2011年5月の本
Index
- 『英雄を謳うまい』 レイモンド・カーヴァー
英雄を謳うまい
レイモンド・カーヴァー/村上春樹・訳/村上春樹翻訳ライブラリー
『ファイアズ(炎)』 と同じく、春樹氏いうところのレイモンド・カーヴァー全集における「落ち穂拾い」的な作品集その二。
そんな内容だからというわけでもないんだけれど、読み始めてはみたものの、いまひとつ気分が乗らず、読み終えるのに一ヵ月もかかってしまった。
べつに読みにくかったわけではなく、単に読まない日のほうが多かったため。最近、いかに本を読んでないかわかる。おかげでこれといって語ることもないという……。あぁ、駄目なやつ。
そうそう、僕はこれだけ読んでなお、レイモンド・カーヴァーという人のどこがそんなにすごいんだか、いまだにわからないのだけれど、この本に収録されている処女短篇 『怒りの季節』 を読んで、ちょっと感心した。
この本の序文でカーヴァーの奥さん、テス・ギャラガーが引きあいに出しているように、殺人や近親相姦があったことをほのめかすこの短編の書きっぷりには、たしかにフォークナーを思い出させるところがあるからだった(要するにこむずかしい)。
こういうところから出発した人が──というか、こういう作品が書ける人が──、すぐさま軌道修正して、のちにミニマリズムを代表する作家となったという事実には、ちょっとばかり驚いた。
この一点だけ見ても、やっぱカーヴァーはすごいのかもしれないと思ったりする。で、そんな風に思う僕はやっぱり駄目なやつだと思う。あぁ。
(May 29, 2011)