2013年12月の映画

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  1. the fighting men's chronicle 劇場版 エレファントカシマシ

the fighting men's chronicle 劇場版 エレファントカシマシ ディレクターズカット

山下敦弘・監督/2013年/日本/DVD

25 years of the fighting men’s chronicle 劇場版 エレファントカシマシ ディレクターズカット [DVD]

 デビュー25周年を記念して制作されたエレファントカシマシのドキュメンタリー・フィルム。監督は『天然コケッコー』の人とのこと(へー)。
 エレカシのドキュメンタリーというと、以前にも『扉の向こう』があったけれど、あれが宮本ひとりにフォーカスした作品だったのに対して、今回は25周年記念をうたうだけあって、ちゃんとバンドのキャリアを総括するような内容になっている。
 デビュー当時のお宝映像(さすがに画質はしょぼい)や、スピッツの草野マサムネら同世代のミュージシャンへのインタビューも配されていて、この手の音楽ドキュメンタリーとしては定番と呼べるフォーマットに仕上がっている。エレカシという、よくも悪くも普通じゃないバンドの歴史を、こういう一般的なスタイルで語ってみせたところが、なんとなくおもしろい。
 とはいえ、楽しいって言って終われる作品とは言えない。『扉の向こう』もそうだったけれど、この映画のなかでも、宮本はスタジオでバンド仲間を思い切り痛罵している。そして石くんたちは黙ったままうなだれて、それを受け入れている。僕にはそんな彼らの関係性に、苦い思いを禁じ得ない。
 どう考えたって、同級生の友達どうしが始めたバンドで、こんなのあり得ないだろう──彼らの関係にはそう思わせるいびつさがある。
 インタビューのなかで横山健が笑いながら「僕だったらすぐにやめてる」みたいなことを言っていたけれど、まさにそう。宮本に運命共同体としてのメンバーに対する責任感がなかったら──もしくは他のメンバーの誰かひとりがもっと自己主張が強かったら──、このバンドはとうの昔に解散していたんじゃないかと思えてしまう。
 でもこの映画でよかったのは、そんなふうにメンバーに対して怒りを爆発させたあとの宮本のリアクションがきちんと映像に収められている点。
 石くんらに過激な罵倒を浴びせかけたあと、先生に怒られてしょぼんとした生徒のような彼らに対して、宮本は諦めたように苦笑をまじえて、穏やかに話しかける。それをみて、僕はいくらか救われた気分になれた。
 あぁ、こうやってこの人たちは長いことやってきたんだなぁと。この先もこうやってつきあってゆくんだろうなぁと。そう思わせてくれたところに、この映画はなによりの価値があった。
(Dec 23, 2013)