2015年9月の音楽

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  1. 愛すべき今日 / エレファントカシマシ

愛すべき今日

エレファントカシマシ / 2015 / CD+DVD

愛すべき今日(初回限定盤)(DVD付)

 前作『Destiny』から一年三ヶ月ぶりとなるエレカシのニューシングル。アルバムはずいぶん長いこと出てないなと思っていたけれど、よもやシングルもそんなにあいだが空いているとは思わなかった。
 収録曲は三曲で、タイトル・ナンバーはポピュラー路線の宮本節の典型って感じの曲。ミドル・テンポのキャッチーなメロディーに乗せて、輝ける明日とやらを力強く歌い上げている。とくべつ新鮮味はないけれど、蔦谷くんプロデュースによる、キラキラしたアレンジが眩しい――とか思うのは、たんに鉄琴がチリンチリン鳴っているアレンジのせいかもしれない。
 二曲目の『TEKUMAKUMAYAKON』は「テクマクマヤコン」というその奇抜なタイトルとおりの、奇をてらったナンバー。宮本のボーカルをひとり多重録音した、よもやのクイーン・オマージュのコーラス・ワークがびっくりな、エレカシ初の四つ打ちダンス・チューン。
 この曲のプロデュースを務める村山☆潤という人は、YUIのバンド、FLOWER FLOWERのキーボードの人だそうで、ウィキで調べたら、プロデューサーとして、僕の聴かないような売れ筋のアーティストを数多く手掛けていた。さすが名前に星印が入っているだけのことはある(チャラい)。
 そういう人を呼んできて、流行りの音に目を配って作っただけあって、その音響は過去最高にマーケット寄り。いっちゃなんだが、エレカシにとっては、あきらかな付け焼刃だろう。シングルのカップリングだから、シーンに目配せして見ましたが、今後の主戦力にはとうていなりませんって曲だと思う。
 そのミスマッチがおもしろくないとは言わないけれど(とくにクイーン風のイントロは悪くない。DVD収録のPVがもろクイーンのぱくりなのも笑える。ちゃんと観ていないけど)、音響的には平凡な仕上がりだと思う。表現的な必然性から生まれたってよりは、いかにも企画ものって空気が漂っていて、いまいち好きになれない。曲自体は宮本らしいいい曲だけに、オーバー・プロデュースなのが残念な一曲。
 三曲目はすでにライブなどで発表済みの『めんどくせい』のスタジオ録音バージョン。これは宮本のセルフ・プロデュースで、もっとガリガリのラウドな音響になるかと思いきや、意外とすっきりとした仕上がりになっている。アウトロのギターリフとか、もろストーンズの『Can't You Hear Me Knocking』だし、途中のスピードが速くなる部分も『Midnight Rumber』あたりを思い出させるし、演奏的でストーンズ色が強く出ていて、この中ではいちばんエレカシっぽい。歌詞が下手に光あふれていないところにも共感できる。
 ということで、以上三曲、それぞれにプロデュースの違いで個性がはっきり出ているところが、今回のシングルの聴きどころだと思う。でもって、やはり僕としては宮本セルフ・プロデュースの『めんどくせい』がいちばん好きだった。
 エレカシ史上で考えると決して名曲ってわけでもない『めんどくせい』をいちばんいいって思っちゃうあたりが、このシングルと僕との距離感を物語っている。
(Sep 27, 2015)