2007年9月のサッカー

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  1. 09/07 ▲ オーストリア0-0日本(PK4-3)
  2. 09/08 △ U-22サウジアラビア0-0U-22日本 (五輪最終予選)
  3. 09/11 ○ スイス3-4日本
  4. 09/11 ○ 日本1-0カタール (五輪最終予選)

オーストリア0-0日本(PK4-3)

2007年9月7日(金)/クラーゲンフルト(オーストリア)/TBS(録画)

 オシム・ジャパン初のヨーロッパ遠征──ということで、今回は海外組の誰が招集されるのか注目されたのだけれど、結局、呼ばれたのは、俊輔、稲本、松井の三人のみ。御当地オーストリアでプレーしているアレックスと宮本には声がかからなかった。
 宮本はともかく、アレックスはちょっと意外だ。ここで呼ばずに、いつ呼ぶんだという気がする。もしやオシムは、左サイドは駒野で固定というつもりなんだろうか。アレックスが日本にいるあいだは、あんなに重用していたくせに、いざ海外移籍したとたんに、見向きもしなくなるオシムの姿勢には、ちょっとばかり疑問をおぼえる。
 国内組はアジアカップの時のメンバーを中心に、田中達也や山瀬が加わったくらいで、あとは微調整という感じ。巻、羽生、山岸らのジェフ千葉勢はふたたび代表に返り咲いた。ただし、阿部は腰痛のため、代表辞退。この日の稲本のスタメンは、彼がいなかったせいじゃないかと思う。阿部には悪いけれど、おかげでちょっと興味が増した。
 この日のスタメンは川口、加地、中澤、闘莉王、駒野、鈴木啓太、稲本、俊輔、遠藤、田中達也、矢野という顔ぶれ。
 このなかで一番の注目は、やはり稲本。前回の招集時には、慣れないトップ下のポジションを任されて、十分に力を発揮できなかった彼が、本職のボランチでどれだけその実力を証明してみせるか。日本代表でもっともレギュラー争いの激しいポジションだけに、今年はブンデスリーガで主力として活躍する稲本が、その実力を見せつけてくれるかどうかには、おおいに注目していた。
 でも、残念ながらアピール度はいまひとつだったと思う。日本人選手らしからぬハードなスライディング・タックルで何度も相手ボールを奪ってみせたのには感心したけれど、そうした目立つプレー以外には、それほど存在感がなかった。個人的には、彼と交替で途中出場した中村憲剛のほうがよっぽどよかったと思う。
 とにかく中村憲剛の球離れのよいボールさばきと、徹底したパス&ムーブの姿勢は、観ていて本当に気持ちがいい。この日は彼が出てくるまでが停滞気味だったから、なおさらそう思った。中村憲剛が出てからは、チームのリズムがずいぶんと変わった。まあ、同時に入った松井の貢献もあったのかもしれないけれど、僕は中村の貢献度のほうが、はるかに大きかったと思う。いま、一番好きな日本代表の選手は、と問われたら、僕は絶対に彼の名前をあげる。
 そんな中村憲剛にベンチを温めさせる以上、中盤の選手たちには、彼以上のプレーを見せてもらわないことには、納得がゆかない。中盤のストッパー役としてオシムの信任厚く、すっかりアンタッチャブルな存在になってしまった鈴木啓太がいる以上、もうひとりのボランチには、もっと攻撃的な姿勢をはっきりと見せてもらわないと。
 この試合での稲本は、個人としてのいいプレーはあったものの、チームへの貢献という意味では、まだまだ足りない印象があった。ボールを持った時には、さすがヨーロッパ仕込みと思わせるすごみを見せるものの、その反面、消えている時間も多かった。
 これは途中出場だった松井も同じ。果敢なドリブル突破は魅力的だったけれど、そうした個人技以外の面でのチームへのプラスアルファはあまり感じなかった。二人とも、もっと運動量を増やして、コンスタントにボールに触るようにしないと、流動的ないまのチームには貢献できないんじゃないだろうか。守備の場面において、ボランチの稲本や途中出場の松井よりも、俊輔の方が目立っているようじゃ、しょうがないだろう。
 なんにしろ、試合自体もスコアレスに終わってしまい、海外組のプレーにもチーム全体のパフォーマンスにも、やや消化不良な感が残った一戦だった。
 ちなみにこの試合は単なる親善試合ではなくて、三大陸トーナメントとかいうイベントだそうで、勝敗を決するために延長戦なしのPK戦があった。放送時間は早朝3時からだったので、当然観戦は録画。慎重を期して録画時間を延長しておいて助かった。まあ、そのPK戦では、俊輔、遠藤、憲剛、今野、中澤の五人が蹴って、最後の二人が外して負けたんだけれど。どうにもオシムはジーコと違って、勝ち運がない気がする。
 対戦相手のオーストリアは、来年開催されるヨーロッパ選手権の開催国で、なおかつ、ここ数試合は勝ち星がないとかで、日本ごときに負けられるかとばかりに、序盤から気合いの入ったプレーを見せていた。観客もさすがヨーロッパで、バックラインでボールを回したりしていると、容赦なくブーイングが巻き起こる。ああいう環境だと、バックラインでだらだらボール回しをしたりもしていられないだろう。観客が試合を作るという面もあるんだなあと、あらためて教えられた気がする。なんにしろ、横パスだらけのいまの日本代表にとっては、アウェイの戦いを満喫する上で、うってつけの対戦相手だった。
(Sep 08, 2007)

U-22サウジアラビア0-0U-22日本

オリンピック最終予選/2007年9月8日(土)/ ダンマン(サウジアラビア)/BS1(録画)

 オリンピック出場へ向けての最初の難関、グループ最強の敵、サウジアラビアとのアウェイでの一戦。
 この試合での個人的な一番の驚きは、内田篤人のスタメン起用だった。このチームは3バックが基本だし、右サイドウィングには水野という、攻撃の格となる選手がいるので、右サイドバックのスペシャリストである内田は、招集こそされてはいるものの、よほどのことがない限り、出番はないものだと思っていた。
 ところが反町さんはこの試合で、その内田を右サイドウィングで起用してきた。なんとしても負けだけは避けたいアウェイでの一戦ということで、守備力を重視した結果なんだろう。攻撃力のある水野はひとつ前に上げて、家長と二人でトップ下に配置。デカモリシこと森島康仁の1トップに2シャドーという形をとった。
 ということで、スタメンはGK山本に、青山直、伊野波、水本の3バック、2ボランチが本田拓也に梶山、右サイドが内田、左が本田圭佑、あとは前述の三人という顔ぶれだった。フォーメーションは3-6-1。
 あえて平山を外して森島の1トップを選んだのも、内田の起用と同様、アウェイならではの守備力重視の結果だと思う。森島は運動量が多くて、前線でのディフェンスでの貢献度が大きかった。ああいう仕事は平山には期待できない。勝ち点0だけは避けたいアウェイでの戦いだからと、攻守のバランスをやや守備重視に置きつつ、それでもいかに攻撃力をキープするかに頭を悩ませた、反町監督の苦労がしのばれる布陣だった。
 まあ、そんなわけで最初から負けないことをゲームプランとして掲げていた試合だから、スコアレス・ドローという結果は決して悪くないのだろう。ただ、後半、相手にイエロー2枚での退場者が出て、30分近く数的有利な時間帯が続いたことを考えると、どうにも勝ち点2を逃したという印象のほうが強い。相手のホームだったこともあり、ここでしっかりと勝ちきってしまえば、この先サウジを恐れる必要はなくなっただろうに。いくら相手のホームだからとはいえ、手負いの相手から1点も奪えなかったのは、とても残念だった。
 そういう意味では、後半のあたまから、水野に代えて柏木を投入した反町さんの采配に、僕は疑問をおぼえる。いまの五輪代表にとって、水野は攻撃のキーマンというべき存在だと思っているからだ。その彼を、試合なかばで見限って、引っ込めてしまったのは、どうにも解せない。前半、押され気味だったので、運動量の豊富な柏木を入れて、主導権を握りたいと考えたのかもしれないけれど、だからといって水野を下げなくたっていいだろう。もう少し辛抱していれば、退場者が出たタイミングで、もっと有利に試合を進めることができたんじゃないかという気がして仕方ない。
 その後の選手交代にしても、梶山を青山敏弘に、森島を平山に替えただけで、最後まで3-6-1のフォーメーションを崩さなかった。退場者が出たせいで、相手は1トップになっているんだから、4バックに移行するなり、2トップに変えるなりして、もっと攻撃的に行ってもよかったんじゃないだろうか。この試合の五輪代表は、最後まで負けないための戦い方に終始していた。その辺、どうにも反町監督の采配は消極的な気がする。
 本気で決定力不足を憂慮するならば、選手だけじゃなくて監督にも、時にはリスクを負ってでも攻めるんだというチャレンジ精神を見せて欲しい。なんたって最終予選は始まったばかりだ。ここいらへんでの失敗ならば、まだまだ取り返しがきくのだから。
(Sep 09, 2007)

スイス3-4日本

2007年9月11日(火)/クラーゲンフルト(オーストリア)/TBS(録画)

 オシム・ジャパンの欧州遠征第二戦目は、想像だにしない展開になった。
 スイスは去年のワールドカップで、ベスト16に勝ち残った国だ。あいにく僕はあの大会で一度もスイスの試合を観る機会がなかったけれど、全試合無失点のままで敗退したことで話題になっていたのは記憶に新しい。つまりディフェンスは堅牢なんだろう。そんな国を相手に、オーストラリアのディフェンスさえ崩せなかった日本が、そう何点も取れるとは思えない。ただ逆に、名立たるストライカーがいるとか、攻撃力が高いとかいう噂も聞かないし、いまの日本代表がそうそう失点を許すこともないだろう。だから試合は1点を争う展開になるんじゃないか。そう思っていた。
 ところが、そんな僕の読みの浅はかさを嘲笑{あざわら}うかのように、スイスは開始からわずか15分で2点を日本のゴールに叩き込んでみせる。
 1点目はセットプレーから。日本はゴール前で不用意なファールをあたえ──よくあるパターンだ──、FKをワンクッション入れて直接決められた。さらにその2分後には闘莉王がペナルティ・エリアでハンドをとられてPK。闘莉王はそのちょっと前にもペナルティ・エリア内で手にボールを当てていたし、二度続けては見逃してもらえない。これでいきなり日本は2点のビハインドを追いかけることになってしまった。
 失点に不運な部分があったのは確かだけれど、それでもこの試合の前半、日本はスイスの組織力の前になすすべがなかった。相手の的確なプレスのまえに、まともにボールを持たせてもらえない。唯一、惜しかったのは、松井が持ち前の積極性でゴール近くまでボールを持ち込んで自ら打ってみせたシュートのみ(それだって枠を外していた)。試合後の記者会見でオシムさんは、前半25分くらいからは日本も本来のサッカーができるようになったと語っているけれど、僕には前半の日本は、ひたすら防戦一方だったように見えた。結局、前半は0-2のまま終了。
 この日のオシム監督は、前回のオーストリア戦で不発に終わったツートップをどちらも引っ込め、巻のワントップとして、松井を入れて中盤を増員。フォーメーションを4-5-1に変えてきた。スタメン出場の機会をもらった松井は、前の試合より運動量が増えたように見えたし、惜しいシュートを打っていることもあって、それなりに印象がよかった。そんなわけで僕の不満は、この日も前半はあまり存在感を感じさせなかった稲本に向く。このくらいのプレーしかできないのならば、前半だけでさっさと見限って、いっそ後半あたまから中村憲剛を見せてくれと思っていた。
 ところがオシムさんは後半もメンバー交替なしで日本代表を送り出してくる。まあ、前半途中からは日本もゲームをコントロールできていたと見るならば、それも不思議じゃない。そして前半と同じメンバーのままだったにもかかわらず、実際に後半の日本は、見違えるような積極的な攻撃を仕掛けてゆくことになる。
 この変化に大きく貢献したのは、闘莉王の攻め上がりじゃないかと僕は思っている。代表に復帰して以来、あえて得意の攻撃参加を控えていた感のある闘莉王だけれど、この試合では2点のビハインドを意識したのか、後半はずいぶんと積極的に攻撃参加を見せていた。結果、それが相手のマークのズレを生むと同時に、日本の中盤の選手たちの守備意識を高めて、日本が試合を支配することを可能にしたんじゃないかと。前半は不満だった稲本も、後半はそんな流れの中で、ずいぶんと印象がよくなった。
 なんにしろ、後半の日本の戦いぶりは素晴らしかった。
 まずは松井が果敢なドリブル突破で突っかけて、ペナルティ・エリア内で倒されて、文句なしのPKをゲット。これを俊輔が決めて、追撃開始。
 続いては俊輔の左サイドからのFKに、巻が頭であわせる。これは、相手DFにつかまれながらも、それを振り切ってヘディングを決めてみせた巻が素晴らしかった。
 さらに巻は、その約十分後に、ふたたびセットプレーからのヘディングでの競り合いで相手DFにファールを受け、この日2つ目のPKまでゲットしてしまう。これをまたもや俊輔が決めて、ついに日本が逆転。ちょっとばかり信じられないような展開になった。
 日本にとって幸運だったのは、スイスの最終ラインに、まだまだ経験値の低い若手の選手が入っていたこと。ここまでの3失点すべてに絡んだのは、19番のベーラミ(ベフラミ?)という選手だった。ラツィオに所属しているというので調べてみたところ、歳はまだ21らしい。つまりは五輪代表の世代。それでA代表やセリエAの試合に出ているんだから立派なものだけれど、とはいってもさすがに経験値は低いわけで、そんな選手がA代表の試合に紛れ込んでいれば、いくら堅固な守備力を誇る国だって、綻びが出ようってものだ。そういう意味では、ここまでの日本代表の奇跡的な逆転劇は、そうした若手が出場機会を得られる親善試合ならではのものだと見るべきだと思う。
 しかし信じられないようなこの逆転劇に大喜びをしたのもつかの間。問題はその直後の失点だ。せっかく逆転したというのに、リードを守りきれずにすぐに同点に追いつかれてしまったのは、なんとも頼りなかった。しかもすごく綺麗なゴールで。こういう試合では、そのまま逃げ切ってこそ、評価できるってものだろう。そこを、いとも容易く同点にされてしまうのだから、やはり日本代表もまだまだだと思った。
 とにかく、ここまでの得点は、日本がセットプレー1つにPK2つ、スイスもセットプレーからの2得点とPK1つという内容。スコアだけみると派手な点の取り合いだけれど、どちらも流れの中からは得点できていないし、実質的には、いかにも守備重視の現代サッカーらしい内容だった。
 ただ、この試合で本当に驚かされたのは、ここからだ。残り時間が少なくなってから、松井→山岸、巻→矢野、遠藤→佐藤寿人と、あまり効果的とは思えない選手交替のカードを切り始めたオシムさんが、最後に俊輔に代えて中村憲剛を投入したのは、すでに後半ロスタイムに入ってからだった。ロスタイムは2分。つまり実質的なプレー時間はわずか1分ちょっと。いったい1分間で憲剛になにをやれっていうんだろうと、あきれ気味だった僕の思いをよそに、この交替が奇跡的な決勝ゴールを生み出してしまう。
 中村憲剛がゴールの左サイド寄りに思いきりよく蹴り込んだミドルパスに山岸が追いつき、これをゴールライン付近から中へと折り返す。このボールを憲剛みずからが受けて、シュート。これは素晴らしい反応を見せたGKに弾かれてしまうものの、そのこぼれ球に矢野がいち早く反応して、見事、決勝ゴールを決めてみせたのだった。
 矢野はこれが代表初ゴール。しかもこのゴールに絡んだのは途中出場の選手だけとくる。これまでのオシム采配では、途中出場の選手は不発続きだっただけに、このゴールはインパクト大だった。考えてみれば、最初の3得点だって、前の試合では控えだった巻と松井の活躍によるものだし、オシムさんが監督になって以来、こんな風にマジカルな采配を見せてもらったのは、初めてだ。この試合を観るため、わざわざ仕事を休んだ不届きな僕へのご褒美のような、素晴らしく劇的な幕切れだった。
 なんでも、この試合の裏で行われたオーストリア対チリの試合でチリが勝ったため、これら四ヶ国のあいだで争われた三大陸トーナメントは、日本の優勝ということで終わったらしい。なにがどうトーナメントなんだかわからない変則的な大会だったけれど、それでも国際大会で日本が優勝を飾ったんだから、上出来だ。ブラボー、日本代表。
(Sep 12, 2007)

U-22日本1-0U-22カタール

オリンピック最終予選/2007年9月12日(水)/ 国立競技場/BS1

 A代表がスイスに劇的勝利を収めたその日の晩に行われた、オリンピック最終予選の第三戦目。
 本田圭佑が累積警告で出場停止のため、代わりに誰を使うかが注目されたこの試合。U-20世代の安田(G大阪)がスタメンじゃないかと噂されていたのだけれど、あけてみれば反町さんの選択は、柏木だった。でもって、スタメンはその柏木を本田と入れ替えただけで、あとはアウェイ向けの守備的陣容だと思っていたサウジ戦と同じ。ただ、相手のカタールがワントップだということでだろう、フォーメーションは4-5-1に変更してきた。
 4バックならば、本職の右サイドバックでプレーできる内田篤人のスタメン起用は納得だ。ただし、左サイドに伊野波を入れたのは、ちょっとばかり疑問だった。この試合の伊野波は左サイドに張りついたままで、攻撃参加する場面はほとんど見られなかった。逆サイドの内田篤人にしたって、あまり芳しい働きはできていなかった。高い位置に上がってからボールをもらうシーンはあっても、彼がディフェンスラインから飛び出して攻撃の起点になるようなプレーは、ほとんどなかった。
 これらはなにも彼ら二人の責任じゃないと思う。なんたってチームとしてサイド攻撃の意識が希薄すぎた。センターバックの二人から両サイドへパスが出ることはほとんどなかったし、効果的なサイドチェンジもほとんど見られなかった。これじゃ、4バックを選択している意味がない。いくら中盤の選手ががんばっても、両翼が十分に機能しないのでは、攻撃力はアップしない。4バックを選択したにしては、あまりにサイド攻撃に対する意識付けが足りなさすぎるのではないかと思った。どうせならば積極的な攻撃参加が売りの安田を起用して、サイドからも攻めるんだという意識を持たせて欲しかった。
 なんでこんな風に文句ばかりつけているかと言えば、それは結局、この試合でも日本代表がわずか1得点しかできなかったからだ。それも、前半わずか5分に、水野のFKを梶山が頭で決めた、セットプレーからの1点のみ。最終予選を半分戦い終えて──なおかつそのうち2試合をホームで戦っておいて──、総得点がセットプレーからの2点のみって……。得点力不足にもほどがある。
 以前はこのチームには闘争心が感じられないとか思っていたけれど、ここのところの2試合を見て、このチームにたりないのは、選手の闘争心よりも、それを引き出すための反町監督の戦略じゃないのかという気がしてきた。僕には反町さんがどういう戦い方をしたいのかが、ぜんぜん見えてこない。攻撃的にゆくのか、守備的なチームを目指しているのか、それさえもわからない。
 そもそも選手起用の基準もあいまいだ。なんで二次予選でそれなりに結果を残しているカレン・ロバートや増田誓志が呼ばれず、あまり出番がなかった岡崎がベンチ入りしているんだろう。なんでDFの控えが、いままで使ってきた細貝や一柳ではなく、柏の小林祐三なんだろう。僕にはそれらの理由がよくわからない。
 いや、単純に考えると、Jリーグでスタメン出場している選手を優先するという方針なんだろう。A代表のコーチを兼任している反町さんだから、オシムの方針に足並みを揃えているのに違いない。
 でも、A代表と五輪代表では、おのずから状況が異なる。オシムがいくら出場機会が多い選手を優遇するといっても、実際に選んでいるのはJ1の強豪チームの選手が中心だ。いっぽうで五輪代表では、J2の選手や大学生を起用している。それでいて、J1の強豪チームに所属しているがゆえに出場機会が少ない選手たちを袖にするってのは、ちょっとばかり理屈にあわないと僕は思う。
 この試合ではサブの選手のセレクションにも疑問が残った。この日のベンチにはFWが3人もいたのに対して、MFは青山敏弘ひとりだった。そのせいで後半途中、膝を痛めた梶山に代えて青山を送り出したあとで、本田拓也が2枚目のイエローをもらって退場になっても、替わりに使えるMFはひとりもいなかった。結果として水野に替えてDFの小林を投入することになり、それが攻撃力のさらなる低下を招いて、防戦一方になった面もあったんじゃないかと思う。そもそも1トップを選択しておいて、わずかな交替枠にFW3人も入れるってのもナンセンスだ。こういうのって、あきらかにベンチワークのミスじゃないだろうか。
 水野や家長の攻撃センスには秀でたものがあると思う。U-20から上がってきた柏木や森島も、じつにいい選手だ。なのにこのチームでは、そんな彼らの攻撃力がきちんと得点に結びついていない。それって、やっぱりチームを作っている人の方法論に問題があるんじゃないかと思えてしまう。最近はスポーツ紙で反町さんの解任がどうしたという見出しを目にすることがあるけれど、月並みながら、そんなわけでこの頃は僕も、反町さんの手腕に疑問を感じるようになってしまっているのだった。
 なにはともあれ、ひとり少ない相手を崩しきれなかった前の試合とは反対に、この試合では終盤、自分たちがひとり少なくなって、相手の攻撃をしのぐのに四苦八苦していた。ホームだというのに、とてもじゃないけれど安心して見ていられやしなかった。それでもなんとか逃げ切って勝ち点3を積みあげ、グループ首位に立ったのが救い。そういう一戦だった。
(Sep 12, 2007)