2005年2月の映画

Index

  1. アメリ
  2. 三十九夜
  3. 恋人よ帰れ!わが胸に
  4. 裸足で散歩
  5. シャドウ・オブ・ヴァンパイア
  6. オペラハット

アメリ

ジャン=ピエール・ジュネ監督/オドレイ・トトゥ/2001年/フランス/BS録画

アメリ [DVD]

 トラウマだらけの少女時代を過ごし、内向的で空想癖のある孤独な女性へと成長した主人公アメリ(オドレイ・トトゥ)。ある日、自分の部屋に昔住んでいた少年が隠したまま忘れていった宝箱を見つけた彼女は、好奇心からそれを本来の持ち主──いまや孫もいる初老の男性──に返すことに決める。この行為をきっかけに周りの人々と(いささか間違った方法で)積極的に交流し始めた彼女は、やがて一人の気がかりな青年ニノ(マチュー・カソヴィッツ)と出会うことになる。彼が落としていった風変わりなアルバム──見知らぬ人たちが捨てていった証明写真を拾い集めたコレクション──に強い感銘を受けた彼女は、この男性とお近付きになるべく、独自のアプローチをかけ始めるのだった。
 あちらこちらにファンタジー・タッチの演出が施された、キュートで良質なロマンティック・コメディ。日本で大ヒットを飛ばしたのがよくわかる、なんとも可愛らしい作品だった。ただ可愛いといって済ませられない奇妙さもあって、それがまた人気の秘訣だろう。幼いアメリがウサギやクマの形をした雲を写真に撮っているシーンに代表される、なにげない遊び心満載なところがまた魅力的だ。
(Feb 07, 2005)

三十九夜

アルフレッド・ヒッチコック監督/ロバート・ドーナット、マデリーン・キャロル/1935年/イギリス/BS録画

三十九夜 [DVD]

 ミュージックホールで突然の銃声。逃げ出す観客の中に混じっていた主人公ハネー(ロバート・ドーナット)は、ひとりの女性に助けを求められた。スパイの動向を探るフリーランサーの調査員だというその女性は、ハネーがかくまうために連れ込んだ彼の部屋で、その夜のうちに何者かに刺殺されしまう。いまわの際に残したのは「次に狙われるのはあなたよ」という警告と、敵は「小指のない男」であるという情報、そして「三十九階段」という謎の言葉と、しるしのついたスコットランドの地図だった。アパートメントの外には張り込みを続けるあやしげな男が二人。身の危険を感じたハネーは、身を隠してスコットランドへ向かうのだけれど、その後すぐに死体が発見され、彼は容疑者として警察に追われる身となってしまう。
  『逃走迷路』 や 『北北西に進路を取れ』 の原型となった、ヒッチコックお得意のまきこまれ型サスペンス・ムービー。実際に 『逃走迷路』 はこの作品のアメリカ版という位置付けらしく、主人公が逃走中に出逢った美女と手錠でつながれたまま旅を続けるという展開はあの作品でも繰り返されることになる。
 ただ、いまひとつの出来だったあちらと比べると、こっちの方はコンパクトにまとまっているし、落ちも効いていて、なかなか出来がいい。特にスパイが機密情報を盗み出す手段が秀逸。コンピュータが普及した現代ならばありふれた話なのだけれど、それを今から70年も昔、コンピュータなんか影も形もなかった時代に、ああいうすっとぼけた形で見せていたという事実がとてもおもしろかった。
(Feb 08, 2005)

恋人よ帰れ!わが胸に

ビリー・ワイルダー監督/ジャック・レモン、ウォルター・マッソー/1966年/アメリカ/DVD

恋人よ帰れ!わが胸に [DVD]

 TVカメラマンのハリー(ジャック・レモン)はアメリカン・フットボールの中継中、黒人選手に激突されて入院の憂き目に。彼の義兄で弁護士のウィリー(ウォルター・マッソー)はこれに目をつけ、ハリーに重傷を偽らせて、100万ドルの賠償請求を起こす。別れた妻(ジュディ・ウェスト)を取り戻したい一心でしぶしぶ車椅子生活を続けるハリーだったけれど、彼に怪我を負わせたことを心に病み、足しげく通ってくる、人のいいブーン・ブーン・ジャクソン(ロン・リッチ)を騙していることに良心の呵責を禁じ得ず……。
 欲得のため、本来の姿を逸脱したポジションに置かれた登場人物たちの、不自然で居心地の悪い状況における行動の滑稽さを描いてみせるのがビリー・ワイルダーのコメディだとするならば、この作品もまさにそんな彼の十八番というべき作品。若干エンディングが甘すぎる嫌いがあるのがやや残念だけれど、まあなかなかの作品だ。
 ウォルター・マッソーのずる賢くバイタリティ溢れる弁護士役には、さすがアカデミー助演男優賞ものという味わいがある。まさに憎みきれないろくでなし。嫌なやつになる一歩手前で踏みとどまって見せる彼の演技力がこの映画を支えている。
(Feb 13, 2005)

裸足で散歩

ジーン・サックス監督/ロバート・レッドフォード、ジェーン・フォンダ/1967年/アメリカ/BS録画

裸足で散歩 [DVD]

 熱愛新婚カップルのポール(ロバート・レッドフォード)とコリー(ジェーン・フォンダ)。新婚初夜から一週間ホテルにこもりっぱなしというくらいアツアツの二人だけれど、いざ新生活となった途端にトラブル続出。コリーが選んだ新居は変人ばかりが住まうエレベーターなしのアパートメントの最上階で、壁は塗装仕掛かり、家具は届かない、天窓には穴、寝室は狭くてダブルベッドが入らない、シャワールームはバスタブなし、と欠点だらけだった。コリーはそれでもめげずに、母親(ミルドレッド・ナトウィック)を巻き込み、屋根裏に住む変人ヴェラスコ(シャルル・ボワイエ)と親交を深めて楽しそうだけれど、堅物のポールはそんな彼女についてゆけず、二人の関係は新婚早々破局の危機に。
  『名探偵登場』 のニール・サイモン脚本のコメディだということで見てみたのだけれど、残念ながらあまり趣味じゃなかった。この人の話って実は僕の趣味ではないのかもしれない。
 ジェーン・フォンダという人の出演している作品を見るのはおそらくこれが 『カリフォルニア・スイート』 に続き2作目──そう言えばあれもニール・サイモンの作品だ──なのだけれど、言われてみるとこの人、父親のヘンリー・フォンダにそっくりだ。なんでもこの親子は長いこと悲惨な関係だったらしい。この映画での彼女はそんな家庭環境の深刻さは露とも感じさせず、現代人の目から見るとちょっとばかり太目の脚線美で、溌剌{はつらつ}とした魅力をふりまいてる。
(Feb 13, 2005)

シャドウ・オブ・ヴァンパイア

E・エリアス・マーヒッジ 監督/ジョン・マルコヴィッチ、ウェレム・デフォー/2000年/アメリカ/BS録画

シャドウ・オブ・ヴァンパイア [DVD]

 『吸血鬼ノスフェラトゥ』 の主演マックス・シュレックが実は本物の吸血鬼だったら……。サイレント映画の傑作として名高い吸血鬼映画の古典の撮影風景を、そんなアイディアをもとに再現して見せた異色ホラー。
 ジョン・マルコヴィッチ主演のドラキュラ映画だというので、そりゃあ似合いそうだと思って観てみたのだけれど、マルコヴィッチが演じているのは映画監督のムルナウの方で、吸血鬼役はウィレム・デフォーだった。でも、このデフォーがなかなかのはまり役で、爪を長く伸ばしたその手がなんとも恐い。で、あちらこちらに挿入された 『吸血鬼ノスフェラトゥ』 のモノクロの再現映像が、カラーの撮影シーンへと移り変わる演出が秀逸。オリジナルを知らないことを残念に思った。
 欠点があるとすれば1時間半強という短さゆえか、人物の描き込みが若干足りない嫌いがあることだろう。吸血鬼の犠牲になってゆく人々のキャラクター描写にもう少し肉付けがあった方が、物語がより深みを増してよかったのではないかと思う。基本的には映画は短い方が好きだから、この映画のコンパクトさには好感を持っているんだけれど。ちょっと残念かなと。
(Feb 13, 2005)

オペラハット

フランク・キャプラ監督/ゲイリー・クーパー、ジーン・サーサー/1936年/アメリカ/DVD

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 巨額の富を相続して大都会へ出てきた純朴な田舎紳士ディーズ(ゲーリー・クーパー)と、身分を偽って彼に近づき、彼の奇行をおもしろおかしく脚色して、紙面をにぎわす女性記者ベイブ(ジーン・アーサー)。当然のごとく二人のあいだに芽生えた恋は、彼女の正体がばれたことでご破算に。信頼を寄せた女性の裏切りに絶望したディーズは、全財産をなげうって故郷へ帰ろうとするのだけれど、彼の財産を横領していたことを誤魔化そうとした悪徳弁護士から、そんな行動は正気の沙汰ではないといって、逆に告発されてしまうことになる。完璧な人間不信に陥ったディーズは自らに不利な証拠にも徹底して黙秘を続け、敗訴確実という状況へと追い込まれてゆく……。
 これもフランク・キャプラの代表作のうちの一つ。"Mr. Deeds Goes To Town" という 『スミス都へ行く』 の姉妹編みたいな原題が、なにゆえに 『オペラハット』 なんて邦題になってしまったのかと不思議に思っていたのだけれど、ネットで調べてみたところ、どうやらこの作品の原作となった小説が 『オペラハット』 というタイトルだったらしい。
 なにはともあれ、正義感と稚気にあふれる主人公が、地位も権威もある卑怯者どもに罠にはめられて窮地に陥るという展開は 『スミス』 と同じだ。ただ、クライマックスのカウンターパンチはこっちの方が効きがいい気がする。とてもおもしろかった。
 ヒロインの女性記者がピューリッツァー賞を受賞していたり、気絶を装って主人公に近づいたり。コーエン兄弟が 『未来は今』 で描いたそれらのディテールは、この映画からの引用だったことが発覚。どうやらあの映画自体がフランク・キャプラへのオマージュらしいけれど、残念ながら出来は比べるまでもないと思う。キャプラの作品の強みは揺るぎのない馬鹿正直さにある。コーエン兄弟のようにひねりを加えた視点が持ち味の現代人が、あのストレートさを踏襲するのはちょっと無理があるような気がする。
(Feb 15, 2005)