2016年9月の映画

Index

  1. アントマン
  2. ストレンジャー・シングス
  3. ズーランダー
  4. 96時間
  5. フェア・ゲーム

アントマン

ペイトン・リード監督/ポール・ラッド、エヴァンジェリン・リリー、マイケル・ダグラス/2015年/アメリカ/WOWOW録画

アントマン (字幕版)

 最近はシリーズだからとりあえず観とかなきゃってパターンの多いマーベル作品にあって、これはひさびさに「観たい!」と思わされた作品だった。
 だって、なんですか、蟻んこサイズのスーパーヒーローって、なにそれいったい?
 得体が知れなくて、とてもおもしろそうじゃないですか。こりゃ必見だと思った。クロスオーバーが激しい最近のマーベル作品ではひさびさの新顔だってのにも興味が湧いた(まぁ、結局はアベンジャーズ絡みだったけれど)。
 でも、いざ観てみたら、これが期待したほどには盛りあがれない。
 いや、おもしろいことはおもしろかった。とくにアントマンがアベンジャーズの施設に侵入しようとして、ファルコンに見つかって格闘になるところは最高。泥棒あがりのミクロ野郎が空飛ぶスーパーヒーローと互角に戦っちゃうって展開がすごく笑えた。
 主人公のアントマン(ポール・ラッド)は、天才科学者のハンク・ピム(マイケル・ダグラス)が発明した特殊スーツによって、自由自在に身体を小さくできる。で、蟻が自分より何十倍も大きい角砂糖を運べるように、質量を変えずに小さくなることで超人的なパワーを発揮できるという設定(らしい、たぶん)。
 なんだかロジック的に間違っている気がしないでもないけれど、でもそんなふざけた設定を踏まえて、全体的にコメディ・タッチの演出が施されているところがよかった。笑わせ方はいまいち上手くない気がしたけれど、そうやって全編に笑いを散りばめた姿勢自体は好きだった。
 あと、クライマックスで唐突にキュアーの曲(『プレイン・ソング』!!)がかかったり、ヒロインが『LOST』のケイト役のエヴァンジェリン・リリーだったり、『ボードウォーク・エンパイア』シーズン3のボビー・カナヴェイルが出ていたりと、個人的におーっ!と思うところも多々あった。
 ただ、言っちゃ悪いけど、この映画はとにかくストーリーがひどい。それも途中から破綻したとかいうんではなく、もう最初からずっといい加減。蟻のサイズになれれば、どんな建物だって通風孔から簡単に入りたい放題でしょうに。なぜにクライマックスの潜入シーンであそこまで大騒ぎを起さないといけないのか、僕にはさっぱりわからない。
 主人公の泥棒仲間のおバカ三人組をチームに入れたりするのも、まったく説得力がないし、この映画は「なんでそうなる?」と疑問に思ってしまうような展開が多すぎる。なんかもうコメディだから細部は適当でも許してねといわんばかりのいい加減さ。ここまで出来の悪い話も珍しいんじゃないかと思ってしまった。
 せめて柱となる物語がもうちょっとまともだったら、『アイアンマン』の第一作に負けないくらいの秀作になったかもしれないのにって。そう思わずにいられなかった。
 ん~、おしい。
(Sep 14, 2016)

ストレンジャー・シングス

ザ・ダファー・ブラザーズ制作/ウィノナ・ライダー、デヴィッド・ハーバー/2016年/アメリカ/NETFLIX

Stranger Things 1

 80年代のSFやホラー映画へのオマージュたっぷりなNETFLIXオリジナルの連続ドラマ(全8回)。
 配信開始以来、NMEやローリング・ストーンなどでもけっこう話題になっていたので、ついNETFLIXを再契約して観てしまった。
 とはいっても、観たのはもう一ヶ月も前、お盆休み中のこと。なのになぜいままで感想を書いていなかったかというと、映画の場合にいつもつけている、パッケージ商品の画像のリンクが貼れなかったから。なんたってNETFLIXオリジナルの新作ドラマなもので、アマゾンには関連商品が売ってない。つまり感想を書いても、いつものようにこんな映画ってのがイメージで伝えられない。
 もともとこのドラマを観たいと思った理由が、テレビドラマにもかかわらず、まるで『スターウォーズ』のようなカッコいいポスターが用意されていたからだったので、この画像の引用なしで感想書くのはやだなぁ……とか思ってしまったんだった。
 で、最近になってふたたびアマゾンを検索してみて、来月リリースされるサントラを発見。よし、これを使って感想書こうってことになったのでした。
 このドラマはアメリカの片田舎にある政府の秘密施設で謎のトラブルが発生して、事件に巻き込まれた小学生の男の子が行方不明になるところから始まる。いなくなった少年の母親役がウィノナ・ライダーってのも、僕がこのドラマを観たいと思った理由のひとつ。
 物語はこの少年の失踪事件をめぐって、小学生、高校生、大人の三つのグループの行動を追いながら進んでゆく。
 小学生の男の子三人組+施設から逃げ出してきた被験者の少女(ポスターの真ん中にいる坊主頭の子はじつは女の子)を描いた部分は、『スタンド・バイ・ミー』、『E.T.』、『グーニーズ』などの80年代映画にまんま通じる。アメリカの田舎町でのオカルト事件を背景にしながら、ハイスクールでの恋愛劇が描かれるところは、『ツイン・ピークス』を思い出させる。異世界(?)と交信するためにウィノナ・ライダーが家じゅうを電飾で飾っちゃうシーケンスには、ちょっと『未知との遭遇』的なテイストがある。そこに『ポルターガイスト』や『遊星からの物体X』的な気持ちの悪いオカルト要素がぶち込まれると。そんな盛りだくさんな内容のSFホラー・ドラマ。
 まぁ、なかでは小学生たちのパートがもっとも印象的なので、僕がいちばん近いと思ったのは『E.T.』だった。あの映画のエイリアンのかわりが坊主頭の女の子になった感じ。とはいえ、こちらはグロテスクなオカルト要素がたっぷりなので、あんなハートウォーミングではないけれど。まぁ、それでもなかなかおもしろかったです。とくに太めの子が後半になって意外な切れ者ぶりを発揮するところがおかしくいい。
 しばらく前にシーズン2の制作が発表されたけれど、ラストシーンのあと味がいまいち悪かったので、つづきが観たいかと問われるとちょっと微妙。ここで終わっておいてくれてもいい気がする。
(Sep 18, 2016)

ズーランダー

ベン・スティラー監督/ベン・スティラー、オーウェン・ウィルソン/2001年/アメリカ/NETFLIX

ズーランダー (字幕版)

 以前ベックが好きだといっていたので(あと、なぜだかうちの奥さんがベン・スティラーが好きなので)いずれ観たいと思っていた作品。NETFLIXにあったので、観られるうちに観ておくことにした。
 しっかしまぁこれは予想以上のおバカ映画だった。
 物語は売れっ子の男性ファッション・モデルがファッション業界を陰で操る謎の秘密結社に利用されて、訪米中のマレーシア首相を暗殺しようとする……みたいな話。ベン・スティラーが一流ファッション・モデルの役って時点でふざけ過ぎなのに、演出もそれに似合ってもう終始おバカさん。こういうのが好きな人にはいいのかもしれないけれど、僕はいまいち乗りきれなかった。
 それにしても、なんでこんなB級映画にデヴィッド・ボウイやレニー・クラヴィッツやウィノナ・ライダーらの錚々たるメンツがカメオ出演しているんだろう(そういや、なんとドナルド・トランプもいた)。ベン・スティラーさんの人徳でしょうか。ならばすごい人だな。
 ほんとこの映画はキャスティングがすごい。友人のオーウェン・ウィルソン(この人は最近なにやら僕のまわりで出番が多い)に、奥さんのクリスティン・テイラー、父親のジェリー・スティラーと身内でまわりをかためつつ、さらなる脇役がウィル・ファレル、ジョン・ヴォイドに髭面のデヴィッド・ドゥカブニー、ミラ・ジョヴォヴィッチとなにやら豪華だし、これだけのキャストでもってこの内容ってのは、ある意味すごい。内容のB級感とキャスティングの豪華さのアンバランスには、昔の『カジノ・ロワイヤル』に通じるものがあると思う。まぁ、だから好きだとはいえないんだけれども。
 とりあえず、うちの奥さんは「続編も観る!」ってはりきっていたけれど、俺はそっちはいいかなぁ……という気分。
 でも続編にはペネロペ・クルスとか出てるのか。それはちょっと考えちゃうな。
(Sep 24, 2016)

96時間

ピエール・モレル監督/リーアム・ニーソン、マギー・グレイス/2008年/フランス/WOWOW録画

96時間 (字幕版)

 『ジョジョの奇妙な冒険』の荒木飛呂彦氏がいちばん好きなサスペンス・スリラー映画だというので、どんなもんかと観てみた作品。
 リック・ベッソンが制作と脚本に名を連ねていて、舞台も大半がフランスだけれど、主人公はアメリカ人だし、全編英語なのでアメリカ映画だと思っていたら、フランス映画とのこと。
 でもって、内容的にはフランスを舞台にしたリック・ベッソン版の『24』という感じだった。フランス旅行中の娘を誘拐された凄腕の元CIA工作員が、愛する娘を助けるためにフランスに乗り込んで大騒ぎを巻き起こすという話で、リーアム・ニーソン演じる主人公がまるでジャック・バウアーのようだった。
 おもしろかったのは、起こる事件が大げさなテロとかではなく、単なる人身売買組織による誘拐事件であること(単なるってのはひどいか)。主人公の目的が悪を裁くことではなく、娘を助けることだという、きわめてプライベートで単純な動機であるところが、なかなか新鮮だった。
 まぁ、それにしてはやっていることがめちゃくちゃで、よく国際問題にならないなって感じだけれど。それでも持ち前のスキルを総動員して、次々と敵を倒してゆく主人公の活躍はさすがに痛快ではある。この人は怒らせたくない。
 あまり映画の出来映えには関係ないけれど、リーアム・ニーソンの娘役ってのが、ドラマの『LOST』でお騒がせなシャロン役を演じていたマギー・グレイスという女優さんで、この映画でも「またこの子は……」とか思わせちゃうところがちょっとおかしかった。
 そのほか、リーアム・ニーソンの元妻の役がファムケ・ヤンセン、その現在の夫役が『24』のセカンド・シーズンで原爆とともに散ったジョージ・メイソン役のザンダー・バークレーってあたりのキャスティングにも、おっと思った。
(Sep 25, 2016)

フェア・ゲーム

ダグ・リーマン監督/ナオミ・ワッツ、ショーン・ペン/2010年/アメリカ/NETFLIX

フェア・ゲーム (字幕版)

 最近は以前ほど頻繁に映画を観られないので、いつまでもNETFLIXと契約しているのは無駄だから、さっさと解約しよう──その前にめぼしいものはとっとと観ておこう──ということで、観たのがこの映画。大好きなダグ・リーマンの監督作品だというのに、このごろはどうも情報に疎くなっていて、こんな映画があることも知らなかった。
 でもこれ、そのほかのリーマン監督作品とはちょっと毛色が違う。この人はテンポのいいエンターテイメントが持ち味だと思っているのだけれど、この作品は硬派な社会派ドラマだった。
 それもそもはず、調べてみたらこれは同名の回顧録を原作にした実話ドラマとのこと。
 大領破壊兵器の存在を理由にイラク戦争を始めたブッシュ政権に対して、元ニジェール大使役のショーン・ペンがそんな事実はないという告白記事を発表したことから、その報復として彼の妻である主人公のナオミ・ワッツがCIA局員であることをリークされて窮地に陥るという話。要するにアメリカ政府筋が戦争の理由をごまかすために母国のスパイの身元をバラしちゃったという話。しかも実話。アメリカひでぇ。
 ナオミ・ワッツのCIAでの極秘活動が描かれてゆく序盤はなかなか話がわかりにくかったけれど、いったん本題のトラブルが起こってからは、(不条理な事態への憤りを込めつつ)楽しんで観ることができた。なかなか力強い作品だと思う。
 ただ、いよいよこれからって感じのところでいきなり終わってしまったのには、やや拍子抜けした。あの終わり方に僕はデ・ニーロ主演の『真実の瞬間』を思い出した。考えてみれば、あれも似たようなテーマの作品だった。いわばあの映画の主人公を女性にした感じの作品。
 まぁ、なかなかいい映画だとは思うけれど、やはりダグ・リーマンの監督作品としてはイレギュラーな作品という印象が否めない。
(Sep 25, 2016)