2009年9月のサッカー
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オランダ3-0日本
2009年9月5日(土)/エンスヘーデ(オランダ)/テレビ朝日
およそ3ヶ月ぶりに観る日本代表の試合で、僕はまさかこれほど腹立たしい思いを味わうことになるとは思ってもみなかった。
いや、相手はオランダだ。FIFAランクは3位だそうだ。勝てないどころか、負けてあたり前だとは思う。世界的に見れば、どこからどう見たって順当な結果かもしれない。
でも、負けるにしたって、負け方ってものがある。とりあえず最善を尽くして力及ばず、力量の差をまざまざと見せつけられて負けましたってんならば、こんないやな気分を味わったりはしかなかったはずだ。
ところがこの日の日本代表はそうじゃなかった。日本代表は──というか岡田武史という人は──この試合で交替枠をたった2つしか使わなかった。対するオランダはGKを含めて5人が交替している。単純に総人数の差で考えれば、13-16なわけだ。ただでさえ実力差がある相手に、こんなに数的不利な状況で戦って、勝てるわけがない。そんな簡単な計算もできない人が監督をやっているという時点で、惨敗は当然。この調子では来年のW杯ではベスト4に入るどころか、予選グループ突破でさえ絶望的だと思った。
岡田さんはもしかして、この試合をW杯の予行だと考えていたのかもしれない。だから実戦に即して3枚以上のカードは使わないつもりだったのかもしれない。もしそうだとしたら、それはとんでもない間違いだ。これは親善試合なんだから。ルールはルールなんだから。替えられるところはきちんと替えて戦わないと。ただでさえ力が劣っている方が、出せる力を出しきらずに負けたんじゃ、わざわざ試合を組んでくれたオランダにだって失礼だ。次からのマッチメイクだって難しくなる。
とにかくこの試合、日本代表は前半から飛ばしまくりだった。素早いチェックで強豪オランダの攻撃の芽をみごとに摘みまくっていた。おかげで前半はスコアレスながら、やや押し気味な印象で終わったけれど、それにしたってこのペースが後半も通じて持つわけがない。こりゃ勝負は後半途中からだなと、素人の僕だってそう思って観ていた。後半になって疲れが出てきたところで、どれだけ効果的な選手交代をして、このペースを維持できるかが、勝負の分かれ目だなと思っていた。
そうしたら岡田さんは後半の開始と同時に動く。ワントップに起用していた玉田を下げ、本田を投入、岡崎をワントップに持ってきた。
もともとこの試合は、この形がスタメンじゃないかというのが、もっぱらの噂だった。なのに開けてみれば、スタメンはGKの川島を除けば、あとはとても見なれた顔ぶれ。篤人、中澤、闘莉王、長友の4バックに、長谷部、遠藤のダブル・ボランチ、その前に俊輔、憲剛、岡崎が並んで、玉田のワントップという形。おそらくこれが岡田さんの考える現時点でのベスト・メンバーなんだろう。でも、せっかくオランダでの試合なんだから、御当地で活躍している本田が俊輔や憲剛とどう絡んでみせるのか、最初から見てみたかったというのが正直なところだった。
でも、結局この本田が機能しない。前半を不本意な内容で終えたオランダは、後半に入ってからは確実にボール・タッチを増やしてきた。日本は前半のようにいい感じではボールを回せない。おかげでせっかく出てきた本田にも、まったくボールが渡らない。前半は1枚もなかったイエローカードを、日本が後半途中までに2枚もらっていることにも、内容の厳しさが如実に表れていると思う。
で、ついに後半が半分すぎたところで、日本の集中力にほころびが出る。オランダ7番のファン・ペルシの豪快なゴールにより、痛恨の先制点を許してしまう。善戦むなしく、疲労が出てきたところでの守備の破たん。ああ、またこういうパターンかよと思う。
でもまだ1点だ。こっからフレッシュな戦力を使って、死にもの狂いで攻めてみせてくれよって思っていると、なんだか知らないけれど、岡田さんは憲剛を下げて、興梠を入れてくる。なぜ? 憲剛、まだまだ元気じゃん(そのちょっと前に相手GKへの果敢なチャージでイエローをもらったりしていた)。彼はこの試合のキー・プレーヤーのひとりだ。すでにこの時間帯は、かなり連係が悪くなってきていて、ただでさえFWまでボールが回らないのに、よりによって憲剛に替えて興梠って……。中盤で潤滑油的な役割をしていた彼をはずしてどうする。とてもそんな選手交替が機能するとは思えない。
結局、日本はその交替の是非を問う間もなく、そのあとすぐにオランダの10番スナイデルに2点目を決められてしまう。この人、そこまではきっちりと抑えて、まったく仕事をさせてなかったんだけれどなぁ。ペナルティ・エリアの外から、中澤らのマークをものともせず、みごとなミドル・シュートを日本のゴールに突き刺さしてみせた。うーん、あそこであのシュート……。くぅ、これがワールド・クラスってもんですか。
これで完全に勝負ありだった。とにかく先制点を許してから先、日本にはいいところがひとつもなかった。でも岡田さんはそれ以上、選手を替えない。どう見てもチーム全体が疲れていて、中盤はスカスカになっているのに、まるで手を打たない。稲本だって、阿部だって、前田だっているのに、使おうとしない。意地でも一点返してひと泡ふかせてやろうという気概がまるで感じられない。僕にはそれがもう、腹立たしくて仕方なかった。
結局、残り5分を切ってからオランダに3点目を決められて、日本は前半の善戦なんてまったく嘘だったかのような惨敗を喫した。最後のゴールを決めたのが、途中出場したオランダの選手だったのが、なんとも象徴的だと思う。元気な強豪を相手に、弱者が疲れ切っていたんでは勝負になるわけがない。ああ、バカらしくてやってられない。
どんな試合であろうと、勝つために最善を尽くすのは、勝負の鉄則だ。それこそが世界標準ってものだろう。岡田さんはそんなあたり前のことさえ踏まえてくれていない。こんな人に日本代表を任せている現状に、僕は今夜、激しく憤っている。
(Sep 06, 2009)
日本4-3ガーナ
2009年9月9日(水)/ユトレヒト(オランダ)/TBS
なんだか前のオランダ戦とネガポジにあるような試合だった。前の試合は前半はよかったのに、後半の途中からガタガタと崩れた。今回は途中までは悲観的な内容だったのに、終盤になってまさかの大逆転で勝ってしまった。これだからサッカーはわからない。
オランダ戦との違い(その1)は、プレスがあまり過剰じゃなかったこと。やはりあの試合では相手が相手だけに気負いすぎた部分があったんだろうか。または中3日であれをやるのはきつかったのか。はたまた、ガーナがよかったせいで、思ったようにボールを奪わせてもらえなかったか。なんにせよ、今回は玉砕覚悟という感じではなかった分、最後まで疲労を感じさせなかった。
まあ、とはいってもこの試合は5人の選手が入れ替わっているのだから、疲労うんぬんに関しては、単純な比較ができない。2点目以降の怒涛のゴールラッシュ──わずか5分間で3ゴールを叩き込んでみせた──は選手交替があってからの話だ。ガーナは3日前にW杯予選の突破を決めたばかりで、どう考えたってモチベーションは低いだろうし──そんなシチュエーションでの対戦になってしまうあたりもついていない──、3-1という油断しやすいスコアから崩れたのも、さもありなん。そんなガーナ相手に5人を代えるくらいならば、オランダ戦であそこまでスタメンを引っぱって欲しくなかった。
オランダ戦との違い、その2はフォーメーション。この日は玉田に替えて前田を起用、岡崎との2トップに変えてきた。右サイドは篤人ではなく駒野。GKは都築(今回、楢崎は怪我のため不参加)。そして岩政はまたもや出場機会なし……。
結局、この遠征に参加したにもかかわらず、出場機会がなかったのは、彼と今野と橋本の3人だけだ。つまり今回のチームでいまだ代表キャップがないのは岩政だけということになる。中澤、闘莉王がともに失点に絡んでいるのに出番が回ってこないってのは、どんだけ信用がないんだろう。どうにも岩政の代表定着は遠い夢のような気がしてきた。ああ、むなしい。
ちなみにこの日の選手交替は長谷部→稲本、俊輔&前田→本田&玉田、岡崎→興梠、憲剛→阿部というもの。最後の2枚は逆転後のわずかな時間だから、ほとんど意味がない。興梠は2試合とも出場機会をもらいはしたけれど、こんな使われ方をしていたのでは力を出せずに、無駄にキャップを重ねるばかりだ。こちらも代表定着はむずかしそう。篤人もこの日は出番がなかったし、鹿島ファンとしては、なんとももどかしい試合だった。
オランダ戦との違い、その3は失点の形があまりに悪すぎたこと。あの試合の3失点はどれも相手があっぱれだったけれど、同じ3失点ながら、今回はこちらがあまりにお粗末だった。1点目のPK――CKからのディフェンスで長友がハンドをとられた──こそ不運だったけれど、2点目、3点目はともにロングボール一発で突破を許している。しかも最初は中澤、次は闘莉王がさらっと相手にかわされてしまった。日本が誇る最終ラインの要が、ふたりそろってあっさりと振り切られたのはショックがでかい。さらに3点目のときには果敢に止めに出た都築までがかわされ、無人のゴールへとシュートを蹴り込まれるというていたらく。めったに見れないような大逆転勝利にもかかわらず、いまいち気分が晴れないのは、2試合つづけての3失点に加えて、そんな風に失点の形があまりに悪かったからだ。
まあ、とはいってもこちらの4得点(!)も決して悪くなかった──というか、どれも素晴らしかった。決めたのは憲剛、玉田、岡崎、そして稲本。それぞれに持ち味の出た、いいゴールだった。
1点目は右サイドから攻め込み、左サイドのフリー・スペースへと流したボールを、そこへ走りこんできた憲剛が左足で決めたもの。2点目は長友がゴール・ライン付近で相手のミスから奪い返したボールを、途中出場の玉田が決めたもの(彼はああいう角度のないところからのシュートがうまい)。3点目は稲本(こちらも途中出場)があげたクロスを、DFラインの裏へと抜け出した岡崎がふわりとしたヘディングで流し込んだもの。最後のイナの決勝ゴールは2002年のW杯を思い出させるような勝負強さが際立つグラウンダーのミドル。彼はその前の岡崎の同点ゴールもアシストしているし、文句なくMVPもの……といいたいところだけれど、得点の場面以外はあまり目立てていなかった。
どちらかというと、僕個人がMVPをあげたいのは中村憲剛。今回の遠征での彼は、トップ下でプレーしていたこともあって、さかんに最終ラインの裏へと抜け出す動きを見せていた。この日はゴールを決めた場面以外にも、前半から積極的にシュートを打ちまくっていた(まあ、それをなぜ外すというシーンもあったけれど)。単にゴールへの意識が高いというだけではなく、本来のボランチのポジションまで下がっての汗かきプレーを怠らないのも偉い。試合後も率先して仲間たちに声をかけて歩いていたし、ほんと彼はいいやつだと思う。
いっぽう、俊輔は今回、出来がいまいちだった。らしくないパスミスが多かったし、どうにも下がり気味のプレーが多くて、セットプレー以外ではチームに得点をもたらしてくれそうなイメージがなかった。俊輔と交替でピッチに立った本田も、注目されたわりにはほとんど目立てなかった(彼をスタメンで使わない岡田さんにはとても不満)。
俊輔にしろ本田にしろ、得点に絡むプレーを期待されている彼らがいまいちだった分、果敢にゴールを目指して走りまくっていた憲剛のプレーがなおさら光ってみえたというのもあるかもしれない。いま現在、日本代表に欠かせない選手をひとりあげろと言われたら、僕はぜったい中村憲剛を選ぶ。オランダ戦惨敗の一番の原因は彼をさっさとベンチに下げたことじゃないかとさえ思う。
(Sep 10, 2009)
鹿島アントラーズ1-4名古屋グランパス
J1・第27節/2009年9月26日(土)/カシマスタジアム/BS1
アントラーズ戦で──しかもホームで──こんなに悲惨な試合を観たのはひさしぶりだった。このところ調子を落としているのはわかっていたけれど、この試合ではしばらく足を痛めてチームを離れていた本山が戻ってきたし、そろそろ調子も上向きになるころだろうから、ひさしぶりにすっきり勝ってみせてくれるんじゃないかと、少なからず期待を抱いていたのだった。そしたら、みごとな期待外れに終わってしまった。まいった。
この試合のスタメンは、GK曽ヶ端、DF篤人、岩政、大岩、新井場、MF青木、小笠原、本山、野沢、FW興梠、マルキーニョス。途中出場はダニーロ、中田浩二、大迫。
故障明けの本山の起用は当然として、オリヴェイラ監督は連敗を踏まえ、最終ラインにも手を入れて、伊野波を大岩に替えてきた。でも、結果が4失点では、その効果はほとんどないに等しい。そもそもフォーメーションがどうしたという前に、この試合はイージーミスが多すぎた。
1点目はケネディの高さに振り回されて、逆サイドのケアが甘くなった感じ。最初にそちらから打たれたシュートはソガがはじいて止めたものの、その跳ね返りをケネディに決められた。先にフリーでシュートを打たれたのも問題だったけれど、それよりもそのあとで、ケネディについていた岩政のマークが外れてしまったのが痛かった。
それにしてもケネディの高さはやっかいだ。彼を連れてきたことで、グランパスはJリーグに大いに貢献をしていると思う。あれだけの高さと戦えるというのは、世界を見据えたDFにとっては願ってもない経験だろうから。
なにはともあれ、その失点が開始からわずか6分。今年は先制点を許すと極端に勝率が低いそうで、これでまたかよという空気が流れた。
そしたら、それから10分もせずに、追い打ちをかけるように、曽ヶ端の信じられないようなミスが飛び出す。バックパスを受けた彼は、詰めてきた新外国人ブルザノビッチの前で、キックしようとしたボールを空振りするという痛恨のミスを犯す。で、転がったボールをブルザノビッチに奪われて、無人のゴールへと蹴り込まれてしまう。まさかの大失態。これで今日もダメだろうって空気になってしまった。
後半は後半で、セイフティ・リードでケネディがお役御免になったにもかかわらず、ロングボール1本で早々に3点目を献上してしまう。ゴール前にぽーんと蹴り込まれたボールに杉本恵太がジャンプして飛び込むと、彼の頭にあたって跳ね上がったボールは、見事なループシュートになって、こちらのゴールネットを揺らしてしまった。あまりのあっけなさに呆然とするようなゴールで0-3。
そのあと小笠原のFKから、マルキーニョスが意地のヘディングで1点を返し、一時的に追撃ムードが高まったものの、その後は追加点が奪えずじまい。逆に、のこり10分を切ってから篤人がヘディングでの横パスをブルザノビッチにプレゼントしてしまい、それをそのまま決められて、ついに4-1。ほんと、さんざんな内容でリーグ戦3連敗を喫した。青木いわく、彼が鹿島に入ってから一番悪いゲームだそうだ。
それにしてもソガと篤人のミスは、あまりにお粗末すぎた。先制点の場面ではディフェンスの詰めが甘かった。杉本のゴールだけは相手がラッキーだったと思うけれど、あれだって競りあった新井場がちゃんとケアできていれば防げた気がする(身長は新井場のほうが10センチ近く高いんだし)。とにかく失点のすべてに納得がゆかない、負けて当然という試合だった。唯一の救いは、故障明けの本山がけっこうよかったこと。彼が調子をあげてくれば、さすがにいまの状態がつづくことはないだろう。そうであって欲しい。
対する名古屋は、スタメンの顔ぶれがとてもふるっていた。最前線にケネディ、ブルザノビッチ、マギヌンと外国人が3人いるのに、最終ラインにはバヤリッツァの名前まである。外国人が4人って、そりゃなにごと?──とか思ったら、そうだった、ケネディはアジア枠なんだった。おまけに浦和から移籍してきた三都主アレクサンドロまでいる(この日のアレックスは意外やボランチでフル出場していた)。結果、フィールドプレーヤーのうち半分がカタカナ名という、Jリーグらしからぬ状態に。なんだかちょっとばかり、ずるい気がした。
この日の名古屋がさらにすごかったのは、4日後の川崎とのACL準決勝・第二戦を踏まえて、玉田、小川佳純、中村直志らの主力をスタメンから外してきたこと。それでもこれだけの戦力で戦える選手層の厚さにはおそれいった。そういえば楢崎をけがで欠いているのに、代理のGK広野がけっこうよかったし、なにげに田中隼磨とか吉田麻也とか巻の弟とかもいるしなぁ……。監督ピクシーのもと、これだけ充実した戦力があれば、いまの鹿島では負けても仕方ないかなと思ってしまった。
あぁ、下手をしたら次節でついに首位転落だ。
(Sep 27, 2009)