2019年8月の映画

Index

  1. 最強のふたり
  2. レディ・バード
  3. ジョン・ウィック

最強のふたり

エリック・トレダノ監督/フランソワ・クリュゼ、オマール・シー/2011年/フランス/Amazon Prime Video

最強のふたり (字幕版)

 iMDBのトップ250で上位(現在40位)に入っているので観てみようと思った作品。
 なんでも東京国際映画祭でグランプリをとって、日本で上映されたフランス映画では興行成績が歴代一位なんだそうだけれど、そんな人気作とはつゆ知らず。それどころか、フランス映画ということさえ知らず、ずっとアメリカの映画だと思い込んでいて、観初めてから、「え、英語じゃないのか!」と驚いたくらいだった。
 アメリカの作品だと思い込んでいたのは、この映画のあらすじ――全身麻痺の大富豪が酔狂で雇った黒人の介護人と深い友情を育んでゆくという実話ベースの物語――がいかにもハリウッドっぽかったから。
 いざ観てみたら、音楽の使い方なんかは、いかにもフランス映画って感じだけれど、作品全体のテイストはこれまでに僕が観てきたフランス映画のなかでは、もっともアメリカンなタッチだった。つまりとても観やすかった。
 この手の作品だと主人公のふたりが親しくなったあとで喧嘩別れして仲直りして……みたいな話になりそうなところだけれど、この映画の場合そうではなく、お互いが最初から最後まで相手を尊重しあって良好な関係を築いているところがいい。観ていて気持ちいい。
 黒人のドリス(オマール・シー)はそもそも介護人になりたくてフィリップのもとを訪れたわけではなく、たんに失業保険をもらうために必要な就活の実績を作るため、最初から不採用になるつもりでフィリップ(フランソワ・クリュゼ)のもとへとやってきた前科者だ。
 フィリップはそんな彼に興味を持ち、介護人に雇って自分の面倒を見させる。実家を追い出されて住む場所にも困っていたドリスは、豪邸での住み込みの仕事と大富豪の挑発の言葉につられて、その仕事を引き受ける。
 ただ、もとからそんな仕事に興味のないドリスの態度はいたってニュートラル。相手が障害者だからといって大げさに同情を寄せたり、媚を売ったりしない。自分を対等に扱う、いたって自然体のドリスに好意を持ったフィリップは、周囲の心配をよそに、日々ドリスとの交友関係を深めてゆく。
 生まれも育ちも年齢も肌の色も違うふたりが、そんなお互いの違いを超えて友情を育んでゆく。この映画はそんないかにも感動的な話を、あまりべたべたしない絶妙な距離感の演出で描いてみせる。
 なるほど、iMDBの好評価や東京国際映画祭のグランプリも納得のいい映画でした。
(Aug. 13, 2019)

レディ・バード

グレタ・ガーウィグ監督/シアーシャ・ローナン、ローリー・メトカーフ/2017年/アメリカ/Amazon Prime Video

レディ・バード (字幕版)

 カリフォルニア州のサクラメントという保守的な都市で生まれ育った高校生の女の子のいびつな恋と友情を描く青春映画。要するに『JUNO/ジュノ』とか『ゴーストワールド』とかを思い出させるタイプの作品――って、たんにどれも高校生の女の子が主人公ってだけで、共通点は少ない?
 この映画のポイントは主人公のクリスティン(シアーシャ・ローナン)の性格付けだと思う。特別な才能があるでもなく、美女ともいえず、平凡な生まれ故郷での平凡な毎日にうんざりしている平凡な女の子。
 でもそんな彼女には、その平凡さに埋没したままでいることをよしとぜず、変化を求めて行動を起こす積極性がある。動きがあるところには、必ずなんらかの影響が出る。彼女が行動することで生まれた波紋が彼女の生活にさまざまな変化をもたらしてゆく。まあ、たいてい、あんまりいいことにはならないけれど。
 タイトルの『レディ・バード』はクリスティンが自分で自分につけたニックネーム。要するに「お蝶夫人」みたいな?
 まぁ、お蝶夫人の場合は自分からそう名乗っているわけじゃないだろうけど。一方こちらの主人公は親に与えられた名前が好きじゃないので、自らレディ・バードを名乗り、まわりにも自分をそう呼ぶように要求する。
 英語が得意じゃないので、趣味がいいんだか悪いんだかわかりませんが。おそらくあまりクールじゃないんだろうなって気がする。そのへんのずれ加減がこの映画の性格をもっとも雄弁に物語っているように思う。
 いずれにせよ、思春期の女の子の葛藤をシニカルなユーモアをもって描いているあたりが女性監督ならでは。こういう映画はなかなか男性には撮れない。
(Aug. 13, 2019)

ジョン・ウィック

チャド・スタエルスキ監督/キアヌ・リーヴス、ミカエル・ニクヴィスト/2014年/アメリカ/Netflix

ジョン・ウィック(字幕版)

 この秋に第三作が公開されるキアヌ・リーヴス主演のバイオレンス・アクションの一本目。
 続編が作られるくらいだから、少なくても最初のやつはおもしろいんだろうと思って観てみた。キアヌ・リーヴスの映画を観るのもすごくひさしぶりだ。
 マフィアのボスの馬鹿息子に亡き妻が残した愛犬を殺された殺し屋が、復讐のためにマフィアを全滅させるという話で、いざ戦いが始まってからは、全編これ銃撃戦の嵐。どこを切ってもガン・ファイトと格闘シーンしかないんじゃないかって印象の作品だった。ということで、おもしろかったけれど、若干単調かなと。
 とりあえず、マフィアのボス(ミカエル・ニクヴィスト)が伝説の殺し屋である主人公(実は組織の恩人)を相手に息子がトラブルを起こしたと知ってショックを受けるシーンがよいです。この馬鹿息子が、なんてことしてくれちゃったんだよ~ってあの感じ。あれがこの映画の醍醐味でしょう。まあ、もうちょっとケレンミがあってもよかったかなと思うけど。
 あと、殺し屋たち御用達のホテルとか、殺人後の死体処理を手がける掃除屋さんとか、殺し屋業界のディテールの設定がおもしろかった。
(Aug. 13, 2019)