2005年1月の映画
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インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説
スティーヴン・スティルバーグ監督/ハリソン・フォード、ケイト・キャプショー/1984年/アメリカ/DVD
上海マフィアとの取引がトラブって、命からがら逃げ出したインディ・ジョーンズ(ハリソン・フォード)だったけれど、奪った飛行機がインドの山奥に不時着。その地の小村の長老に、奪われた村の秘石、サンカラ・ストーンを取り戻してくれるよう頼み込まれることになる。
あまりに不出来なシリーズ第二弾だ。とにかく冒頭からいい加減な展開のオンパレード。マフィアに毒を飲まされて、その解毒剤を奪い取ろうするどたばたコメディ調のオープニングからしてもう駄目。ジョーンズはなぜあそこでドリンクを飲む? なぜマフィアは解毒剤なんか用意している? なぜそんなに暴れて即効性の毒が回らない? あの丈夫な容器はいったいなにでできているんだ? わずか十分でここまで納得のいかない展開が溢れかえっている映画というのも滅多にないぞ。ユーモアのつもりなんだろうけれど、僕にはすべて空回りしているように思える。
その後も悪役の所有する飛行機に乗って出発しちゃうし(なぜその場で出発を取りやめて捕まえない?)、操縦士は飛行機を放棄して飛び降りちゃうし(ひと一人を始末するために飛行機を乗り捨てる奴はいないと思う)、そもそもウィリー──この役を演じているケイト・キャプショーという女性はのちにスピルバーグの奥さんになったのだそうだ──がインディに同行する理由も全然わからない。とにかく始めっから終わりまでシナリオが最低に不自然すぎる。
最初に劇場で見た時には、そのエンディングのあっけなさ──悪役が橋から落ちて終わりって、それは前作と比べてあまりに地味すぎる──にがっかりして、やたらと印象が悪かったのだけれど、今回二十年ぶりに見直してみて、その印象の悪さは別にエンディングだけのせいではなく、シナリオ全編における信じられないようなレベルの低さにもあったらしいことに気がついた。
(Jan 16, 2005)
インディ・ジョーンズ 最後の聖戦
スティーヴン・スピルバーグ監督/ハリソン・フォード、ショーン・コネリー/1989年/アメリカ/DVD
聖杯の追求に生涯を捧げた父親(ショーン・コネリー)が失踪した。インディ(ハリソン・フォード)は父と聖杯を行方を追って、再びナチスとの抗争に巻き込まれてゆく。
前作が一作目のフォーマットを裏切ることで意表を突こうとして失敗した印象なのに対して、この作品はなるたけそれを踏襲しようとしているように見える。
最初に小さな冒険があり、その後にインディ・ジョーンズがキャンパスで仕事の依頼を受けて、冒険に乗り出してゆくという第一作と同様のパターン。
これらをきちんと踏まえ、それでいてその中に主人公の青年時代のエピソードを織り込んで見せたり、ショーン・コネリーという名優──さすが元祖ジェームズ・ボンド、この映画でのコミカルな演技は最高だ──をヒーローの父親に配したことで、マンネリを防いだ演出は見事だと思う。
フィルムが新しいせいもあるのだろう、全体的に風景がとても美しいのも印象的だった。でもクライマックスのドラマチックさでは、残念ながらやはり一作目には及ばない。
(Jan 16, 2005)
扉の向こう-ロック歌手・宮本浩次という生き方-
是枝裕和プロデュース/エレファントカシマシ/2003年/日本/DVD
エレファントカシマシのアルバム 『扉』 のレコーディングシーンを追うドキュメンタリー。
バウスシアターのレイトショーで──1週間ばかりというささやかさながらとりあえず──劇場公開された作品だから映画として扱おうと思ったのだけれど、DVDのクレジットを見ても監督の文字はないし(演出は千切谷知子という女性)、内容はテレビ放送された同名のドキュメンタリーとほぼ同じで、長さ的にも1時間ジャストという短さ。残念ながら映画と呼ぶにふさわしい作品とはいい難かった。
本当にテレビ放送とほとんど変わらない内容だし──ファンの姿を追う部分がない以外にはどこが違うのか、よくわからなかった──、DVDにしては画質もよくないし、これで五千円近くの価格設定は詐欺に近いと思う。とりあえず長年のファンとしては押えておかないわけにはいかないから買ったけれど、これがほかのバンドの作品だったら絶対買っていない。なんとも日本のショービズ界の志の低さを痛感させられる商品だった。
それにしても宮本がメンバーを怒鳴りつけているシーンにはまいる。石君たちはなんで敬語で宮本と接しているんだろう。とても同級生が集まったバンドには見えない。
(Jan 16, 2005)
Live Forever
ジョン・ダウアー監督/2002年/イギリス/DVD
オアシスVSブラーの構図で注目を浴びたブリットポップを再検証するドキュメンタリー・フィルム。
ギャラガー兄弟、デーモン・アルバーン、ジャーヴィス・コッカー(パルプ)、マッシヴ・アタック、スリーパーなどのメンバーのインタビューを中心として、同時に当時のファッションや美術界のムーブメントも踏まえ、90年代中盤のUKのポップ・カルチャーを
随分と年をとったなあと感じさせるデーモンの倦怠ぶりと、ノエル・ギャラガーの成り上がり者ぶり&リアム・ギャラガーの傍若無人ぶりの対比がものすごい。彼らへのインタビューを、かたやうらぶれた食堂で、かたやお城の中みたいな豪華な洋室──ノエルの坐っている椅子が豪華すぎて笑える──で行うという演出には、かなりあざとい印象を受ける。それでも、じゃあブラーをおとしめて、オアシスを礼賛しているのかというとそうでもなさそうだ。オアシスのコピー・バンドの存在をフィーチャーすること滑稽感をあおっている演出がそれを証明していると思う。
なんにしろブリットポップの盛衰を、ストーン・ローゼズのスパイク・アイランドから始めて、テイク・ザットから独立したロビー・ウィリアムズのブレイクで終えるという視点はなかなかおもしろいと思った。あとは政治に関する言及が多い点に、それがあちらのお国柄とは言え、やはり考えさせられるものがあった。
それにしても最近見たミュージック・ドキュメンタリーである、この作品と 『永遠のモータウン』 と 『扉の向こう』 の三本には、イギリス、アメリカ、日本、それぞれのお国柄の違いがものの見事に表れているようで、とても興味深かった。
(Jan 16, 2005)
ロープ
アルフレッド・ヒッチコック監督/ジェームズ・スチュワート、ジョン・ドール、ファーリー・グレンジャー/1948年/アメリカ/DVD
この映画は二人の青年紳士が学生時代の友人を絞殺するシーンから始まる。
彼らは死体をチェストに隠し、それをテーブル代わりにして立食パーティを開く。招待客は被害者の両親と婚約者と元親友。なぜそんな悪趣味きわまりないことをするかというと、それは彼らのうち主導権を握っている方の青年ブランドン(ジョン・ドール)が、「殺人は優越者の特権である」という自論を証明するため、らしい。ところが彼らの犯罪計画は、そのパーティに恩師・ルパート(ジェームズ・スチュアート)を招待してしまったことから破綻してゆく……。
映画全編を一本のカメラによる、連続するワンシーンで撮って見せたヒッチコックの意欲作。とはいっても、そのアイディアを実現するために舞台は高級アパートメントの一室に限定されてしまっているので、結果として印象はかなり地味だ。これはもしかしたら、そういう作品だと思って見ないと、あまり楽しめないかもしれない。
ただ逆に、あらかじめそういう情報を知っていて見ると、実に見事に編集されていて感心すること
個人的に一番おもしろかったのは、パーティのあとかたづけのシーン。カメラは主要な登場人物たちを無視して、家政婦のおばさんがチェストの上をかたづけてゆく様子を延々と追い続ける。おそらく映画史上、これほどまでにスリリングなあとかたづけのシーンは他にないだろう。わはは、大笑いだ。やっぱりヒッチコックはおもしろい。
殺人を犯す青年のうち、臆病な方の役を演じているのが、 『見知らぬ乗客』 の主演、ファーリー・グレンジャーだった。お粗末ながら、まったく気がつきませんでした。
(Jan 26, 2005)
オーシャンズ11
スティーヴン・ソダーバーグ監督/ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット/2001年/アメリカ/DVD
主人公ダニー・オーシャン(ジョージ・クルーニー)は、刑務所を出るが早いか、すぐさま相棒ラス(ブラッド・ピット)を始めとする仲間を集めて、大掛かりな強盗計画にとりかかる。
ターゲットは悪名高いラスベガスのカジノ・オーナー、ベネディクト(アンディ・ガルシア)が経営するカジノ三店の売上金1億6千ドル。そしてベネディクトの現在の恋人であり、オーシャンの元妻であるテス(ジュリア・ロバーツ)だっ。
シナトラ主演で60年に公開された同名映画──邦題は 『オーシャンと十一人の仲間』 ──のリメイク版。続編の 『オーシャンズ12』 が公開間近ということで、最近DVDの売れ行きが好調らしい。わが家でも去年見たオリジナル版がなかなか好評だったので、この 『12』 フィーバーに乗っかる形でのDVD鑑賞とあいなった。
のんびりとした展開と脱力感を漂わせるエンディングが印象的だった旧作と比べると、こちらは展開がスピーディーで、演出も派手だ。すべてが今風にアップデートされていて、これはこれでおもしろかった。
ただエンディングは前のやつの方がいいと思う。やっぱ、悪いやつはいくら格好よくたって、最後にはある程度、馬鹿を見ないといけない。
あと出演者の豪華さが宣伝されている割には、アンディ・ガルシアとジュリア・ロバーツがオーシャンの仲間の役ではないため、ジョージ・クルーニーとブラッド・ピットとを除くと十一人のメンバーのほとんどが知らない人ばかりなのにも、やや拍子抜けがした。勉強不足でしょうか。
(Jan 27, 2005)
抱擁
ニール・ラビュート監督/グウィネス・パルトロー、アーロン・エッカート/2002年/アメリカ/DVD
イギリスで十九世紀の詩人ランドルフ・ヘンリー・アッシュ(ジェレミー・ノーサム)を研究するアメリカ人研究者ローランド(アーロン・エッカート)は、偶然この詩人が書いた宛先不明のラブレターを発見する。彼はそれを図書館には無断で借用して、謎の恋人の正体を追求し始める。その女性とは、アッシュと同時代の女流詩人クリスタベル・ラモット(ジェニファー・エール)ではないかとあたりをつけた彼は、この推測の裏付けるべく、ラモットに詳しい研究者を探して、この女流詩人の遠縁にあたるというモード・ベイリー(グウィネス・パルトロー)と出会うことになる。
文学的技巧の粋を凝らしたUKの女流作家A・S・バイアットの原作がどんな風に映像化されているのかと、前から気になっていた作品だった。で、観てみると、これがきわめてその原作に忠実な仕上がりになっていて、なかなか感心した。映像もきれいだし、とても好感が持てた。
ただし配役は全員、見事なまでに僕のイメージと違っている。ローランドはもっとなよっとした長髪の男性を想像していたし、逆にモードはもっと強そうな人というイメージだった。クリスタベルも失礼ながらもっと美人のイメージだった。唯一なるほどと思ったのはアッシュ役の人。彼はいかにも十九世紀の詩人っぽい。
ローランド役のエッカートは、 『エリン・ブロコビッチ』 でジュリア・ロバーツの恋人役を務めた人だそうだ。言われてみればなるほど、そんな気はするけれど、髪が短いので、ぜんぜん気がつかなかった。
(Jan 27, 2005)