2016年10月の映画

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  1. ファンタスティック Mr. FOX

ファンタスティック Mr. FOX

ウェス・アンダーソン監督/【声】ジョージ・クルーニー、メリル・ストリープ/2009年/アメリカ/NETFLIX

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 NETFLIXで映画を観ようその二(といいながらその二で終わってしまった)は、ウェス・アンダーソン監督によるストップ・モーション・アニメーションの秀作。原作は『チャーリーとチョコレート工場』で有名なロアルド・ダールによる児童文学とのこと。『すばらしき父さん狐』というタイトルで翻訳が出ていてちょっと笑えた。
 いやしかし、この作品も見事にウェス・アンダーソン印。アニメーションなのに実写のときとほとんどテイストが変わらないところがすごい。というか、もともと意図的なB級感が持ち味の人だから、ストップ・モーションという手法はまさにどんぴしゃな感じ。
 手足の長いミスター・フォックスたちのプロポーションこそティム・バートンのそれに似ているけれど、ウェス・アンダーソンの場合、キャラクター・デザイン自体はバートンほど突飛じゃない。狐たちのデザインは実際の動物からそれほど逸脱していない。だからそれほどキュートじゃないというか、『ナイトメア・ビフォー・クリスマス』のように、キャラクター・グッズが溢れたりはしそうにない。
 ではかわいくないかというと、そんなことはない。もともとウェス・アンダーソンの作風自体、どんな映画でもキャラクターは自然とキュートなので、それがアニメならばなおさらの感はある。でも単にかわいいだけじゃなくて、動物ならではの残酷さが垣間見える食事シーンとかがあるのがおもしろい。目がぐるぐるしちゃうあぶないオポッサム(たぶんうちの奥さんのいちばんのお気に入りキャラ)とかもじつに味があっていい。動物が対峙する人間たちの悪そうな感じとかも、単に子供向けの人畜無害なアニメーションに終わらない、大人目線ならではの懐の深さを感じさせる。
 あと、いいなぁと思ったのが、動物なのに唯一人間の側に立っているネズミ。ネズミなのにキツネと同じ大きさで、なおかつカンフー使いという。そういう得体の知れない悪役キャラをなんの説明もなくさらっと登場させるところがいい。こういうつじつまの合わなさもウェス・アンダーソンが童心を忘れていないからこその自由さの表れだと思う。やっぱこの人って特別だなぁと思いました。
 あと、ジョージ・クルーニーによるミスター・フォックスの吹替も意外なはまりっぷりでした。おみごと。
(Oct 09, 2016)