2009年5月のサッカー

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  1. 05/05 ○ 鹿島3-0水原三星 (AFCチャンピオンズリーグ)
  2. 05/19 △ 上海1-1鹿島 (AFCチャンピオンズリーグ)
  3. 05/27 ○ 日本4-0チリ (キリンカップ)
  4. 05/31 ○ 日本4-0ベルギー (キリンカップ)

鹿島アントラーズ3-0水原三星ブルーウィングス

AFCチャンピオンズリーグ/2009年5月5日(火)/カシマスタジアム/BS朝日

 やった~。アントラーズ、スウォン相手に4-1で負けた前回の雪辱を果たすの巻。
 この試合については、けっこう不安要素が多かった。マルキーニョスが先週のJリーグで足を痛めて万全じゃないところへきて(3日前のJは大事をとって欠場)、守備の要の岩政が怪我をしてベンチ外だという。予選リーグ突破をかけた大一番に、攻守ともに不安を抱えたまま臨むことになってしまったのは、なんとも心許なかった。
 ただ、体制が万全じゃないのは相手のスウォンも同じだったようで。あちらも前回の対戦でゴールを決めているブラジル人ストライカーのエドゥほか、主力を何人か欠いていたらしい。
 そういう状況でこちらのホームともなれば、韓国チャンピオンとはいえ、そんなに恐れることもなかったかと終わってみて思う。おまけにこちらの場合、岩政の穴には大岩という頼りになるベテランが控えているし、マルキーニョスが本調子ではない分は、ツートップでコンビを組む興梠が十分に補っていた。ベンチには故障明けの中田浩二(!)の名前もあった。連係不足の不安はあろうとも、技術的な面での駒不足の感は皆無。
 こういう状況になってみると、選手層が厚いってのは大事だなあとつくづく実感する。考えてみれば、開幕スタメンだったダニーロがいつの間にかいなくなっているのに(はてどうしたんだろう)、そのことのマイナスをまるで感じさせないんだからすごい。主力級のブラジル人を欠いていてなお、J1とACLグループリーグの両方でトップにいるだけでも、いかに鹿島の戦力が充実しているか、わかろうってものだ。
 この試合の勝利を引き寄せた貴重な先制点が大岩のゴールだったのも、見るからに本調子じゃないマルキーニョスがそのあとの2得点を上げてみせたのも、そんなチームとしての総合力の高さがあってこそ──そんな気にさせられる一戦だった。
 先制点は野沢の右ショートコーナーからの速いクロスを、ニアに飛び込んできた大岩がヘディングであわせて、ファーサイドへと流し込んだもの。見事な連係からの、すごくきれいな得点だった。
 反対に2点目のマルキのゴールは、かなり泥臭かった。誰か(オガサ?)がゴール前に無理やり放り込んだボールが、相手DFや興梠がさわれないような中途半端なバウンドでゴールの真正面にいたマルキーニョスにわたったものの、これをマルキもうまくヒットできずに、なんとかゴールに押し込みましたという感じ。見栄えはよくなかったけれど、かっこのよしあしはどうでもいい、決まったことがなによりと思わせる貴重な追加点だった。
 ダメ押しの3点目は後半。カウンターから興梠がひとりドリブルで持ち込んで、最後はDFふたりを引きつれたまま、フリーのマルキーニョスにラストパス。これをマルキが詰めてきていたGKイ・ウンジェの頭の上を越す浮き球のボレーシュートでゴールに放り込んだ。してやったりの1点だった。
 この日のマルキーニョスは、このほかにも3本も同じようなループ気味のシュートを打って、ことごとくゴールに嫌われていた。普段の運動量はなかったけれど、それでもあわやハットトリックという結果を残すあたりがさすが。まあ、それもこの試合では興梠のナイス・フォローあってこそだった。この日のMVPは興梠にあげたい。
 後半のオリヴェイラ采配はいつも通り。早々に篤人を新井場に代え、中頃に本山を増田に代え、残り5分ばかりとなってから興梠を大迫に代えて、無難に試合を締めてみせた。ということで、心配されたスウォン戦でしっかり結果を残し、グループ首位に立ってみせたアントラーズだった。
 これで2週間後の最終戦、アウェイでの上海との試合は、引き分けでも1位抜けが決まる。ただそうはいっても、その時点では上海もおそらく1位抜けの可能性を残しての対戦になるんだろうから、決して楽な試合にはならないのは必至。最後まで手の抜けないACL予選グループだった。ああ、たかがアジア、されどアジア。

 ――とか書いて一夜明けてみれば、その後の試合で上海がシンガポールAFと引き分けたので、あっけなくアントラーズの予選突破が決まってしまった。やってくれんなあ、シンガポール軍。ということで、2位スウォンに得失点差8の大差をつけているアントラーズは、次の上海戦でよほどの大敗を喫しない限り、1位抜けがほぼ確定という状況。とりあえず第一関門クリアって感じで、ほっとひと安心。
(May 05, 2009)

上海申花1-1鹿島アントラーズ

AFCチャンピオンズリーグ/2009年5月19日(火)/上海虹口スタジアム/BS朝日

 ACL、グループリーグの最終戦。
 この試合、よほどひどい負け方をしないかぎり、1位抜けはほぼ確定というアントラーズ。いっぽうの上海はいまだ勝ち抜けの可能性があるとはいっても、自力では無理。同時刻に行われている試合でスウォンが勝てばおしまい。でもってスウォンの対戦相手がシンガポールとなれば、すでに結果は出ているも同然。あとはホームでどれだけ意地を見せられるかって話で、モチベーションはそれほど高くないと思われる。
 ただ、こちらも日曜のJの試合からわずか2日しかたっていない。それで中国でのアウェイはさすがにきつい。相手は序盤からガンガンと厳しいプレスを仕掛けてきて、こちらに思うようなサッカーをさせてくれない。こりゃきびしい試合になるなあと思っていたら、開始10分もしないで、いきなりセットプレーから失点を許してしまった。見事なジャンピング・ボレーを決めたのは、マーク・ミリガンという若いオーストラリア代表のDF。あいたた。またオーストラリア人にやられてしまった。
 その後しばらくは、こちらのサッカーはなお低調。ツートップ(この日はマルキと興梠)にまるでボールが入らない。このままずるずるといきゃしないだろうなと不安になるような展開だった。けれど、そんな悪い流れも前半なかごろから徐々に改善し始める。そして前半30分には、本山が放り込んだ一本のクロスから、マルキーニョスの同点ゴールが生まれた。
 この場面では、本山のクロスが素晴らしかった。興梠からのバックパスを、トラップせずにダイレクトで素早く放り込んだのが、なによりのファイン・プレー。タイミングが早かったせいで、クリアしようとした相手DFがふたりともボールに届かず、その先にいたマルキーニョスにボールが渡る。でもってマルキもこれをどんぴしゃのヘディングでゴールへ突き刺してみせた。シュートが決まるまでの流れが、あっけないくらいスムーズだった。
 同点になればもうこちらのもの。その辺から先はだいたいのところ試合を支配していたし、アウェイなので若干の不安はあったけれど、この展開で大敗を喫することはまずないという流れだったので、あとは落ち着いて観ていられた。残りの心配は相手のラフプレーによる怪我だけ――なんて思っていたら、ああ、やはり。後半途中で興梠が、空中戦で競りあった相手に上からのしかかられて、鎖骨のあたりを痛めて途中退場してしまった。試合途中でベンチをあとにして医務室へ向かったようなので、もしかしたら骨折かと心配したのだけれど、どうやらそれは免れたみたいだ。ひと安心。
 興梠のことは残念だったけれど、その裏でひとつ朗報があった。この試合では、後半途中から、ひさしぶりに中田浩二のプレーが見られたのだった。3日前のレイソル戦でも途中出場したと聞いていたけれど、実際にリアルタイムでそのプレーを見ることができると、感慨もひとしお。まあ、とくに目立ってはいなかったけれど、それでも彼がプレーできる状態で控えているというのはとても心強い。
 そのほか、興梠の途中退場で大迫にもまとまった出番が回ってきたし(まだプレーが軽い感じがするけれど、やはり動きの質は高い)、田代もひさしぶりに出てきたし(でもこの人はあいかわらずだ)、後半は無得点に終わったものの、アントラーズ・ファンとしてはそれなりに見どころが多かった。
 ということで、ドローに終わりはしたものの、勝ち点1を積み上げた鹿島が無事、グループリーグの1位抜けを決めた一戦だった。めでたし、めでたし。
 裏では川崎フロンターレがホームで韓国のチームに負けて、グループ2位に転落。おかげで次の対戦相手がガンバ大阪に決まってしまった。あちゃー、これでJのチームがベスト16で確実にひとつ脱落してしまう。全チームそろってベスト8に残ってほしかったのになぁ。残念。
(May 20, 2009)

日本4-0チリ

キリンカップ/2009年5月27日(水)/長居スタジアム/TBS

 2ヶ月ぶりの試合だった日本代表、キリンカップの初戦。
 岡田ジャパンとしては、これまでで最高の内容だったと思う。まあ、無失点に抑えたのは相手のミスに助けられてという感じだったし、サイドバックの攻め上がりはほとんどなかったし、トップ下で起用された中村憲剛には、それは決めなきゃダメでしょう、というプレーがいくつかあったけれど、それでも南米の中堅国を相手にこのスコアならば文句なしだ。
 スタメンはGK楢崎、4バックが駒野、中澤、阿部、今野、ダブルボランチが長谷部と遠藤、トップ下に憲剛、3トップは本田、玉田、岡崎(もしくは玉田のワントップ)という顔ぶれだった。どうみたって、現状でのベストの布陣からはほど遠い。それなのにこんなにいい試合ができてしまうんだから、やはりサッカーはわからない。
 この日の先制点は岡崎で、本田が打った強烈なミドルシュートを相手GKがはじいたその先に駆け込んでフリーで決めたもの。
 この得点、こぼれ球にすばやく反応した岡崎も偉かったけれど、その前の本田のシュートに0.5点分の価値があった。オランダでの華々しい活躍にもかかわらず、これまで代表では結果が出せないでいた本田だけれど、この試合ではようやく持ち前の才能を発揮してみせた。当たり負けしない力強さと、つねにゴールを狙っている積極性がとても好印象。最後の最後にはみずからゴールも決めたし、今日の活躍ぶりは文句なしだった。
 つづく2点目も岡崎。でもって、そのアシストを決めたのが、なんと中澤。なぜだかトップ下の位置まで上がっていた彼が、見事なトラップから少ない手数ですばやく最終ラインの真ん中を抜くラストパスを蹴り込むと、そのパスに反応した岡崎がディフェンスを振り切り、堂々の2点目を決めてみせた。僕は、岡崎はまだまだ代表には早いと思っていたけれど、このところの代表での働きは素晴らしい。なんだか現時点でもっとも南アフリカに近い位置にいるFWは彼のような気がしてきた。
 この試合、さらに期待の若手が躍動する。前半の終わりごろには、足を痛めた玉田に代わって、浦和レッズの話題の18歳ルーキー、山田直樹が代表初出場を果たした。
 僕は彼のプレーを観るのはこれが初めてだったので、どうせまた若い子が大好きな岡田さんがひと目惚れして呼んできたけれど、香川と同じでまだA代表には早いんじゃないかと思っていたのだけれど、いやこの子が思いのほか、よかった。さすがにレッズでスタメンを張るだけのことはある。まだパスのスピードなんかは足りない印象だったけれど、サッカーセンスのよさはよくわかった。運動力も豊富そうだし、なんだか確かにすごそう。
 後半ロスタイムの本田の4点目は、そんな山田のアシストからだった。初出場でちゃんと得点に絡んでみせるんだから、やはり只者ではないらしい。見た目はまだまだ幼くて、でもそのぶん素直そうだし、この子はたしかに将来が楽しみだ。
 順番が前後してしまったけれど、ひとつ前の3点目は、中村憲剛の右CKに阿部がヘッドであわせたもの。阿部、あいかわらずヘディング強し。この試合は、闘莉王が足を痛めていて欠場、寺田も故障で招集されていないってんで、阿部に出番がまわってきたのだけれど、こういうチャンスでしっかりゴールに絡んでみせるんだから、やはりさすが。得点力抜群の闘莉王のバックアップとしては、かなりアピール度が高かった。
 そうそう、最後の10分ばかりだけれど、G大阪の山口も代表初キャップを刻んだ。彼の場合、ガンバでの経歴を考えると、いままで呼ばれなかったのが不思議なくらいなので、ようやく出るべき人が出たという軽い満足感があった。そのほかの途中出場は橋本、香川、矢野。あとのふたりは4点目のつなぎ役として得点に絡んでみせた。
 いや、それにしてもほんとに、この試合は全員が全員、とてもよかったと思う。プレスはしっかりしていたし、パスワークは決まっていたし、本田、岡崎、山田といった若い子たちのプレーからは、ゴールに対する積極性がひしひしと伝わってきた。こんなに気持ちいい代表戦を観たのはひさしぶりだ。この調子でこれからの一ヶ月を突っ走ってくれれば嬉しい。
(May 28, 2009)

日本4-0ベルギー

キリンカップ/2009年5月31日(日)/国立競技場/日本テレビ

 準レギュラーの調整試合といった印象が強かった前の試合とはちがって、俊輔や闘莉王がスタメンに名を連ねたこの日の試合で、個人的にもっとも意外だったのは、中村憲剛のスタメン起用だった。
 僕は中村憲剛のトップ下での起用は、俊輔のオプションだと思っていた。俊輔が使えない状況になったときのバックアップとして憲剛を準備しているのだろうと。
 ところが岡田さんはこの試合でそのふたりを同時に先発で起用してきた。しかも憲剛のポジションは前の試合と同様、トップ下。でもって前の試合で活躍した本田をベンチに下げて、俊輔には大久保、岡崎とトリオを組んで3トップの一角を担わせると。こりゃ意外もいいところだった。俊輔、遠藤、憲剛の併用なんて、想像だにしなかった。
 最終ラインには闘莉王とともに、前回、虫垂炎のためにチームを離れていた長友が復帰。さらになぜ外されていたのかわからなかった内田篤人も戻ってきた(アントラーズでの過密日程による疲労への配慮でしょうか)。でもって、この4バックの前に遠藤、長谷部のダブル・ボランチが控えるってんだから、これがおそらく現時点での日本代表にとってのベスト・メンバーということになる(あと当然GKは楢崎)。
 じつは前回、あまり長文にしたくなかったので、はしょってしまったけれど、僕は中盤の底で抜群の安定感を発揮していた長谷部のプレーを観て、非常に感銘を受けたんだった。すげーじゃねーかと。ブンデス・リーガの優勝チームに所属しているのはだてじゃないなと。
 そんな長谷部とともに、俊輔と遠藤、そして中村憲剛が一緒にプレーするってんだから、中盤の構成力としては最強だ。これこそジーコのころによく言われた「黄金の中盤」という言葉にふさわしいオールスター・キャストに思える。
 でもって、サブとして阿部や今野といったユーティリティ・プレーヤーを重用している点では、オシム流な部分もある。そもそも岡田流「黄金の中盤」を構成するMFたちだって、みんな攻守のバランスに優れたプレーヤーばかりだ。誰もがいざというときには攻撃の起点となれるし、守備のために走り回れる。
 そう考えると、なんだか岡田さんは、これまでのジーコやオシムさんがやろうとしていたことを、自分なりの方法できっちりと形にしているような気がする。それがこのキリン杯での見事な結果につながっているとしたら、もしかしてこの人は侮れないのかもしれない。
 いやほんと、この試合での日本の序盤の猛攻はすさまじかった。なかなか得点にこそつながらなかったけれど、こんなに多彩な攻撃ができるならば、ゴールが決まるのも時間の問題だろうと思わせた。そんな風に思わせるだけでもいつもと違う。
 で、そのとおり、前半21分には左サイドの角度のないところから、長友の先制ゴールが決まる。そのわずか2分後には、そのゴールの起点となった憲剛が、見事な切り返しで相手DFをはずして、自ら決める。あっという間に2-0。つえぇ。なんでこんなに強いんだ、日本代表。
 まあ、そのゴールのあとはペースが落ちて、いまいちしゃきっとしない内容になってしまったけれど(闘莉王のミスからGKが一対一になるピンチを招くなんてシーンもあった)、それでも俊輔と長谷部を下げた後半にさらに2点を奪って、2試合つづけて4-0というスコアでキリンカップを制してみせたんだから、文句のつけようがない。個人的に残念だったのは、後半途中から出番をもらった興梠が、あまり目立てなかったことくらい。
 ちなみにこの日の途中出場は本田、橋本、阿部、興梠、矢野、山口の6人で、これらの交替カードをすべて切ったあとで、大久保が足を痛めて退場、残り10分を10人で戦うなんてハプニングもあった。それでも無失点で難なく試合を締めてしまうんだから、あっぱれだ。
 そういえば後半の2ゴールが、どちらもFWの得点だってのも、見逃せない(決めたのは岡崎と矢野)。先制点がDF、追加点がMF、そしてダメ押しがFWと、全ポジションそろい踏み。とても決定力不足が代名詞のようになっていた日本代表と同じチームとは思えない。なんでこんなに得点力があるんだ? いったいどうしちゃったんだろう。あまりに出来すぎで、素直にこの変化が信じられない。なにか落とし穴があるんじゃないかとか疑いたくなる。まあ、相手のベルギーは主力がほとんどいなかったらしいし、あちらは中1日というシビアな日程を強いられているわけで、こうなって当然という結果なのかもしれないけれど。
 なんにせよ、キリンカップでここまで完璧な優勝を果たした日本代表を見るのは初めてだった。次はいよいよワールドカップ最終予選の突破がかかったアウェイのウズベキスタン戦。その試合でも引きつづきこういう素晴らしいサッカーが見せてもらえれば嬉しい。
(May 31, 2009)