2024年5月の映画
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アメリカン・フィクション
コード・ジェファーソン監督／ジェフリー・ライト／2023年／アメリカ／Amazon Prime
ジェフリー・ライト演じる黒人作家セロニアス・エリソン――「セロニアス」という名前なので通称「モンク」――が、自身は人種を意識しないニュートラルな文学を目指しているにもかかわらず、スラングを使って暴力や貧困を描く典型的な黒人文学を求められることにいらだって、やけっぱちで書いた匿名小説が出版社の目に留まり、刊行前からベストセラー入りする大ヒット。ついには映画化という運びになって、正体を隠したままの作者本人を困惑させるという、シニカルなコメディ映画。
物語の序盤で頼りにしていた姉が突然死して、認知症の診断を受けた母を養護施設に入れようにも、売れない作家である彼には経済的な余裕がない。もちろんゲイの兄は頼りにならない。
そんな状況下で自虐的な気分で書きあげた小説が大絶賛を受けて、思わぬ金が転がり込んでくる。でも自らの正体を隠したまま、つい元受刑者をよそおってしまった彼は、その嘘に縛られてにっちもさっちもゆかない立場に陥ってゆく。知りあったばかりの弁護士の恋人（エリカ・アレクサンダー）にも事実を隠したままだったせいで、彼女との関係も破綻してしまう。
さてこの状況を彼はいかにして乗り越えるのか――というところで、この映画のクライマックスには斜め上をゆくメタフィクショナルな展開が待っている。
そこのところがいかにも現代風。おかげで結末が玉虫色になって、あと味がいまひとつすっきりしない感もあるけれど、だからこそ単なるヒューマン・コメディに終わらない、たっぷりと風刺の効いた良質な作品に仕上がっている。
(May. 30, 2024)