2019年7月の映画
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セブン
デヴィッド・フィンチャー監督/ブラッド・ピット、モーガン・フリーマン/1995年/アメリカ/Netflix
デヴィッド・フィンチャーの長編映画デビュー作にして、僕の考える史上最凶最悪の映画。どんなにひどい話だったか忘れたので、ひさびさに見直した。
ほんと、数あるシリアル・キラーのサイコパスものの中でも、この映画は最悪だと思う。ひとつひとつの殺人がとても扇情的で悪趣味だし、それらを積み重ねたラストには絶望感しかない。ここまで徹底して救いようのない映画をよくぞ撮ったもんだと思う。
あまりにひどくて言葉も出ない。最低最悪の見本のような傑作。あまりに救われないその結末に、見終わってなんだか清々しい気分になってしまった。デヴィッド・フィンチャー、おそるべし。
いやしかし、この映画で史上最悪のクソ野郎を演じたケヴィン・スペイシーが、まさかその後、実生活において最悪のセクハラ野郎としてハリウッド中から総すかんを食らうことになろうとは……。
(Jul. 23, 2019)
ローリング・サンダー・レビュー マーティン・スコセッシが描くボブ・ディラン伝説
マーティン・スコセッシ監督/2019年/アメリカ/Netflix
ボブ・ディランがのちに名盤『欲望』を生み出すきっかけとなった伝説のコンサート・ツアー、『ローリング・サンダー・レビュー』の貴重な映像をマーティン・スコセッシが編集した(擬似)ドキュメンタリー・フィルム。
この映画、実際に過去の映像を使っているので、基本的にはドキュメンタリーなんだけれど、どうも新しいインタビュー映像のほとんどがフェイクらしい。「私が金を出してフィルムに撮りました」と語っている映画監督は実存しないそうだし、シャロン・ストーンが「ママと一緒にライヴを観に行ったら、ディランに気に入られてツアーに帯同するよう誘われた」と語っているのも嘘なんだとか。そんなのわかるわけないじゃん! スコセッシも罪作りなことするなぁ……。
まぁ、そんなわけでなにを信じていいのやらって作品なのだけれど、でも過去の映像は(おそらく)フェイクなし。正真正銘のお宝映像の宝庫。ディランのライブ・パフォーマンスは当然として、パティ・スミスやジョニ・ミッチェルの貴重なパフォーマンスなんかも収録されている。アレン・ギンズバーグの奇人ぶりが伝わってくる映像もあちらこちらにあるので、ビートニク文学に興味がある人も必見。
個人的にもっともインパクトがあったのが、ディランの白塗りメイクを真似て、ディランに化けてみせるジョーン・バエズ。ディランと互角にやりあえる女性って、世界中でもこの人しかいないんじゃないでしょうか。ジョーン・バエズすげーって思った。
それにしても、これがネットフリックス限定での公開って、もったいなさ過ぎる。素晴らしい内容なので、きちんとパッケージでリリースして欲しい。
(Jul. 23, 2019)
ストレンジャー・シングス 未知の世界3
ザ・ダファー・ブラザーズ制作/ウィノナ・ライダー、デヴィッド・ハーパー/2019年/アメリカ/Netflix(全8回)
80年代のアメリカの片田舎を舞台に、ここではない世界とつながった小さな町で少年少女がモンスターと戦う大人気ドラマの第三シーズン。いろいろとやることが多くて大変な昨今だけれど、これは観ないわけにはいかない。
前作の最後でエル(ミリー・ボビー・ブラウン)の活躍によりふさがったはずの未知の世界との通路がソ連のせいでふたたび(ちょっとだけ?)開いてしまい、そこから忍び込んできたなにかが町の人々に次々と寄生してゆく……というのが今回の話。
前作で少年たちの仲間になったマックス(セイディー・シンク)の悪い兄貴ボビー(デイカー・モンゴメリー)が予想外に重要な役どころを演じていたり、彼に悪役を譲ったスティーヴ(ジョー・キーリー)がコミカルな役どころで、すっかりメイン・キャラになっていたりと、三年目ってことでずいぶんと人間模様も変わってきている。子供たちもずいぶんと大きくなったしねぇ……。
あと、今シーズンで初登場した重要キャラが、スティーヴのパートナー的な役割を果たすロビン役のマヤ・ホーク。この人は本名をマヤ・レイ・サーマン・ホークというそうで、その名のとおり、ユマ・サーマンとイーサン・ホークの娘なんだとか。おー。
そんなふうに魅力的なニュー・キャラクターが登場する一方で、今回も最後に予想外の人物がリタイアしてる。
そうだった、忘れていたけれど、このドラマって最初から、ファーストのバーバラとか、セカンドのボブとか、魅力的なキャラクターを惜しげもなく葬ってきたんだった。それにしても今回のそれは……。
まさかこのドラマにこんなに泣かされるとは思わなかった。今回のラストには『アベンジャーズ/エンド・ゲーム』に近い感触がある。いやぁ、やられました。その展開は予想外すぎた。
どうすんだよ、このあと……。
(Jul. 23, 2019)