2017年6月の映画

Index

  1. スポットライト 世紀のスクープ
  2. ウディ・アレンのバナナ
  3. X-MEN:アポカリプス
  4. 地球は女で回ってる

スポットライト 世紀のスクープ

トム・マッカーシー監督/マーク・ラファロ、マイケル・キートン、レイチェル・マクアダムス/2015年/アメリカ/WOWOW録画

スポットライト 世紀のスクープ (字幕版)

 去年のアカデミー賞で作品賞に輝に輝いた実話ドラマ。
 描かれるのは十五年前に実際にあった事件。カソリック教会の神父が少年たちに性的虐待を行っていて、なおかつそれを協会が組織ぐるみで隠ぺいしていたという事実をボストングローブ紙がスクープしたことで一大スキャンダルとなったとのこと(最近の話なのに知らなかった)。この映画はその事件をとくに煽情的になることなく、テンポよく描いてゆく。派手すぎず、地味すぎず。そのさじ加減がちょうどいい。とてもいい映画だと思う。
 物語はボストングローヴに新しい局長(リーヴ・シュレイバー)が就任するところから始まる。よくあるパターンでこの人が悪いやつで、スクープを追いかける記者たちに圧力をかけて事件をもみ消そうとするのかと思ったら、まったく反対。触らぬ神にたたりなしとばかりに見過ごされてきたその事件にスポットライトを当てるよう指示を出したのがこの人だった。
 外様ゆえにその土地の因習に染まらぬ、まっとうな精神を持ったリーダーの指示を受けて、マイケル・キートン、マーク・ラファロ、レイチェル・マクアダムス、ブライン・ダーシー・ジェイムズの四人からなる連載コラム《スポットライト》チームが事件を追ってゆく。調査の過程で徐々に事件の真相が明らかになってゆくところにミステリ的なおもしろみがあるのがいい。
 監督のトム・マッカーシー、あまり有名な人ではないから若いのかと思ったら、なんと僕と同い年だった。俳優や脚本家としても地道に仕事をつづけてきた人らしく、監督としてはこれがまだ六作目。とはいえ、僕が知っているような作品はゼロ。そんな人がこの年になって、こんないい映画を作ってオスカーを獲得したという事実には、同い年としてはなかなか励まされるものがある。
(Jun 03, 2017)

ウディ・アレンのバナナ

ウディ・アレン監督/ウディ・アレン、ルイーズ・ラッサー/1971年/アメリカ/DVD

ウディ・アレンのバナナ [DVD]

 ウディ・アレンの監督第二作目。
 この二年前に撮った『泥棒野郎』という作品がデビュー作のようだけれど、その映画は版権の都合か、絶版のようなので、現時点でふつうに観ることができるもっとも古いウディ・アレン監督作品がおそらくこれ。
 内容は政治活動に熱をあげる女の子に恋をした冴えない青年がひょんなことから南米の独裁者に祭りあげられるというポリティカルでナンセンスなコメディ。
 この映画は最初と最後に本編とはまったく違った演出を施しているところがふるっている。オープニングでいきなり軍事クーデターの模様をニュース番組のパロディとして描き、エンディングでも同じパターンでもって、今度は新婚カップルの初夜の模様をボクシングの実況中継のパロディとして描いてみせる。どちらも不謹慎きわまりなくて、困った笑いを誘う。この辺の笑いの質には北野武に近いものがある気がする(たけしは政治もセックスも描かないけれど)。コメディアン出身の映画監督ならではのセンスなのかもしれない。
 ま、基本はふざけた映画なんだけれど、最後のほうで主人公カップルが肩を並べて歩いているシーンにはその後のロマンティック・コメディに通じるリリカルな感触があったりもする。政治的でありつつ、馬鹿らしく、ちょっぴりセクシーでロマンチック。この映画にはそんなざまざまな要素が雑然と詰め込まれている。
 映画としてはさすがに古いなぁと思わせるシーンが多くて、すんなりと楽しみきれたとはいえないけれど、それでもひとりの才能あふれる(もてない)若者が人とは違うおもしろい映画を撮ろうとした意欲はビシバシ伝わってくる異色作。
 まぁ、若いったってこのときウディ・アレンはすでに三十六なわけだけど。
(Jun 18, 2017)

X-MEN:アポカリプス

ブライアン・シンガー監督/ジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー/2016年/アメリカ/WOWOW録画

X-MEN:アポカリプス   (字幕版)

 プロフェッサーXらの若き日の姿を描くX-MEN新シリーズの三作目。今回は古代エジプトで絶大な力を誇った不老不死のミュータント、アポカリプスが現代に甦ってプロフェッサーXらと対決するという話。
 シリーズ一作目では若くて溌剌としていたプロフェッサーXことチャールズ・エクゼビアが、前作で車椅子の身となり、今回の作品でついにスキンヘッドになる。要するにここまでの三作でもってプロフェッサーXがいかにして僕らの知っているあの姿になったかを描いているわけで、次回作の制作もすでに決まっているようではあるけれど、ここまでの三本をひと区切りとして、「プロフェッサーXはいかにしてプロフェッサーXになりしか」を描いた三部作として見てさしつかえなかろうと思います。
 ただ、今回は悪役のアポカリプスが強力すぎて、世紀末的なカタストロフが起こってしまうのが難点。このところのマーベル作品のつねで、話が派手すぎて、ヒューマンドラマ的な部分での感動が薄くなっている。せっかく若き日のジーン・グレイ(ソフィー・ターナー)やサイクロップス(タイ・シェリダン)らが登場してきて、旧シリーズとのリンクが深まっただけに、あまりその部分が印象に残らないのが残念だ。
 旧シリーズとのつながりということでいうと、旧第二作目に重要な役どころで登場しながら、その続編では姿を消してしまった黒い悪魔キャラ、ナイト・クローラー(コディ・スミット=マクフィー)がほぼ同じ設定の若者として登場しているのが嬉しいところ。あと、クイックシルバー(エヴァン・ピーターズ)が前作につづき今回もおいしいところを持っていっている。
 そうそう、ウルヴァリンもなかなか意表をついた形で登場している。一本目みたいにちょい役かと思ったら、出番こそ少ないけれど、きちんと前作からの流れを受け、旧シリーズ一作目へとつながる展開を描いているところがなにげに重要。エンド・クレジットのあとには絶賛公開中の新作『ローガン』への伏線らしきラスト・シーンもあるし、やはりこのシリーズはウルヴァリン抜きには語れないらしい。
(Jun 18, 2017)

地球は女で回ってる

ウディ・アレン監督/ウディ・アレン、エリザベス・シュー/1997年/アメリカ/DVD

地球は女で回ってる(字幕版)

 ウディ・アレン演じる離婚歴三回の小説家の乱れた女性遍歴を描いたコメディ。
 この映画のポイントは、作家である主人公の物語と並行して、彼の書いた小説を映像化したパートが次々と挿入されること。この人の作品が私小説的だということで、そられが本編の物語を微妙に形と配役を変えてリプレイするような形になっている。この二重構造のおかげでやたらと登場人物が多くて、ぼうっと観ていたら、誰が誰やら、どちらが現実でどちらがフィクションか、よくわからなくなってしまった。
 なんにしろ、最初からキッチンでの不倫シーンがあったりするし、全編にわたってセックス絡みの話が多くて、ウディ・アレン作品のなかでも、かなり下ネタ度の高い作品だと思う。
 キャスティングはなかなか豪華で、ロビン・ウィリアムズ、デミ・ムーア、トビー・マグワイア、ビリー・クリスタルなどが出演している。ただし、ビリー・クリスタル以外の人はフィクション部分のキャラクターで、だから登場シーンはそれぞれほんのわずか。ロビン・ウィリアムズなんてカメラのピントがあわない俳優というナンセンスな役どころで、まともに顔が映るシーンがひとつもなかったりする。なんちゅう贅沢な使い方をしていることやら(でもこのシーンは傑作)。
 そのほか、キャスティングで注目すべきは、二番目の奥さんの友達役で『マンハッタン』のマリエル・ヘミングウェイが出演していること(ウディ・アレンが息子に不謹慎な話をしてるのを耳にして顔をしかめる女性)。あと、ウディ・アレンの若い恋人役のエリザベス・シューという女性は『バック・トゥ・ザ・フューチャー Part2』のマーティのガールフレンドとのこと。へー。
(Jun 25, 2017)