2013年7月の音楽
Index
- KILL AFTER KISS (KILL盤) / THE GOLDEN WET FINGERS
- Babel / Mumford & Sons
- Modern Vammpires Of The City / Vampire Weekend
- If You Leave / Daughter
KILL AFTER KISS (KILL盤)
THE GOLDEN WET FINGERS / 2013 / CD
フジロック予習シリーズその1。
チバユウスケが元 Blankey Jet City のドラマー中村達也と、The Birthday を脱退したイマイアキノブとともに組んだ企画バンドのアルバム。
『赤い季節』という映画のために組んだバンドとのことで、このアルバムの収録曲が9曲、もう一枚、ライブ会場で先行販売された同名の『KISS盤』(のちに通常ルートでも入手可能になった)が8曲で、そのうち3曲が重複している。つまり、このバンドとして発表したのは合計14曲。その全曲が収録されたアルバムが、現在はダウンロード限定で発売になっているという。価格は3組とも一緒だから、ちょっと損した気もするけれど、まぁ、でもジャケットはCD版のほうがかわいいからよし。
内容はばっちりチバ印。いつもどおりのご機嫌なロックンロールが鳴っている。もうこういうのやらせたら、チバくんは向かうところ敵なしだ。日本だけではなく、世界最強といっていいんじゃないかって気がしてきた。
バンドの編成にはベーシストがいないけれど、ものによってはベースが鳴っている曲などもあるし(僕の耳にそう聞こえるだけ?)、基本低音が効いていて、まったく音圧に不満なし。というか、
とにかくガリガリと豪快で骨太なギター・サウンドが痛快無比。メイン・ボーカルがチバくんではない曲もあるけれど、そういうのもまったく違和感がないし、企画盤とは思えない極上のロックンロール・アルバムに仕上がっている。歌詞にもユーモアがあって、とてもいいと思います。
それにしても、The Birthday を離れてもなおコラボするとは、チバくん、イマイさんのこと大好きだな。
(Jul 27, 2013)
Babel
Mumford & Sons / 2012 / CD
フジロック予習シリーズその2。
ファースト・アルバムをジャケ買いしたときには、まさかこれほどまでの大物になるとは思ってもみませんでした、今年度のグラミーを受賞したUKのフォーク・バンド、マムフォード&サンズのセカンド。
このバンドのいいところは、疾走感のあるところだと思う。アコギとバンジョーを中心としたフォーク・サウンドを聞かせるバンドだから、えてしてまったりとしてしまいそうなものだけれど、そうはならずに、厚みのあるアッパーな音を奏でている。
まぁ、もちろんそればっかというわけではなく、スローな曲だってあるんだけれど、印象的にはスピード感のある曲が多い。そのへんの勢いがライブだと映えて、フェス全盛の昨今、草の根的に評価を上げていったのではないかと推測している。
いやでも、例えるならば、ジョン・カビラみたいなルックスのボーカリストが、R.E.M.のマイケル・スタイプのような声で、バンジョーをフィーチャーしたレトロで勢いのあるフォーク・ロックを聴かせるわけですよ。そんなバンドがグラミーを制するなんて、誰が思うだろう。最近の音楽の動向は、いまいちよくわからない。
正直なところ、僕的には破たんのない優等生的なイメージのせいで、いまいちガツンとこないんだけれど、なんにしろ、いまいちばん乗っているバンドだ。元気な曲も多いし、フジロックでは文句なしに盛りあがるこってしょう。グリーン・ステージの芝生のゆうべに聴くマムフォードの音楽は、それは素敵に違いない。
(Jul 27, 2013)
Modern Vampires Of The City
Vampire Weekend / 2013 / CD
フジロック予習シリーズその3。
売れているっていえば、このバンドも。ビルボードで2枚連続第1位って。どうしてそんなに売れちゃっているんでしょう? ヴァンパイア・ウィークエンドのサード・アルバム。
まぁ、かわいいバンドだとは思う。とにかく音がカラフル。その賑やかさは、まるで人気ブランドのショーウインドウのよう。または音楽をおもちゃに遊んでいるかのような、ひたすら楽しげでポップな音楽を奏でている。
音を楽しむことを「音楽」というならば、まさにこのバンドの音楽にはその言葉通りのイメージがある。その徹底的に陽性なポップ・センスが人気の秘密なんだろう。
でも逆に僕にとっては、その屈託なく楽しげなところが、いまひとつ入れ込めない理由だったりする。ピコピコとした電子ピアノの音色や、きちんと整ったアレンジもそう。マムフォードと同様、僕のなかの負の部分をすくいあげてくれない感じがして、もの足りない。
でも、そんな風に思ってしまうのも、僕に英語がわからないからで、ちゃんと歌詞を踏まえて聴くと、その世界観にはそれなりのシニシズムやアイロニーがあって、その音楽的な明るさのとバランスで、絶妙な味わいをもたらしていたりするのかな……と思ったりもする。そんなことないのかな。
まぁ、なんだかんだいっても、なかなかないタイプの個性的でキュートなバンドであることは間違いなし。2008年にサマソニで観たときには、やたらと軟弱な印象しか受けなかったけれど、全米ナンバーワン・バンドへと成長を遂げた今、フジロック最大のステージでどんなパフォーマンスを見せてくれるのか、楽しみだ。
(Jul 27, 2013)
If You Leave
Daughter / 2013 / CD
フジロック予習シリーズその4。
名門4ADからデビューしたロンドンのスリー・ピース・バンド、ドーターのデビュー・アルバム。
紅一点の女性ボーカルをフィーチャーした、アンニュイなギター・サウンドが The xx やウォーペイントに通じるというので聴いてみたら、あぁ、なるほど。ボーカリストのエレナ・トンラ(どこの人だ)の歌声が似ている。あと、キャット・パワーにも似ている。どちらも聴き込みが甘いので、シャッフルして聴いていると、どっちらだかわからないくらい。
ただ、バンド・サウンドという点では、ちょっと感触が違う。The xx やウォーペイントほどのクールネスや暗さは感じさせない。もうちょっと温かみがあるというか、ほの暗い感じ。あと、バックが男性だからか、部分的には力強さも感じさせるし。先にあげた二つのバンドとの比較でいえば、より空間的な広がりを感じさせる、もう少しスケールの大きな音を鳴らしている。
まぁ、いずれにせよ、僕が好きなタイプの暗い女性ボーカル・バンドなわけです。先行して似たバンドがふたつもある分、そこまで極端に盛りあがりはしないけれど、それでもこれはこれで好きだった。フジロックでは、同じ時間帯にウィルコ・ジョンソンのステージがなければ、かぶりつきで観たいところなんだけれど、さてどうしたものかと、現在激しく思案中。
そういや、どうやらこのバンドもベースレスだ。最近そういうのが流行っているらしい。ギター、ベース、ドラムの三点セットが揃わないとバンドはできないと思っていた僕らより、いまの人たちは頭がいい。
(Jul 27, 2013)