2019年10月の映画

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  1. ボヘミアン・ラプソディ

ボヘミアン・ラプソディ

ブライアン・シンガー監督/ラミ・マレック、ルーシー・ボイントン/2018年/イギリス、アメリカ/WOWOW録画

ボヘミアン・ラプソディ (字幕版)

 僕はクイーンのファンではないので、とくに興味がなかったんだけれど、予想外の大ヒットに誘われて観ることにしたクイーンの伝記映画――だと思いこんでいたら、ウィキペディアにはフレディー・マーキュリーの伝記映画とあった。
 なるほど、確かに。この映画が描いているのは、フレディー・マーキュリーの半生だ。
 主人公がロック・バンドのボーカリストであるから、そのバンドにまつわるエピソードが大きな比重を占めているけれど、でもじゃあ、これを観てクイーンというバンドのキャリアが総括できるかというと、そうでもない。
 『ウィ・アー・ザ・チャンピオン』はクイーンでもっとも有名な曲だと思うし、実際のこの映画のクライマックスであるライブ・エイドのシーンで演奏されて、大きな感動を呼んではいるけれど、その曲の成り立ちに関するエピソードはゼロ。その曲が収録されたアルバムどころか、シングルとしてリリースされた事実も紹介もされていない(よね?)。
 そのかわりといってはなんだけれど、そのシングルのB面に収録された『ウィ・ウィル・ロック・ユー』のレコーディング秘話が大きく取り上げられていたりする。
 その一方でフレディー・マーキュリーのソロでの大ヒット曲『アイ・ワズ・ボーン・トゥ・ラヴ・ユー』に関しては、まったく取り上げられていなかったりもする。まぁ、ブライアン・メイら、クイーンのメンバーの意向を受けて製作された映画だから、フレディーのソロが黙殺されるのは当然なのかもしれない(なんでもこの曲はのちにクイーンのバージョンがレコーディングされたらしいのだけれど、僕は知らなかった)。
 ということで、この映画はクイーンというバンドの歴史を漏れなく描こうという作品ではなく、フレディー・マーキュリーという人がどれだけ数奇な人生を送った人だったかが焦点になっている。それも彼がゲイであったことによる苦悩に大きくピントがあてられている。それゆえにけっこう文学的なテイストがある。なるほど、アカデミー賞のノミネート多数というのは、そういうことかと思った。
 まあなんにしろ、大ヒットしただけあって、とても感動的な、クイーン・ファンでなくても十分に楽しめる映画でした。
 映画を観たあと、『オペラ座の夜』が聴いてみたくなって、Apple Musicで聴いた。聴きたい音楽がすぐに手に入るんだからいい時代だ。ストリーミング時代万歳。
(Oct. 27, 2019)