2007年3月のサッカー

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  1. 03/03 ● 川崎1-0鹿島 (J1・第1節)
  2. 03/11 ● 鹿島0-1G大阪 (J1・第2節)
  3. 03/24 ○ 日本2-0ペルー
  4. 03/28 ○ U-22日本3-0U-22シリア (五輪・二次予選)
  5. 03/31 △ 神戸1-1鹿島 (J1・第4節)

川崎フロンターレ1-0鹿島アントラーズ

J1・第1節/2007年3月3日(土)/等々力競技場

 2007年シーズンのアントラーズの開幕ゲーム(アウェイ)を等々力競技場まで観に行ってきた。スタジアムともすっかりご無沙汰してしまっていて、調べてみたところ、これがおよそ7年ぶりのサッカー観戦だった(前回最後に観たのは、2000年にアントラーズがセカンド・シーズンの優勝を決めた国立の柏戦)。
 僕の場合、諸事情により──本やCDの出費がかさんで回す金がないとか、まわりにアントラーズ・サポーターがいないとか、カシマスタジアムが遠いとか、人混みが嫌いだとか──、基本的にサッカーはテレビ観戦だけで済ませることにしている。けれど今年はホームページも作ったことだし、開幕を記念してスタジアムに足を運んでみることにした。
 おまけに今回は、義理の妹夫婦が中村俊輔を観るため、わざわざスコットランドまで出かけていった直後だというのもあった。彼女たちが旅行社に手配してもらったチャンピオンズリーグのミラン戦のチケットは、なんと8万円もしたそうだ。そういう話を聞くと、──いくらなんでもそこまでは出せないけれど──、近場{ちかば}で観られるのならば、僕もたまにはスタジアムへ出かけてもいいかなという気がしてくる。というか、もう十年以上サッカーを観続けている身としては、積極的に行かないといけない気にさせられる。
 で、調べてみれば、等々力競技場は渋谷から東横線でわずか8駅のところにある。それならば、わが家から1時間ちょっとで行けてしまう(やたらと地理に疎い僕は、もっと遠いものだと思っていた)。しかもこの試合、今年の開幕戦のなかでも屈指の好カードだというのに、スパカー以外ではテレビ放送がない。そうなると、これはもう絶対に行かなくちゃいけないだろうという気にもなる。
 ということで、オズワルド・オリヴェイラ新監督のもと、三人の新外国人を加えた新生アントラーズがどんな戦い方を見せてくれるのか、期待と不安を胸に、初めてのスタジアムへと出かけていったのだった。
 この試合のアントラーズのスタメンは、GK曽ヶ端、DFが内田、岩政、ファボン、新井場の4バック、中盤が中後、青木、本山、ダニーロ、そしてマルキーニョスと柳沢の2トップという布陣。注目の増田は途中出場で、ボランチとしてプレーしていた(途中出場のあとの二人は田代と興梠)。今年もクラブではボランチとして起用されるとなると、五輪代表での今後がちょっと心配だ。まあ、その前にスタメンが確保できない状況が問題だけれど。
 シーズン最初のこの試合でキャプテンマークをつけていたのは、アントラーズが柳沢、フロンターレが中村憲剛だった。新旧、日本代表どうしのキャプテン対決。なんだか、どちらもあまりキャプテンシーが感じられないタイプだけれど、キャプテンをつとめるというからには、ともにそれなりの覚悟があるんだろう。だから今年の二人には要注意だ、といいたいところだけれど、この試合を見る限り、注意が必要なのは中村だけみたいだった。
 いや、ほんと中村憲剛はよかった。川崎の攻撃のシーンには必ず彼が絡んでいたような印象がある。でもって、あの独特のキックで、決定的なラストパスをガンガン入れてくる。得点にこそならなかったけれど、かなり自由にやられてしまっていた。まいった。アントラーズ戦であれだけやってくれて、日本代表でしょぼかったら、ちょっと許せないぞという素晴らしさだった。それに対して、柳沢の存在感のないこと……。
 でもまあ、柳沢個人をどういういう前に、この日の両者では、チームとしての完成度が違いすぎる感じがした。
 去年との違いは外国人が一人が抜けただけという印象の川崎に対して、こちらは監督が代わり、新外国人三人を加えた新しい布陣もいまだに手探り状態。なんだか攻撃がまるで形になっていない気がした。惜しかったのは、ダニーロのヘディングがポストをたたいたシュートくらいだったんじゃないだろうか。とにかく、なにもかもがちぐはぐな印象だった。マルキーニョスもダニーロもまだまだチームにあっていないみたいだし。この先、ちゃんとフィットするのかも不安になるような出来だった。
 あえていいところを見つけようとすれば、相手の得点を1点に抑えた守備くらいだろうか。ファボンはでかくて、なかなか頼りになりそうだし。あ、でも守備といえば、開幕戦だというのに、いきなり岩政がイエローカードを2枚もらって、残り10分というあたりで退場になってしまったんだった。
 いや、試合開始前の場内アナウンスで、主審が(国際試合の誤審で有名な)吉田寿光さんだと聞いて、不安に思っていたんだ。そうしたら、やっぱりイエローカードの出し方に疑問を感じるシーンがいくつもあって、あげくの果てには岩政の退場だ。ああ、ついていない。
 まあ、ついてないといえば、今年はアジア・チャンピオンズ・リーグ出場で過密日程による疲労が心配されるフロンターレと開幕戦であたってしまうというのも、つきのなさのひとつだし、直前の練習試合で、野沢が削られて全治2ヶ月というのもそうだ。最初からこうも不運が重なると、今年も十冠への道は、去年以上に{けわ}しいような気がしてくる。
 対する川崎は、さすがに去年の2位はだてじゃないというサッカーを見せていた。中村憲剛は前述したとおり素晴らしかったし、ジュニーニョ、マギヌンの両外国人に我那覇を加えた最前線には、こちらとは比べものにならないような迫力があった。仙台から移籍してきたばかりという左サイドの村上和弘もかなりよくて、再三攻め上がってはチャンスを作っていた。
 唯一の得点のシーンは、その村上がゴールライン付近から上げたクロスに、マギヌンがヘディングであわせたもの。ゴール裏のスタンドで観ていた僕の目の前から上げられたクロスを、どフリーでいたマギヌンがきっちりと決めた。まさに練習どおりというような綺麗なゴールだった。いやあ、この試合唯一の得点シーンを見るにはうってつけの席でした。ちくしょうめ。
 なんにしろ、内容的には1-0という得点差以上の違いがあったように思えた一戦だった。
 それにしても、05年に川崎がJ1に復帰してきて以来の対戦成績は、ナビスコ杯も含めて、これで2勝5敗だ。思いっきり負け越している。どうにも川崎が、あらたな天敵になってしまった感がある。試合前の場内アナウンスで、関塚監督が紹介された時にブーイングをしているアントラーズ・サポーターがたくさんいたけれど、終わってみると、その人たちの気分もわからなくない気がしてしまった。アントラーズからの監督就任要請を蹴って、フロンターレをここまで強くした関塚さんが、ちょっぴり恨めしくなるような07年シーズンの開幕戦だった。
(Mar 05, 2007)

鹿島アントラーズ0-1ガンバ大阪

J1・第2節/2007年3月11日(日)/カシマスタジアム/NHK

 開幕2連敗。いやー、今年はやっぱ厳しいかもしれない。
 この日のスタメンはGK曽ヶ端、DF内田、青木、ファボン、新井場、MF中後、吉澤、増田、本山、FWダニーロ、マルキーニョスというメンバーだった。
 柳沢は練習で背中を傷めたそうで、ベンチスタート。田代も怪我をして全治一ヶ月とのことで、この日は新外国人のツートップとなった。前節でレッドをもらった岩政のところには大岩が入るという噂だったのだけれど、やはりまだ使えないみたいで、この日はベンチ入りさえしていなかった。代わりにセンターバックとして起用されたのは青木。で、ベンチ入りしているDFとMFが、後藤、石神、船山って……。いったい誰だそれは(二番目の選手は終盤にちょこっとだけ出ていた)。金古、羽田、石川と、そろそろ中堅どころって選手を次々と放出しちゃうから、選手層がうすいこと、うすいこと。このチーム状態で開幕早々、怪我人続出ですからね。今年は一年通してちゃんと戦えるのか、心許ないこと、このうえない。
 いや、でも今日の試合、負けはしたけれど、前節よりはまだ、期待してもいいかもと思わせてくれる内容だった。ダニーロ、マルキーニョスのツートップは、ようやく助っ人らしい存在感(の片鱗)を感じさせたし、この日は柳沢にかわりキャプテンマークをつけていた本山も、攻守にわたり、なかなかいいプレーを見せてくれていた。この三人の連係はかなりよくなってきている感じがした。
 あと、今年のアントラーズで重要な役割を果たすことになりそうなのが中後。スタメンのボランチはどうやら彼がファースト・チョイスみたいだし、野沢が故障中だからというのもあるのだろうけれど、フリーキックもほぼすべて彼が蹴っている。3年目の彼がどれくらいできるかが、今年の鹿島の成績を左右することになりそうだ。それにしても、後輩にスタメンを奪われてしまった青木の立場には、ちょっと同情してしまう。
 試合のほうは、序盤は圧倒的なガンバのペースで始まった。けれど、開始わずか20分たらずで、ガンバ左サイドの安田が2枚目のイエローをもらって退場してしまう。人数的に有利になったこともあって、これで流れは完璧にアントラーズにきた。現状の両チームの戦力を考えると、そう簡単にガンバに勝てるとは思えなかったので、若い安田には気の毒だけれど、彼の退場は願ったりかなったりだった(ちょっと情けない)。
 でも、残念ながらそんな数的有利は長く続かない。その後しばらくして、ゴール前での小競り合いで播戸の喉を殴るかなんかしたファボンが、それをとがめられてレッドカードをもらってしまうのだった。ボールのないところでの出来事だったから、副審に確認の上での判定だったし、それでレッドはないんじゃないかと思ったけれど、判定はくつがえらない(この試合の主審は西村雄一氏)。これで開幕戦からニ試合続けてのセンターバックの退場劇。それでなくてもDFは駒不足な印象があるのに、困ったものだ。
 とにかく、そんな風に試合は人数的にイーブンに戻った。でも一度、こちらへ傾いた流れはその後も持続して、前半のうちは終始いい感じで攻撃ができていた。いや、これならば今日の試合は負けはないんじゃないかと思った。
 ところが後半。途中出場で家長を投入してきたことで、徐々にガンバが盛りかえし始める。この日の家長は、左サイドバックではなく、右の攻撃的なポジションを与えられていた。ドリブルが得意な彼のところから、前半にはなかった形で、いくつかチャンスを作るようになってきた。そして、ついにそのうちのひとつがマグノ・アウベスの決勝点へと結びついてしまうのだった。ああ……。
 そうそう、この試合でオリヴェイラ監督は、要注意人物であるマグノ・アウベスに、3年目の吉澤という選手をマンマークでつけていた。もうほんとにべったりという感じ。テレビの解説によると、吉澤はガットゥーゾや本田泰人を尊敬しているとのことなので、まさに適任だったのだろう。でもそんな彼も、得点の画面では、やはりマグノ・アウベスを止めきれなかった。今年もこのブラジル人には注意が必要そうだ。
 ちなみに、メンバー表のうえではMFの吉澤だけれど、そんな形で相手FWのマークにつきっぱなしだったから、中盤で彼の姿を見かけることはほとんどなかった。つまりこの日のフォーメーションは、実質的には5バックだったことになる。そのため、ファボンの退場後も極端にディフェンス力が低下することなく、最後まで持ちこたえることができたのかなという気もする(まあ中後が急遽、最終ラインに入っていたけれど)。なんにしろ最初からかなりディフェンシブなフォーメーションだったわけだけれど、そのわりにはよく攻めていたと素直に思う。
 とにかく失点するまでは、かなり多くのチャンスを作り出していて、あと一歩という感じがあった。ただ、先行されたことで、すっかり流れが変わってしまった。結局、アントラーズは同点に追いつくことができず、ガンバに余裕をもった試合運びで逃げ切られて、開幕2連敗を喫することになった。
 いきなりの連敗も痛いけれど、それよりも2試合連続無得点というのが気にかかる。一日も早く攻撃陣のエンジンがかかってくれないと、今年はあっという間に優勝圏外に転げ落ちてしまいそうだ。次の対戦相手は、鹿島同様、開幕二連敗のジェフ千葉。あちらにしても、これ以上負けられないという思いは強いだろうし、なんとも嫌な巡りあわせになってしまった。始まったばかりで、はやくも正念場かも。
(Mar 11, 2007)

日本2-0ペルー

2007年3月24日(土)/横浜国際総合競技場/テレビ朝日

 2007年一発目、待ちに待った4ヶ月ぶりの日本代表の試合。今回の一番の話題は、なんといっても中村俊輔と高原の招集だった。
 個人的には、俊輔は当然として、高原の招集はちょっと意外だった。ことFWに関しては、ジーコのときに活躍していた選手はみんなもう盛りを過ぎてしまって、後続に席を譲る時期だろうと思っていたからだ(浅はか)。柳沢なんか、まさにそういう感じだし。
 ところが高原は違った。僕は普段からあまり海外の情報には気にとめていないので知らなかったけれど、彼はW杯後に確実に成長を遂げていた。現在ブンデスリーガでは10ゴールをあげ、得点王ランキングで首位と3ゴール差というところにつけているという。この試合でのプレーを見ると、それもなるほどと思わされた。いや、試合前に放送されていたブンデスリーガでのボレーシュートのシーンなんて、とても日本人とは思えないほどの素晴らしさだった。そしてこの日、彼があげたゴールも、それに負けず劣らぬ素晴らしいものだった。左足トラップ、ターン、右足シュートという一連のプレーがじつに見事で、これぞまさに欧州レベルというインパクトがあった。
 まあ、考えてみれば彼の場合、W杯本大会であまりにふるわなかったために、すっかりその実力を過小評価してしまっていたけれど、大会直前のドイツとの親善試合では2ゴールをあげたりして、すごい時はすごいというのを見せつけていたりしたんだった。あれか らまだ1年もたたない。年齢だってまだ20代だ。俊輔ともども、2010年の南アフリカ大会の時には30才を超えてしまうことになるけれど、現時点ではまだ衰えをうんぬんするのは早すぎる。去年のW杯で3才年上の久保にエースとしての期待をかけていたことを考えれば、南アフリカ大会のときに高原がもう年齢的に通用しないだろうと決めつけるのは、早計ってものなのだろう。
 とにかくこの日は高原のみならず、俊輔にも海外でコンスタントにプレーすることの重要性をあらためて教えられた。二人とも一対一で当たり負けせず、きちんと勝負できていたのがいい。あの強さは厳しい海外リーグで毎試合を戦い続けてゆくなかで、自然と身についたものなのだろう。当たるとすぐ倒れたり、笛が鳴ったりする環境でプレーしていたのでは、おいそれとは身につかないもののような気がする。やはりJリーグがもっとシビアにならないと、世界とは互角に戦えるようになりそうにない。
 その手のことはペルーのプレーからも感じた。相手は南米の中堅国で、ここのところW杯ともご無沙汰しているという、決して強豪とは言えないチームだ。しかも今回は代表監督が就任したばかりだそうで、メンバーが定まらないのか、来日した選手はわずか15人。フィールド・プレーヤーのサブがわずか3人しかいないという、オシム就任直後の日本代表を思い出させる状況だった。欧州でプレーしている選手は呼ばれていないので、一部のマスコミは1.5軍と揶揄{やゆ}していた。
 でもそんなチームでも、ポジショニングがよくて、中盤からのプレスがきちんと効いているため、意外とあなどれない。攻撃面の迫力不足はありありで、ほとんどゴールを脅かされる場面はなかったけれど、それでも、こと中盤のディフェンスの厳しさはなかなかのものだった。あれはやはり、年がら年中ブラジルやアルゼンチンと戦うことを余儀なくされている国ゆえの底力だろう。日本もやはり強くなろうと思ったら、世界最高のチームとの対戦を数多くこなしてゆくのが最善策なのだろうと思わされた。
 ということで、内外両方から世界を感じさせられることになって、観ている僕個人にとっては、なかなか意味のある一戦だった。
 この日のスタメンは、GK川口──これが代表100試合目だそうだ──、DF加地、中澤、闘莉王、駒野、MF啓太、阿部、俊輔、遠藤、FWが巻、高原という11人。
 そうそう、この試合では中澤が代表に復帰したのも大きな話題のひとつだった。W杯終了後に代表からの引退を表明した彼だけれど、センターバックの人材不足を憂慮するオシム監督たっての希望──があったとの噂──を受けて、前言を撤回。2月の合宿から再び代表に合流していた。なんでも所属クラブのF・マリノスが成績不振で、人気に陰りがあるのも一因のようだ(やっぱり代表がいるチームといないチームでは、世間の関心が違うので)。理由はなんであれ、まだまだできると思っていたから、帰ってきてくれてよかった。
 ということで海外組の二人と中澤が加わった今回のスタメン、気がつけばジーコ・ジャパンの時にプレーしたことがないのは、闘莉王と啓太だけという顔ぶれになっている。ドラスティックにメンバーの入れ替えを行った感のあるオシムさんだったけれど、こうして見ると、意外とそれまでの代表の母体をきちんと踏襲しているのがわかる。まあ、サブのメンバーは一新しているし、やろうとしているサッカーもずいぶんと違うんだけれど。
 サブといえば、この日の途中出場は、中村憲剛、羽生、矢野貴章(新潟)、藤本(清水)、家長、水野の6人だった。五輪代表2人を含むあとの4人が代表初キャップだ。先に代表入りを果たしたにもかかわらず、家長たちに先を越されてしまった本田はちょっと気の毒だけれど、彼には五輪代表でがんばってもらおう。ベンチにはほかにも大分の松橋やG大阪・橋本など、初代表の選手たちがいたし、あいかわらず新鮮な顔ぶれが多くて、それはそれで楽しい。ただ個人的には、FC東京の成績が振るわないせいか、今野が招集されていないのが気がかりだったりする。
 試合のほうは、日本がペルーのプレスに苦しみつつも、俊輔のFKから、両フォワードの2ゴールでなんとか勝ったという感じ。やはり俊輔のキックの精度や視野の広さは素晴らしい。あと今回は意外な守備力の向上ぶりにも感心させられた。
 巻はこれがオシム監督就任以来初のゴール。とてもきれいなヘディングだった。今回はオシムいわく、不本意なプレーが続く選手たちへのイエローカードだとのことで、最初の代表発表時にはFWが高原ひとりしか呼ばれず、巻はあとから追加招集されるという変則的な形だったから、ようやく結果が出せて、ひと安心だろう。
 そのほかだと、俊輔を起点にした駒野の積極的な攻め上がりが好印象だった。逆に加地が攻撃ではほとんど機能していなかったのと、そちらのサイドへのパスミスが多かったのは気にかかった。
 それにしても、代表の2トップが両方ともゴールを決めた試合というのも、やたらとひさしぶりだ。4ヶ月ぶりの試合だったし、俊輔たちの代表復帰もあったしと、あれやこれや「ひさしぶり」なことの多い、この日の日本代表だった。内容はいまいちでも、やはりA代表はいいなあと、しみじみ思う。
(Mar 25, 2007)

U-22日本3-0U-22シリア

北京オリンピック・アジア地区二次予選/2007年3月28日(水)/国立競技場/BS1

 オリンピック代表のアジア地区二次予選の三試合目。
 前の試合を観た時には、出来もいまいちだったし、お客さんもあまり入っていなかったし、これは一発、応援のために国立に駆けつけようかとも思ったのだけれど、その後のアウェイのマレーシア戦は深夜の録画放送だったために見送ってしまったし、その程度の思い入れしかないチームを観るために、わざわざ仕事帰りに国立競技場に立ち寄るには、今週はちょっとばかり体調が悪すぎた。ということでいつもどおりのテレビ観戦とあいなった。まあ、一番観たいと思っていたアントラーズの増田誓志は出場しなかったので、行かないで正解だったかもしれない。
 この日のスタメンはGKが西川──ようやく怪我から復帰した彼は、A代表のペルー戦にも招集されていた──、DF青山直晃、伊野波、水本、ダブルボランチが本田拓也と梶山、両サイドが水野と本田圭佑、トップ下に家長、2トップが平山と李忠成というメンバー。途中出場はカレン・ロバート、枝村、上田の三人だった。青山敏弘がベンチ入りしていながら、使われなかったのは、僕が観るかぎり初めてだ。反町さんも試行錯誤を続けているらしい。
 試合は序盤の10分くらいは、シリアにも勢いがあって五分な感じだった。で、なんと前半7分には、きっちりと守備を崩されて、ゴールネットを揺らされてしまう。この場面では、ゴールを決めた選手が、その前に水本をひっぱって倒したということでファールをとられ、ノーゴールの判定となったから助かったものの、もしもあれが決まっていたらと思うと、冷や汗ものだった。リプレイで見た感じでは、相手が引っぱったというよりも、水本が相手のシャツをつかんだまま引きずられて倒れたように見えた。危ないったらありゃしない。
 ただまあ、シリアは試合の前々日に来日したために時差ボケの選手も多かったとかで、コンディションが悪かったらしく、その後はすっかり勢いが衰えてしまう。逆に日本はノーゴールの判定で助けられてから10分後に、家長が豪快なミドルを決めて先制。あとは要所要所で怒濤の攻撃を見せつつ、平山の2ゴールで得点を積み重ねて、二次予選の天王山といわれたこの一戦を快勝で終えた。
 部分部分ではチームとしての連係が非常にスムーズで、流れるような美しい攻撃が何度も見られた点で、これまでで一番の出来だったと思う。ただ、その反面、集中力が切れて、まったく無為に時間をやり過ごしてしまっているような、手ごたえのない時間帯も多かった。そのあたりは今後の課題かなと。
 この日、光ったのは数日前にA代表デビューを果たしたばかりの家長、水野。この二人は体格にこそ恵まれていないけれど、攻撃センスはぴかいちだと思う。両者ともサイドバックの経験もあるわけで、つまり守備力も兼ね備えているという、いわばオシム・サッカーにはうってつけの存在だ。家長にあのポジションであれだけのプレーをされてしまうと、増田がサブなのもしかたないかなと思う。いずれにせよ、今後のさらなる成長が楽しみな二人だった。
 あとは2ゴールの平山相太。この日は得点シーン以外にも、ポストやクロスバーをたたくシュートが2本あったし、ボールに絡むシーンはさほど多くなかったけれど、いざボールを持ったときのプレーには、非常にインパクトがあった。ボールを持ってから、次のプレーを選択するまでの判断が素早く、かつ的確でとてもよかった。
 平山には、大学へ進学したことや、オランダから逃げてきたことで、あまり性格的に信用できない子だというイメージを持ってしまっているけれど、その身体能力とサッカーセンスには、やはり特別なものがある。これでもしも人間的にひと皮むけて、大人になってくれれば、将来の日本代表にとって、これほど頼もしいFWはいないと思うのだけれど……。まあこれまでのこともあるので、あまり期待はかけないで今後を見守りたいと思う。
 とりあえず3連勝で二次予選突破のめどが立ってなによりだった。
(Mar 31, 2007)

ヴィッセル神戸1-1鹿島アントラーズ

J1・第4節/2007年3月31日(土)/ホームズスタジアム神戸/BS1

 いやはや、勝てない。ここまで開幕から4試合を戦って2敗2分というのは、おそらくチーム史上、最悪なんではないだろうか。
 開幕戦と同じスタメンでのぞんだ第4節。相手はJ2から昇格してきたばかりの神戸だけれど、この数年、J2上がりのチームは、年間50試合以上の長丁場を戦い抜いてきているだけあって、毎年J1の下位に低迷しているチームなんかよりも、よほど手強い印象がある。川崎フロンターレが昇格そうそう台風の目になったのは記憶に新しいし、今年は今年で、長年J2を渡り歩いてきた名物監督、石崎伸弘氏ひきいる柏レイソルが、現時点で暫定2位だったりする。
 ヴィッセル神戸も例外ではないようで、ここまでナビスコ杯もあわせて、1勝2敗3分とまずまずの健闘をみせている。その間の対戦相手が、清水、川崎、横浜M、千葉、G大阪という顔ぶれなのを考えると大健闘だ。C大阪から移籍してきた大久保──今年は左サイドウィングとしてプレーしている──、ここまで3得点と活躍している新外国人レアンドロ、FC東京からレンタル移籍中のFW近藤祐介など、攻撃陣はかなり威勢がよかった。さらには驚いたことに、ゴールマウスを守っているのが、去年までマリノスの守護神だった榎本達也だったりする。意外と戦力が充実していて、三浦淳宏が戦線離脱中にもかかわらず、簡単に組み伏せることのできる相手じゃなかった。
 対するアントラーズのスタメンは開幕戦と同じ。あの時と比べると、随分と攻撃に連動性が出てきていて、部分部分ではワンタッチパスが見事につながる場面などもあり、チーム状況が上向きになっていることは感じさせた。
 でも勝てない。得点できない。中盤からの組み立てという点では向上したものの、ペナルティエリアでのプレーまで、そうした連動性が持ち込めていない印象だった。
 試合のほうは、前半残り数分という頃に、新井場が意味不明なPKをとられ、これを大久保に決められて、神戸に先制を許す。ペナルティエリア内でのヘディングの競り合いで、相手選手を押さえつけて倒したという判定を下されたようなのだけれど、リプレイで見てもどこがファールだか、さっぱりわからなかった。主審は岡田さん。勘弁して欲しいよなあ。
 それでなくてもアントラーズは開幕戦から2試合連続でCBを退場にされられ、この試合では不条理なPKをとられと、レフェリーの判定に悩まされ続けている。おかげでオリヴェイラ監督も、ついに切れてしまったようだ。後半は残り5分という時間帯に、途中出場の興梠がペナルティエリアで倒されたプレーがノーファールで流されるのを見ると、辛抱たまらずピッチに飛び出して、岡田さんに抗議したとかで、退席処分を食らってしまった。テレビで見ていた僕には、DFが上手かったように見えたけれど、やはりそれまでの蓄積があるから、我慢ができなかったんだろう。
 話が前後してしまったけれど、同点弾は失点の直後のFKで、蹴ったのはなんとファボンだった。いやはや、豪快きわまりない、ものすごいFKだった。あんなキックを持っていたとは、おそれいった。さすが、ブラジル人。体格がよくて守備力は高そうだし、その上あんなFKが蹴れるなんて、この人はもしかして、ものすごく頼りになるかもしれない。
 いっぽうで、なんだかやたらと頼りないのがダニーロ。G大阪戦ではFWとしてプレーしていたから、その高さが生きていたこともあって、おっ、この人も実は悪くないのかもと思ったものだったけれど、この試合ではやはり不満ばかりをおぼえることになった。なにせ身体が大きい分、動作が鈍い。じゃあ俊輔のようにスピードがない分、技術的に抜け出ているかといえば、そんな風でもない。高さ以外、どこにセールスポイントがあるんだか、よくわからない。FWならば高さだけでもいいかもしれないけれど、中盤の選手がそれでは困ってしまう。11番を背負うこの選手がもっと存在感を発揮してくれるようじゃないと、今年はホントにこのまま鳴かず飛ばずで終わってしまいそうだ。
(Apr 01, 2007)