2004年5月の映画

Index

  1. ゲーム
  2. エイリアン ディレクターズ・カット
  3. がんばれ!ベアーズ
  4. ストリート・オブ・ファイアー
  5. 男性・女性
  6. 彼女について私が知っているニ、三の事柄
  7. サンセット大通り
  8. エンジェル・アット・マイ・テーブル
  9. キング・オブ・コメディ
  10. ブルース・ブラザース2000
  11. パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち
  12. バッファロー’66

ゲーム

デヴィッド・フィンチャー監督/マイケル・ダグラス/1997年/BS録画

ゲーム [DVD]

 投資家のニコラス・ヴァン・オートン(マイケル・ダグラス)は誕生日に弟からCRSという会社のメンバーカードをプレゼントされる。顧客それぞれの嗜好にマッチした「ゲーム」を提供するというこの会社を興味本位で覗きにいった彼の身の回りで、その日以降次々と不条理な出来事が巻き起こる。はたしてこの「ゲーム」の目的は?
  『セヴン』 で一斉を風靡したデヴィッド・フィンチャーの、 『セブン』 に続く異色作。うちの妻の感想、「こんな腹のたつ映画は見たことがない」がその内容をよく表している。僕は観ている間、終始苦笑し続けていた。こんなにサスペンスフルでありながら、苦笑や腹立ちを巻き起こす映画も珍しい。やはりこのフィンチャーという監督はすごいかもしれない。これで 『エイリアン3』 なんて撮っていなければ、個人的な注目度はもっともっと高くなるんだけれど。いや、もしかしてあの映画もちゃんと観たらすごいのかも。いずれ見直してみないといけない。
(May 04, 2004)

エイリアン ディレクターズ・カット

リドリー・スコット監督/シガニー・ウィーバー/1979年,2003年/DVD

エイリアン ディレクターズ・カット アルティメット・エディション [DVD]

 地球への帰りの航海中に謎の信号を傍受した貨物船ノストロモ号は、発信もとの惑星へと着陸、そこでクルーの一人が不気味な異生物にとり憑かれてしまう。
 SFホラー映画の金字塔がデジタル・リマスターされ、ディレクターズ・カット版で登場。オリジナル版と見比べていないのでディレクターズ・カットになって何が変わったのかほとんどわからないけれど──クライマックスでリプリーが船長と悲惨な再会を果たすシーンだけは「おっ」と思った──なにはともあれこの映画は傑作。25年たった今観てもまったく古びていない。
 どうでもいい話だけれど、この映画のシガニー・ウィーバーは大友克洋のマンガを実写で撮るとしたら主演はこの人しかいないという顔をしている。
(May 04, 2004)

がんばれ!ベアーズ

マイケル・リッチー監督/ウォルター・マッソー、テイタム・オニール/1976年/BS録画

がんばれ!ベアーズ [DVD]

 元マイナー・リーガーにして今や飲んだくれのプール清掃人バターメイカー(ウォルター・マッソー)は、その経歴を買われてリトル・リーグのお荷物チーム、ベアーズの監督を引き受けることになる。ところが地域のはみだし者を寄せ集めたチームはゴロさえ満足に取れない状態で、緒戦に屈辱的な惨敗を喫して、親から解散を要求される始末。このまま終わらせるわけにはいかないと考えたバターメイカーは昔の恋人の娘、アマンダ(テイタム・オニール)を口説き落としてチームに加入させる。優れたピッチャーである彼女の加入によりようやく普通に試合がこなせるようになったベアーズ。さらに不良少年ケリーがチームに加わったことにより大化けしたチームは、ついに優勝決定戦にまで駒を進めることになる。
 チームのメンバー編成はまさしくこういう物語の典型。女の子のピッチャーに不良少年のスラッガー、大食いでデブのキャッチャー、負けん気たっぷりのチビ、無口ないじめられっ子、物知りの運動音痴、スポーツ一家の落ちこぼれ黒人少年、言葉の通じないメキシコ人兄弟、等々。比較的短い上映時間の割にはそれらのキャラクターが結構しっかり描けていて好感が持てた。
 あと意外だったのが、大人のエゴが子供たちに与える悪影響というテーマがところどころで繰り返えされていること。単に可愛い子供たちのサクセス・ストーリーでは終わらせないという製作者側の気概が伝わってくる好作品だった。
(May 04, 2004)

ストリート・オブ・ファイヤー

ウォルター・ヒル監督/マイケル・パレ、ダイアン・レイン/1984年/BS録画

ストリート・オブ・ファイヤー [DVD]

 ロック・シンガーのエレン(ダイアン・レイン)が故郷での凱旋公演中に暴走族に誘拐される。エレンの元恋人トム・コーディ(マイケル・パレ)は、エレンのマネージャー兼現恋人のミッキー(リック・モラニス)と流れ者の女性兵士マッコイ(エイミー・マディガン)とともに、エレンを救出すべく敵のアジトに急襲をかけるのだった。
 80年代ロック・テイスト溢れるB級映画。80年代の音楽や風俗というのは、いま見るとどうしてこうもダサダサなんだろう。あの時代に思春期を過ごした人間としては──あまり時代性に同調していなかったにもかかわらず──、恥かしくて観ていられないという気分にさせられてしまう。
(May 04, 2004)

男性・女性

ジャン=リュック・ゴダール監督/ジャン=ピエール・レオ、シャンタル・ゴヤ/1966年/DVD

男性・女性 [DVD]

 ポール(ジャン=ピエール・レオ)とマドレーヌ(シャンタル・ゴヤ)との関係を出逢いから別れまで辿りつつ、その間に様々な会話やエピソードの断片を積み重ねて「マルクスとコカコーラの子供たち」(なんのことやら)の姿を描き出すゴダール作品。
 なにを読み取るべき映画なのかわからないけれど、とりあえずシャンタル・ゴヤは可愛かった。ゴダールの撮る女性はみんなあどけなさとセクシーさが微妙に混じりあっていて、とても魅力的だと思う。次の 『彼女について私が知っているニ、三の事柄』 はそうでもなかったけれど。
(May 05, 2004)

彼女について私が知っているニ、三の事柄

ジャン=リュック・ゴダール監督/マリナ・ヴラディ/1966年/フランス/DVD

彼女について私が知っている二、三の事柄 [DVD]

 ガソリンスタンドで働く夫の稼ぎに満足のいかないジュリエッタ(マリナ・ヴラディ)は、子供を(売春宿兼任の?)託児所に預けて、カフェで知り合った男たちに身体を売っていた。到るところに(監督自身による?)哲学的モノローグを交えつつ、実態調査に基づいたパリの団地妻のとある一日を独特のタッチで描くゴダール作品。
 ティーンエイジャーの女の子がイワノフという中年の作家に質問をする。
「自己に誠実であるべきでしょうか?」
「君の年頃では絶対だ」
「先生の年令なら?」
「私の年頃なら……可能な限り」
 僕の自分に対する誠実さは、すでに不可能の領域に突入しつつあると思う今日この頃。
 ちなみにこのDVDはスクイーズではない上に字幕が消せないという、DVDとしてあるまじき仕様になっている。
(May 05, 2004)

サンセット大通り

ビリー・ワイルダー監督/ウィリアム・ホールデン、グロリア・スワンソン/1950年/DVD

サンセット大通り スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

 売れない脚本家のジョー・ギリス(ウィリアム・ホールデン)が、借金取りに追われて逃げ込んだ、荒れ果てた豪邸は、無声映画時代の大女優ノーマ・デズモンド(グロリア・スワンソン)の屋敷だった。若かりし頃の栄華が忘れられず、カムバックを夢想する彼女は、自ら手がけた脚本の手直しをギリスに持ちかける。格好の金蔓を手にしたと思ったギリスはその屋敷に住み込んで作業を始めるが、やがて彼女の寵愛を受ける身となり……。
 ハリウッド的な虚栄の果てをシニカルに描く巨匠の傑作。本当になんともおもしろい映画だった。 『お熱いのがお好き』 の女装の二人組といい、この映画のグロリア・スワンソンの怪演といい。ビリー・ワイルダーという監督は「おいちょっと、やめてくれよ」と言いたくなるような人たちの話を嫌悪感を抱かせないように見切り、絶妙の演出を施すことのできる人なのではないかと思う。
(May 05, 2004)

エンジェル・アット・マイ・テーブル

ジェーン・カンピオン監督/ケリー・フォックス/1990年/BS録画

エンジェル・アット・マイ・テーブル [DVD]

  『ピアノ・レッスン』 のジェーン・カンピオン監督作品。あの傑作のひとつ前の作品で、ニュージーランドの女流作家ジャネット・フレイムの自伝を映像化したものだ。
 五人兄弟の次女として生まれたジャネットは、もじゃもじゃの赤毛が印象的な、文学的才能に恵まれた少女。あまりに多感な彼女は、繊細過ぎて人と上手くつきあうことができず、社会に出たあとでついに生活が破綻、精神病院に入ることになってしまう。
 精神病歴のある女性作家の自伝の映画化という点では 『17歳のカルテ』 と同じ。けれど可愛い十代の女の子ばかりを集めた青春映画然としたあちらとは違い、こちらは容姿に恵まれない中年女性が主人公だけあって、どーんと重い。姉と妹をともに水死で失うという不幸な話も実話だとするとかなりすごい。なんとも居たたまれない話でありながら、ぐいぐいと引き込まれてしまった。
 幼少期、思春期、青年期と三人の女性がジャネットを演じている。なかでは真ん中の女の子が済んだ目をした人懐こそうな子だったため、主人公が成人していきなり対人恐怖症になってしまうのにはちょっと違和感があった。そういう意味ではミスキャストかなと思う。個人的にはその真ん中の子が一番好きなのだけれど。
 映像的にはあまり惹かれないし、 『ピアノ・レッスン』 ほどのインパクトは受けなかったけれど、それでも作品としては決して悪くない出来だと思う。子供たちの遊ぶ場面や何気ない生活の中の一場面の描き方に、実に女性らしい視点が感じられる作品だった。
(May 08, 2004)

キング・オブ・コメディ

マーティン・スコセッシ監督/ロバート・デ・ニーロ/1983年/BS録画

キング・オブ・コメディ [DVD]

 三十なかばにしてなおコメディアンになることを夢見るルパート・パプキン(ロバート・デ・ニーロ)は、師と仰ぐジェリー・ラングフォード(ジェリー・ルイス)にピント外れのの熱心さで売込みをかける。しかしジェリーが彼をまったく相手にしてくれないため、ついには彼を人質にとってテレビ局に自分の出演を要求するという暴挙に打って出るのだった。
 スコセッシとデ・ニーロの名コンビによる、シニカルでサスペンスフルなブラック・コメディ。主演と監督のどちらにも生真面目な印象があるせいか、この映画にはどことなく笑っちゃいけないんじゃないかと思わせるような微妙な堅苦しさがあって、それがこの作品にコメディと呼ぶのを躊躇{ためら}わせる独特の味わいを生み出している。あまり期待していなかったのが申し訳なくなるような、意外性のある、いい映画だった。
 NHK衛星の字幕では、「キング・オブ・コメディ」の訳が「爆笑王」になっていたのが笑えた。直訳には違いないけれど、あまりに垢抜けなくて、その現代風ではなさ加減が、ある意味微笑ましかった。
(May 09, 2004)

ブルース・ブラザース2000

ジョン・ランディス監督/ダン・エイクロイド/2000年/DVD

ブルース・ブラザース2000 [DVD]

 前作の大騒動から十八年。ようやく刑期を終えて出所したエルウッド(ダン・エイクロイド)だったが、いまやジェイクもカーティスもあの世の人。一人になったエルウッドは太っちょのマック(ジョン・グッドマン)や孤児のバスター(エヴァン・ボニファント)らを新しい仲間として、ブルース・ブラザーズ再結成のために奔走し始める。ところがカーティスの息子で警察署長キャブ(ジョー・モートン)に目をつけられ、おまけにバスター誘拐の容疑まで受けて、またもや警察に追われる羽目に……。
 エルウッド役を演じるにあたってちゃんとシェイプアップしたダン・エイクロイドは立派だ。前作のプロットを踏襲したシナリオも基本的には悪くない。ただ、子役を配したり、スーパーナチュラルな展開を多用した点は、安直すぎてあまり好きになれなかった。目玉であるアレサ・フランクリン、ジェームズ・ブラウンの二人の出番も前作ほどよくない──まあ、本編で出番が思いのほか少なかったJBが、エンドクレジットのあとでソロ・パフォーマンスを繰り広げてみせるのは、らしくておかしかったけれど。
 ただ、この映画がどんなにくだらないとしたところで、クライマックスでブルース・ブラザーズ・バンドとバトルを繰り広げるB・B・キングのバンド、これを見ちゃったら音楽ファンはこの映画を無視することはできなくなってしまう。なんなんだ、あの豪華過ぎるほどのメンバーは。中にいるクラプトンが小僧に見える。
 あそこに到るまでにウィルソン・ピケットやエリカ・バドゥなんかも見せてもらって、そのあとにあのあまりにもものすごいメンツのライブを見せられて文句を言ったら罰があたるってもんだろう。あまりの贅沢さに大笑いだった。
(May 10, 2004)

パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち

ゴア・ヴァービンスキー監督/ジョニー・デップ、キーラ・ナイトレイ/2003年/DVD

パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち [DVD]

 船を持たない一匹狼の海賊ジャック・スパロウ(ジョニー・デップ)がポート・ロイヤルで捕まったその夜。海軍総督の娘エリザベス(キーラ・ナイトレイ)が隠し持っていた黄金のメダルを狙い、伝説の海賊船ブラック・パールがその港町を襲撃する。そのメダルの本来の持ち主であり、エリザベスに思いを寄せている刀鍛治のウィル・ターナー(オーランド・ブルーム)は、連れ去られた彼女を助けるべく、ジャックと手を組み、海軍の帆船を奪ってブラック・パール号のあとを追う。目指すは呪われた財宝が眠る伝説の島……。
 ディズニーランドの人気アトラクション「カリブの海賊」をモチーフにした、実にハリウッドらしい超大作。僕が知らないところで大ヒットを飛ばしていたらしいこの作品。DVDの出荷数も百万枚を突破したとかで、なにやらとても知名度が高い。いずれは見たいものだと思っていたのだけれど、ここへ来て 『エイリアン』 によって火がついた僕のボーナス・ディスクに対する物欲を強く刺激され、いまさらながら買ってしまった。
 いまや変人を演じさせたら右に出る者のいないといった感じの怪優ジョニー・デップに、 『スター・ウォーズ・エピソードⅠ』 でアミダラの影武者役を演じたという噂のキーラ・ナイトレイ(さすがにきれい)。飛んだり跳ねたりするシーンの多いこの二人がとても魅力的だ。作品としても最初から最後まで見せ場の連続で飽きさせない。ただ逆に見せ場が多過ぎて、幕の内弁当的な焦点の定まらなさがたまに瑕かもしれない。
(May 22, 2004)

バッファロー’66

ヴィンセント・ギャロ監督/ヴィンセント・ギャロ、クリスティナ・リッチ/1998年/BS録画

バッファロー'66 [DVD]

 刑務所を出たばかりのビリー・ブラウン(ヴィンセント・ギャロ)は、親に対してついた「結婚している」という嘘を誤魔化すため、行きずりに出逢った女性レイラ(クリスティナ・リッチ)を無理矢理両親の家へと連れてゆき、自分の妻の役を演じさせる。妙な役割を無理強いされたレイラだったけれど、ビリーのエキセントリックな挙動にもかかわらず──というかそれゆえにか──、次第に彼に思いを寄せ始める。ところがビリーの方ではなぜか彼女に触れようともしない。それというのは……。
 映像的にはあまり趣味ではないのだけれど、ギャロの演じる駄目男くんには(自分も同じような男なだけに)自虐的な共感を禁じえない。トイレで一人「死にたい」なんて言って泣いちゃうくせに、人前に出ると虚勢を張らずにはいられない主人公の姿は、今の自分に重なり過ぎて痛い。そういう人って意外と多いのかもしれない。
  『アダムス・ファミリー』 でクールな子役を好演したクリスティナ・リッチもすっかり立派な大人の女の子。美人というのとは違うけれど、ぽっちゃりとして妙に可愛い。
 人生のドツボにはまったオタク青年が、偶然知り合ったキュートな女の子にわけもなく愛されてしまう。そんな少年マンガ誌のラブコメディみたいな脚本を、ヴィンセント・ギャロという人は、アングラ・ムード一杯の映像と演出で、スタイリッシュに映像化している。なんとも情けなくも憎めない秀作だった。
(May 30, 2004)