2015年7月の映画

Index

  1. キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー
  2. ムーンライズ・キングダム
  3. オールド・ボーイ [2013年版]

キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー

アンソニー・ルッソ&ジョー・ルッソ監督/クリス・エヴァンス、スカーレット・ヨハンソン/2014年/アメリカ/WOWOW録画

キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー (字幕版)

 アイアンマン以外のキャラクターをまったく知らずに『アヴェンジャーズ』を観て、もっとも気になったのがキャプテン・アメリカだった。
 ヒーローとしてカッコよかったから……ではもちろんなく。そのたたずまいが、あまりに普通の人だったから。
 そりゃ身体能力は高いし、身体の頑丈さという点では尋常ではないのはわかったけれど、それでもまわりのキャラ──ハイテクスーツを身につけた大富豪、超人ハルク、そして神様──と比べてしまうと、彼だけはあくまで普通の人の域を出ていないように思えた。
 なぜこの人はヒーローとして、映画の主人公として一本立ちしているのか。それが気になって、逆にとても興味が湧いた。
 ただ、だからといって、わざわざレンタルしてきて観るほどでもないので、テレビで放送されるのを待っていたら、一作目の再放送よりも先に、二作目のこれがWOWOWで放送されてしまった。
 僕としては、できれば一作目を先に観ておきたかったのだけれど、『エージェント・オブ・シールド』を観ていたうちの奥さんが、前作を無視してでもこれはぜひ観たいというので、まぁいいかと観ることにしたシリーズ第二作(前置きが長い)。
 前作を知らないで観はじめて意表をつかれたのが、スカーレット・ヨハンソンとサミュエル・L・ジャクソンの思いがけない出番の多さ。
 『アイアンマン』にふたりが出てきたときには、いったいこの人たちはなんなんだろうと思ったものだけれど、そうか、この作品のメイン・キャラだったんだと、ようやく納得。そもそもシールド(S.H.I.E.L.D.)という組織自体がキャプテン・アメリカ出自なんですね、話の流れからして。まぁ、その辺の詳しい話はいずれ第一作を観るときの楽しみとしよう。
 いずれにせよ、設定がわからないまま観ていても、それなりに楽しめる作品だった。普通だと思っていたキャプテン・アメリカの戦いっぷりにも、ふつうだからこその格闘アクションのみに徹した楽しさがあるし、これはこれで悪くないかもと思った。
 というか、CGのおかげでアクション・シーンに不可能がなくなりつつある昨今だけに、主役の能力に限度があるってのは、それはそれでありかなと思う今日このごろ。
 最近は下手になんでもできちゃうせいで、演出過多で失敗している例も多いので。盾と頑丈な身体だけが頼りってヒーローも、それはそれで悪くないなと思った(まぁ、映画の仕上がりは今風でじゅうぶんに派手だけれど)。
 あと、キャスティングでは、シールドの高官役でロバート・レッドフォードが出演しているのにはびっくりしました。いまさらマーベルの作品の脇役としてこの人にお目にかかるとは思わなかった。
(Jul 15, 2015)

ムーンライズ・キングダム

ウェス・アンダーソン監督/ジャレッド・ギルマン、カーラ・ヘイワード/2012年/アメリカ/WOWOW録画

ムーンライズ・キングダム スペシャル・プライス [DVD]

 ウェス・アンダーソンが『グランド・ブダペスト・ホテル』のひとつ前に撮った作品。
 物語はボーイスカウトのサマーキャンプにきていた少年が、近所に住むガールフレンドとキャンプを脱走して駆け落ちを企てるというもの。ともに孤独な少年・少女の初恋の顛末と、それに振りまわされる大人たちの人間模様をコミカルに描いている。
 感覚的には『天才マックスの世界』、あれの主人公を小学生に置き換えて、相思相愛のガールフレンドを与えてみたらこうなった、みたいな感じの作品。主役の男の子がマックス役の彼と似た感じだから、そう思っただけかもしれない。
 雷が落ちるシーンとか、花火が暴発するシーンとか、現実に起きたら悲劇となってしかるべきシーンを笑ってごまかしている部分がちょっと気になったものの、それ以外は演出も映像も全編ウェス・アンダーソン印で、出来映えは上々。
 思春期の入口にある幼い恋人たちの行動を、過剰にセクシャルになることなく、適度なエロティシズムをまじえて描いているところもポイント。いまならば触れたら即セックスってことになってしまいそうだけれど、舞台は1965年という設定なので、ふたりがどこまで行ったか曖昧なままでも、決して嘘くさくなっていない。
 脇をかためる大人たちも、ブルース・ウィリス、エドワード・ノートン、ビル・マーレイ、フランシス・マクドーマンド、ティルダ・スウィントン、ハーヴェイ・カイテル(不覚にもまたもや気がつかなかった)と、この監督の常連組を中心として、いつもながらの豪華さ。なかでも戦わないブルース・ウィリスを観るのはとてもひさしぶりで、なかなか貴重な気がしました。
 そういえば、『天才マックスの世界』で主役を演じたジェイソン・シュワルツマンも出ているのだけれど(疑似結婚式を取り仕切る人)、当然そんなことには気がつかない。いまや大人だものね。そりゃさすがに顔を見てもわからない。
(Jul 15, 2015)

オールド・ボーイ

スパイク・リー監督/ジョシュ・ブローリン、エリザベス・オルセン/2013年/アメリカ/WOWOW録画

オールド・ボーイ [Blu-ray]

 日本のマンガが韓国で映画化されてタランティーノに絶賛され、ハリウッドによりリメイクされた作品。原作のマンガもオリジナルの韓国映画も知らないのだけれど、監督が最愛のスパイク・リーだというので、観ることにした。
 いや、しっかし、これがとてもひどい映画だった。出来自体は悪くないのだけれど、話にあまりにも救いがない。なぜにスパイク・リーが監督を引き受けたのか不思議だ。
 物語としては、平凡なビジネスマンがある日とつぜん何者かに監禁された上に、元妻をレイプして殺したという無実の罪を着せられ、二十年間もの長きにわたって監禁生活を送ったあとで解放され、なぜ自分がそんな目にあったかを突き止め、復讐を果たそうとするという話。
 それだけ聞くと、モンテ・クリスト伯の現代版不条理バージョンという感じでおもしろそうなんだけれど──というか、実際おもしろいんだけれど──、まずは序盤に描かれる主人公ジョー(ジョシュ・ブローリン)のゲス野郎っぷりがすごくて、いきなり引いてしまう。
 この主人公の人物設定がいちばんの問題だと思う。なにも主人公をあそこまでの駄目男に設定しなくたってよさそうなものだ。契約相手の連れの女を口説いて振られて、そのせいで契約をふいにして、ふてくされて飲んだくれて吐いて立ちションして、監禁中にはエアロビ・ビデオを観ながらオナニーしてって。まったくもう、見苦しいったらない。
 ほんと、こんな不潔で臭そうな主人公も珍しいと思う。駄目さ加減が哀愁を漂わして同情をそそるかわりに、ただひたすら不快感を抱かせる。そんなジョシュ・ブローリンの演技はある意味すごいかもしれない。
 まぁ、さすがにずっとそのままってことはなくて、監禁されている二十年のあいだに、孤児となった娘の救済と自分を苦しめた敵への復讐を誓い、独学で身体を鍛えてヒーローっぽくなる――のだけれど、残念ながら序盤の駄目っぷりの悪印象が強烈すぎて、完全にそれをぬぐい去るまでにはいたらない。そこが残念。
 この映画の救いはそんな彼と懇意になるヒロイン役のエリザベス・オルセンがかわいいこと。先日観た『GODZILLA』で主人公の奥さんを演じていた彼女だけれど──『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』にも最後にちょっと出ていたらしい。不思議とこのところ僕が観た映画に出まくっている──、あの映画よりもこっちのほうがだんぜん魅力的だ。
 ──とはいえ、そんな彼女もジョーとの関係があだになって、いろいろ可哀想な目にあってしまう。そして最終的には彼女を巻き込んで、うわー、そんな話ですか、これ……ってくらいの、あと味の悪い結末を迎える。
 スパイク・リーの映画には珍しい、タランティーノばりのアクション・シーンなどもあって、ファンとしては観れてよかったって作品ではあるんだけれど、それにしても話としては本当にひどかった。とうてい人にお薦めする気にはなれない。
 あまりにあんまりな話だったので、オリジナルの韓国版と見比べたくなってしまった。いずれ機会があれば、ぜひそちらも観ることにしよう。
(Jul 27, 2015)