2012年10月のサッカー

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  1. 10/06 ○ 鹿島5-1F東京 (J1・第28節)
  2. 10/12 ○ フランス0-1日本 (親善試合)
  3. 10/13 △ 柏2-2鹿島 (ナビスコ杯・準決勝)
  4. 10/16 ● 日本0-4ブラジル (親善試合)

鹿島アントラーズ5-1FC東京

J1・第28節/2012年10月6日(土)/カシマサッカースタジアム/スカパー!

 三鷹の義妹夫妻のマンションにお邪魔して、FC東京サポーターの旦那とともに観戦したFC東京戦。結果はこちらにとって今季最高、あちらにとっては(おそらく)今季最悪って内容の、いささか申し訳ない試合になってしまった。
 この試合のアントラーズは前の試合と同じく、大迫をワントップに据えた4-2-3-1を採用。ただしボランチを本田拓也から柴崎に戻して、攻撃的なポジションには遠藤を起用してきた。
 おそらくこれが功を奏したのだと思う。より攻撃的になったこの布陣がバシッとはまった感じ。ポストプレーで随所に輝きを見せる大迫を頂点に、両サイドから遠藤、ドゥトラがドリブルで仕掛け、司令塔としてレナトがバランスを取る。もちろん、オガサ、柴崎もチャンスがあれば攻撃参加を仕掛ける。
 前半18分の先制点はそんな風に柴崎が右から攻め上がって、グラウンダーのクロスを入れたのがきっかけとなった。これは権田が反応よく飛び出して弾くも、そのこぼれ球がドゥトラに渡り、ドゥトラがこれを上手にゴールへと蹴り込んでみせた。ナイス!
 この先制点で、がぜん楽になった。なにせ、FC東京とは、ことカシマスタジアムでの試合に関しては、これまでに11試合を戦って1敗しかしていないんだそうだ。そんな相性のいい相手に、前半の早いうちに先制できたのだから、これはもう余裕を持って戦える。さらに前半のうちに、またもや右サイドの崩しから柴崎のゴールが生まれて、2-0で前半を折り返すという楽勝な展開に。
 実況の人も驚いていたけれど、柴崎はこれがJ1初ゴールなんだそうだ。え~、マジ? けっこうゴール・シーンを見てきた気がするんだけれど、今までのはすべてカップ戦やACLだけ? いやぁ、そりゃマジびっくりだわ。
 J1初ゴールといえば、後半にはFC東京の高橋秀人にも、J1初ゴールが生まれた(技ありのヒール・キック)。奇しくも将来の日本代表を背負って立つだろう期待の若手ふたりに、同時にJリーグ初ゴールが生まれたわけだ。ある意味とても貴重な試合かもしれない。とはいえ、後半も3失点を喫して惨敗を喫したFCの高橋にとっては、あまりいい記念にはならなかっただろうけど。
 後半のこちらの得点は、遠藤が1ゴールに、ドゥトラが2ゴール。つまりドゥトラはハットトリックを達成しているわけだ。なんでも彼もハットトリックはこれが初めてだったらしい(まだ24歳だったのか……)。つまり人生で初が3つも重なったという、ほんと貴重な試合。
 あ、もうひとつ加えれば、大迫はこれがJ1通算100試合目だったそうだ(もうそんなになるのか)。そして、この試合のMVPは、ドゥトラではなく大迫だったらしい。ハットトリックを決めた選手がいるのに、その人を差し置いてMVPに選ばれたってんだから、どれだけこの日の大迫が存在感のあるプレーをしていたか、わかろうってものだ。
 まぁ、GKと1対1のチャンスにシュートをふかしたり、パスを出せば1点だろうってカウンターの絶好機に、強引にシュートにいって止められたり、おいおい、まだまだ青いなというプレーもあったけれど、それでもこの試合の大迫がMVPにふさわしい活躍を見せたのは間違いなし。この調子が維持できれば、近い将来、日本代表に呼ばれるの夢ではないかも……と思わせる出来映えだった。
 FC東京はスタメンの羽生がまったく存在感を示せないまま、足を痛めたとかで早い時間に交替になったりして、やや不運な部分もあった。とはいえ、こちらのシュートの場面では、ことごとく寄せが甘かったし、本来ボランチの高橋をCBとして使っていたり、こういう展開にもかかわらず、森重がまったく目立っていなかったりして、守備面ではあまりに安定感が感じられなかった。石川直の右サイドからの仕掛けにはとても迫力があったけれど、好印象だったのはそれくらい。なんか、どっちが上位チームだかわからない。
 なんにしろ、アントラーズにとっては、今年僕が観た試合のうちでも最高の内容だったと思う。この日みたいな試合ができるんだから、もう残留を心配する必要もないだろう。……って、なんて単純な男なんだか。
(Oct 08, 2012)

フランス0-1日本

親善試合/2012年10月12日(金)/スタッド・ド・フランス(パリ)/フジテレビ(録画)

 日本代表、じつにひさしぶりの欧州遠征二連戦のその一、フランス戦。
 11年前にサンドニにある同じスタジアムで0-5で負けた──という昔話を試合前にあちこちで見かけたので、さすがに今回はそんなことはないだろう、いまの日本代表ならばフランス相手とはいえ、互角以上に戦えるんじゃないかと思っていたのだけれど、いざ試合が始まってみたら、まったくそんなことはなかった。いやー、うぬぼれてました。フランスのほうがまだまだ一枚上手じゃないか。
 キックオフから2、3分は、まぁ、日本代表が前を向いて攻めて出ようという姿勢を見せていい入り方をしたように思えたのだけれど、よかったのは最初だけ。すぐに押し込まれるようになったと思ったら、前半はそのまま攻められまくり。反撃の糸口さえもつかめずに終わってしまう。なんたって前半のシュート数が1-14、コーナーキックが0-8だってんだから、どれだけ一方的に攻められっぱなしだったか、わかろうってものだ。ジダンのような突出した選手はいないものの──僕が知っている名前はベンゼマとリベリくらい(でもリベリは温存)──、やはりフランスはまだまだ日本には手強い相手だった(ちなみに現在はデシャンが監督に就任したばかりとのこと)。
 そんなフランスに立ち向かったこの日の日本代表は、GK川島、4バックが右から酒井宏樹、麻也、今野、長友、MFは長谷部、遠藤のダブル・ボランチに、清武、憲剛、香川、そしてハーフナー・マイクのワントップというスタメン。
 ポイントは本田が故障で使えなかったこと、そして長谷部がクラブで干されていて試合勘がなかったこと、このふたつだと思う。あ、あと雨でぬかるんだグラウンドか。
 やはりフランスのような実力のある国とピッチ・コンディションの悪いなかで戦うには、中盤でのキープ力が抜群な本田が欠けたのは痛かった。僕は中村憲剛が大好きだけれど、この日のように中盤でボールが思うようにキープできない展開では、受けては{さば}く彼のスタイルは生きてこない。そもそも、なんで本田の代役がいつも憲剛なんだか、僕にはザッケローニの考えがいまいちよくわからない(まぁ、では誰にいまの本田の代役が務まるんだと言われると困るけれど)。
 あと、残念ながら長谷部が存在感なさすぎた。やはりクラブで戦力外になって出場機会が得られない現状では、いきなり欧州の強豪国相手にキャプテン・マークをつけて戦うってのは難しいんじゃないだろうか。遠藤がいつもどおりの質の高いプレーを見せてくれている分、なおさら相棒の長谷部の存在感のなさが気になった。
 まぁ、とはいっても、彼にかぎらず、前半は全体的に出来がよくなかった。とにかく半端なミス・パスが多すぎた。パス・サッカーが身上のチームがあんなにパスがつながらないんじゃ、勝負にならない。
 結局ザッケローニはスタメンを後半の15分すぎまで引っぱったけれど、僕は後半の頭っから何人か替えたほうがいいと思っていた。実際に日本代表がいいプレーをしはじめたのは、長谷部と憲剛が細貝と乾に替わってからだったし。どうせならばスタメンを前半で見限り、さっさとこの形で戦っていたら、その15分ぶん、余計におもしろい試合が観れた気がする。ザッケローニ、あいかわらず動くのが遅い。
 なんにしろ、日本代表がようやくボールを回せるようになったのは、その交替のあと。香川、清武、乾というセレッソ出身の海外組テクニシャン・トリオが中盤に顔をそろえるようになって、ようやく日本は相手のゴール付近まで迫れるようになった。長友の崩しからは、何度かおおっ、というシーンも演出できていた。まぁ、フィニッシュが上手く形にならなかったけれど。
 いずれにせよ、後半になって日本もいくらか持ち直しはしたものの、そのあともフランスの猛攻を受けて、川島のファイン・セーブでなんとかしのぐというシーンが終盤に何度もあったし(温存していたリベリが出てきたりもした)、全体的に試合を支配していたのはフランスだった。あちらが決定力を欠いていたから助かったけれど、さもなければ、またもや0-3とかのスコアで負けていても、なんらおかしくない内容だったと思う。それでも点が取れないってんだから、おそらく僕ら日本人以上に、フランスのサポーターのほうがストレスがたまったに違いない。
 そんなフランス人のストレスに駄目押しするかのように、なんと試合も残り5分を切ってから、日本に先制点が生まれる。おおっ! フランスのセットプレーからのセカンド・ボールを拾った今野が、そのまま果敢にドリブルで攻め上がって(いったい何メートル走ったんだ)、右サイドをフリーで攻め上がってきた長友(なぜ右!)にパスを通すと、それを長友がクロスで折り返して、ゴール真正面に詰めてきていた香川に合わせる。香川はスライディング・ボレーで相手DFに競り勝ち、このボールをゴールネットに突き刺してみせた! おーーー!! なんて見事なカウンター!
 この時点でロスタイム(2分)を含めて残り5分たらずだった。さすがにこれは勝ったろう……とは思ったものの、ここから追いつかれてドローで終わるってのが、過去によくある強豪国との対戦パターン。おかげでタイムアップの笛がなるまでは、ハラハラし通しだった。でも今回は大丈夫。こういう試合でちゃんと勝ち切るところに日本の成長を見た。いやぁ、しかし、たかが親善試合でここまで盛りあがるなんて……。途中までの展開からは想像もできなかった。いやはや、勝ててよかった。
 そうそう、遠藤はこの試合が代表キャップ122で、ついに歴代トップの井原に並んだそうだ。次のブラジル戦でついに単独トップ。まさか、遠藤が代表でこれほどまでの記録を残すことになるなんてのも、彼が若くて出場機会に恵まれなかったころには想像だにできなかった。これだからサッカーはおもしろい。そして遠藤えらい。
 なんにしろ、内容はどうあれ、日本代表がW杯優勝国──それも過去に一度も勝ったことのなかった相手──にアウェイで土をつけたのだから、これはもう歴史的快挙に間違いなし。日本時間で午前4時からのキックオフだったため、録画で観たのがやや悔やまれる貴重な一戦だった。
(Oct 13, 2012)

柏レイソル2-2鹿島アントラーズ

ナビスコカップ・準決勝/2012年11月13日(土)/柏サッカー競技場/スカパー!(フジテレビONE)

 いまだスカパー!Jリーグ・パックは解約中ながら、うちの奥さんが観たがったドラマや音楽番組のために、思い切って基本パックというやつを契約したら、このナビスコ杯の準決勝が観られるようになった。
 Jリーグ・パックに入ってても観られない試合が、基本パックだと観られるというこの不思議。この契約だとTBSチャンネルやBSスカパーで放送されるJ1の試合は観られるし、Jリーグ・パック+単独チャンネル2つよりも金額的に安いので、当分はこの形でいいかなと思ってしまった。
 さて、そんなわけで思いがけず観ることができたナビスコ杯・準決勝、柏レイソルとの第二戦。──といいつつ、試合前までこの試合をずっと準々決勝だと思い込んでいた馬鹿野郎は私です。毎年11月3日が決勝なんだから、日程的にそんなはずないだろ。気がつけって、俺。
 なにはともあれ、この試合、両チームのスタメンを見て驚いたのが、どちらにも中心選手の名前がなかったこと。こちらは小笠原、柏はレアンドロ・ドミンゲスがいない。オガサは出場停止で、レアンドロ・ドミンゲスは9月末の浦和戦で怪我をして全治4週間とのこと。
 どちらもチームにとって重要な選手だけれど、現状でどちらがいなくて困るかと言えば、そりゃレアンドロ・ドミンゲスでしょう。こちらはボランチの人材は豊富で、オガサの穴を埋めるのに、本田拓也や増田誓志という元日本代表が控えているんだから。
 ということで、第1戦に3-2と勝っているとはいえ、アウェイ・ゴールで2点を許しているだけに気が抜けないなと思っていたこの第2戦だけれど、始まってみれば、やはりレアンドロ・ドミンゲス不在のため、かなり楽な展開になった。
 前半12分には大迫の見事なスルーパスから、ペナルティエリアへ斜めに駆け込んだドゥトラが先制。その12分後には逆に、ドゥトラからのラストパスを大迫がオフサイドぎりぎりで受けて追加点。前半だけでアウェイ・ゴールの2点に追いついてみせた。この時点でもう勝負ありだったと思う。その後、ドゥトラがPKを得て大迫が外す、なんて場面もあったけれど、だいたいのところは安心して観ていられる内容だった。
 柏も前半のうちにジョルジ・ワグネルの見事なFKから1点差に追い上げ、後半ロスタイムには途中出場のネット・バイアーノが混戦からのボールを押し込んで、同点に追いついてみせたけれど、健闘もそこまで。CBの近藤直也が右太ももの筋を痛めて途中交代を余儀なくされたりする不運もあって、同点に追いつくのがやっとって感じだった。
 それにしても、アントラーズはいつの間にか随分と連係がよくなっている。ジョルジーニョ就任から半年以上がたって、ようやくコンビネーションが熟成されてきたんだろうか。いまのサッカーならば、ストレスなく観ていられる。あと3ヶ月はやくこの状態になっていれば、リーグ戦でももっと順位が上がったのになぁ……と思うも、あとの祭り。
 でもまあ、まだカップ戦ふたつではタイトルに手が届く位置につけているので、今年はとりあえず、それだけでも十分だ。これ以上の贅沢いっちゃ罰があたる。
(Oct 14, 2012)

日本0-4ブラジル

親善試合/2012年10月16日(火)/ヴロツワフ(ポーランド)/フジテレビ

 前のフランス戦を観て、この分だとブラジルに勝つのは難しいだろうなぁとは思ったけれど、まさかこれほどまでの惨敗を喫しようとは……。
 この日の試合、テレビ放送開始前にツイッターで見かけたスタメン発表では、FWが香川、清武、MFが本田、遠藤、憲剛、長谷部という顔ぶれだった。
 わぉ、香川、清武のツートップに本田と憲剛の併用! そりゃおもしろそー! と盛りあがったのだけれど、いざ蓋を開けてみれば、なんのことはない。フォーメーションは前の試合と同じ4-2-3-1で、単に本田をハーフナー・マイクのかわりにワントップに据えただけだった。あと、右サイドが酒井ではなくウッチーだったのがフランス戦との違い。
 本田自身が試合後のインタビューで、ワントップというよりはゼロトップと言っていたように、前線の選手たちが流動的にポジション・チェンジを繰り返して、ブラジル・ゴールを目指すというイメージ。前田、岡崎の不在でFWの駒不足なこともあり、フランス戦で存在感を示せなかったハーフナーを見限って、日本の特徴である攻撃的MFの豊富さを最大限に生かそうという作戦だったのだと思う。
 ただ、この形が思ったほど生きない。本田が入ったことで、フランス戦にくらべればボールは収まるようになったものの、その本田も故障明けのせいか、はたまた相手のブラジルが上手すぎるせいか、いつもと比べると、思うようにボールがキープできない。
 また、本田がボールをキープできても、ペナルティエリア内へと走り込んでゆく選手がいない。細かいパス交換からゴールを目指すイメージはあるものの、余計な手数をかけている分、ブラジルの分厚い守備ラインを崩せない。ターゲットとなる選手がいないために、清武のパス・センスが光る場面もない。
 そんなこの日の日本代表を見ていて、やはりこのチームには前田や岡崎のように、前線でターゲットとなる、純然たるFWタイプの選手が必要なのかもと思った。部分的にはいいコンビネーションから、本田や香川のシュートで終わるというシーンもあったので、まったく駄目ってわけでもなかったけれど、結局は無得点に終わってしまったこともあって、僕はやはりFWが一枚はいて欲しいと思った。
 そういう意味では、前田の途中離脱により、今回の代表に追加招集された佐藤寿人に出番が与えられなかったのが残念だ。使う場面がなかったならばともかく、僕の感じ方からしたら、なぜ使わないのか、わからないような展開だったから。
 そういやひさしぶりに宮市に出番が回ってきたけれど、それにしたってプレーできたのは、わずか5分たらずだったし(同時に行われた麻也→栗原の交替も謎)。0-4なんて試合なんだから、もっと早く動いてしかるべきだろうと思うんだけれど。ほんと、ザッケローニの交替選手の起用方法はよくわからない。
 まぁ、なにはともあれ、ブラジルは強かった。いや、強すぎた。しかもそのサッカーはちょっとばかり異質だった。
 たとえば、ひとつ前のフランスは現在のスタンダードなサッカーをきっちりしっかりやっている印象だった。前線からプレスを徹底して、相手にスペースを与えず、ボールを奪ったら効率よく相手ゴールを目指す。基本、やっていることは日本代表と同じなんだけれど、フィジカルの強さと基礎プレーの正確さで、日本を上回っていた印象だった。
 ところが、ブラジルのサッカーは違った。決して無理なプレスはかけてこないから、中盤ではけっこう自由にボールを持たせてくれる。でも押し込んでゆくとその先でぎゅっと絞られて、自由にゴール前までボールを運ばせてもらえない。ブラジルの守備がここまでいいとは想定外だった。
 で、いざボールを奪うと、そっからの攻撃の迫力が尋常じゃない。
 特に恐れ入ったのは、カウンターでの迫力。日本のサッカーはスピードがあると言われるけれど、この試合で見せたブラジルのカウンターでのスピードには、もっとすごいものがあった。日本のサッカーは全体的にスピーディーというか、落ち着きのない感じだけれど、ブラジルは普段はゆっくりとしているのに、ここぞというところで一気にフル・スピードになる感じ。いわば獲物を追いつめる肉食動物のような迫力があった。
 ただでさえ上手いチームがあんなスピードで攻めてくるんだから、そりゃもう怖いったらない。スピード、パワー、技術の三拍子、揃いもそろって、そろい過ぎ。どうやって止めたらいいか、わからない。
 それにしても、なんで二十歳そこそこのネイマールやオスカルがあんなに上手いんだ? そこに円熟味を増したカカや、Jリーグでは向かうところ敵なしだったフッキ(!)が加わるんだから、その攻撃力たるや、未知の領域だった。
 で、そんな圧倒的な攻撃力を持ったチームが、今回は同時に守備力も兼ね備えているんだから、そりゃ強いのなんの。いやはや、強すぎた。もうまったく歯が立たない。王者はまさに王者だった。こんな強いチームが現在FIFAランキング14位なんかに低迷しているってんだから、わけがわからない(日本は23位で、その差わずか9)。いったいどうことなんだかなぁ。
 まぁ、失点自体を振り返ってみると、1点目はボランチのパウリーニョという選手が遠目から打った意表をつくミドル・シュートで(あれが決まるのがワールドクラスだ)、2点目はPKからの失点(ペナルティ・エリアでスライディング・タックルにいった今野がハンドの判定を受けたらしい)。後半に入ってからの3点目は、CKからのネイマールのシュートが人にあたってコースが変わった不運なもので、カウンターからカカに許した4点目は後半すでに集中力が切れかけていた時間帯のもの。
 あと、ネイマールが右サイドのゴールライン付近までしつこくボールを追っかけて蹴り上げたクロスを、ファーサイドに怒涛の飛び込んできた選手が押し込む(川島茫然)、というゴールがあったのだけれど、これは謎の誤審によってノーゴールとなった。なので実質は0-5(結果に残らなくて助かった)。
 いやぁ、それにしても、ネイマール、去年だかクラブW杯で観たときにはそれほどとは思わなかったけれど、今回はちょっとすごすぎた。キープ力はあるは、シュートは鋭いは。しかも、あんな上手いくせして、ノーゴールとなったシーンとか、単なる親善試合で、あそこまで真剣にボールを追うってのがえらい。さすがブラジルの至宝。将来が末恐ろしい。
 そういや、彼にかぎらず、今回のブラジルは、フッキとかもちゃんと守備のために走り回っていたのが印象的だった。圧倒的な攻撃力を誇りつつ、守備の面でも献身的に守れるって、そりゃ最強じゃないか。もしもこのチームがこのまま成長をつづけたならば、W杯ブラジル大会での優勝はブラジル以外は考えられない気がする。
 そうそう、ネイマールといえば、対面{トイメン}にいたウッチーがさかんに彼を削っていた──そして一度は報復されていた──のがおもしろかった。俺はウッチー、ひさしぶりのスタメンにしては、けっこうよかったと思うんだけれど、ザッケローニや世間の評価はいまいちだったようで、前半だけで交替させられてしまったのは、ちょっと残念だった。でもまぁ、ライバルの酒井宏樹にもブラジルのレベルを体感させたいってのもあったんだろう。ならば寿人や秀人や高徳らにも感じさせてあげりゃいいのに……と思わずにはいられないけど。
 いやぁ、なんにしろ、日本代表、ひさしぶりの惨敗でした。まぁ、ここまで相手が強いと、ぐうの音も出ねぇ。
(Oct 17, 2012)