2004年1月のサッカー
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- 01/01 C大阪0-1磐田 (天皇杯・決勝)
セレッソ大阪0-1ジュビロ磐田
天皇杯決勝/2004年1月1日(木)/国立競技場/NHK
昨年に引き続き今年も大晦日に記憶をなくすまで飲んでしまい、またもや元日をひどい体調で迎える羽目になった。昼前に起き出すのがやっとというていたらく。アントラーズが決勝に残っていない上にそんな調子だから、この試合もいっそのこと見るのはやめようかとちょっとだけ思った。けれどそこはやはり一年の初めの一戦。見ておかないとサッカーファンとしてのけじめがつかない。そんなわけで頭痛を始めとした二日酔いの諸症状に苦しみつつもテレビ観戦した天皇杯決勝だった。
しかしながらこの試合は見ておいてよかった。とても内容の濃い一戦で、最後までたっぷりとサッカーの面白さを味わわせてもらった。こういう試合ならば頭の痛さを我慢しながらでも見た甲斐があるってものだ。
試合内容はといえば、まずはセレッソが準決勝の鹿島戦と同様、序盤からガンガンと攻め上がるという展開。開始早々森島がゴール前でフリーのチャンスを得る。ここでモリシはなぜか大久保へのパスを選択してしまい、せっかくのチャンスをつぶしてしまった。森島はその後も同じように、シュート・チャンスで大久保へのパスを選択する場面が何度かあった。以前はJリーグで得点王争いをしたこともある選手が、なんであそこまで献身的なプレーをしていたのか不思議だ。もしかして昨シーズンの大久保の好成績はモリシのおかげが大きいのかしれないという気がした。
この試合の大久保は、ゴールへの意識は感じられはしたものの、シュートが全然枠に飛んでいなかった。彼のシュートがひとつでも枠に飛んでいたら結果は違っていたかもしれない。日本代表やオリンピック代表での活躍が期待される逸材ではあるけれど、やはりあの辺のプレーぶりは日本人の枠を抜け出せていないなあと落胆させられた。今後の成長に大いに期待したい。
なにはともあれセレッソはその後も激しいプレスでゲームを支配し続ける。このままで本当に90分もつのかと思うようなプレーをチーム全体で見せてくれていた。あのジュビロがほとんど満足にボールを回せないんだから恐るべしだ。だてに決勝まであがってきたわけではない。鹿島が決勝を戦えなかったのは残念だけれど、セレッソにあれくらいの戦いぶりを見せられてしまうと文句も言えないなと思ってしまった。
ジュビロの方はいつになくプレーに切れがない感じがした。やはり福西を欠いていたのが影響していたんだろうか。中盤でのパス回しはほとんど見られず、ロングボールを放り込んでグラウと前田のツートップに当てるという攻撃ばかりが目立っていた。ゴール前までボールを持ち込めさえすれば持ち前のパスワークが冴えて惜しいところまで持っていけるのだけれど、この日のセレッソはディフェンスにも高い集中力を見せていて、そう簡単には崩されない。もちろん磐田のディフェンスだって堅牢だから、スコアレスのまま前半が終了したのは妥当な結果という印象だった。
そう言えばこの日の磐田のゴールマウスを守っていたのはかつてアントラーズにいた佐藤洋平だった。記録を調べたところ、彼はこの天皇杯から磐田に合流して、大会のあいだずっとスタメン出場を果たしていた。見ていてディフェンダーとの連係がまだいまいちかなという気もしたけれど、それでも山本よりはGKとして上だと思う。磐田への完全移籍が決まったそうなので、来季はガンガン活躍して宿敵磐田の力になってやって欲しい。元アントラーズの選手には、やはりそれが磐田であっても活躍して欲しいと思う。というか磐田のような強いチームの力になれるだけの選手がいたというのは、やはりチームとして誇らしく思えるから、より一層応援したくなるんだろう。がんばれ洋平。
ともかくそんなわけで個人的にはセレッソの奮闘に好感を受けつつも、佐藤洋平が失点しないといいなあと思いながら見ていた一戦だったりした。そんな試合の勝敗を決めたのは、後半途中から出場したゴン中山三十六歳の、衰えを知らない闘争心だったと言っていいと思う。
後半、先に動いたのはセレッソだった。中盤のディフェンシヴな選手に替えて西澤を投入、試合の流れを引き寄せにかかる。それに対する磐田もやや遅れてルーキー成岡を下げて中山を入れてきた。
西澤の投入も見る人から見れば効果的な交替だったのだろう。けれども中山はそういうレベルではなかった。誰が見ても中山効果はあきらかだった。彼がピッチに建ってわずか何分かのあいだにジュビロは怒濤の攻撃を仕掛け始め、結局そのうちのひとつが決勝ゴールにつながったのだから。ピッチに立っただけであれだけチームに勢いを与えられる選手はほかにいない。しかもそれがチーム最高年齢の三十六歳の選手なんだから恐れ入る。今年は故障のため前田にスタメンを譲って、ほとんど出番がなかったような印象だったから、さすがの中山もそろそろ限界なんじゃないかと思っていたのだけれども、この日のプレーを見る限りは今年もまだまだ元気な姿を見せてくれそうだ。同世代の人間として、とても嬉しかった。
決勝の場面は右サイドのロングボールに中山が懸命に追いつき、その折り返しを受けた前田がワンタッチでゴール前のグラウにパス、グラウが個人技でマークのDFを交わしてゴールへと流し込むような落ち着いたシュートを決めたものだった。去年グラウを初めて見た時には、磐田も随分と役に立たなさそうなブラジル人を連れてきたなあと思ったものだったけれど、一年を終えてみればJリーグの得点王争いに絡み、天皇杯でも6ゴールをあげてチームを優勝に導く大活躍。この人にも大変おみそれした。まだまだサッカーも勉強が足りないと思う今日この頃。
ともかくこの一点でジュビロが俄然有利、勝負あったかと思ったのだけれど、その後に殊勲者のグラウが二枚目のイエローカードをもらって退場になってしまうというアクシデントがある。おかげで試合は最後まで予断を許さないおもしろい展開になった。
グラウの退場に関してはやや可哀想かなと思わないでもない。一枚目はゴールを決めた際に喜びすぎてレフェリーのひんしゅくを買ったものだったし。ただ二枚目は相手のFKの際に相手選手をつかんで倒してしまったというもの。グラウ曰く、あれは相手がわざと大袈裟に倒れたんだということだけれど、あの場面で相手に手をかけた時点で遅延好意と取られても仕方ない部分がある。せっかくの優勝の喜びにちょっとばかりケチがついてしまったグラウには同情するけれど、おかげでゲームがおもしろくなったのだから、これもサッカーの神様の味な采配だろう。
ま、そうはいっても試合は結局その後も動かないままゲームセットとなり、ジュビロ磐田がJリーグ発足後初となる天皇杯のタイトルを獲得したのだった。終わってみれば順当な結果だったことになるけれど、内容的にはとても見所の多い好ゲームだった。頭の痛みを我慢しながら見ていた甲斐があったってもんだ。
試合後に大久保が悔しさのあまり大泣きしていたそうだ。三十六歳の中山の素晴らしいプレーを見たあとで二十一歳の大久保が悔し泣きしていたという話を知り、日本のサッカーも捨てたもんじゃないじゃないかと思った。今年も僕はきっとたくさんサッカーを見ることになるだろう。スタジアムに足を運ぶ余裕がないのが申し訳ないけれども、陰ながら日本サッカーを応援してゆきたいと思っている。
(Jan 03, 2004)