2007年12月のサッカー

Index

  1. 12/01 ○ 鹿島3-0清水 (J1・第34節)
  2. 12/13   浦和0-1ACミラン (クラブワールドカップ・準決勝)
  3. 12/22 ○ 鹿島1-0ホンダFC (天皇杯・準々決勝)
  4. 12/29 ○ 川崎0-1鹿島 (天皇杯・準決勝)

鹿島アントラーズ3-0清水エスパルス

J1・第34節/2007年12月1日(土)/カシマスタジアム/BS1

 鹿島アントラーズ、まさかのJ1逆転優勝で十冠達成……。しばし呆然。
 こんなことになるなんて、僕は想像だにしていなかった。2ヶ月前の時点で優勝はもうないと思っていた。いくら可能性があると言ったって、アントラーズがひとつでも負ければおしまいなわけだし。もしくはレッズがあとひとつ勝っていればおしまいだったわけで。それがまさか、最後の最後でアントラーズがJリーグ新記録となる9連勝を達成するは、一方でレッズが最後の5節を0勝2敗3分なんて成績で終えるは……。こんな結末、いったい誰に想像できただろう? 残り5試合を残した頃だったか、小笠原か岩政が「残りはすべて勝ちます」とか言っていたけれど、まさか本当に成し遂げてくれちゃうなんて、思ってもみなかった。
 まあ、アントラーズの9連勝はともかく、レッズがここまでの不調に陥るというのは、あまりに意外だった。totoのデータを見れば、今節の浦和レッズ対横浜FC戦は、レッズの勝ちに賭けた人が81.4%だ。つまり日本中のtoto購入者のうち、8割以上の人がレッズの優勝を信じていたことになる。いちおう僕は残り2割のうちに含まれるわけだけれど、それにしたって賭けたのはレッズの引き分けだったし、それだって希望的観測ってもので、まさかレッズが負けるとは思っても見なかった……。
 うーん、こんなことってあるのかい?
 試合が終わってからしばらくのあいだ、僕の頭の中では、ストリート・スライダーズの 『のら犬にさえなれない』 の中の、そんなフレーズがリピートしまくっていた。
 なんにしろ、最終節で大逆転して、鹿島アントラーズの6年ぶりのリーグ優勝が決まった。日本代表のいないチームが日本一に輝くのは初めてだという話があるようだけれど、最終節まで一度も一位になったことがないチームが優勝するなんてのも、初めてなんじゃないかと思う。いずれにせよ、勝ち星の数22は文句なしにリーグ1だ。もしもこの日の試合で浦和が勝ったとしたところで抜かれないんだから、胸をはって威張れる。よくもまあ、あの序盤の低迷からここまで這い上がってくれたものだと思う。
 ちなみに今回の優勝に関して、僕にはひとりだけ気の毒だなあと思っている人がいる。それが新井場。
 彼が04年に移籍してきて以来、アントラーズはすっかり優勝と縁遠くなっていた。その一方で、それまで彼が所属していたガンバ大阪は、彼がいなくなってから突然強くなり、いまや押しも押されぬ強豪チームへと変貌を遂げている。その点だけを見ると、まるで新井場は貧乏神のようだ。勝ち運がない人というのがいるけれど、新井場という人はまさにそういう存在なんじゃないかと思う。
 そんな彼にもようやく優勝の喜びを味わう日がやってきた──と思ったらば、その大事な試合で出場停止ときた。ラッドウィンプスの歌じゃないけれど、どんだけ運が悪いんだろう。ここまでついてないと、もしかして優勝できたのは、彼が出場停止を食らったおかげじゃないかという気さえしてくる。このままじゃあまりに気の毒だから、そんな不憫な新井場くんのためにも、今年はいっそのこと天皇杯も制して、2冠を達成して終わって欲しいと思う。
 あ、あとひとつ残念なことがあるとしたら、それはこの優勝をオシムに見てもらえなかったこと。自らが日本代表に選んだ選手がほとんどいないアントラーズの優勝を御大がどのように受け止め、その後の代表招集にどういう影響が出たか、見てみたかった。いまとなると叶わぬ夢になってしまったようで悲しいけれど……。いまは鹿島の優勝を祝う一方で、オシム先生の一日も早い回復を願ってやみません。
 さて、最後にこの試合についてざっと。
 スタメンは新井場のポジションにルーキーの石神を入れた以外は前節と一緒。対する清水はチョ・ジェジンが不在のところ、五輪代表の岡崎が思いがけない存在感を発揮したりしていて、なかなか{あなど}れなかった。結果的にスコアこそ開いたけれど、内容的にはけっこうきびしい試合だったと思う。とくに序盤は圧倒的に清水優勢だったし。それでも前半なかばにマルキーニョスがラッキーなPKをもらって、これを小笠原が決めて先制したことで、かなり楽になった。
 その後の2得点は後半の早い時間で、本山のミドルとマルキーニョス。この二人の活躍も今年のポイントだろう。とくに本山は今年、全試合出場を成し遂げたのだそうで、それはあっぱれ。通年でわずか2得点というのはさびしいけれど、まあその分、守備の意識も高くなり、運動量も豊富だったし、今年は背番号10に値する存在感を示してくれたと思う。
 それにしても試合が終了した途端に──まだレッズの試合が終わってもいないのに──、率先してピッチに駆け出して、大喜びしていたオリヴェイラ監督はおかしかった。この人、本当にいい人だと思う。今年はほんと、いい指揮官に恵まれて、幸運だった。
 最後に、見事レッズに勝ってくれた横浜FCに感謝を。特に決勝ゴールのお膳立てをしてくれたカズ、素晴らしいアシストをありがとう~。
(Dec 01, 2007)

浦和レッズ0-1ACミラン

FIFAクラブワールドカップ/2007年12月13日(木)/横浜国際総合競技場/日本テレビ

 なんだか11月からレッズの試合ばかり観ていて、サポーターでもない身としては、ちょっとばかり食傷気味だったりするのだけれど、それでも一応、Jリーグのチームがヨーロッパ・チャンピオンに挑むというのだから、どの程度通用するのか、観ておくべきなんだろうと思って、テレビに向かった一戦。
 それにしてもさすが、欧州チャンピオンズリーグのチャンピオン・チーム。W杯のとき以外はまったく海外のサッカーを観ない僕さえ知っている名前がスタメンにあふれいる。カカ、セードルフ、ピルロ、ガットゥーゾ、ネスタ、ジダ、ジェラルディーノ……。でもってマルディーニ、インザーギ、カフーらがベンチに控えているんだから、恐れいる。
 それに対してレッズは攻撃の核、ポンテを故障で欠いてしまっている。ただでさえ得点力不足の昨今、彼の欠場は致命的。おまけに小野や田中達也も使えない――もしくはオジェックが使わない?――なんてんじゃ、残念ながら最初から勝負は見えていた。
 それでもJリーグ一の守備力を誇るレッズだ。勝てないまでもなんとか90分をスコアレスでしのいで、延長戦に持ち込んで見せてくれやしないかと。そして120分間戦って疲れ切ったミランが、決勝戦で負けて、「われわれはボカと戦う前からレッズにやられていたんだ」と──そう、『あしたのジョー』 でカーロス・リベラのマネージャーが、ホセ・メンドーサに負けたのは矢吹ジョーとの対戦ですでに壊されていたせいだと言ったように──、言ってくれやしないかと期待していたのだけれど……。
 でもやはりそんな夢は叶わず──やはりヨーロッパの壁は高かった。レッズは非常にがんばっていたし、部分部分では世界となんとか張りあえる感触もあったと思うけれど、それでもミランには終始、勝ってあたりまえという余裕が感じられた。
 決勝点はカカのアシストによる、セードルフのダイレクト・ボレー。僕の知っているセードルフはスキンヘッドなんかじゃなかったのに……。あんな頭であんな綺麗なシュートを決めるとは、さすが10番。そしてそれをアシストした今シーズンのバロンドール、カカもやはりあっぱれ。この人、子供みたいな可愛い顔をしているくせに、身長が186センチもあるそうだ。才能と身体能力、両方に恵まれているこんな選手は、日本じゃとんとお目にかかれない。うーん、世界は遠い……。
 それでも来年はこの舞台にアントラーズが立てると思うと(勝手に決めている)、捕らぬタヌキと知りつつも、ちょっぴりドキドキしてしまう。あくまで期待と不安、半々で──そんなクラブワールドカップだった。
(Dec 14, 2007)

鹿島アントラーズ1-0ホンダFC(延長)

天皇杯・準々決勝/2007年12月22日(土)/ユアテックスタジアム仙台/BS1

 J1での劇的な逆転優勝から3週間。天皇杯・準々決勝でのアントラーズの対戦相手はJ1でもJ2でもなく、JFLのホンダFCだった。こちらはJ1王者で、相手はJFL5位。階級にして2ランク下の中堅チームだ。鹿島にとっては勝ってあたりまえ、負けたら大恥という組み合わせ。それでも相手はここまでJ2準優勝の東京ベルディ、J1の柏、名古屋というあたりを破ってきている。なんだか嫌な展開だった。手のうちがわからない分、ある意味じゃJ1のチームよりも戦いにくかろう。
 でもって、試合はやはり難しい展開になる。ホンダの豊富な運動量をベースにした組織的なディフェンスに苦しめられる一方、こちらは現状のベストメンバーで臨んだにもかかわらず、ミスが多くてボールが思うようにつながらない。このチームが本当にJ1で優勝したんだろうかと、ちょっと{いぶか}ってしまうような内容だった。クラブW杯での浦和とミランに比べると、この試合の両チームのあいだの差は、それほどのたいしたものじゃなかったと思う。トップリーグの優勝チームが2階級下の相手にこれぐらいてこずってしまうようでは、日本のサッカーもまだまだな気がした。
 それでも、後半残りわずかでホンダのボランチの選手が2枚目のイエローをもらって退場したところからは、プロとアマの違いが如実に出た。それまで必死に戦ってきたホンダだったけれど、この退場劇以降はまったく勢いがなくなる。やはり数的に不利な状況でJ1のチームに張り合えるだけの力はなかった。延長戦では足がつる選手が何人もいたのには、それまでにどれだけ全力を尽くしてプレーしていたかが伝わってきた。それと比べると、鹿島は最後まで余裕があった。
 ちなみにこの試合、テレビではキックオフが2時間早かったG大阪-清水戦のあとに続けて放送される予定だったため、そちらが延長に入ってしまったせいで、最初の30分が放送されなかった。なんだよ、今日の試合は60分しか観られないのかと思ったらば、試合はスコアレスのまま延長戦へ。結局、ちゃんと90分、観ることができてしまって、得したような、損したような……なんとなく複雑な気分だった。
 延長後半になってようやく決まった決勝点は、本山のスルーパスを興梠がヒールでワンタッチして、最後は柳沢が落ち着いて決めたもの。このシーンは流れがスムーズで、ほんとに素晴らしかった。これを90分で見せてくれていればねぇ……。ま、それでも柳沢、興梠という優れた選手らがサブに控えている選手層の厚さは頼もしい。柳沢がサブに甘んじる現状を不満に思い、移籍を志願しているという話もあるので、来期には不安が残るけれど。
 なんにしろ、そんなわけで思わぬ伏兵をなんとか退け、今年もアントラーズは準決勝に駒を進めた。毎年毎年、年の瀬のこの時期に最後までサッカーを楽しませてくれるチームには感謝してます。
 今年最後の対戦相手は、J1の開幕戦でも戦った川崎フロンターレ。相手にとって不足なし(なさ過ぎるくらい)。会場が国立なので、天気がよかったらば、一年の締めに観に行こうかと思っている。あいにく、週間天気予報は、曇りときどき雨だったりしますが。
(Dec 24, 2007)

川崎フロンターレ0-1鹿島アントラーズ

天皇杯・準決勝/2007年12月29日(土)/国立競技場

天皇杯PHOTO 川崎側スタンド

 心配していた雨が午前中の早いうちにあがったので、あいにくの曇天ではありますが、行ってまいりました、国立競技場の天皇杯準決勝、川崎フロンターレ戦。テレビ放送があるのに生観戦するというのは、ちょっと贅沢な気はしたけれど、07年最後の試合だし、とりあえずJ1優勝記念ということで、観にゆくことにしました。
 スタメンはこのところずっと一緒で、曽ヶ端、内田、岩政、大岩、新井場、青木、小笠原、本山、野沢、田代、マルキーニョスの11人。田代はここ1月ばかり無得点だし、僕としては移籍を希望しているという柳沢にスタメンのチャンスをあげたいところなのだけれど、監督は勝っているときにはチームをいじらないという定石を外すことのないオリヴェイラさん。この試合でも選んだ先発メンバーは、やはりいつもの顔ぶれだった。
 対するフロンターレは、谷口が出場停止ながら、今期限りでの退団が決定しているマギヌンが故障から復帰。今年のJ1得点王、ジュニーニョはあいかわらず存在感のあるプレーを見せているし、中村憲剛のパスセンスのよさも変わらない。ことチャンスメイクの数ではあちらの方が断然、上だった。ただ、ひやひやする場面こそあれ、相手のシュートが枠を外していたり、曽ヶ端が冷静に処理できるコースだったりで、大事には至らない。ゴールマウスを死守する曽ヶ端の落ち着いたプレーはとても頼もしかった。
 中村憲剛は敵ながらあっぱれで、この試合でも何度となく見事なパスを通したり、自らシュートを放ったりと、存分に活躍していた。彼については今年一年、日本代表でもっとも応援していた選手だったから、この試合を見ていても、その切れのよいプレーについ反応して、「ナイスパス!」とか言ってしまっている僕がいた。そのたびに、あ、ちがった、今日は彼は敵だったんだっけと、苦笑いすることに……。ほんと彼とジュニーニョについては、敵にしておくのが惜しい。願わくば鹿島に横取りしちゃいたい。
 ゴール裏から生で観ていておもしろかったのが、川崎の強力な攻撃陣を押さえ込むために、鹿島がマンツーマンで守備に当たっているのがよくわかったこと。ジュニーニョやチョン・テセ(鄭大世)に岩政や青木がべったりと張りついているシーンが何度も見られた。マンツーマン・ディフェンスでというのは監督からの指示だったそうだけれど、ただ、マークはかなり流動的で、そのへんは選手が主体的に行っていたとのことだった。こういうところ、特に守備的な部分は、テレビではなかなかわからない、生観戦ならではの醍醐味だと思う。まあ、地味な醍醐味ではありますが。
 とにかく試合はフロンターレの攻撃力とアントラーズの守備力ががっぷり四つに組んだ様相で、後半のなかばまでスコアレスのままだった。こうなると勝負は先に1点取ったほうの勝ちかなと思えてきた後半の27分。本山がやってくれました。値千金の決勝ゴール!

天皇杯PHOTO 鹿島側スタンド

 曽ヶ端がセットプレーから蹴りこんだロングボールを、田代が空中戦で競り勝って敵陣へ流し込む。これを箕輪がヘディングでクリアしようとしてミスし、ボールは浮き球となってゴール前にふわりとあがった。そこに駆け込んできたのが本山。彼はそのボールが落ちてきたところをダイレクトで捕らえ、見事なボレー・シュートを川崎のゴールネットに突き刺してみせた。曽ヶ端のキックからゴールが決まるまで、10秒もかかっていないんじゃないだろうか。まさに電光石火の先制ゴールだった。
 この日の本山はこのゴールの場面に限らず、前半から積極的にシュートを打っていたし、とても好印象だった。あっぱれ。
 なにはともあれ、こうなればあとはもう逃げ切るだけだ。ということで、最後の10分くらいは、攻撃なんかはまるで考えていないといった感じで、ただひたすら守り切って、元日決勝へのチケットを手にしたアントラーズだった。個人的にはもう少し攻撃的なところを見たかったのだけれど、まあ、結果オーライ。これで5年ぶりに元日に大好きなチームのサッカーがみられることになったのだから、文句を言ったらば罰があたる。
 それにしても、決勝の相手がガンバ大阪ではなく、サンフレッチェ広島に決まったのは、この日のtotoゴール2で、広島のゴール数を0と予想していた僕としては、予想外もいいところだった。しかもG大阪-広島戦で、佐藤寿人の先制ゴールが決まったのは、キックオフから30秒足らずのこと。totoゴール2には2等はないから、つまり今年最後の僕の toto は、わずか30秒で終わってしまったわけだ。あまりに早すぎて、われながら笑ってしまった。
 なんにしろ決勝戦の相手はサンフレッチェ広島。来期のJ2降格が決まってしまったことへの名誉挽回で、このタイトルへの意欲は高いかもしれないけれど、ガンバよりはまだ{くみ}しやすい。しかもウェズレイはすでに退団しているそうだし、柏木は出場停止だという。鹿島にとっての11個めのタイトルは、すぐにでも手の届くところにありそうだ。
(Dec 30, 2007)