2005年1月の音楽

Index

  1. Three Imaginary Boys / The Cure
  2. Love, Angel, Music, Baby / Gwen Stefani
  3. How To Dismantle An Atomic Bomb / U2
  4. Shelter / Lone Justice
  5. The Caution Horses / Cowboy Junkies
  6. Frank Black Francis / Frank Black

Three Imaginary Boys

The Cure / 1979,2004 / 2CD [Delux Edition]

Three Imaginary Boys (Dlx) (Dig)

 キュアーの作品がボーナス・ディスク付のデラックス・エディションでリイシューされ始めた。4月にはセカンド以降が三作同時にリリースされるらしく、今から戦々兢々としているのだけれど(われながら馬鹿な話だ)、それよりも先にまずは昨年リリースされたこのファースト・アルバムを聴かないといけない。
 僕がキュアーに{}まったのは 『Disintegration』 からで、さかのぼって聴いて盛りあがったのも 『Top』 できらびやかな音作りになってから以降だった。正直なところ、それまでの作品にはいまひとつ思い入れがない。当然このファーストもそれほど聴き込んだ記憶はない。だからそれほど期待はしていなかった。
 けれどひさしぶりに聴いてみたら、これが悪くない。デビュー・アルバムだけあって、音を出す姿勢に勢いが感じられて、とても初々しい気分になった。リマスターされた音の良さも手伝っているのかもしれないけれど、その辺の違いは聴き込みが甘いせいで、不覚にもよくわからなかった。
 なんにしろセカンド以降のミニマリズム的な雰囲気がこの時点ではまだそれほどでもなく、オルタナなロックバンドとしての若さがあふれていて、なかなかいいアルバムだと思った。ボーナス・ディスクも同じ理由で、思いのほかガチャガチャしていて楽しい。
(Jan 28, 2005)

Love, Angel, Music, Baby

Gwen Stefani / 2004 / CD

Love Angel Music Baby

 ノー・ダウトのボーカリスト、グウェン・スティファニー、初のソロ・アルバム。これがネリー・フーパー、ドクター・ドレ、ネプチューンズ、ダラス・オースティン、ジャム&ルイス等々、ブラック・ミュージックにそれほど強くない僕でも名前を知っている第一線の黒人プロデューサーを多数起用した、おそらくコンテンポラリーなブラック・ミュージックが好きな人の目から見たら贅沢きわまりない作品となっている。
 ただ黒人プロデューサーを全面的に起用したからといって、それで音自体が真っ黒いイメージになるかというと、不思議なもので、そうはなっていない。なぜそうなるかはわからないけれど、はやりこれは白人の作品だと思う。その辺の感覚はマドンナに通じるものを感じる。単にこの人のことをポスト・マドンナの最右翼だと思い込んでいるせいもあるかもしれない。なんたってこの人にはマドンナをひと回り大きくして、エロスを薄めて健康美を加えた、とでもいったようなイメージがあるので(そんなことないですか)。
 路線としてはノー・ダウトの最新作『Rock Steady』にとても近い印象を受けた。あれをもっとポップに展開するとこの作品になるというような。あのアルバムの音作りはベーシストであるトニー・カナルに負うところが大きいのかと思っていたけれど、どうやらそれだけというわけでもなかったらしい。このアルバムを聴く限り、グウェンという人もまさしくああいう音楽性を持っているようだ。
 とにかく音楽的にこの作品はノー・ダウトの延長線上にある。そうした中でソロ・アルバムとして、もっともグウェンの個人的趣味が表れているのは、歌詞とビジュアルにジャパニーズ・カルチャーへのオマージュがあふれている点。パッキングのビニールに貼ってあったステッカーには、アルバムタイトルを日本語に訳した手書きの文字で、「愛・天使・音楽・ベイビー」なんて書いてあった。 『Hurajuku Girl』(原宿ガール!)ではヒステリック・グラマーやら、ビビアン・ウェストウッドやらのブランド名が連呼され、日本語で「ちょ~かわい~」なんて高校生の声が思いっきりフィーチャーされていたりする。
 ノー・ダウトのアルバム・ジャケットを見るたびに、この人たちはどうしてこんな趣味の悪いビジュアル・センスをしているのだろうと不思議に思っていたものだけれど、そのへんの感性がゆえに、現在の日本の派手でキュートなガール・ファッションに大いに共感を覚えているということなんだろう。わかりやすいというかなんというか。音楽的にはそれほど強く惹かれるものはないのだけれど、とりあえず、そのへんがとてもおもしろかった。
(Jan 28, 2005)

How To Dismantle An Atomic Bomb

U2 / 2004 / CD

How to Dismantle an Atomic Bomb

 前作から実に4年ぶりとなるU2の11作目。その間にDVDが2作も出ているせいか、そんなにご無沙汰していたという気がしないのだけれど。
 前作 『All That You Can't Leave Behind』 は僕としてはいまいちだった。『Achtung Baby』 から続いていたダンス路線から、正統派ロック・フォーマットへと回帰したのが前作だったとするならば、その正統派ぶりがあまりピンと来なかったということなのかと思う。
 今回の作品もその前作を踏襲したような作品となっている。新しいことをしてリスナーを驚かせようとはせず、いい曲を書いて、それを持てる技を駆使して気持ちよく聴かせることを一番に考えた、そんな印象を受ける作品だ。
 でもって、不思議なもので、そうした姿勢がなんとなくぴんとこなかった前作とは違い、今作ではそれがきちんと僕に届いている。とてもよいアルバムだと思う。
(Jan 28, 2005)

Shelter

Lone Justice / 1986 / CD

Shelter

 マリア・マッキーの4枚目──もう2年前のアルバムなんすね──に感心してから、いずれはCDで買い直さないとと思っていたローン・ジャスティスのセカンド・アルバム(アナログ盤を所有)。
 デビュー・アルバムにあった過剰なまでの元気さは失われているし、80年代ならではの大袈裟な音作りのせいもあって、出来はいまひとつという印象。
 それでもいい曲はいくつかある。中でも "Inspiration" はかなり好きだった。これを聴くと、もう少し音が良ければと残念になる。もっとミックスがクリアでギターが前に出ていれば、さらに格好よくなるのに。惜しい。
(Jan 28, 2005)

The Caution Horses

Cowboy Junkies / 1990 / CD

Caution Horses

 こちらもアナログ盤からの買い替えとなるカウボーイ・ジャンキーズのメジャーでのセカンド・アルバム。インディー時代の『Whites Off Earth Now』 もCDで欲しかったのに、そちらは現在、廃盤になっているみたいで残念だ。
 傑作 『The Trinity Session』 が午前2時の闇に音楽という形を与えたようなアルバムだとしたら、こちらは午前5時半の澄んだ空気を音にしたようなアルバムだ。ただそれゆえに、前作と同じような闇の深さを期待した当時の僕にとっては、やや期待外れな印象が強かった。あらためて聴いてみると、決して悪い作品はないのだけれど。
 なにはともあれ、このアルバムには、カバーを得意とする彼らの作品の中でもとびっきりの最高傑作である 『Powderfinger』 が収録されている。ニール・ヤングのオリジナルもいいけれど、このバージョンの醸し出す情感は見事にそれを超えていると僕は思っている。この一曲だけでアルバム一枚分の価値がある。
(Jan 28, 2005)

Frank Black Francis

Frank Black / 2004 / 2CD

Frank Black Francis

 フランク・ブラック名義ながら、取り上げられている楽曲はすべてピクシーズ時代の作品という2枚組の企画アルバム。
 一枚目がピクシーズ、デビュー当時のアコギ弾き語りのデモ音源、二枚目が現在のフランク・ブラックによるピクシーズの楽曲のリメイクという内容になっている。リメイクといってもバンドではなく、弾き語りにシンセとトランペットで色付けをしましたという内容だ。フランク・ブラックのコアなファンの人ならばこれでもいいのかもしれないけれど、ピクシーズというバンドが大好きな人ならば、この音で満足できるはずがない。
 ピクシーズの魅力は、なんといってもあの壊れかかった音にこそあるのだから、それをまるっきり剥ぎ落としてしまったこのアルバムがおもしろいわけがない。ジャンボ機の機能美や構造美に憧れている人間に、同じように飛ぶのだから、これも好きでしょうと紙飛行機を渡すようなものだ。ちょっと発想がずれている気がする。
 新旧の音源をCD二枚組でカップリングした企画自体はおもしろいと思うものの、残念ながらその対象が悪かった。ひどい言い方になってしまうけれど、バンドの性格からのずれが大きい分、最初から失敗が運命づけられている作品だったと思う。これを聞く時間があるならば、ピクシーズのアルバムを何回でも繰り返して聴く方がいい。実際に僕はこれを聴いているあいだ、途中でやめてピクシーズを聴きたくなってしまって仕方なかった。
(Jan 28, 2005)