2020年11月の本
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- ラフカディオ・ハーンのクレオール料理読本 ラフカディオ・ハーン
ラフカディオ・ハーンのクレオール料理読本
ラフカディオ・ハーン/河島弘美・監修、鈴木あかね・訳/CCCメディアハウス
『怪談』で有名な小泉八雲ことラフカディオ・ハーンは来日する前、三十代の前半にニューオリンズで新聞記者をしていたそうで、そのころに現地の料理のレシピを熱心に集めて紹介した記事を一冊の本にまとめたのがこの本。
ニューオリンズ好きなうちの奥さんの琴線に触れること間違いなしの一冊なので、試しに買って読んでみてけれど、でもこれは正直、実用性はあまりないと思う。
なんたって、時は十九世紀(ウィキペディアによると、小泉八雲は東京大学で漱石の前任教授だったそうだ)。電子レンジどころか冷蔵庫もない時代のレシピだから、いまの料理とは勝手が違いすぎる。
パンを焼くにもイーストを手作りするところから始まるし、お酢とかケチャップとか手作りだし。オレンジ酒の作り方というから、梅酒のようななものを想像していると、オレンジ果汁を発酵させちゃうし(違法じゃん)。
ほうれん草を三十分茹でろとか、パスタを何時間も茹でろとか、これって翻訳あってんのかなって思うようなところもある。様々なデザートの作り方にしても、ほとんどが小麦粉と砂糖と角が立つまで泡立てた卵白をあわせてうんぬん。料理に疎い僕にはどこがどう違うんだかわからない。
あと、ニューオリンズ料理といえば、真っ先に思い出すのはガンボだけれど――この本ではガンボではなくゴンボと呼ばれている(フランス語らしい)――、その作り方(p.35)は、鶏などの余り肉を切り分けて、塩、こしょう、その他の香草(それがなんだかを知りたい)を加えて、炒めて煮込むだけ。食卓に出る前にオクラを加えると独特の風味が出るんだそうだ。本当に? まるでガンボになる気がしない。
ということで、おそらくこの本のおかげで我が家の食卓で本場のニューオリンズの味が再現されることはまずなかろうと思われます。でもまぁ、十九世紀のニューオリンズの家庭料理についてのまとまった文献という意味で、民俗学的な意味ではなかなか貴重な一冊なのかなと思った。
最後に、あまりの簡単さにびっくりのレシピをひとつ紹介しておしまい。以下の本文のまま。
チキンカレー
鶏を切り分け、煮込み料理の要領で煮込む。できあがったらカレー粉を大さじ一加える。米を添えて食卓へ。(p.92)
さあ、どなたかお試しあれ。
(Nov. 08, 2020)