというならばともかく、こういう子がみずからスポットライトを浴びてステージに立っている姿は想像しにくい。いったいどんな音楽をやって注目されているんだろうと逆に興味が湧いた。
なのでこのアルバムがリリースされてすぐに、その評判のよさにも惹かれて聴いてみたのでしたが……。
不覚にも僕はその時点で彼女のよさがよくわからなかった。悪くはないけれど、すごくもない。レイモンド・カーヴァーみたいなアルバム・タイトルから察するに、これはきっとそのソングライターとしての言語感覚の鋭さが評価されているんだろう、だとするならば、洋楽はまずは音ありきという聴き方しかできない今の俺には関係ないなと。そう思って、あまり聴かずに終わってしまっていた。
ところがです。
先日たまたまコーチェラでの彼女のステージがライブ配信されているのを知って、なんとなく観始めてみてびっくり。なんだこりゃ、彼女めちゃくちゃカッコいー!
男性ふたりをバックにしたスリー・ピース・バンドで、サウスポー用のフェンダー・ジャガーをフィンガー・ピッキングで弾きながら歌う彼女の姿には、まぎれもないロック・スターとしてのカリスマがあった。なまじルックス的にはふつうの女の子だから、そのギャップがすごかった。
いや、べつにバリバリとギターを弾きまくっていてすごかったとかいうんではなくて。彼女のギターは彼女の音楽に必要不可欠な要素として、素晴らしく雄弁に響きわたっていた。そこがすごかった。このギターなくして、この音楽はここまで魅力的には聴こえないだろうって──そう思わせる説得力が彼女のギターにはあった。ライヴでのパフォーマンスにはアルバムでの淡々とした印象とは違った熱さがあって、また最高だった。
スリー・ピース・バンドのフロントマン──もといフロント・ウーマンとして、あそこまで説得力のある音を出せる女性ってそうはいないでしょう。僕は彼女のパフォーマンスを観ていて、カート・コヴァーンを思い出した。音はニルヴァーナのように重厚じゃないけれど、スリー・ピース・バンドとしてのバランス感覚に近いものを感じた。
ということで、コートニー・バーネット、いきなり大好きになりました。不明を恥じつつ、このところこのアルバムを日々聴き返しています。皆さんもよろしければぜひ。
(Apr 17, 2016)