2011年2月の映画

Index

  1. 第9地区
  2. FRINGE/フリンジ ファースト・シーズン
  3. 恋はデジャ・ブ
  4. エイリアンVSプレデター
  5. バレンタインデー
  6. クローサー

第9地区

ニール・ブロムカンプ監督/シャールト・コプリー/2009年/アメリカ、南アフリカ他/BD

第9地区 [DVD]

 これに関しては前評判がよかったので、ちょっと期待しすぎた感があった。決してつまらなかったわけではないし、ドキュメンタリー・タッチの導入部とか、スピーディーなアクションとか、ひょんなことからワン・アンド・オンリーな存在となる主人公が漂わすアンチ・ヒーローな悲壮感とか、冴えているところもたくさんあって、評価が高いのはわからなくもないんだけれど、それでもあらすじは荒唐無稽だし、残酷シーンは多いしで、いまいち乗りきれなかった。
 だいたいにして、理屈屋の僕は、巨大UFOを何年間も空中に浮かんだままにさせたり、人を一瞬で消し去るほどの破壊力を持った武器が作れる宇宙人が、地球人に難民扱いされてスラム街に隔離される状況に甘んじるというシチュエーションが、すんなり受け入れられない。宇宙人の宇宙船の燃料を顔にかぶっただけの主人公が、なぜか宇宙人にメタモルフォーゼしてしまう(しかも手だけが異常に速く)って展開も、気分的にすっきりしないし。ティム・バートンの映画のように、はじめからコメディとして開き直っているんならばともかく、これは終始シリアスなぶん、そういう筋の通らなさが粗として目についてしまった。
 あとね、やっぱ宇宙人がかわいくない。字幕では「エビ」と呼ばれていたけれど、あれはどちらかというとバッタでしょう(ちなみに英語では「Prawn」とのこと)。その昆虫的なデザインのせいで、あまりに共感できなさすぎる。あれじゃ彼らを隔離したくなるのも、もっともに思えてしまう。この宇宙人でアパルトヘイトを引きあいに出されたんじゃ、南アの人もかわいそうだ。できればもうちょっと同情の余地のある宇宙人にして欲しかった。
 でもまぁ、あの宇宙人だからこそ、なんともいえない味わいが生まれているって部分もなきにしもあらず……だろうか。
(Feb 21, 2011)

FRINGE/フリンジ ファースト・シーズン

J.J.エイブラムス製作総指揮/アナ・トーヴ、ジョシュア・ジャクソン/2008年/アメリカ/スカパー&レンタルDVD(吹替)

FRINGE / フリンジ 〈ファースト・シーズン〉コレクターズ・ボックス [Blu-ray]

 ひさしぶりに海外ドラマをワン・シーズンまとめて、どーんと観た。FBI捜査官オリヴィア・ダナム(アナ・トーヴ)が天才老科学者親子とともに超常現象の謎を追ってゆくという、『Xファイル』 に通じるミステリ・ドラマ。
 『Xファイル』 が超常現象を説明不能なまま扱っていたのに対して、こちらはそのタイトルの『フリンジ』が「エセ科学」を意味する「fringe science」から取られている通り、すべてに胡散くさい説明がつくのがミソ。しかもその大半に、なんとかと紙一重な老科学者、ウォルター・ビショップ博士(ジョン・ノーブル)が絡んでいるという。
 このウォルター叔父さんがあまりに科学のジャンルを超越してオール・マイティなので、毎回、おいそりゃないだろうって言いたくなる展開のオンパレードだったりする。このつつしみのなさを笑って楽しめりゃ勝ちって気がするんだけれど、逆に僕はそこが鼻についてしまい、いまいち入れ込めなかった。悪くはないけれど、やはりモルダー&スカリーのコンビにはかなわないかなと思う。
 まあ、シリーズがつづいて、キャラクターに馴染みが出てくるとまた話も変わるかもしれないけれど、とりあえず現時点ではここでやめても後悔しないかなという感じ。なのでセカンド・シーズン以降はいつ観るか未定。
 そうそう、このドラマ、たまたまスカパーで1~7話を無料放送していたので、いい機会だから観てみることにしたんだけれど(その後はレンタル)、あいにくそれが吹替だったので、いつもだったら字幕派の僕が、珍しくすべて吹替で観てしまった。それがいまいちな印象の理由のひとつになっている気もする。
(Feb 22, 2011)

恋はデジャ・ブ

ハロルド・ライミス監督/ビル・マーレイ、アンディ・マクダウェル/1993年/アメリカ/レンタルDVD

恋はデジャ・ブ [DVD]

 なにかの映画のDVDに入っていた予告編を見て、おもしろそうだから今度観ようと思っていた作品。
 これ、主人公がおんなじ一日を延々と繰り返すって話だってのは、その予告編を見て知っていたけれど、その理由がまったく説明されないってのが予想外だった。神様がどうしたとか、時空の歪みがなんだとか、そういう説明がまったくない(僕らが見逃したんじゃなければ)。そこがすごいと思った。
 まったく乗り気のしないまま、とある田舎町で開かれる毎年恒例のお祭りを取材に出かけたお天気予報士の主人公は、なぜかその翌日から朝めざめるたびに、同じ一日を過ごす羽目になる。
 その不条理な状況に対する彼の心の変化がこの映画の肝。最初は驚きとまどい、やがて開き直って悪さを始め、ついには絶望して自殺をはかる(それも何度も何度も)。それでも彼は死に切れず、翌朝になるとまた同じ日の朝に目を覚ます。
 最終的に彼はそんな自分の運命を受け入れて、それゆえに救われることになる。基本は単純なコメディなのに、その展開がなんとなく哲学的な{おもむき}さえ感じさせるところがすごい。ちょっとばかり感心しました。
 ちなみに監督のハロルド・ライミスという人、なんとなく聞いた名前だと思ったら、『ゴーストバスターズ』 の主役の三人のうちのひとりでした。とかいって、一番めだたない人だから、いまいち顔が思い浮かばないところが情けない。
(Feb 22, 2011)

エイリアンVSプレデター

ポール・W・S・アンダーソン監督/サナ・レイサン、ランス・ヘンリクセン/2004年/アメリカ/BS録画

エイリアンVS.プレデター 完全版 [DVD]

 ここんところ、どうも精神的に疲れているみたいで、内容の濃そうな映画を観る気になれない。なのでこういう、あたりさわりのない、観ないで死んでも後悔しなさそうな映画をつづけて観ては、なんだかなぁ……とか思っている。われながら馬鹿みたいだと思う。
 この映画は、映像的にもストーリー的にも、まるでテレビゲームのよう。古代遺跡を探してダンジョンに迷い込んだら、そこに最強のモンスターがいて、チーム全滅、ゲームオーバー……みたいな話で。なんとなく映画を観たというより、人がテレビゲームをやっているのを横目で見ているのに近い気分になる作品だった。
 でも、2時間で終わるテレビゲームなんてないので、それを考えれば、そういうゲーム感覚を2時間たらずの実写+CGで味わえるんならば、それはそれで悪くないのかなと。変に物語を引っぱらず、2時間に満たない短さにさくっとまとめたのは正解だと思う。
 とはいえ、まあ、観ないで死んでも後悔しない映画だという意見は変わらない。
(Feb 27, 2011)

バレンタインデー

ゲイリー・マーシャル監督/アシュトン・カッチャー/2010年/アメリカ/BS録画

バレンタインデー [DVD]

 『プリティ・ウーマン』 のゲイリー・マーシャル監督の最新作。
 この映画はとにかく出演している俳優陣がただひたすら豪華。ジュリア・ロバーツ、アン・ハサウェイ、ジェシカ・アルバ、ジェイミー・フォックス、クイーン・ラティファ、シャーリー・マクレーン、キャシー・ベイツ、ジェニファー・ガーナー、ブラッドリー・クーパー、パトリック・デンプシー、ヘクター・エリゾンド、さらにはテイラー・スウィフトと、僕が知っているだけでもこれだけ主演級の俳優陣が出ているんだから、それだけで観る価値がある……といいたいところなんだけれど。
 逆にいうと、そうした豪華さ以上の価値を見いだせない映画でもあった。シナリオがとってつけたようで、ちっとも胸に迫ってこない。群像劇だから仕方ない部分もあるのかもしれないけれど、もうちょっとなんとかならないもんかと思ってしまった。
 あえてよかった点をあげるならば、機内で知りあうジュリア・ロバーツとブラッドリー・クーパーのエピソード。このふたりは出番こそ少ないけれど、それぞれに落ちが効いた役どころで、それなりに心温まるものがあった。まあ、よかったのは落ちの部分だけって気がしないでもないけれど。
 あと、アン・ハサウェイの役まわりも、ちょっとマンガ的すぎる嫌いはあったけれど、それなりに好きでした。いや、ケチつけたわりには、彼女の役どころ見たさに、いずれ見直したくなるかもしれない。
(Feb 27, 2011)

クローサー

マイク・ニコルズ監督/ジュリア・ロバーツ、ナタリー・ポートマン、ジュード・ロウ、クライヴ・オーウェン/2004年/アメリカ/レンタルDVD

クローサー [DVD]

 なんだか恋愛にまつわる男性心理のネガティブな部分ばかりを見せつけられるような映画だった。
 過剰な性欲と独占欲とをむきだしにして自分勝手にふるまう男ふたりと、そんな彼らに振りまわされる女性ふたり。主要な登場人物は、主演のこの四人だけ。彼と彼女ら四人の四角関係がとびとびのエピソードの連続の中で描かれてゆく。
 クライヴ・オーウェン演じるラリーは職場のPCで、テレフォン・セックスならぬインターネットでのチャット・セックス(?)にふけるような医者だし、一方のジュード・ロウ演じるダンは、女になりすましてその相手をするような悪趣味な作家で、どちらも共感しにくい。女性陣ふたりがそんな彼らに惹かれる心理もいまいちわからないから、どうも気分的に入れ込めなかった。話題になったナタリー・ポートマンのストリッパー役も、体あたりの演技なのはわかるけれど、どうにも清潔感がありすぎて、それっぽくない。
 あと、この話はもともとは舞台劇なんだそうで、そのためシーンが変わったとたんに、説明もないまま何ヶ月かが過ぎていたりする。舞台ならば暗転があったりするので、その辺がスムーズに理解できるのかもしれないけれど、この映画の場合はそうなっていないので、時間経過がややわかりにくかった。
 ということで、残念ながらいまいち楽しみきれない作品だったけれど、最後にナタリー・ポートマンがとある嘘をついていたことがあきらかになるところだけは、ちょっとばかり感心した。彼女が空港でパスポートを受け取るシーン、あれでいくぶん持ち直した。
(Feb 27, 2011)