2010年5月のサッカー

Index

  1. 05/12 ● 鹿島0-1浦項 (AFCチャンピオンズリーグ・ラウンド16)
  2. 05/24 ● 日本0-2韓国
  3. 05/30 ● 日本1-2イングランド

鹿島アントラーズ0-1浦項スティーラーズ

AFCチャンピオンズリーグ/2010年5月12日(水)/カシマサッカースタジアム/BS朝日

 ああ、今年もまたこんなところで負けてしまうなんて、そんな殺生な。
 このところリーグ戦でも調子がいまいちだし、相手の浦項{ポハン}スティーラーズはディフェンディング・チャンピオンだというので、苦戦は必至かと思ってはいたんだった。でも、実際に負けてしまうと、喪失感がでかいこと……。
 まあ、0-1というスコアは悪くない。1失点は仕方ないところがあるので、結局はスコアレスに終わってしまったのが問題だった。
 やはり今年の課題(というか現時点での課題?)は得点力不足だ。マルキーニョスと興梠のツートップが不発に終わった場合に、途中出場で状況を打開できるスーパーサブ的な選手がいない。フェリペ・ガブリエルはどうにも頼りにならないし(僕がこれまでに見たブラジル人のうちで、もっとも下手な気がして仕方ないんだけれど……)、遠藤も大迫もまだまだ実力不足。きょうは野沢もまったく目立っていなかった。せめて本山が間にあっていればなぁ……。もしくは今年もダニーロがいてくれたらなら(なんだかんだいって、彼の存在はでかかった)。あぁ、ため息しか出てこない。
 なんにしろ、きょうはチームの出来が悪すぎた。序盤から全体的なバランスが悪く、ボールを挟んで二人の選手がお見合いをするような場面が何度もあったし、相手のプレッシャーも強くて、開始からしばらくはかなりの劣勢だった。
 でも、そこはホームゲームだけあって、そのままじゃ終わらない。徐々にこちらのペースとなって、30分くらいには形勢逆転、こちらが猛攻を仕掛ける時間帯がつづいた。ただ、攻め立てはするものの、あと一歩、フィニッシュでの精度を欠いて、得点には到らない。でもまあ、この調子で攻めつづけていれば、そのうちになんとかなるだろうと思っていたら、その直後だ。相手のスローインから、わずか1本のパスで、まさかの先制ゴールを許してしまう。あまりに唐突で、ええーっ、マジかよ?って感じだった。
 試合が終わったあとで、失点シーンを録画で何度か観直してみたけれど、やはりあれはないって。勘弁して欲しかった。自陣での相手スローインからブラジル人選手にドリブルを仕掛けられ──なぜマークがついていない?――、ペナルティエリアへのスルーパスを通されて、もうひとりのブラジル人に思いきりよく右足を振りぬかれて、ずどんって……。
 最後のところでクリアにいった篤人の足にあたって、ボールが跳ね上がってしまったのは不運だったけれど──あれがなければ曽ヶ端が止めていたような気もする──、それよりもシュートを打たれてしまったことのほうが問題だ。最後のところで守っていたのは岩政。そう、おとといワールドカップ本大会の日本代表に選ばれた岩政……。南アフリカであんな守備を披露した日には、国賊扱いだぞ。気をつけてくれないと。
 とにかく、結局この1点が決勝点となった。最後はなりふりかまわぬパワープレーで攻め立てたものの、守りを固めてカウンターを狙ってくる相手を崩しきれないまま、今季ACL初黒星を喫した。そしてこれが今大会のラストゲームとなった(僕がアントラーズが負けるのを見るのもこれが今季初)。ガンバもきのう負けて、Jリーグ勢はベスト16で全滅。今年の楽しみがいきなりひとつ減ってしまった。あぁ、ダメージでかい……。
(May 12, 2010)

日本0-2韓国

2010年5月24日(月)/埼玉スタジアム2002/テレビ朝日

 あぁ、ホームでの壮行試合で、韓国に0-2と完敗……。
 愚痴る前に、とりあえず岡田さんが最終的に選んだワールドカップ南アフリカ大会の日本代表23名を書き残しておく。

 GK:楢崎、川島、川口
 DF:中澤、闘莉王、駒野、岩政、今野、長友、内田
 MF:中村俊輔、稲本、遠藤、中村憲剛、松井、阿部、長谷部、本田
 FW:玉田、大久保、矢野、岡崎、森本

 川口、岩政、矢野がささやかなサプライズで、あとはまったく想定内の顔ぶれ。まあ、そのこと自体をいまさらどうこういっても仕方ない。
 それより、ぱっと見ての、まず一番に気になったのが、サイドバックのサブが駒野ひとりしかいないこと。W杯本戦ではきびしいサイドでのせめぎあいで、内田や長友がそうそうにイエロー2枚をもらうって展開は十分に考えられる。なのに彼らの代わりを務められるのは、駒野しかいない。それってどうなのよと思う。
 その点はセンターバックで中澤、闘莉王のバックアップが岩政ひとりしかいないのも一緒。こちらは今野と阿部がいるので、サイドバックに比べれば、まだつぶしがきくものの、正直なところ、ふたりともCBとして世界に通用するかという点では、はなはだ心もとない(それは岩政も同じだけれど)。
 中盤に関しては小笠原や小野が選ばれなかったのが残念なところだけれど、では選ばれたメンツに不足があるかといわれると、そんなことはないのでよしとする。ただし、FWの玉田、大久保、岡崎といったあたりは、中盤に下がってプレーするのを得意とする点で、かなりMFとかぶる。その点はあまり納得がいかない。
 とくに大久保。いまや彼に対する僕のイメージはFWではなくMFなので(使われ方にしたってそうだ)、FW枠で彼が選出されていることには、どうにも違和感を覚えずにはいられない。前回大会でゴールを決めている玉田、去年大活躍した岡崎はまだいい。でも、代表通算ゴールがわずか5点しかない大久保にいまさら岡田さんはなにを期待しているんだろう。べつに大久保が嫌いなわけではないんだけれど、特別結果を残しているのでもない彼が、ここまで重用される理由が僕にはわからない。きょうだってスタメンのチャンスを与えられながら、結局な結果を残せず終わっているわけだし(まあ動きはよかったけれど)。
 というような感じで、なんかすっきりとしない今回の代表だけれど、そのすっきりしなさ加減がもろに形になってしまったのが、この日の日韓戦だったと思う。
 なんたって内田、稲本、松井、玉田が調整中で欠場が決まっていたところへ、闘莉王までが足を痛めたかなんかで出られないってことになり。この状況で岡田さんが選んだ4バックが、なんと右から長友、中澤、阿部、今野だってんだから驚きだ。
 なにゆえこの局面で長友が右サイドバック? 左は今野? FC東京ならばいざ知らず、これは日本代表だよ? なのに、いくら故障者続出とはいえ、4バックで得意のポジションを守っているのが中澤しかいないってのはなんなのか(あと、この局面でなお出番のない岩政というのもなんなのか)。普通ありえないだろー、そんなんで韓国と戦うなんて。しかもW杯本番の3週間前だよ? この布陣だけでも、いかに岡田さんが血迷っているかわかる。
 中盤から前にしたって、長谷部、遠藤のダブル・ボランチはともかく、その前に俊輔、本田、大久保を並べて、岡崎のワントップって、この形が機能したの、観た記憶がないんだけれど。ほんと、僕には岡田ジャパンが4-2-3-1で結果を出せたイメージがとんとない。それだったらば、普通に4-4-2でやって欲しいと思わずにいられない。日本みたいにゴールへの意識の薄い国がFWの枚数減らしちゃいけないだろう。
 それでも岡田さんはワン・トップで戦う。点が取れなくて困っているのにFWの枚数を減らす。強豪相手にほとんどゴールを決めたことのない岡崎と、今季代表でノーゴールの大久保を併用する。でもってDFラインは急造もいいところとくる。もうわけがわからない。
 そんな監督の迷走ぶりは、選手たちのプレーにも少なからず影響していると思う。すっかり調子を落としている俊輔や遠藤は見る影もないし、おかげで期待の本田も下がってばかりで、得点に絡むようなプレーはまるでできない。長谷部や長友が持ち前の運動量で懸命に走りまわっても、パスをつなぐ先に選手がいない。ほんと、まったくチームとして機能していない。なんだこりゃって感じで、見ていてうんざりしてしまった。
 でもって試合は、前半早々にパク・チソンにさすが欧州仕込みという見事なミドル・シュートを決められて、後半のロスタイムには楢崎が相手のカウンターからの1対1を止めきれず、PKを取られて0-2で負けると。あぁ、やってらんねぇ。
 だいたい、負けている状況でまずは俊輔、つづいて本田という攻撃のキーマンを替えざるを得ないという時点で、いかにこのチームが上手くいっていないかわかろうってものだ。しかもそのふたりが下がって、森本と憲剛が入ってからのほうが、まだ内容がよかった気がするから救われない。遠藤を下げて駒野ってのもなんだかなぁ。そのほかの交替は大久保→矢野。使えるFWをすべて投入してみたところで、戦況には大差なし。
 ほんと、きょうの試合は、観ていてまるで勝てる気がしなかった。ホームで韓国とやって歯が立たないチームが、遠征先でイングランドやコートジボワールに勝てるとは思えない。もしやこのチームは、これから先1勝もできないまま、無残に散ることになるんでは……。いや、それ以前に、きょうみたいなサッカーをしていたら、1ゴールでも決められるのかさえあやしい気がしてきた。あぁ、日本代表の運命やいかに……。
(May 24, 2010)

日本1-2イングランド

2010年5月30日(日)/グラーツ(オーストリア)/NHK

 日本代表がイングランド相手に闘莉王のゴールで先制するも、後半にオウン・ゴールから2点を失って負けるという惜しい一戦。
 ワールドカップ本番まであと2試合というこの時期になって、岡田さんはチームに意外な修正を加えてきた。この試合、ゴールマウスを守るのはなんと川島。そしてキャプテンマークをつけるのは長谷部。彼と遠藤のコンビはそのままで、ボランチの底にはもうひとり、阿部を専守防衛のために起用、フォーメーションを4-1-4-1(岡田氏いわく4-1-2-3という話も)に変えてきた。
 ということでこの試合のスタメンはGK川島、DFが右から今野、中澤、闘莉王、長友、MF阿部、長谷部、遠藤、本田、大久保、FW岡崎という顔ぶれ。
 そうそう、韓国戦では右サイドに入っていた長友を、本来の左に戻したのも大きかった。やっぱ彼は左のほうがいい。どちらのサイドで使おうと今野は急造なのだから、それだったらばプロパーなサイドバックの長友は慣れ親しんだポジションで使うべきだ。
 ということで、右サイドが今野なのをのぞけば、ディフェンス・ラインは本来の形。右からのサイド攻撃こそ機能しないけれど、この形ならばそこそこ戦える。それに加えて、中盤の底で阿部ちゃんがいち早く危険を摘みとる役目を果たす。もともとボランチとして起用されていた長谷部、遠藤もそのままなのだから、ある意味トリプル・ボランチのようなもんだ。これならば強豪イングランドが相手でも、ある程度まで守りきれるのがわかったのは大きな成果だ。
 というかさ、本当ならば阿部みたいな選手は最初からいてしかるべきだったわけで。トルシエのときの戸田やオシムのときの鈴木啓太のように、ボランチに守備のために汗をかく選手を置くのは常套手段だろう。ところが岡田さんは長谷部、遠藤というどちらかというと攻撃力に比重のかかる選手を併用するのにこだわって、守備力が持ち味のボランチを使ってこなかった。
 それが大会2週間前のこの時期になって、ようやく現実に目覚めたらしい。遅すぎるぜっ。なぜそんなあたり前のこと、さっさとできないかなぁ……。惣流アスカ・ラングレーを呼んできて、岡田さんに向かって「あんたバカぁ?」と言わせたい。
 なんにしろ、そんなわけで阿部を起用したことでディフェンスが安定したこの試合、日本代表は僕の予想に反して意外な善戦をみせた。前半わずか7分に右CKから闘莉王が右足で見事な先制ゴールを決めたのも大きかった。ひさしぶりの先制点だ。しかも強豪のイングランドが相手の試合で──。これがチームを鼓舞しないはずがない。
 守ってはGKの川島が獅子奮迅の大活躍。ランパードのPKは止めるは──でもあの本田のハンドはないと思う──、ルーニーのシュートは止めるは、ほんとすごかった。後半途中まで1-0のままだったので、これはもしや大金星かと思わせたのだけれど、やっぱりそうは問屋が卸さない。
 後半も残り半分を切ってから、右サイドから上がったクロスを闘莉王がダイビングヘッドでクリアしようとして、自軍のゴールネットに突き刺すナイス・オウン・ゴール……。その10分後には、今度は反対側からのクロスを中澤がクリアしそこない、またもやオウン・ゴール……。わずか10分足らずで自滅的に逆転を許し、金星を逃してしまった。あぁ、もったいない。
 まあ、オウン・ゴールには不運な部分もあるけれど、どちらもフリーでクロスを上げさせてしまったこと自体が問題。後半途中からはかなりディフェンスが緩くなっていた証拠だ。もうひとつ、あわやというクロスに相手が2枚フリーであわせてきたシーンなんかもあったし、イングランドが本調子じゃないようなので助かったけれど、下手したらあと1、2点取られてもおかしくなかったと思う。
 あと、問題を感じたのは選手交替。途中から出てきたのは森本、松井、玉田の3人だけ(アウトは岡崎、大久保、遠藤)。で、結局、効果的な攻撃の底上げにはならなかった。せっかくのイングランド戦なんだから、もっと試すべき選手はいるだろうに、選手交替はそれで打ち止め(イングランドは6人も替えてきているのに)。とりあえずいい試合になっているので、下手にいじってバランスを壊したくないという守りの姿勢がありありだった。負けている試合で守りに入ってどうする。
 とにかく、きょうの試合は、内容は決して悪くなかったものの、満足したとは言いにくい──というか、言いたくない。守備的MFを一枚増やしてのぞんだ試合で、まんまと先制したにもかかわらず、逃げ切れずに逆転負けって時点で駄目だろう。
 それでもイングランド相手にそこそこの試合ができたのは確かなので、おそらくこの調子だと、本番もこの布陣をベースにして臨むことになるのではないかと思う。もしやこのままGKは川島──なんてことになると、それはそれで楢崎がかわいそうで、どうかと思ってしまう。そうそう、大事をとってこの試合をはずれた俊輔の起用法も難しそうだ。本番に向けて、いくらか期待が抱けるようになった一方で、新たな不安も芽生えた、そんな一戦だった。
 それにしてもイングランドはチームとしての調子はぜんぜんだったけれど、個々の能力の高さはさすがだった。ルーニー、ランパード、アシュリー・コール、テリー、ファーディナンドと、僕でさえ知っている名前がずらり(ジェラードはいないのかと思ったら後半から出てきた)。このチームは本番で調子を上げてからの試合がぜひ観たい。
(May 31, 2010)